21 領主の依頼
ヨーロッパの小さめの宮殿のような建物に俺は来ていた。ここには半強制的に連行されてきた。
クローニと数人の部下を連れて領都のリーゼッヒ商会の本店で商談をする予定になっていたはずなのに門を抜けて町の中を進み、箱魔車を降りたら目の前は宮殿だった!
「リーゼッヒ商会の本店とは随分立派なんですね。」
感心しながら見つめているとクローニが
「そんなわけ有りませんよ、領主様のお屋敷です。領都に到着したらお連れするように本店から使いの者が知らせに来たのですよ。私も理由は判りませんが領主の命令だそうです」
「それじゃ俺は先にリーゼッヒ商会に行っているよ、また後で合流しよう。」
「待って下さい。呼ばれたのはペルセ様です。私でありません。」
クローニに腕をつかまれる、やっぱりおれ?
「領主に用はないけど、おれは」
「一緒に行きますので、早く行きましょう。緊急の用件との事ですから」
「単なるハンターだぞ?貴族が何のようだ?中に入れるなら見学がてらいってもいいけど。貴族の礼儀までは厳しいぞ」
「普段通りで構わないと思いますよ、温厚な方ですから。」
と本来の予定からは大きく外れて領主と面会する事になったのだ。呼ばれた理由は判らないが会わない訳にもいかず案内人についていく。案内された部屋の中で領主が待っていた。貴族って待っているものなんだな、どんな場合も待たせるのが普通だと思うけどこれは危険な匂いがするぞ。関わらないようにはぐらかそうかな。
「待っておったぞ、お主がペルセ・アースだな。私はレスサス領主トセオルド・ヒーテルグ・レスサスと申す。まずはかけたまえ。」
大きな邸内にある会議室のような部屋に通されていた。話しづらいだろうと思いながらも長いテーブルに腰をかける。
「このたびはお招きいただきありがとうごさいます。商人をしておりますペルセ・アースと申します。失礼いたします。それにしても立派なお屋敷ですね。このようなりっぱ…」
「世辞はよい、急を要する故本題にはいる。おぬしは大量のモンスターを狩り、火の魔術もかなり長けておるらしいな。そこでお主にモンスターの討伐を頼みたい。」
「モンスターの討伐ですか?」
「そうじゃ、ことの発端は1ヶ月程前に開拓地で異変が始まったことからじゃ。開拓砦の者からの報告では魔力の流れが変わって大量の魔力が流れ込んだそうじゃ。モンスターの種類の変化や変異種が現れたりと様々なことが起こっているそうだ。そして現在、開拓砦はある新種のモンスターに包囲され危機的状況下にある。」
「新種のモンスターですか…それは大変ですね。」
ヤバイ、これは俺が理由だな。大量のモンスターを狩り始めた時期と重なる。あれだけの数のモンスターを毎日狩っても減ることがないから生態系がどうなっているのか不思議だったんだよな。生態系を破壊してモンスターが絶滅したりしないか当初は心配していたがその兆候も無いと思っていたら周りに影響が現れていたか。
「あぁそうなんじゃ。新種のモンスターに他のモンスターも喰殺されて素材も手に入らん、倒そうにも攻撃しても死なない。逆に斬ったりすると分裂して増えていく始末で砦は崩壊寸前じゃ。なんとか人員の救出だけでもしたいと思う。それでおぬしに可能な限りの討伐をして欲しい。火の魔術のみ効果があるが使い手がおらぬ故お主を呼んだのじゃ。新種を討伐して撤退を支援して欲しい。時間さえあれば火の魔術の使い手を集めて開拓砦は奪還出来るからな。もちろん褒美は出す。協力してもらえんか?」
「今のお話では失礼ながらご協力致しかねます。新種のモンスターの能力や数、砦の状況や撤退する人数に時間全てが不明です。それに私一人でどうこう出来るものでもないように思えます。また、やるにしても仕事にはきちんとした対価を頂きたく思いますよ。具体的に教えて頂けますか?」
「そうじゃな。報酬は考えておる。今後10年の領内の税金を半分免除、撤退を支援してもらい成功した場合にはさらに金貨100枚、討伐は新種10匹に対し銀貨一枚でどうじゃろうか?新種は捕獲した個体が有るから見てもらおう。数は数万はおるようじゃがハッキリとした数字はわからん。領都側の門から撤退出来るようにしてもらえれば2000人が撤退を開始して2時間程で完了じゃ。」
「では新種のモンスターを拝見してもよろしいですか。」
金属製の箱が置かれている物置のような部屋へ入る。領主は部屋で待っているため部屋には兵士が5人とクローニと俺のみだ。
兵士が注意を促しながら蓋を開けた。
中にはスライムは居なかった。少し期待をしていたのに残念だよ。箱の中に居たのは紫色の体の中に黒色の斑点が有るゲル状のアメーバのような物体だった!
箱から這いずり出て来るのを観察する。暫く観察すると酸性の溶解液を飛ばしてきたり、触手を伸ばして絡みついたりしてくる。動きはのろくたいした攻撃力は確認できない。
兵士に剣を借りて半分に切ってみる。切ったにもかかわらず両方とも動いているので片方を剣で滅多打ちにしてから更に足で踏みつけた。グチャグチャの体液は徐々に集まって姿を戻して元通りになる。物理攻撃では倒すことが出来ないことを確認してから松明を持ってこさせて押しつけてみたが効果は無い。炎の魔石を使うと効果はあるが威力不足のようだ。いくつかの魔術を試したが効果は唯一ファイヤーボールをぶつけた時だけ異臭を放ちながら消えていった。倒しても素材もなし、魔石もなしとは厄介で金にならないモンスターである。
「だいたい分かった。剣をありがとう」
モンスターの確認が済んだので、領主の待つ部屋に戻った。あれははっきりいって俺には楽勝だ。恩を着せてやることにしよう。破格の報酬だし少し追加しておけば十分だろう。
「領主様、確認をして参りました。あれはかなり厄介ですね。物理攻撃に対する完全耐性を持っています。火は有効ですが魔術以外では威力が足りない。火の魔術以外は他の魔術も有効な手段とならないとは…ただし私ならなんとか出来ると思います。」
「本当か?では、頼めるか。」
「承知しました。但し、先ほどの報酬に追加をお願いしたのですがよろしいですか?」
「申してみよ、可能ならば支払う。」
「たいしたものでは有りませんよ。胸の大きな女エルフと女兎獣人の生娘の奴隷を一体づつお願いします。これは単なる趣味ですがなかなか手に入らなかったもので。それと数が不明とのことでありますので倒した数ではなく単純に金貨500枚後はそちらのお気持ちとしていただけます。それと、可能な限り倒しますので近くにいては危険ですので私以外は早急に撤収の要請を。」
「変わった趣味をしておるな、まぁその程度であれば問題ない。必ず用意しよう。すぐにでも頼めるか!」
面倒事を引き受けるんだ探し物を見つけて貰おう。それに変人だと思われておいた方が動きやすいからな。
「分かったそのように手配しよう。それでは開拓砦の近くまで案内させよう。」
「それには及びません。概ねの方角だけ教えていただければ飛行で行きますので。そのほうがはるかに早く着きます。では大変失礼ですがこの部屋の窓からでもよろしいですか?」
「かまわぬ、すぐに頼む。それとこれを持って行け。この件に関する命令書であり全権委任状だ。全てお前に任すのでよろしく頼む」
「承知しました。では失礼します」
翼を使い屋敷の外へと飛び出した。一気に急上昇して開拓砦へ向って飛行を開始する。




