47 結婚式のその後に
王都で王子と合流して国王に終戦の報告をした。
講和条約の内容を説明すると国王以下、宰相や将軍、貴族にも驚かれた。
全て王子の手柄としたが、全員からどんな手を使ったんだと言わんばかりの視線を浴びてしまった。
国王からはお褒めの言葉を頂いた。
翌日になると国中に戦争の勝利が知らされ祝賀ムード一色になった。
王都でも終戦の祝賀会が開かれ、それと同時に俺の結婚式も執り行われた。
王女の婚姻は国の一大行事であり大々的に行われた。
ライラに任せていたので置物になっていたがひたすらに疲れた。日本とは形式は違えど儀式とは面倒の塊だった。初体験だけど。
初体験と言えば花嫁との初夜だ。王都の屋敷に移った妻達と初夜を過ごすことになったのだが一番目はライラだった。
不可能ではないかもしれないが成人まで性行為は無しなので一緒に寝ただけだった。多少のスキンシップはしたけれど、普通に寝たのだがそれが大変だった。一言で表すと暑い!子供の体温が高いのに加えて朝まで抱きつかれたままだったので、たまったものではない。
二晩目からは更に大変だった。貴族の初夜は監視が付くのだ。処女で有ることを確認しなければならないからだ。俺の場合は必要無いがルールなのだから仕方ない。DNA鑑定が無いのだからこの確認方法なのだろう。
処女の花嫁さんをしっかりとほぐしてから早めにフィニッシュをするというとても気の使う夜だった。見られてするのは最高に恥ずかしいので無理を通して兎獣人の2人を指名した。他よりは幾分かマシと言ったレベルの差だったけど。
領都の城に移るまでの一月程は毎日貴族のお付き合いばかりだった。あちこちの晩餐会や茶会に夜会や舞踏会まで多忙を極めた。
城に着くと部下達が待っていてくれた。
玄関前に並んだ幹部の左右にはメイドと執事が並び全員深々とお辞儀をする。
「ペルセ様お帰りなさいませ。長旅お疲れさまでした。奥様方もようこそおいで下さいました。部下一同歓迎させて頂きます。これから宜しくお願いします。」
「レッグスごくろう。変わりないな?」
「もちろんです。どうぞこちらへ。」
城にはいるとエントランスにも左右にメイドが綺麗に整列して頭を下げていた。なんとも贅沢な光景だ。
俺の部屋に入りソファーでお茶を飲むことにした。
「ペルセ様、こちらのメイドは皆あのような統一された服を着用されているのですか?王城のメイド達よりも所作もよいようですがどうすればあのようになるのですか?」
「あれはメイド服という制服だよ。統一した服の方がきっちりしている様に見えるだろ?細かなところから指導しているからね。3人とも小さな城だがゆっくり過ごしてくれ。俺は会議があるから失礼するよ。」
「その会議に私も参加して宜しいですか?」
ライラはこれからの領地運営に関わってるくるだろうし参加してもいいかな。
「かまわないよ。一緒に行こうか。」
会議室には様々な分野の担当者が集まっていた。
「留守の間の報告を聞かせてくれ。まずは領地関係からにしようか。」
領地運営の担当者が順に説明をしてくれる。
人口は増加傾向にある。労働力は大切なので減税で更に集めるようする。
税金は穀物の収穫量が増えたため増収であった。大森林で狩ったモンスターを埋没処理した場所の土が魔力を含んで優秀な肥料になるのだ。
「税制を改革しよう。生産された穀物は一度全て集めて貨幣にして農民に与えるようにしてくれ。新たに穀物部を作り平等に行うように。いったん貨幣にして所得に対して課税する制度に変更だ。税率などの検討をしてくれ。準備が出来た段階で切り替える。農業以外はどうだ?」
「鉱山、銅山、銀山、岩塩山が大きな収益を上げております。ドワーフが増えれば更に増産できるかと。それと以前は貨幣の鋳造もしておりましたので国に貨幣の鋳造権を申請してもよろしいかと思います。品質には自信も有ります。」
少ないドワーフの担当者だ。彼は地下資源やその加工を担当してくれている。
「そうか、ドワーフの待遇を改善して鉱夫や職人を増やしてくれ。財務は予算を回してやれ。それと近いうちに金山の獲得と大森林を開拓して天然の魔鉱石を採掘する。そのための準備も頼む。」
「金山はヘンリル領に有りませんが…どちらで?」
「それはまだ言えないが手に入れられるだろう。宜しく頼む。治安と医療関係はどうだ?」
「治安は良いです。元軍人が新設の警察組織に加入したりして人員を増やした為に成果が出ていますが新旧の住民の習慣の違いで諍いは少なくはありません。商人同士も同じです。悪質な連中は何故か始末されているようです。閣下が何かやってみえるのですか?」
「多少な…法務部を作りルールを法律として明文化して法治をしよう。犯罪に関する刑法、商業の取引に関する商法、領民の生活全般を民法として草案を作ろう。法律を根拠をすれば平等であり、取り締まる方もやりやすくなるだろう。専門家を集めてくれ。医療はどうだ?」
「閣下と教会の確執が噂されてまして、奴隷にして医師として派遣したものは利用されてますが教会からの協力はいまいちですね。どうされますか?」
「俺はあの司教に制裁を加えただけで教会とは確執は無いぞ。多めに寄付をして俺が信徒で有ることが分かるようにしてくれ。医師を増やすために育成をしてもらいたいしな。なんなら教会で派手に結婚式でもやるか?もうすぐ嫁も増えるしな。俺の知ってる国では教会で式を行って神に永遠の愛を誓うんだよ。純潔を表す真っ白のドレスを着て指輪を交換したりなんかするな。やったことは無いけどな。」
「やりましょうペルセ様!素晴らしいです。是非やりたいです!」
ライラが大興奮だよ。
「そうか、ライラがやりたいならそうしよう。領民も参加できるようにして祭りのようにしたらいい。もう見せ物になるのに慣れたからな…。ライラ、他の夫人と協力して準備してくれ。衣装は女将と専門の奴らを集めればすぐに造ってくれる。」
「最高の結婚式にしてみせます!」
「うん、頑張って。」
自爆したかな?ちょっと心配だ。
「他に問題はないか?」
「問題は労働力の不足と戦争孤児でしょうか。あと閣下の命を受けて小麦を買い集めて、税として集めた分もそのままため込んでいるので現金資金が少ないことですね。」
「小麦は莫大な資金に換金するから安心しろ。資金はどれぐらい保つ?」
「他の収入も有るので領地運営が行き詰まるほどの影響はありません。新規に大事業を行うのは厳しいといったところです。あとで帳簿をお持ちします。」
「わかった。労働力はすぐにはどうにもならんな。子育て支援や未亡人の再婚なんかで長期的に当たってくれ。孤児はなぁ…学校をつくるか!」
「学校とはどういったものでしょうか?」
この国には学校はない。生まれた瞬間に概ね職業は決まるし、知識が必要な貴族は家庭教師から学ぶのだ。
「子供を集めて勉強をさせるところだ。本人の適性にあわせて軍人、役人、職人、商人、ハンターなどの職業に必要な技術を仕込む。基礎的な知識や常識も教えて高水準の人材を育てるのだ。ヘンリル領の将来を担うものを育てよう。乞食にするのは勿体ないし、治安も悪くなる。寮を作り衣食住を提供してやればいい。それくらいの予算は有るだろ?」
「大丈夫です。素晴らしい政策です。子ども達が飢えているのは快いものではありませんからね。それにそうさせたのは私たち大人です。」
「戦争の一番の被害者は子供などの弱者だからな。ヘンリル領では戦争の犠牲になる者が少しでも減るように全員がアイデアを考えてくれ。」
「閣下、それでヘンリル軍はどうしますか?現在の人員では広大な領地を守ることは不可能です。」
「目標は三万!管理費は一万分で済むしな。」
「例の協定を使われるのですね?」
「そうだ。早期に集められるか?」
現在の兵はかなり少ない。スケルトン達がいるからこそ成り立っているようなものだ。
「…なんとかしてみます。全員、職人軍人ならば賃金を多めにすれば集まると思います。」
「平原の農地化と新領都の進捗はどうだ?」
「平原は骸骨軍が行っており三割まで目前です。領都はまだ数年はかかります。城の改築が閣下の案を参考に建築家が張り切りまして規模が膨れ上がりました…王城を越える大規模な計画になっております。新市街を囲む城壁はまだ手付かずです。完成には十年単位で時間がかかります。」
「仕上がりを優先してくれ。ここでも問題はないしな。」
領地運営は順調だな。
「アース商会はどうだ?」
「はい。ライラ様の助力のおかげで大変順調です。特に銀行部門は素晴らしい成長率です。私個人の見解なのですが、規模が大きくなりすぎて逆に不安になっております。」
「そうか。その段階まで来たか…分かった。銀行部門は切り離せ。それでヘンリル領の保有として信用保証をつける事にしよう。」
「それは良い案ですね。信用保証…そうですな、銀行とは信用ですな。」
関係者だから分かるものが有るのだな。
政府銀行のような役割もやらせていこう。
「明日からは個別に協議していこう。視察もどんどんしていくから頼むな。全員一丸となって協力してくれ。和衷協力を肝に銘じておけ!今日は解散。」
長い会議を終えてからも執務室で様々な仕事をこなす。夕食を婦人達と食べてから散歩に出かけた。
領都の大通りから一本それた場所にある一軒のバーにの扉を開けた。
薄暗い店内は落ち着いた内装で、静かな音楽がピアノに似た楽器で演奏されている。
ローブを脱いでカウンターに腰掛ける。
「いつものを…」
「畏まりました。」
ウイスキーのような蒸留酒をロックで傾ける。
「町の様子はどうだ?」
「チラホラと怪しげな奴らを見かけます。領内を荒らすような輩は粗方排除しました。」
「監視を続けてくれ。それにしても負傷したおまえ達にこんな事をさせてすまないな。」
「いえ、本来なら何の価値もない俺たちの為に仕事を世話してもらって感謝しか有りませんよ。その辺の路地で野垂れ死んでいてもおかしくないのですから。裏の仕事であれヘンリル領の為に働けるのなら光栄ですよ。」
「そうか。また来る。」
「お待ちしております。」
治すことの出来ない傷を負った者達に第2の職をあてがった。大半の者に同意のもとで秘密警察や情報屋の様な任務をしてもらっていた。
多くの町に根を生やして暮らしながら活動している。このバーが全ての統括になっているのだ。監視や情報収集以外にも領の害になる人物の排除もしてくれている。
たちの悪い連中は通常の方法では取り締まれない。そういった案件を超法規的に処理しているのだ。まだまだ安定していない領地で反乱や混乱を招く事件は困るのだ。




