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41 辺境伯領侵攻作戦2

街道の先に辺境伯軍が見えてきた。

先頭を進むアルファー大隊が僅かに本体より先行してすすむ。

戦闘になり進軍が止まれば後方から教会の私兵が追いついて来るだろう。


「アルファー大隊は進軍速度を変えずに前方の敵及び右側伏兵を殲滅。殿のチャーリー大隊は転進して教会の私兵を殲滅、そのまま聖都市キュリエまで戻り制圧して来い。制圧に一般住民や都市の被害は最小限に。ブラボー大隊は全体のフォローをしろ。」


左側は渓谷で右側は崖という街道の狭くなる逃げ場の無い絶好の待ち伏せポイントで侵攻作戦の緒戦が始まろうとしていた。


「間もなく戦闘開始だ!全軍戦闘態勢!」


一時間ほどすすんだところで崖の上から火の手が上がる。雑木林が燃えてる、山火事レベルだぞ。

スペクターがファイヤーバーストで伏兵が潜む辺りを範囲攻撃したのだろう、やり過ぎには注意して欲しい。


騎獣に跨がり敵の動きを見ていると、スケルトン達が重装歩兵の前衛めがけて突っ込んでいく。


「閣下、なにやら騒がしいで…なんですかその目?目が三つ有りますけど…」


「あぁ~言って無かったか。普段は出してないからな。これで遠くが見えるんだよ。夜も問題く行動も出来る。」


「それで夜襲をしょっちゅうやっているんですね。納得しました。かなり荒らしているんですよね。敵の戦線が後退していると噂を聞きました。それで、もう戦闘が?」


「ああ始まった。遠距離攻撃を中心に前方の部隊を展開させろ。死体は使えるものを剥ぎ取り渓谷に棄ててしまえ。行軍の邪魔だからな。後方は警戒だけでいい。」


「すぐに伝令を!後方は教会の私兵ですよね?回復魔術師が多数居ますよ。骸骨兵は回復魔術で消え失せるのでは?支援は良いのですか?」


「問題ない。前進を、優先しろ!」


崖の上で待ち伏せしていたのは弓兵と弩兵を中心とした兵だ。木や石の陰に隠れたこちらの通過を待っている。


俺は全く気付く事が出来なかったが監視のゴーストは森に入る所から見ていた。伏兵の武装を手振り身振りで知らせに来たが銃のような動きをするので驚いた。実際には地球のボーガンと機構は近いが別物の武器だった。

横に弓を張るのではなく縦に張っているのだ。弓を短距離用もしくは命中精度を上げるための改良だと推測した。

全て森と共に灰にしてしまいそうであったがいくつかサンプルを回収できた。

燃え盛る崖をすすんだ先で歩兵同士の戦闘になっているがスケルトン達が圧倒している。

盾兵を戦闘ジェネラル達が斬り伏せていく、鉄の盾ごとだ。ジェネラルの一部の持っている剣はミスリル製。敵国の貴族の屋敷や軍の幹部から押収した品々だ。もちろん正規のルートで買った物もあるが、高いうえに数がなかったのだ。


ジェネラル達が魔力を通せば鉄の盾でも防ぐことは不可能だ。

盾ごと斬られ腹部を開かれているもの、兜を真っ二つにされ喉元まで頭部が左右に斬られて崩れ落ちるもの。蹴られて吹き飛ばされて、なだれ込んでくるジェネラルに踏まれ頭部がつぶれ目が飛び出しているものなど様々だ。ジェネラルに続くようにウォーリアも攻撃しているが活躍の場はなさそうだ。


フルプレートの金属鎧にミスリル製武器を装備しているジェネラルであるが、装備の違い以上の戦闘能力の差が有るようだ。たぶん俺が戦っても勝てるかどうか怪しい。


敵は待ち伏せと挟撃で勝てると思っているようだが地力の違いと偵察で伏兵を潰したことが敵軍の敗因であっただろう。全滅するまで街道をアルファー大隊が追いかけ壊滅させた。敵も逃げ場がないのだ。自分で作った状況に自分が嵌った、想定外に。


想定外といえば教会の私兵たちであろう。追いかけていたはずの敵が正面から突撃してきたのだ。

教会の私兵といっても所詮は傭兵たちだ。

綺麗な装備で身を固めていても正規軍ほどの戦力はない。


「骸骨たちは回復魔術で消し去れる。回復魔術師たちを護衛しながら戦えばいい。前に出すぎるな。」


教会の回復魔術師は周辺に範囲回復魔術と個別にヒールを併用して作戦を展開した。魔術師の周りを一般兵が守りを固める。4・5人の魔術師に対して20名ほどが護衛に付きその前で盾兵が前衛で壁を作っていた。


「壁を抜けられたぞ。回復魔術はこのまま展開し続けて弱った敵から倒せ。もう少しで効果も出るはずだ。時間を稼げ!」


一般兵をスケルトン達は次々と倒していく。チャーリー大隊は戦闘ジェネラルとウォーリアの混合小隊ごとに展開して切り結んでいた。ジェネラルの倒した兵の隙間にウォーリアの槍が突き出されあばらを貫通した穂先が隣の兵のあごに突き刺さる。そのまま押されて穴を広げられ敵は崩壊する。囲まれ、突き破られ次々に敵兵が倒されていく。


「回復魔術師は手は出されていない。敵は回復魔術を嫌がっている証拠だ。もう少しだ、踏ん張れ!」


そんな指揮官の声はむなしく消え去り教会兵達は30分で回復魔術師以外殲滅された。魔術師たちは魔力が尽きるまで回復魔術を継続した。


「なんで効かないんだ。こいつらなんなんだ。司教様は回復魔術で浄化できるといっていたのに…どうして」


回復魔術師たちは困惑と絶望のなかスケルトンに捕縛された。誰もが分からない疑問の答えは簡単だ。


司教にウソを教えた


たったそれだけのことだ。仲間でもないのに自分の弱点をわざわざ話す馬鹿はいないだろう。思いつきで言った嘘を信じた司教も馬鹿だ。それを鵜呑みにして死んでいった兵達が少し不憫だ。


スケルトンたちには回復魔術師は捕縛命令を出していた。総数も少なく教会などに多くが所属しているので確保が難しい人材なのだ。領内の医療事情の改善に使う予定だ。無医村だ当たり前の世界だからな。


そのままチャーリー大隊は都市制圧に向った。たいした戦力も無いので簡単だろう。指揮ジェネラルは政治的な部分も含め統治も行ってくれる。俺の意志を汲み取り最適な処理ができる優秀な部下だ。将軍クラスとはたいしたものだ。


「ほぼ、終わったな。死体を処分しながらすすめ。敵は一部敗走したから気を抜くなよ。」


「了解しました。兵たちから回収した物はどうされますか?」


「このまま持っていく。送り届けている余裕もなからな。少しスピードが落ちているが野営予定地までいけるか?」


「日暮れまでには開けた場所までいけると思います。後方の骸骨軍が帰還していませんが宜しいのですか?回復魔術でやられたのでは?」


「回復魔術?あいつらに回復魔術は効かないぞ。弱点って言うのはウソだ。今頃は司教の首を刎ねに向ってると思うぞ。」


「…相変わらずですね、閣下は。裏切った町は滅ぼすのですか?」


「そんなことするわけ無いだろ、勿体無い。これから神でなく俺に仕えてもらうだけだ。もう尻も痛くなってきたしさっさと休憩しよう。腹も減ってきたしな。今日のメシはなんだろうな。」


鬼兵旅団にもヘンリル軍にも指揮官が配属された為にあまりやることがない。

日がな一日魔車でくつろいだり、騎獣で景色を眺めたりしているだけだ。


領主と気軽に話してくれる者も少なく退屈なのだ。

次の町で面白いことが起こることを期待している、上に立つ者は意外と孤独だ。


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