表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/81

37 ヘンリル領戦役4

「軍使の方々、良く来られた。たいしたもてなしは出来ないがかけられよ。それで本日はどういった御用向きなのかな。」


「失礼します。使節の受け入れ痛み入ります。当方大将の辺境伯が次男のクレアデホ・ポート・フルバネス様の名代としてまいりましたクリス・リーデスモと申します。失礼ながらお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」


「これは失礼した。ヘンリル領の領主を務めるペルセ・アース・ヘンリル伯爵と申す。まだ就任したばかりでご存じないのも致し方ないことです。短いお付合いになるかと思うがよろしく頼む。こちられ来られたのは降伏の勧告であろう?」


さすがに軍使たちは驚いているが一瞬で元の顔つきに戻る。我が陣まできてスケルトンの軍団の間に出来た道を通ってきただけの胆力はさすがである。あまりに異様過ぎて俺だったら恐くて帰るのによくも来たものだと感心していた。


メイド達がお茶と茶菓子を出す。茶菓子は高価な砂糖を使ったクッキーだ。王都でこっそりと買って来ていたものだ。こっそりといっても大人買いだけどね。


「伯爵とは知らずご無礼いたしました。なにとぞご容赦ください。用件については降伏の勧告で間違いありません。異形の軍をお持ちとはいえ戦力差は明らかです。降伏いただければ寛大な処分をお約束いたしますのでご降伏ください。」


「御気使いには感謝申し上げるがお断りいたします。私にも守るべきものがありますので引くことは出来ません。逆に私からも勧告させていただこう。辺境伯本人以外も一族郎党および主だった家臣も一切合財皆殺しにして辺境伯領は全て私の領土といたします。残り僅かな余命を無駄に使うことなく有意義に過ごされるようにお伝えいただけるかな。」


当初の計画は必ず遂行させてもらう。やるからに余計な情けをかけずに徹底的にやらなければ後で痛い目にあうのは自分である。


「それは聞き捨てなりませんな。明日、後悔しても知りませんぞ。」


「無用な心配だ。それで明日の朝から正々堂々正面から踏み潰せばよいのかな?こちらは今からでも真夜中でも構わないが希望があれば聞いてやろう。」


「話し合う余地は無いようですね。明日の日の出から1時間後に雌雄を決するとしましょう。よろしいですかな?」


「受けてたとう。次男坊によろしく伝えてくれ。」


帰っていく軍使たちを見送りながら敵の軍勢を見渡す。


多数の魔獣を連れてた騎獣兵部隊・金属の鎧を纏った重装歩兵・魔車を改造した古代戦車部隊

・長槍部隊・弓矢・魔術師の遠距離攻撃部隊と質の高い、これまでにはあまり無かった充実した装備の軍だ。

おおくの奴隷もおり、支援部隊もたくさんいる。輜重部隊と思われる魔車がひっきりなしに陣に出入りしている。全部で4万を超えるのではないかと思われる大軍勢だ。まるでひとつの町のようになっている敵陣を見ながら少し焦っていた。


こちらは俺以外は御者が6名にメイドが5名しかいない。スケルトン達は3500体に隠してあるゴーストが1300体である。明日は敵の装備との相性によっては厳しいかもしれない。

少し準備をしておくことにした。


夜になり俺は奴隷達と一緒に食事を取る。

三台の魔車につけられている照明に照らされた仮設の机にスープやステーキが並ぶ。今回の行軍中に作り方を教えて好評になった熱々のピザもどきも並んでいる。チーズさえあれば完璧なのだが…残念だ。


「閣下、奴隷と一緒に食事と言うのはお止めになられた方がが宜しいのではないですか?」


「1人で食べる飯はつまんないからね。皆堅苦しくするのはやめよう。ほら、どんどん食べて。腹が減っては戦は出来ぬって言葉知らない?それに貴族になる前からのメンバーだろ?」


「そうでは有りますが、今はもう伯爵様なのですから。」


「1人で敵に突っ込んでいくような貴族はいないよ。単なる傭兵とやってることは変わらないさ。そうそう、さっき大森林で狩りした時についでに木を切って簡易の風呂作ったから後でみんなも使ってくれ。ここ数日はゆっくりと風呂も入れなかったからな。のんびり夜空を見ながら入ると気持ちいいぞ。酒ももっと持って来て飲め。」


しばらくは緊張がありつつもワイワイと食事をした。全員若いから楽しいし、こういう場でしか聞けないこともたくさん聞ける。俺の側付きになると美味しい食事ができると人気職だそうだ。1人のビーストのメイドが酔っ払って子供が欲しいと服を脱ぎだしたりして面白い宴会になった。

メイドたちに妾になりたいやつなんかいるのかと思って聞いたらほぼ全員希望だそうだ。人生の一発大逆転のチャンスだそうで今回も希望が多くて人選の際に大変だったらしい。


全然知らないところで大変なことになっているようだがお手つきは無しだ。ライラに本気で起こられた話をしたらメイドには18名も19名も変らないと…みんな強気だ。御者達は羨ましいが大変なんですねと同情顔だ。


のんびり風呂に入り魔車で寝る。

兎獣人の3人は戦後処理の支度や防衛線の準備や指揮のために領内に残してきた。

今回の戦いはあまりに危険なので最低限の人員しかいない。


日の出の少し前に起こしてもらい準備を開始する。日が昇り平原に両軍が対峙する。


敵は全面に重装歩兵が大きな金属盾を並べその直後から長槍隊が構えている。よく映画で見るような配置だ。背後には歩兵や遠距離部隊が控えているのだろう。


対するこちらは先頭に俺が立ち、背後にスケルトンウォーリアが2000名並びその後ろにスケルトンが通常武装と弓装備ペアを組み並んでいる。持ってきた弓は全て持たせた。出し惜しみは無い。単なる勘ではあるが今回の戦いに明日は無い。今日の一戦で勝負は決まるだろう。


「全軍前進」


にらみ合いに意味は無いのでこちらから進撃していく。

こちらの動きに呼応するかのように敵軍も前進を始めた。


敵の前衛の壁以外も射程に入る距離まで近寄ってきた。右手を軽く上げ停止する。


「全軍停止。防御体勢で待機。長弓隊は射撃を開始しろ。矢が無くなるまで撃ちまくれ」


こちらは改造した射程の長い弓を装備している敵の矢が届かない距離からでも攻撃が可能だ。

1000本の矢が全く同じタイミングで次々と放たれていく。しかし敵は頭上に盾を掲げて傘のようにして矢を防いでいる。もちろん全部は防げないから倒れているやつもいるだろうが前衛には殆ど影響がない。革鎧や木製盾ぐらいは貫通するホーンラビットの角で作った特製の矢も金属にははじかれる。


20射もしたころには敵からの反撃の矢が放たれてくるが俺は刀で切り落としていく。一応魔闘気も全開で発動してる。今では常に発動している魔力循環だけでも十分だが油断大敵なので最初から全開だ。


敵は弓だけでなく魔術も撃ってくるが俺にもスケルトンウォーリアにも効果は無い。敵は少しずつ接近してくる。両軍の距離が200メートルぐらいまで近づいたところで俺は走り出す。


敵の前衛の目の前まで来て土の魔術を発動する。


「ストーンウォール」


目の前に大きな石の壁ができる本来は防御用の魔術だが今回は違う。

刀で壁の下の部分を横に数回斬り敵に向って壁を蹴る。


根元の切れた場所を基点に壁が敵に向って倒れていく。傾いていく壁を見ながら横にもう1つ壁を作り同じように蹴り倒す。


ドォゴーン!


大きな衝撃音とともに土煙が舞う。自慢の精強な重装歩兵は一瞬にして瓦礫に押しつぶされた。


「スケルトンたちよ蹂躙しろ。ゴーストも出撃だ。」


壁の残骸を橋の様にして敵軍の中央部分にスケルトン達がなだれ込んでいく。

一気に中央突破をして切り込んだが中で待ち受けていた兵が応戦してくる。まだ生き残っている前衛が中央を囲むように左右から包囲をしようと動いてきた。


しばらくすると両軍入り乱れての大乱戦になっていく。

ゴースト達が上空からさまざまな魔術を放っていくと敵軍も魔術を放ち撃墜していく。弓を回避して飛び回っていても何本も当てられればゴーストも倒されてしまう。足止めにぶつけたゴーストで対処法を見つけていたようだ。スケルトンウォーリアも剣を振るい次々に敵を屠っていくが一体に対して複数で囲み後方から近寄りメイスや棍棒で殴られ足の骨を砕かれてから滅多打ちにされている。腕を砕かれ、頭部を砕かれ少しずつではあるが倒されている。


両軍の矢が飛び交い、怒号聞こえる戦場で俺は重装歩兵たちを斬り先に進む。あまりに敵が多いのでストーンウィールで壁を造り敵を分断したりしながら、徐々に敵の大将に向かって進んでいく。


「伯爵さえ倒せば勝利だ。手柄が欲しいやつはあいつを殺せ」


敵は俺めがけて押し寄せてくる。

正面からドワーフが戦槌を走りこみながら振り下ろしてくる。半身で踏み出し体捌きでかわしながら胴を斜めに切り裂く。振りおろされた戦槌を二つに切り分けられたドワーフから拾い上げ。後方から槍を突き出してきたビーストの顔に横から殴りつけると頭部がはじけ飛んで周囲に脳みそをぶちまける。

左手に持った戦槌を魔獣に乗り指揮しているエルフに向って思いっきり投げると胴体に持ち手が当たり吹き飛んだ。すごい勢いで飛んでいったエルフは生きていないだろう。投げた戦槌は数人を巻き添えにして地面に転がった。


次から次に向ってくる敵を蹴散らしていると後方からの矢が止んだ。振り返って確認するとずいぶんと進んでいたようで遠くにスケルトンが見える。スケルトンは反対方向に向けて矢を放っていた。敵の騎獣兵が戦車と共に回り込んで後方から攻めてきていた。


敵の騎獣兵はスケルトン1500よりも少ないので対処できるだろう。弓矢でばたばたと騎獣の上から敵兵が落ちている。完全に包囲されてしまったがこちらの損害はまだ1割を超えたぐらいだ。大して敵は3割以上の損害率であろう。いまだに兵数差があるので押してくるが損害率で見れば敵は壊滅といえるレベルだ。


もう一押しすればこちらの勝ちだと思っていたところで20名ほどの騎獣兵が現れた。紋章入りのプレートアーマーを身につけマントをした騎士だ。強さはその辺の兵士と格が違いそうだ。

一般の兵をどんなに戦わせても俺を倒すことは出来ないと思って、数ではなく質をぶつけてきたのだらう。


走ってきた来た騎士の一団に向けて俺も駆け出し、飛び蹴りを先頭の騎士の腹に食らわせるとアーマーは凹み血を吐きながら騎獣の後方へ転げ落ちていった。騎獣に跨ると無理やり左手に握った手綱を引いて反転して周囲の騎士に切りかかる。腹を蹴って走りながら右側の騎士の首を刎ねていく。駆け抜けるとまた反転して後方から騎士を追いかけ背中から突き刺し力任せに横に放り投げる。次の騎士の首に刀の柄で殴りつけるとバランスを崩して倒れ落ちた。


半分以上を始末したところで敵が逃げようと進路を変えたのでそのまま追う事にした。騎獣の上から全体を見渡すと戦況が把握できる。周辺はスケルトン達が圧倒的に有利になりつつあり敵兵たちを蹂躙していた。はじめ苦戦していた重装歩兵に素手でつかみかかり投げたり、剥ぎ取った兜で撲殺したりとひどい有様になっていた。


そして敵の左翼外周部も大混乱になっている。平原にはいないはずのモンスターが敵兵をなぎ倒しているのだ。ファイトシープに一つ目オークにレッドウルフなどさまざまなモンスターが兵士を食い殺しているのだ。昨晩仕掛けた策が上手くいったようだ。


戦場を見渡しながらあちこちにフレイムバーストを放ちながら騎獣を走らせ敵本陣を目指す。

レベルの上がった魔術を最大火力で密集地帯に放つと絶大な威力だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ