29 参戦準備
「ペルセよ良く来てくれた。まぁ、かけてくれ。町の建設は進んでおるようだな。物資も大量に入ってきておる、よくやった。今後も頼むぞ。それと遅くなったがお主への褒美が用意できたからな。これで良かったか?」
領主の後方で立っていた奴隷が一斉に一歩前にでた。
「ありがとうございます。後程ゆっくりと選ばせていただいても宜しいですか?」
領主は苦笑いをしながら
「選ぶ必要はない。全てお主の物じゃよ。それにしても変わった趣味をしておるなお主は。ワーロックとエルフの価値観の差なのじゃろうな。」
「そうですか?でもまぁ、遠慮なく頂戴致します。」
奴隷達はここで退出していった。帰りが楽しみだ。
「それで領主様、彼女達を集めてまで私を呼ばれたのは戦争の件でしょうか?」
「そうじゃ。まずお主の商会に対する疑惑がある。敵国に通ずる者と取引しておると主張する者がおるのだがどうなっておる?」
「知りませんと言い張る事も出来ますが…疑いが有るものと取引しております。確実な証拠は有りませんが間違いないでしょう。無害な商品に限って割り増し料金で販売してます。相手の戦費を奪っていますので戦争に貢献していると自負してますが。」
「…そうであるか。敵国に物資を渡すのは売国行為ともいえるが、戦費を浪費させるのも戦略の一つともいえるか。分かった、お主を信頼してこの件は嫌疑なしとする。それでわが国は現在厳しい状況にあるのだが協力はしてもらえんか?」
やはり参戦の要請か。疑いをかけて疑いなしにしたが信頼で縛ってきたか。領主が信頼しているのにそれに応えないとなればかなりまずいだろう。どちらにしても参戦せざるをえないか。
「商人に参戦させなければならないとは噂通りの状況のようですね?奥様のご実家に援軍が必要なのですか?」
商人は情報が命だ。勿論軍事においても最重要となる。独自に調べてはいた。
「どこまで把握している?」
「沿岸部や中央部の砦を中心にしていた戦線が大森林よりにまで拡大していること。拡大した戦線を維持できずに領主が対応しているがジリ貧で崩壊寸前でること。崩壊後には国の奥へ入られて敗北濃厚になること。奥様のご実家の余命は後わずかと言ったとこでしょうか?」
「その通りじゃ。お主は飛行できるから魔車で十日以上かかる前線でもすぐであろう?なんとかしてもらえんか?」
「それは領主様では無く国のすべき事と思いますがその余力は無いようですね。」
「左様じゃ。お主に頼む事では無いのは重々承知しておる。その上で頼まれてはくれんか?褒美も用意させる。」
単独で突っ込んで戦況をひっくり返せとは…出来るけど無茶言うよね。
「出来るか出来ないかで言えば出来るでしょうが…単独は厳しいですね。ちなみに褒美とはどのようなものでしょうか?」
やる価値がある物なら良いけどな…
「国から爵位と領土の授与が有る。子爵位は約束しておこう。それと領土は小さいが新たな町からハロルゼ一帯を儂から、妻の実家からも同じように前線ではあるが大森林寄りの領地を約束する。向こうも受け入れておる。」
「前線の領地ですか…拒否権は有りませんよね?」
「その分をここで稼いでほしい。それに奪った敵国の領地や戦利品は全てお主の物じゃ。報酬や爵位も戦果次第で増えるじゃろう。」
「分かりました。では私の軍も動員しますので通行証など便宜をはかっていただけますか?私は単騎で先行しますが支援部隊もあとで出したいのですが宜しいですか?」
「当然じゃ、出来る限りはする。資金も用意する。それにしてもお主の兵力とはどれほどなのじゃ?」
「詳しくはお話出来ませんがエルフや獣人換算すれば万の単位ですね。今回は商売に影響のない範囲なので兵数では100程送ろうかと思います。」
「それはこの我が領軍よりも上と言うことか?」
「試してみますか?」
笑ってみせるがスライムより厄介だぞ。
「冗談はよせ。しかし、100と言うと少なくないか?」
「強さの質が違いますし、速度を重視しますので。現地で奴隷を造るために呪術師の手配をお願いします。その他は金で何とかしますよ。」
「分かったでは宜しく頼むぞ。これに必要そうな物は入れてある。まずは領主の屋敷に向かうが良い。領主はヘントシケ・ローアン・リンドガルド伯と言う。宜しく伝えてくれ。」
「承知しました。準備を整え次第向かいます。出発前によった方が宜しいですか?」
「その必要はないが連絡役をここに寄越してくれるか。何かしらの連絡手段ぐらいは用意しているだろ?」
当然だが追加の要望はごめんこうむりたい。せっかくの奴隷を愛でる暇なくハロルゼに戻る事になった。箱馬車に奴隷達を乗せて、俺は1人寂しく飛んで帰る。
◆
ハロルゼで全幹部を召集した。
ハンズとギャングの元ボス2人の雑務・奴隷・治安担当
アリーシャとその部下2人の娼館・飲食関係担当
奴隷の商業担当5人
輸送担当としてリグ
全員で12人が集まった。
「みな忙しい中ご苦労。今回は戦争に参戦する事になった。しばらく留守にするのでその間の会議だ。ハンズ頼むぞ。」
ハンズの進行により詳細を説明して今後の対応を話し合う。今回の参戦で防衛した場合には貴族になることに一同喜んだ。
アリーシャ以外は全員奴隷だが奴隷らしい扱いはしていない。むしろ上位の身分階級にいると言っても良い待遇や生活水準だろう。奴隷である事は知っていても権力と資金力が違うからな。ハロルゼでは一目置かれる存在だ。
しかし、一商会と貴族では同じ奴隷でも箔が違うようだ。飛び地で二つの遠隔領地とは異例だが今後の人材確保など白熱した話になった。ギャングのボスたちは政治力がある。具体的な俺では思いつかなった部分まで議論された。
裏社会を仕切っていただけはある。当初はスケルトンのみを送る予定だったが家臣団を編成することになった。領地の統治をする事まで考えてなかった。会議は勝利が当然で線かも考慮に入れた領地経営が主題にあっていた。勝てるか分からないよ・・・といえたら楽なのに。
新たにボス1人を中心に準備をするようだ。当然向こうでも商売もやる事になるだろう。建築家や大工、職人からメイドまで用意するそうだ。魔車にして10台以上の規模だそうだ。
「分かった。おまえ達に任せるから恥ずかしくないようにして来い。それと新しい町の名前はアリーシャに任せるから決めておいてくれ。ハンズには俺の兵を200預けるから後から来る時に50使って残りはこちらで使ってくれ。なめた真似する奴は叩き潰せ。それと旗印を創りたいのだが誰か絵を書けるか?」
リグが手を挙げる
「リグ、お前絵を書けるのか?」
「趣味程度ですからプロをつれてきた方が良いかもしれませんが…」
「俺の刀に纏わりつく骸骨のデザインを書いてみろ」
紙にペンでスケッチをしていく。数分のうちに数枚書いて皆に見せた。
「リグさん上手ですね。今度私も描いて貰おうかしら」
「アリーシャの言うとおりだな。これが良いな。これで旗印にしよう。製作をさせて俺の関係である事が一目で分かるようにしろ。服の背中に入れたりも良いな。」
一枚のデザイン画を手にした。なかなかにかっこいい。意外な才能だ。想像よりもいい。
「ありがとうございます。あとで清書しておきます。」
大森林から300のスケルトンウォーリアに指示をして新たに600のスケルトンを召喚した。
ゴーストも各町や拠点に5体づつ配置して残りの10体を連れて飛び立つ。
緊急の通信はエルに任せた。ゴーストを飛ばして伝言が可能だからだ。ゴーストの存在は今のところエルしか知らない。
「エル暫く留守にするから宜しくな。たまには帰ってくるけどな。」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ。お帰りを始めとするお待ちしております。」
さぁ、行くとしようか戦争に…




