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38 ヘンリル領戦役5

トレイン


モンスターを引き連れて逃走して別のプレーヤーに被害を与えるゲーム内の迷惑行為だ。

時には倒すことの出来ないプレーヤーを殺すための手段ともして使われる。


今回は一晩で増やしたスケルトン300体を使いひそかに大森林でモンスターを集めさせていたのだ。

モンスターを使役することは出来ないけれども誘導することは難しくない。


基本的に軍隊はモンスターと戦闘することを目的としていない。大森林に隣接している辺境伯軍といえども多少の経験はあっても例外ではないだろう。兵の数が少なければ増やせばいいのだ。しかも苦手な相手を呼んできて。


スケルトンに任せたので成果は半信半疑であったが、最悪の場合でも伏兵として使えればいいかと考えていたが想像以上だ。


戦場の内部ではスケントンが蹂躙して、上空からはゴーストが魔術を放ち、外側はモンスターが暴れまわる。


こちらの損害は想定の範囲内だが、敵の損害は六割を越えてきた。もう勝利は目前だ。


「最後の相手はお前だ次男坊、覚悟は出来ているな。」


「良くもここまでやってくれたな伯爵。貴様の首だけは持ち帰らせてもらうぞ。」


敵の中を突き進み大将までやっとたどり着いた。魔獣戦車に乗った敵将と護衛の騎士たちを倒せばこの戦役も終了だ。騎獣をすすめていくと騎士が切りかかってきたので顔に刀を突き刺してやる。


「人が話をしているのに邪魔してくるとは躾がなってないな。それにしても、残り少ない余命は大事に使えと忠告してやったのに無駄に使うとは。無駄なおしゃべりもこれで終わりだな。死ね。」


騎士を斬り伏せながらに近寄る。大将の次男坊も戦車からおり剣を構える。あまり見かけることの無いサーベルのような細身で片刃の直刀を構える。かなりの鍛錬を積んでいるのだろう全く隙の無い構えだ。

こちらも正々堂々と相手してやろうと刀を納めて居合いの構えを取る。


「勝負を諦めた訳ではなさそうだが何故刀を鞘に戻した?」


「これが俺の構えだ。次に刀を抜いた瞬間がお前の最後だ。さあかかって来い。」


「舐めるなよ。死ぬのはお前だー」


相手は一直線に踏み込み胸の前で真横に構えた剣を大きな半身の踏み込みで突き出してきた。

俺は腰を落とした構えよりさらに肩を下げるように体をひねり、潜り込むように踏み込み相手の剣を下からかわしながら刀を抜き放った。


刀についた僅かな血を払い落として鞘に収める。振り返ると剣を握ったまま伏せるように倒れている。肩が僅かに動いているのでまだ生きている。近寄っていくと横に向いた顔が見え、目が合った。


「オレヲタオシテモオヤジハタオセンゾ。アノヨデオマエガクルノヲマッテイルカ…」


「たいしたもんだよ、俺に傷をつけるとは。安心しろお前の血族全員送ってやるから」


死んだ次男坊の持っていた剣を拾い上げた。相手の力量もたいしたものだがこの剣も業物だろう。

俺の耳たぶに僅かだが血が出る傷をつけたのだから。


見た事の無い落ち着いた金色のような色をした剣だ。刀身からは魔力を感じるからミスリル以外の魔力鉱物で出来ているのだろう。そのまま貰い受けることにした。


そして大将の首を切り落として騎獣に乗り高く掲げる。


「大将の首はとったぞー。もう無駄な抵抗はやめろ。ヘンリルの勝ちだー。鬼兵旅団は抵抗するもの以外は攻撃を中止せよ。」


俺が大声で叫ぶと一斉に視線が集まる。兵士たちは敗北を知り、武器を捨て座り込むもの、そのまま敗走するもの、抵抗を続けるものと様々だが残った指揮官たちは撤退を指示している。


しばらくするとわらわらと敵兵は逃げ出していく。輜重部隊の人員も含めれば1万以上はいる兵達が武器も防具も捨てて逃げ出し始めた。


俺は逃げる者は追わずに投降したものを集めた。全部で2000名ほどだが負傷兵と奴隷兵ばかりだ。

負傷した兵には治療を施し奴隷たちは所有権が変更できる者はその場で切り替えた。

投降した兵とスケルトンに物資や武器の回収を命じた。

トレインしたモンスターもすぐに処分して戦後処理に入った。


残ったスケルトンウォーリア1400とゴーストを戦いが終わって2時間ほどして一段落したところで追撃部隊として送り出した。


「敵を追撃しろ。そのまま敵の領都まで進撃して包囲しておけ。反撃されたら全力でやり返せ。では行け」


そして投降してきた中で一番地位の高い貴族の子息を呼び出した。


「お前ら投降兵は捕虜として扱う。これから死体の埋葬をしろ。それが終わったらスケルトンと共に物資をヘンリル領まで運べ。抵抗する者は容赦なく殺す。分かったな。」


「承知しました。」


スケルトンは全部で600まで減ってしまったが十分だろう。ゴーストとあわせて監視と作業を任せた。


連れて来ていた御者とメイドはそのまま帰還するように指示をだした。


この場の処理は全て任せて俺は残してきた兵のいる伯爵領に飛行で戻ることにした。


因みにこの平原の戦闘で


鬼兵旅団 スケルトンウォーリア600 スケルトン1200 ゴースト700

辺境伯軍 死者13000 捕虜3000 逃亡兵11000(輜重部隊含む)


の被害が出た。こちらの損害も小さくはないが敵の被害の比ではない。

完全勝利だ。



血まみれ、泥まみれになったボロボロの兵があちこちで寝ていた。

飛行で戻った敵の伯爵領に着いたのは深夜になってからだった。


「おいっ、大丈夫か!負傷した者はすぐに治療してやるからな。重傷者から連れて来い。」


「伯爵閣下!ご無事で!そちらも終わられたのですね。こちらも辺境伯軍を追い返しました…」


「おいっ。お前腕が…大丈夫か。じっとしていろ、今すぐ治療するが欠損までは治せない。すまない。」


駆け寄ってきた指揮官の奴隷兵は右腕が二の腕先から無かった。血まみれの布で止血していたがひどい状態だ。俺の回復魔術は大概の傷や病気は治せるが部位欠損は直せないのだ。


3500名いたはずの兵は1000名ほどしかいない。治療をかけた指揮官から話を聞く。


「捕虜は協力したのか?」


「はい、隊長がほとんどの者を説得しました。ヘンリル領での保護を条件にしましたので彼らとその家族をヘンリル領に移住させてやってください。」


「分かった。ところでその隊長はどうした?」


「最初から最後まで先頭で戦いました。しかし…」


「そうか分かった。死んだ者の家族も含めて俺が面倒をみる。あとで名簿を作っておいてくれ。それで敵は?」


「伯爵のやり方を参考にして不意打ちや闇討ち、トラップなど作ったりして半分以上を倒して撤退させました。」


「そうかご苦労だったな。お前たちのおかげでヘンリル領は守られた。すぐに全員を治療してわが領に帰ろう。帰ったら辺境伯領を制圧するために侵攻をする。お前たちも着いてこい」


「はい、全員お供させていただきます。」


治療しながら話を聞いていくと、支援部隊の者も戦える者は戦闘に参加して返り討ちにしたようだ。

多くの損害を出したが本当に助かった。彼らの死にはしっかりと報いなければならないだろう。


兵の治療をして翌朝に帰還するために動き出した。

彼らは領内の町で静養と辺境伯領侵攻の準備を指示して俺は一路領都に戻ることにした。

全ての討伐軍を倒すのに一月近くかかってしまった。その間に領都では侵攻の準備が着々と進められていた。


気がつけば暑かった夏の季節は過ぎ去りまもなく冬を迎えようとしていた。

ワイングラスを持ちながら自室のバルコニーから領都を眺めていると肌寒い風が吹いてくる。


「これから辺境伯領へ侵攻をするけどスケルトンの準備が出来ていないし、モンスターを狩る基地の整備なんかをしながら少しずつ進めるか。冬の軍事行軍は危険もあるからな。」


秋の収穫の季節はやることも多いし労働力も足りないので春に侵攻を開始することを皆に伝えてそればでは軍備の拡充や情報集と懐柔の策かけることにした。しばらく疎かにしてしまった領主の業務を冬の間に進めて。個人的に鬼兵旅団の編成をすることにした。



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