44 処刑と復興
集められたのは辺境伯とその親類に重臣。それとその家族だ。
ほぼ全ての元辺境伯領幹部が処刑が行される。死刑場は深夜大戦から一月半が経ち復興の始まった領都の北門外側である。
「これより大罪人の処刑を行う。そして、これより旧辺境領はヘンリル領に併合される事を宣言する。処刑は領民が自由に行えるようにするようにとの伯爵からのご提案である。本日は情けをかける未成年の処分のみ執り行う。」
連れてこられた十数人の子供達の首が次々にはねられていく。
辺境伯を始めとする大人は裸で一列に地面ぎりぎりに十字架に手足に釘を打たれて、はりつけにされている。
これから誰でも石を投げる、錆びたナイフで切る、釘を打ち込むなどいくつかの拷問を出来るようにした。
どれだけ痛めつけても朝には回復魔術で治し毎日出来るようにする。
食事は与えずに性器に固定された管から尿を集め、日に二度飲ませる。拒否しても無理やり喉に流し込む。漂流しても尿で1ヶ月生き延びたテレビと江戸時代の千本引きを参考に考えた。
残酷な処刑方法であったがただでは殺さない。
どんなに懇願しても決して許しはしなかった。
初めは家族を失った住民やヘンリル軍の兵士が拷問をしていたが二週間もすると異臭を放つようになり、飽きられたように処刑場にくるものは少なくなっていた。
回復魔術もあり一月程は死者はでなかったが栄養失調で徐々に弱っていき、ぽつりぽつりと死んでいった。腐敗してもそのまま放置して、腐った手足から釘が抜けて下に落ちた者は埋葬した。
最後に死んだのは辺境伯だった。ガリガリにやせ細って凍死していた。寒くなり始めた頃に酔っ払った住民達が立ち小便をかけた事が原因らしい。
忘れていた頃に部下が報告に来たのだ。哀れに思うが正直もう忙しさで存在や処刑の事など忘れていた。
今回の侵攻作戦は計画書を事前に王国に提出して占領後の併合も含めて許可を受けていた。
占領完了後に作戦の報告と再度の併合の許可を申請している。
領都はまだ移さずにいる。復興がある程度軌道に乗ってからしたかったからだ。
秋も深まってきた頃にはチャーリー大隊も再生されて統治も順調だった。各地から職人も資材も集まり城壁の外の避難キャンプは新市街として家を失った住民の住まいが新たに建設されていた。
城壁内部の街も京都や札幌の様に、碁盤の目に綺麗に区画整理をして様々な建物の建設が進んでいた。
そんな頃に王都から召集がかかった。新たな叙勲と褒章の授与のためであった。王都まで魔車で移動すると冬になってしまうので飛行ですぐに向うことにした。
既に広大になったヘンリル領は俺がいなくても回るようになっていた。重要な決定事項と様々な事案の裁決のみ行い実務は部下達が行っていた。
午前中に執務を終えると様々な場所に視察に向った。小さな村や町にも行き現状を聞いて回った。それとヘンリル軍の殉職者の家族などに見舞いにも行った。誰も不満や泣き言など言わなかった。役に立てて光栄ですと言うが死んでしまってはどうしようもない。
新たに莫大な個人資産から遺族年金を創設した。使う用途も特になく、貯まっていた資金の一部だ。敵の貴族から奪った資産も多くある。有効に使って欲しい。遺族会を各地に組織して悲しみや苦労を分かち合い話せる場所を作ったり、就職・再婚の支援もした。基本的に役所の仕事は男の仕事であったがヘンリル領では多くの女性が働いている。
綺麗な未亡人が職場にいれば男はやる気も出るし、出会いの機会も増えるだろう。多くの戦死者で男が減っているので男は売り手市場だ。少しでも人口が増えて欲しいものだ。
王都の屋敷に着くと王城に連絡をした。十日後に式典が開かれる事になったのでそれまで王都でのんびりとすごすことにした。一応、商会長でもあるのでアース商会の状況を確認した。資料を読んでいたが俺が知っているアース商会とは既に別物になっていた。資料だけでは分からないのでライラとハンズに状況を聞くことにした。
ハロルゼに向う途中で貿易都市の建設地に立ち寄ったが、建設地では無く既に町になっていた。
町の名前はペルーシャ
ペルセとアリーシャを足しただけ?
安易過ぎないかねアリーシャさんよ。
と内心でツッコンでしまうが取引所や倉庫など市場長に案内されて視察したが見事なものだ。
市場長いわく俺の考案した木製のローラーコンベアが重宝しているようだ。現在では荷物の積み下ろしから倉庫間の移動、倉庫内部の通路にも無数に設置されており取引所でも使っているとの事だ。
スケルトンに発注すると完璧な状態ですぐに納品されてくるのでやりすぎてしまったとの事だが、人員と時間の両方が大幅に削減され効率的に回っているようで何よりだった。取引参加者も大幅に増えており、取引金額も膨れ上がっていた。おかげで収益が尋常じゃないことになっており、値下げも検討するように指示した。市場長も活性化も含め既に値下げを考えていたそうで任せることにした。
「ハンズ久しぶりだな。元気だったか?少し痩せてないか?」
ハンズはアースファミリーの拠点で仕事に追われていた。
「ペルセ様!どうしてこちらに?」
「王都から呼び出しがあったんだが十日ほど時間が出来たから休暇にして遊びに来た。それにしても急がしそうだな。アース商会はどうなってる?なんだか知らないうちにとんでもない事になってるみたいだから、直接聞きに来たんだ。報告書だけじゃ分からなくてな。」
「休暇と言うことは復興も進んでいるのですね。呼び出しは昇進や褒美ですかね?」
「そうみたいだ。面倒でしょうがない。それでどうなんだ今は?」
「説明するとなると長くなります、食事でもしながらにされますか?」
「そうだな、そうしよう。前にクローニといった店があるからそこに行こう。お前らとの出会いの場所でもあるしな。」
「ははは。いまさらその話はやめてください。今では笑い話ですけどね。」
カフェに向うと前に来た時と同じ少女が歌を披露していた。
オープンテラスの席に座り、ランチメニューをお任せで注文する。
「ペルセ様、普通の貴族はこんな店に1人で着ませんよ。周囲に護衛の部下たちは配置させてもらいますので。もう少し貴族らしくお願いします。下級貧乏貴族ならまだしも伯爵ですよ。気軽に”おねーさんのオススメで”とか言わないでくださいよ。」
「いいだろうがこの町なら一般人になれるんだから。貴族の孤独というものも分かって欲しいね-。さっきのおっさんなんか”久しぶりだなワーロックのあんちゃん。噂じゃ貴族になったんじゃないのかい?1人で何してるんだい?”だとさ。なんとも気楽でいいよ。」
「でも、”あーあの噂ね…王都に出張に行っただけだよ”はダメです。上級貴族ですから。それで、報告でしたよね?どこから話しましょか?」
「規模、収益、商品、人員数とか頼む。その経緯も含めて。」
「全てが何十倍にも膨れ上がってますよ。ペルセ様のアイディアをライラ様が発展させています。例えば大きい収益源になっているのは建設業です。専門の設計士が図面を引き、木材ごとに図面を作り、スケルトンが図面通りのパーツを作り、若手の職人がくみ上げる。職人も分業制にして同時進行でいくつもの建設を行うようにしています。もちろん狩猟業務とバランスを取り最適な配分をしているようです。単価は高いのに材料費も人件費も極わずかです。大森林の木材で高品質で工期も短く安い。大人気ですよ。ヘンリル領や占領地でも導入されているはずですよ。」
「それで貿易都市や避難キャンプの住居があんなに進んでいたのか。知らなかった…俺よりうまくスケルトン使ってないか?」
「そうかもしれません。ライラ様の頭の回転は化け物ですよ。現場にいないのに僅かな資料でどんどん指示を出されます。他にも話しきれない事が大小あります。俺ではついていけません。部下を増やしているのですが追いつかない状況で…。申し訳ないです。」
「そうか、報告はもういいや。任せた。死なない程度に頑張ってくれ。嫁に逃げられないように家族サービスも怠るなよ。」
「そんな余裕ないですよ。同じ建物にいるのに会うことは稀な状態ですよ。」
「なんか悪いな。すぐに貴族にするから許してくれ。」
「それこそお断りですよ。勘弁してくださいよペルセ様」
「そういうなよ。お前もこっち側に来れば俺の苦労も分かるから。何で俺達こうなったのかな?」
二人でしんみりしながらおしゃれなランチを食べる。かたぎの雰囲気ではない男二人組みには場違いだった。食後にあれこれ愚痴のような事を話していると歌を歌っていた少女が駆け寄ってきた。
「おにーちゃん久しぶりだね。前は助けてくれてありがとう。」
「君、ペルセ様は…」
「ハンズ。今日も上手な歌をありがとう。ほらチップだよ。良かったら一緒にデザートでも食べていくかい?」
「ありがとうございます。まだ、仕事の途中なので…。続きも聞いていって下さい。」
少女は元気よく手を振りながら元の場所に戻り、また歌を歌い始めた。
「なぁ、この戦いで俺はあの子よりも小さな子供を処刑した。巻き込まれた子供も大勢死んだ。戦いなんてもうごめんだね。平和に暮らしたな。」
「ペルセ様…」
しばらく歌を聴きながらお茶を飲み、アリーシャの待つ自宅へ帰った。
自宅と第一基地を交互に行き来して5日ほど滞在して王都へ戻ることにした。




