34 ヘンリル領戦役
ライラや部下に王都とハロルゼと貿易都市を任せえて飛行で一気に領地に戻る。
今回はハロルゼに戻る時間は無かった。ゴーストを使った偵察網に敵の動きがあったからだ。
ゴーストはしゃべることは出来ないが質問をすれば手振り身振りで応えてくれるのだ。
ヘンリル領は敵の領土を奪った部分が殆どで国境の敵公爵領・その横の伯爵領・最後に半分を接す辺境伯領と大貴族と隣接しているのだ。全敵領土に対して継続して盗賊行為を行った。軍の部隊に行軍中に待ち伏せしてゲリラ戦を仕掛けたり、基地の兵舎に放火し、庁舎にいる役人を暗殺したりした。
それ以外にも麦畑をスケルトンに刈り取らせたりゴーストに放火させたりもした。現金はもとより物資は武器・防具・魔道具・食料までありとあらゆるものを強奪して奪えない物は破壊した。
おかげで資金と物資は充実していた。盗賊と言われても仕方がないがこれが戦争だ。
ただし、民間人には危害を加えていない。
王都に来ている間はゴーストが闇討ちを毎日あちこちで繰り返しているだろう。
そこまでされたら相手はどうなるか…簡単だ。
ブチ切れる!
でそのときが来た。
各領地に大軍だ編成されているようだ。
ゴースト偵察網によると現時点で公爵領が1万・伯爵領が1万3千・辺境伯領は2万も集めているようだ。
公爵領はさすがに力がある。前線を維持しながら討伐軍をこれだけ用意できるのだから。
ただ大森林で鍛えた兵を持つ辺境伯軍が一番厄介だろう。
領都の城の会議室に家臣を集めた。
「これからヘンリル領討伐軍が侵攻してくるから迎え撃つ。敵は総数で最低4万5千の兵力だ。心してかかれ。」
「ボス…じゃなくて閣下。それはもう無理じゃないでしょうか。うちの兵力は2000ぐらいですよ。20倍の敵をどうやって退けるんですか?援軍はいつ到着するんでか?」
「おいおいギャングのボスが何援軍とか降伏とか言ってるんだ。全員が死なずに30人も殺せば終わりだろうが。」
「…」
全員で暗い顔すんなよ。冗談なんだから。
「冗談はさておき…基本的には俺がやってくるからお前らは通常業務を頼む。支援部隊だけ管理してくれ。支援部隊といっても単なる運搬だがな。戦闘用に奴隷1000名をつれていくだけだ。それに必要な輜重部隊と捕虜や略奪品を運ぶ用意だけさせてくれ。それと武器は1000張の新型長弓と10万のホーンラビットの矢を頼む。」
「というと閣下の骸骨軍を使うのですか?」
「そういうことになるな、生産力が落ちるからその辺の調整を頼む。それに敵国に売る農産物や道具類の生産を急がせろ。根こそぎ奪って高値で売りつけてやるから。儲かるぞ。」
「いい笑顔でとんでもないこと言いますね。骸骨たちがバカ強いのは知ってますが相手は正規軍ですよ。上手くいけばいいですが…手配の方はお任せください。これまでの奴隷たちの行わせた領内の整備で戦前以上になってきてますので。」
「ちゃんと稼いでいい領地にしないと可愛い嫁さんに怒られるからな」
「はっ?王都に行ったら奴隷じゃなくて嫁を攫ってきたんかよあんた?」
「おいおい、まだ数日だけど伯爵にタメ口聞くなよ。ぜんぜんいいけどさ。それに正式に嫁だぞ。伯爵が独身はダメなんだとよ。で第一婦人はまだお子様の第8王女のライラだ。子供だけど女は女だね、愛人多過ぎって怒られた。恐かった~」
「はああああああああ。ホントウノハナシ?」
「嘘みたいだが本当だ。それにライラは関係なく、どの道戦いは避けられん。さっさと戦争なんて終わらせるぞ。それと言い忘れたけど全て潰して弱ったところで辺境伯領は全てもらいに行くから戦後の統治も頼むな」
「そんな無茶ばかり。死んじまいますよ。ギャングが過労死なんて真っ平ごめんですよ。」
「そういって死んだやつは居ないよ。出発は三日後だ。俺はそれまで大森林にウサギちゃんたちと篭るからよろしく。」
窓から飛び出して兎獣人の待つ新たな大森林の拠点に向う。後ろで大声で見送ってくれるなよ恥ずかしい。
「戻って来いやバカ領主ー」
褒めんじゃねーよ、照れるから。
本心で貴族よりこいつらの方がやりやすいと思う。
◆
三日後
領都に向うのはスケルトン2000体とスケルトンウォーリアが2000体。
4000体の完全武装のスケルトンが5列縦隊で一糸乱れぬ行軍は壮観である。
領都では魔車50台に奴隷兵1000名が整列して待っていた。
「ご苦労。準備はいいな?」
「はい、閣下。要望以上に用意しています。」
「それにしてもこんなに魔車有ったのか?」
「ハロルゼから大量の物資や人員とともに送られてきましたよ。それに王都からも。武器も大量に用意しましたし支援部隊も万全です。魔車も強化もして有りますから簡単には壊れません。閣下の箱魔車に金貨も積んであります。必要でしょ?」
「さすがだな。必要な物は適時連絡する。連絡手段は少し変わっているがびびるなよ。」
「もうびびる心の余裕は無いですよ。閣下、くれぐれもお気を付けください。安全な場所で待つなど許されませんがご無事の帰還をお待ちしてます。支援はお任せください。ご武運を。」
「お前はお前の仕事をこなせ。ここがお前の戦場だ。では行ってくる。全軍進軍開始せよ。標的は公爵軍だー」
こうして5000の兵を引きいて出撃を開始した。奴隷兵は200名が騎獣に乗った騎兵で残りは魔車に搭乗している。少し無理はあるが行軍速度や疲労が全く違う。ここまで手配してくれているとはありがたい。
姿は隠してあるがゴーストも戦闘用が1000体いるので正確には6000だ。しかし今回は数や質ではない、情報戦だ。ゴースト情報網と俺の飛行や遠見を使ってのだ。
まともな地図も無く、無線も携帯も衛星もレーダーも無いこの世界の情報とは限られているのだ。
隠密や偵察部隊の目を走って伝えるのがこの世界の基本だ。現代の戦術を見せてやるよ。
敵に発見される前に壊滅的な初撃を打ち込んでやる。
◆
2日の行軍で公爵領に入った。街道を進み通過する村には余計な事をすれば皆殺しと脅しをかけながら進む。スケルトンの異様な軍に抵抗するものなどいない。しかも強化された真黒の魔車の大行列だ。夜に目立ちにくい仕様なだけなのに不気味なんだよな。
3日目の夜には第一目標地点に到着した。何度か強奪や夜襲をした軍事拠点のある町だ。公爵軍の30%ぐらいはここに集結してして進軍するようだ。全軍が合流前に各地の軍を編成中の段階で潰すのだ。合計は多くても集合して野戦などしなければ数の利はない。一箇所に全軍がいるわけではなく各地で集まるのだ。大軍の行軍は難しく時間もかかるからだ。もう数日すればここの軍も準備を整え合流地点に向けて出撃するだろう。その前に壊滅させる。
町から5キロほど離れた林に簡易の陣を作る。
「俺は夜襲してくるから奴隷兵は全員ゆっくり休め」
「閣下それは出来ませんよ。閣下のみ行かせて奴隷が寝ているなんておかしいですよ。」
「足手まといはいらないんだよ。命令だ」
「ですが…」
奴隷兵の隊長格達が意見をするがここはスケルトンとゴーストのみで行く。
夜目が利かなければ戦力にならん。暗視ゴーグルも無いのだから。
敵の基地の周囲の監視はゴーストが排除しているので敵には気付かれてはいない。
町に静かに近づいていく。そして兵舎のある場所へ300体のゴースト達が一斉にファイヤーボールを打ちはなっていく。一体が20射程したところで合図を送る。俺は上空で指揮を執っている。火事で兵達が着の身着のまま外にとび出てきたのが確認できた。
その兵士たちのいる場所に向けてスケルトンの弓兵1000体が一斉に長弓を引き絞り放つ。位置を調整して第2射を放つ。文字通り矢の雨が敵に降り注ぐ。さらに生きている敵の多くいる場所に向かい第3射を放つ。6射撃ったところで敵がこちらの位置に気付いたようだ。
既に半数以上の被害を出して壊滅といってもいいが塀や門のところに兵士は矢から逃げながら集合してくる。
ひそかに潜ませていたスケルトンウォーリアのいる門へ高速で飛んで行いく。スピードに乗った勢いのまま刀で門に一刀を叩き込む。次々に縦横に何度も斬るとすぐに門はバラバラに崩れた。
壊れた門を潜り抜けて目の前の敵に斬りかかる。目の前の敵兵は右肩から入った刀が反対側の腰から出てくる。血と内臓を撒き散らかして倒れる。左にいた兵を蹴ると腰が折れて曲がってはいけない角度に体を曲げながら仲間たちにぶつかっている。俺に続いて突入したスケルトンがどんどん斬り伏せていく。斧で叩き潰す。ゴーストがファイヤーボールで丸焼きにしていく。
3000居た敵は攻撃開始から1時間もかからずに全滅した。
本当の全滅で皆殺しにした。ゴーストを戦闘用に500体召喚して戦力を強化する。解体していられないのでスケルトンは無しだ。ゴーストに奴隷兵を100人呼びに行かせた。
奴隷兵が来るまでに戦利品を集める。軍所有の魔車に騎獣、武器に食料などだ。持ち出せる物は全てもらっていく。住民達には一切手は出さないが役人は別だ。役所に乗り込み会計書類や現金・金品なども徴発をして役人を処分する。
役人を殺すことで統治が混乱して敵の痛手になる。建物は一応残しておく。いつか手にする日が来るかもしれないからだ。
奴隷兵が200名ほど来たので魔車の荷詰めや役所の捜索手伝わせて戦闘終了から2時間で撤退だ。
ゴーストを30体残してこれから集めるやつらへの置き土産にする。発見されにくく倒されても何も残らないから使い捨てにはスケルトンより有用だ。
一晩で3000名以上殺害して作戦完了である。陣地に戻り不要なものを領都まで輸送させる。魔車は10台を送り、新たに10台を加えて騎兵も50騎程増やせた。
次の拠点に向けて出発する。明日の夜には接近できるであろう。




