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42 辺境伯領侵攻作戦3

「なぁ、何回も同じこと聞いて悪いのだがおかしくないか?」


「閣下、何度聞かれても同じ答えで申し訳有りませんが何か変です。でも、理由は分かりません。」


「だよな…調査はしてるんだろ?」


「はい。でも状況は明らかに異常なのに原因が全くわかりません。」


「もう一回聞くけど、ここは辺境伯領の領都にある辺境伯の城だよな?」


「間違い有りません。」


緒戦からはや一月。初夏の気配のなか軍を進めた。

ハンターの都市と他の2つ都市を占領した。


特に戦闘もなく順調に進んだ。いや、計画からは大きく狂っているので順調とは言わないのかも知れない。当初計画よりかなり早くすすんでしまっているのだ。


領都の城も無血開城!


城に入りエントランスでは使用人が集まり、出迎えと降伏をしてきた!してきた?してくるか?


何かがおかしい。でも、何故こんな状況なのかわからない。


「自領を捨てて、ヘンリル領に攻め込んだのかと思って調べたが、そんな気配もない。辺境伯や兵士はどこに消えた?」


「現在、調査中です!」


まずは領都の占領を維持するために軍に指示した。

場内を隈無く調査させたが辺境伯はもとり家族も部下も1人もいない。単なる下っ端の使用人が居るのみ。重要な書類、金品、高価な品など表には出していないものは持ち出されている。


「使用人の聞き取りを尋問に変更しろ。部位欠損になるまではやるな。街の住民にも聞け。何人かは尋問する為につれてのこい!それから、裏の奴らを躾ろ。なにをしても良い、情報が有るはずだ。」


ヘンリル領に伝令を出しチャーリー大隊と変わるように連絡した。チャーリー大隊を早く呼ばなければならない。


「軍全体に最高ランクの警戒体制を取らせろ。アルファー大隊は街の外の警備。街中はヘンリル軍を中心に行え。城はブラボー大隊とヘンリル軍の精鋭と魔術師を中心にしろ。場内の警備は特に厳にしろ!兵に単独や少数の行動はさせるなよ。みな、意見は何かあるか?…無いなら行動に移るぞ。」


24時間体制の警戒態勢を敷いて領都の調査及び辺境伯家の居場所を特定することにした。

考えられるのは最後に占領予定の都市若しくは戦争用の砦などに逃亡したということだ。しかし、領都を捨ててまでするのか疑問である。ゴーストの監視網が広くなりすぎて数が不足しているが何体か都市へ向けて偵察に向わせた。


午前に入城したのに気がつけば日は暮れていた。夕食をとり部屋で資料に目を通してから就寝することにした。部屋の中には2人の寝ずの番をするメイドと4体の戦闘ジェネラルがいる。ミスリルの短剣を布団の中に忍ばせ、刀は枕元に置いた。今晩はお楽しみ無しの就寝だが、疲労のせいか気がつくと朝だった。


「閣下おはようございます。副官の方が至急の用件とお見えになっております。どうなさいますか?」


「おはよう。すぐに通してくれ。それとお茶を頼む。」


「承知いたしました。」


副官が朝から来るとは何事かと頭を切り替える。部屋に入ってきたのは隻腕だった。


「閣下、朝早くからすみません。早速本題なのですが、兵がられました。深夜の暗殺です。死者は246名で8箇所が襲撃されました。殺害は絞殺とナイフによる刺殺でどちらもプロの仕事です。町中にアサシンか隠密の類が多数潜んでいるようです。」


「やられたな。俺が今まで散々してきたことをそのまま返されたか。しかし読めんな。そんなちまちま一般兵を殺して何の意味がある?何が目的だ?放火でもしてもっと派手にやってもいいと思うが…とりあえず警戒はしろ。」


「はっ。それと使用人と一般人の尋問を継続してますが全員の話は一致しており、有力な情報はありません。これ以上は無用かと。」


「治療して使用人はそのまま捕らえておけ。一般人は補償金を渡して容疑がはれたと開放してやれ。殺しの犯人はすぐに捜せ。可能な限り捕らえろ。出来なければ殺せ。」


「承知しました。」



それから事件の真相も敵の動向も分からぬまま3週間が過ぎようとしていた。

犯人を捕まえることができず被害者は500名を越えていた。警戒を強めているので被害は減少しているが精神的な疲労は蓄積されている。


町は平穏を保っているがいつ戦闘が起こるとも分からぬ状態である。

事態が動いたのはそんなある日の昼下がりであった。


「閣下、敵の情報がつかめました。犯人は密偵です。こちらの密偵が殺され、敵の密偵が成り代わっていたようです。既に5名とも処分しましたがそれ以外にも仲間がいるようです。それで…シキさん・ナツさん・アキさんが負傷されました。重傷ですのでこちらに搬送しました。」


「あいつらが来たのか。それで偽者が分かったのか。すぐに治療するから案内しろ。」


3人は斬られたり刺されてたりして血まみれでベットに運ばれてきた。


「すぐに治してやるから待ってろ。」


「主様、あいつら上位の暗殺者だから気をつけて…私たちじゃ倒せないから」


「おいっ、しっかりしろ。おいおい、ウソだろ。目を覚ませ。」


回復魔術をかけ、人工呼吸に心臓マッサージをしたが5人いる兎獣人のリーダーのシキは死亡した。

俺は大切な奴隷を失った。ライラに子供をと言われていたのに、本人も希望していたのに…早くしておけば良かったと後悔ばかり押し寄せてくる。

妊娠していればここにくることもなかったかもしれない。


「主様、私たちはいつ死んでもいい覚悟が出来てるから。泣かないで。」


この世界に来てから初めて涙を流していた。

声をあげて泣くようなマネはしないが平静を保つことは出来なかった。


「やってくれたな。絶対に許さん。殺してくれと頼んでも地獄の苦しみ与えてやる。」


その晩から敵の暗殺は無くなった。俺はシキの弔いをしてからナツとアキと一夜を共にした。そして、ナツは妊娠することになった。まだ本人は自覚は無いだろうが魔力を込めたのだ。子供が生まれてくるまでに戦争は終わらせたい。


その数日後、監視網に敵軍が現れた。


あちこちから敵が集まりだした。町の北側から辺境伯軍・王国軍・周辺貴族合同軍・傭兵と5万以上の兵が現れた。本陣を北側に構えて町を取り囲むように布陣してきたのだ。


「戦闘準備をしろ。アルファーに町の中へ戻るように伝えろ。住民にも警報をだし安全なところに避難させろ。チャーリー大隊が間に合ったのが幸いだな。副官どうみる?」


「この町には貯えもありますが30万を超える住民がいます。おそらく兵糧攻めでしょう。防衛戦で敵をある程度潰してから撤退もしくは突撃がよいかと。」


「撤退はありえない。タイミングを見て突撃だな。夜間も警戒を怠るな。」


町を囲む城壁の上から敵を見下ろしていたが恐ろしい数である。

少しでも潰しておくしかないな。部屋に呼んだ指揮ジェネラルに意見を聞くとしよう。


「アルファー・ブラボー・チャーリー意見をききたい。この状況どう打開する?夜襲は可能か?」


「カズハオオイデスガ、モンダイアイマセン。ヤシュウヲカケレバセイカハデマス。」


「そうか。今晩、早速しかけるぞ。アルファーは北門。ブラボーは南門から時計回りに。チャーリーは町の警備を任せる。行軍で疲れてる今がチャンスだ。被害が出ないように一撃離脱で行くぞ。」


「カシコマリマシタ」


日が暮れると町の週は無数の炎が見える。敵が眠るような時間を待って攻撃を仕掛ける予定だがなかなか敵の活性が下がらない。相当に警戒しているようだ。


日をまたいだが敵の様子は変わらない。戦いの準備をしているようだがこんな深夜までやるか疑問だ。


「ペルセ様ー!攻撃が来ます!お逃げください。」


「なんだと!」


敵軍は包囲を狭めて火矢を放ってきた。街の四方八方からお構いなしに無数の矢を放ってきたのだ。

石造りが多いと言っても圧倒的な数の火矢が降り注げば大火事になる。

自分の国の国民、自領の領民がいてもお構いなし無差別攻撃を警告もなしにやってきた。


ドゴーン!バガーン!


突然真っ赤に焼けた鉄球が家屋に激突した。

城壁を飛び越えてきた鉄球は壁だろうと屋根だろうと関係なく破壊していく。破壊された瓦礫に引火して火が燃え広がる。


「隻腕!投石機か?」


「そのようです。住民がいるのに攻撃してきます。どうされますかこのままでは我々も、住民も全滅です!」


「全滅…あいつらそれが狙いか!ゲス共が!」


「どういう事ですか、閣下!」


「あいつら住民と街を道連れに俺達を焼き殺すつもりなんだ。この町を領主も国も承知で棺桶にしやがった!もし俺達が脱出してもこの攻撃は俺たちの仕業にされる。負けてもやったのは俺達だ!一般人を生贄にして、俺を使って王国を陥れる策まで考えったってことだ。」


「そんな…。」


「やるしか無い。各門から出る。アルファー、ブラボー予定通り行け!チャーリーは西門からだ!ヘンリル軍は南門へ出ろ!住民も南から逃がせ!最低限の人員でいいから誘導も行え!全滅するのはどちらか一方だ!やられるな!」


「閣下はどちらに?」


「俺は東方面だ!王国軍を血祭りに上げる!」


「ご武運を!では私も参ります!」


こうして深夜の大合戦が始まった。

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