17 ハロルゼの深夜
夜もふけているにもかかわらず火で明るくなっている一画に近づいた。
宿で待っていた案内役に連れられてスラムの中にある屋敷に向ってきたのだ。
「案内ご苦労、これで美味い酒でも飲んでくれ。気を付けて帰れよ」
「ありがとうございます。では失礼いたします、ご武運を。」
銀貨を案内人に握らせ帰らせる。ここからは1人で十分だ。
さっさと片付けるか。楽しみにしていたのにエルを可愛がってやれないのだその恨み存分に晴らしてやるぞ、覚悟しろよ。
周囲は木の柵に土を塗った高い壁で囲まれており正面の門は木製の扉に鉄で補強してあった。さすがはギャングの本拠地だけあって厳重だ。今後の参考にさせてもらおう。俺は門の前に立ち八相に構える。周囲には門番が10名程いたがもうバラバラ死体だ。
右足を大きく踏み出し全力で刀を振り下ろす。抵抗はなく素振りと変わらないような感覚で鉄で補強された大きな扉を斬った。連続して数回斬り裂くと扉が複数のパーツに分かれて落ちていき、屋敷の中が見える。
2階建ての屋敷の前には篝火や焚き火がいくつも焚かれており50人以上のエルフや獣人、少数だがドワーフもいた。全員がボロボロの服を着ているが何かしらの武器を持っていて酒を飲みながら騒いでいた。
扉が壊れると同時に全員の視線が俺に集まり、そして口汚い怒号とともに武器を構え臨戦態勢をとりながら近づいてきた。小走りで数人が近寄ってきたので俺は通るのに邪魔な扉の残骸を蹴り飛ばしてやった。
全力では無いが力を込めて蹴ったので物凄い勢いで飛んでいき数人を巻き込みだところで止まった。
半分は扉の残骸にぶつかり即死しただろう。敷地に入り数歩進んだところで立ち止まった。蹴りの威力を見たので、無闇に飛び掛ってくる馬鹿はいない。
「ペルセ・アースだ。ボスに用がある。さっさと出て来い」
大声で言い放つと、幹部であろう身なりのいい獣人が答えて叫ぶ。
「テメー、舐めたマネしてくれたな。楽に死ねると思うなよ。お前らぶっ殺せ!」
いいね、いいね。仁侠映画の一幕だよ。ここは刀で斬り伏せていくのがセオリーだ。だがあえて破る。
右手に持っている刀を納刀して左右の手を前え突き出して掌を正面へと向けた。
走ってきたギャング達に向かい高速連射でファイヤーボールを打ち出していく。
別に掌を向ける必要は無いし、手から打ち出す必要は無いのだが命中精度が格段に上がるのだ。
50人いたギャングのうち明らかに使えなさそうな30人程は全員焼死した。ファイヤーボールの威力では即死できないので炎の熱さと痛みで喚きながら死んでいった。
残りの奴らに走っていき、顔面を狙い殴り飛ばす。横にいるやつをのわき腹に踵蹴りをかます。
エルフの髪を鷲掴みにして膝蹴りを顔面にいれる、そしてもう一度蹴りこむがまだ終わらない。足を払って顔面を地面にたたきつけてわき腹を蹴り上げる。
獣人の喉に掌底を打ち込んで尻餅を付いたところで顔面にローキックを決める。
幹部以外は全員素手で行動不能にした。人数が少なくなると何人か中から飛び出して来たが返り討ちにした。途中で屋敷に逃げようとした幹部の獣人は捕まえて投げ飛ばし、脛の部分を上から踏み蹴りで両足折っておいた。痛みに耐えながらも腕を使って這いずりながら逃げようとしている。
刀を引き抜き右肩に刺すとすぐに貫通した。そのまま刀を左右に回す。
「ぎゃー、勘弁してくれ。俺が悪かったから助けてくれ。頼むよ金なら有るだけくれてやるから」
「楽に死ねると思うなよ」
刀を肩から引き抜き左手の甲を踏みつけて一本ずつ指を付け根から切り落とす。ギャーキャー喚くので鬱陶しくなって来た。腹を蹴り仰向けにすると威力を抑えたファイヤーボールを身体にぶつける。
そして口を塞ぐように頬を掴む
「あばよ」
低威力のファイヤーボールを手の中に発現させ、直接口の中にも入るように顔面に打ち放った。
おそらく気管支も肺も焼けただろう。長くは無いがしばらく激痛を楽しんでもらうことにした。
建物の中に入ると外にいた下っ端よりもまともな格好をした連中がわらわら出てきたので徒手空拳で捌いていく。半分ぐらいは首の骨を折ったり、その辺に落ちていた木材を頭部や胸部に叩き込んだので死んでいるだろう。ここでも可能な限り選別していく。
2階にあるボスの部屋までたどり着くのに2時間以上かかった。時間をかけすぎたな。
やはり武器が刀一本はきついな。長さがあるので室内では取り回しが悪いのだ。脇差や警防、トンファーがあればずいぶん楽だったように思う。格闘戦にしてもメリケンがあれば威力も違っただろう。実際にはかなり手加減したのだ、威力は十分だけど。本気で殴れば爆散するし、手刀でも切り落とせるがあまりにスプラッターになるから控えめにしたのだ。
ナイフ1本でも持ってこれば良かったと後悔する。
「時間をかけ過ぎたな。ここからは時短で行くか。自分の強さのせいで遊びすぎた。」
部屋の扉をテンプレ通り蹴破ろうかと思ったが、普通に手で開けた。なんせ引き戸だし。
「邪魔するぜ。ペルセ・アースというが、お前のところの三下が喧嘩を売ってきたり、我が家の覗きをしたりして迷惑してんだよ。落とし前つけさせてもらうぞ。」
「はぁん、小僧が粋がりやがって。落とし前つけんのはテメーだぞ。殺せ」
ボスが命令するとボス以外に7人いる幹部か護衛の中から一人の獣人がずいっと俺の前に出てきた。
熊かと思うような巨体で筋肉の塊のようなライオンの獣人だ。
「このガキは俺にやらさせてもらいますぜ。」
面倒だ、時間無いからもう終わらせよう。
ライオン獣人に一瞬で近寄り腹を右腕の拳で殴る。単なる大振りのヤクザパンチだ。そのまま顔面を左手の裏拳で殴る。
腹部も顔面を跡形も無く飛び散り腰から下と腕の付いた胸部のみになってぼとりと床に落ちる。部屋の中は鉄臭い血の臭いが充満してそこらじゅうに血と肉片が飛び散っている。
死体を跨ぎ机の椅子に座っているボスの前に刀を抜きながら近寄り、無言のまま右手で横に一閃して首を刎ねた。
「これからボスは俺だ。ナンバー2は誰だ?」
そうすると1人のエルフが一歩前に出て
「私です」
この状況で動けるとはたいした胆力だ。残りは固まって動かない、放心状態だ。中には失禁してるやつもいる。
「生きてるやつを全員今すぐ外に集めろ。」
10分後には建物の外に70人程がボロボロの状態で集まった。
「これから俺がボスだ。文句があるやつは今言え」
「ふざけんな」
5人が文句を言ってきたのでその場で外にいたと幹部と同じように殺してやると反抗するやつはそれ以上いなかった。
「お前らは全員奴隷にする。家族は助けてやるが、死んだやつらの家族は全員奴隷にして財産も一切合財没収する。今からお前らを使って俺に仕掛けてきた3つの商会を潰す。半分は俺に付いて来い。ナンバー2お前の名前は?」
「ハンズ・ボードンです、ボス」
「そうか。で、確認だが依頼したのは3つの商会でだけで間違いないな?」
「はい、間違いありません。大森林を調べて、いずれ脅すか奴隷にして支配下に置くなり利用するなりする予定でした。最悪、殺して金と物資を奪うと…」
「お前らのような組織は他にあるか?」
「うち以外に2つあります。規模はうちの半分程度です。」
「他の2つの組織に使いを出せ。俺の下につくか、壊滅するか選べと。商会の方は大きなところの関与している幹部から順に潰すから案内しろ。半分はここの後始末をしておけ。商会の幹部本人は殺害、その家族は俺の判断で殺害もしくは奴隷にする。奴隷にするやつはここに集めるから準備しろ。ハンズ、人選を5分でしろ。ここの陣頭指揮もお前がしろ。全員いいか?」
「それと聞いておくが死にたいやつはいるか?もしくは、金貨1万枚払えるやつはいるか?損害賠償額が払えないから奴隷にするだけで、払えば解放するぞ。誰もいないな、よしそのままじゃ使い物にならないから今すぐ治すぞ」
そう言って回復魔術を乱発してギャング達を回復させる。
もはや誰も驚かず静かに準備をしている。




