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7 初飛行試験

昼食を食べ終えた俺はしばらくの間、白く小さいが手触りの良い毛皮を敷き詰めたテントの中でごろごろしていた。


いつまでものんびりしていられないので行動する決意をしてテントの中でローブを脱ぎながらで外に出る。立ち上がったテント前で上半身は裸になり、脱いだ服はテントになげいれる。


魔人の能力である翼を使い上空から周辺を偵察して人里を探す作戦だ。


初めて翼を使うので飛行訓練もかねているのだが、本当に飛ぶことができるか半信半疑だ。

人間は生身では空を飛ぶことは出来ないのだらか飛び方も分からないし不安だらけだ。

飛行機に乗った経験なんてまったく役に立たないだろう。操縦もしたことも無いしな。


まずは体に格納されているはずの翼を展開することにする。


バハッ


と耳元で音がすると肩甲骨の辺りから手を広げたよりも一回り大きい翼が広がっていた。翼竜と蝙蝠の羽を合わせたような形状で赤黒い色をしてある、しかっりとした質感である。決して鳥のような羽毛が生えているような翼ではない。やはり魔人だなと思うが、かっこいい。


初めての翼は今まで無かったにもかかわらず手足のように違和感はまったく無く動かすことができた。体の一部とはいえ脳の適応力には驚かされる。


しばらくは地上でしまったり出したり、羽ばたかせたりめいっぱい広げたりを繰り返す。

常識的に考えて大きいとはいえ体の重量を考えるとこの程度の翼では飛ぶことは出来ないと思う。


しばらく羽ばたかせながら”飛ぶ”事に意識をするとふわりと体が浮いた。

飛んだのだ。

飛行機のように助走もしていないし、まして揚力も発生してはいないが。重力を無視するように体が浮いたのだ。


魔力や魔術を使い浮遊したのであろうが原理は不明である。感動したのだが次の瞬間。


ゴンッ


顔面から地面に激突した。

初飛行は約30センチといったところであろう。ジャンプよりも低いのに激しく墜落した。

まるでリアクション芸人のように浮いた瞬間に前方に体が回転して顔面から地面に突っ込んだのだ。


「痛いっ。失敗したけど飛んだぞ」


この時、転生して初めて負傷した。顔と手に擦り傷を負って血が滲んだ。

痛さもあるが飛べるような感覚が生まれたのであった。


とりあえず傷を処置する。湖で傷口を洗浄する。

これまた今まで負傷することが無かったので使うことがなかったの回復魔術を使用する。

回復魔術に意識を向けて今使える魔術を確認して


「プチヒール」


唱えると右手がかすかに光って、そのまま消えていく。失敗だ、手のひらを治療箇所に魔術の発動前に手を持っていかなければいけないようだ。


右手の手のひらを左腕の傷口に当ててもう一度


「プチヒール」


ほんのりとした暖かさとともに傷が消えていき、ヒリヒリとしていた痛みも無くなる。

次に左手の手のひらを右腕の傷口に近づけ再度回復魔術を発動する。

左手でも問題無く発動して傷は癒えた。

最後に顔の傷を回復魔術で癒していく。


「まさか翼の飛行実験で回復魔術を使うことになるとは思わなかったな。やっぱり飛ぶのはかなり難しいな」


本当に翼での飛行は難しかった。かれこれ一時間以上も飛んでは負傷し、回復魔術で癒やしてはすぐに傷をつくるを繰り返していた。


開始直後は毎回全部の傷を回復魔術で治していたが、しばらくすると面倒になり小さな傷は我慢して飛行訓練を続けた。一番難しかったのは着陸だった。数え切れない墜落と地面への激突を繰り返した。無数の負傷を繰り返したことにより何とか飛行をマスターする事ができた。回復魔術の酷使により魔力もかなり消費しながら習得したのである。


「上半身裸なのは危ないから飛行用の装備は早めに作ろう。じゃ偵察だな」


翼を羽ばたきながら徐々に上昇していく。地上から20メートルぐらいまで上昇したところで停滞して周りを眺める。

テントから湖の見て右側を初日に探索して、現在はスケルトン達が狩りをしている。その湖より右側の森は目測で7キロから8キロ森が広がっており、その先はまばらな林がある平原が広がっていた。


湖の左側はひたすら森が広がっており、ところどころ森が丘のように盛り上がったりしており遠くにはいくつかの山も確認できた。左側は奥になるにしたがって森が濃く険しくなっており山なども存在することから人里が有る可能性は低いであろう。


人里の探索は湖から右側を中心に行うことにした。森が切れた先の平原を見渡すと肉眼でもかすかにいくつかの小さな村のようなものを確認することが出来た。普通なら近寄って確認するところではあるが俺は別の方法を使うことにした。


魔眼の発動である。


額に意識を向けて第3の目を開く。そして遠見を発動する。


視界がすぅ~とせばまっていき遠くがはっきりと見えてくる。望遠鏡と同じで範囲はせばまるが遠くを見ることが出来るのである。ただ望遠鏡と決定的に違うのは普段の視界はそのまま見えており意識している中心の部分だけが拡大されていくのだ。


魔眼で湖の右側を見ていくと、はるか遠くの地平線には海のようなものが見える。森寄りの平原に確認できるのは4つの村のようなものと少し平原の奥に町であろうものが1つ確認できる。町の周辺やさらに遠くにもいくつかの村が確認できる。もっと高度を上げれば他にも発見できるであろうが現段階ではそこまでの行動範囲を持たないので十分であろう。


現在地より一番近いを村を観察すると木の柵に囲まれた木造の家が大小23軒ある。木の柵には森側と反対側に門が計2箇所あり村の中心部には広場のような空き地がある。村の周囲には畑があり大部分は小麦のような植物が植えられている。住民と思われる人の姿も見える。拡大して確認してみると獣人とエルフがいるようだ。人数はそれなりにいる。


「ビーストとエルフは共存しているようだな。ビーストは犬と猫型が多いようだが他も少しいるな。期待してたウサギはいないな。ワーロックも当然いないか」


残りの3つの村も確認したが規模の大きさや住民の比率が多少違うだけで同じようなものであった。

町は距離もあり木製の壁が高いこと、建物がかなりの数あること以外はここからは確認できなかった。

これで初の空中偵察は完了だ。


「明日は一番近くの村に行って情報収集だな。手に入れた素材と魔石で、必要な物を調達できたらいいが。どうなるか分からないから油断は出来ないな。スケルトンも連れて行って村の近くに配置しておくか」


明日の予定も決まったので早めの夕食を食べながら、素材を持ってきたスケルトンに明日の指示をしてから眠りについた。


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