16 売られた喧嘩
「オイオイ、誰に断ってこの場で子供をたかってんだおまえらは。困るんだよな口から生ゴミの臭いをぶちまけられても。ここで死んどくか?」
近寄っていく俺を、2人のエルフとビースト1人が振り返って睨みつける。
どうやら俺にちょっかいをかけて来たのはギャングのようだ。エルフのギャングって、想像したくないけど現実には必ずどこにでも悪いやつはいるもんだ。それにしても、エルフのギャングとは似合わないね。かなり性格が悪そうな顔つきをしているけど、凄みがないし裏の世界特有の雰囲気もない。
「なんだテメーは。喧嘩売ってんのか?ふざけやがって、ぶっ殺すぞ!死にたくなかったらさっさと消えろ。」
俺を見ると驚きながらも怯まずドスを効かせた声で怒鳴ってきた。簡単な挑発に乗るとは残念なおつむだ。
エルフが凄んだところで意味はないぞ。日本じゃそんなんでびびるのは幼稚園児ぐらいだぞ。
教えてやりたいが伝わらないよね。
リーダー格のエルフの前にゆっくりと歩いて行き、右足前にして左足を後ろに引きながら少し腰を落とす。左手を刀の鞘に添えて前方に倒すように握れるだけベルトからずらして親指を鍔にかけながら右手を刀の柄まで持ってきた。
俺の所作を不思議そうにギャングも、騒ぎを聞きつけて集まってきた野次馬もみていた。
野次馬どもよ、少女が絡まれている時は我関せずの癖に俺がでて行ったら偉そうな事言いながら見物かよ。気にいらねーな、やっちまおう。気に入らなければ戦争だ、やってから考えればいい。
キッン
甲高いの音とが響い刹那、
「えっ」
リーダーのエルフの人生最後の言葉はあまりにも短かった。
振り抜いた刀をピッとふり、僅かについた血を払うとビーストの顔に血の滴が飛びべっとりと張り付いた。
静寂のなかエルフの頭部は喉元でずれて地面に落ちた。首から吹き上げた血が立ち尽くすギャング達に雨のように降り注いだ。
鍛えていた神速にはまだほど遠いがかなりの速度と正規さを誇る 抜刀術の居合い斬り
満足のいく結果だ。スキルではなく日本の剣道・正確にいけば居合道の技術だ、スキルにだけ頼ってはいけない。
「死ぬのはお前だ。誰に向かって口聞いてんだ、身の程を弁えろ。おいっお前等、帰ってボスに伝えろ。売られた喧嘩は買ってやる、首を洗って待っていろ、とな。分かったらさっさと俺の前から消えろ」
あまりの出来事にあたりは静まり返る。聞こえるのは泣きなが不格好に走り去るギャングの声だけだ。
「大丈夫だったかい。とてもいい歌だったに邪魔が入っちゃったね。周りの大人は当てにならないからこれからは気をつけるんだよ。また歌を聞かせてね。」
少女に銀貨を一枚握らせ店に戻る。死体は放置でいいだろう、汚いし。
気まずそうな顔をしながら野次馬も解散していく。ちょっとした仕返しも大成功だね。
「今のは、なにをされたんですか?私には斬った瞬間が見えなかったのですが」
「んっ?あぁあれは居合いという技だよ。まだまだ刀に血が付くのだから未熟な技だよ。商売ばかりじゃなくて修行も頑張らないと駄目だな」
「あれだけのモンスターを毎日狩れる理由が分かりました。想像していたよりも遥に高い次元にいらしたのですね。それでこれからどうされるのですか?」
「今晩にでもかちこんであいつ等は壊滅させる。ついでにあいつ等絡みの商会もね。売られた喧嘩は買うのがモットーだから。これで馬鹿な真似する奴は減るだろうし。だいたいの目星もついているから、あいつの根城だけ教えてくれるか。あとは俺が処理するから。」
「もう知ってらしたのですか。出過ぎたことを言いまして申し訳ありませんでした、かれらの拠点までは案内を致します。時間はどうされます?」
「そんな事はない。たまたま我が家を覗き見してた輩と出くわして、色々教えてもらっただけだよ。もう遠くに行ってしまったけどね。案内を夕食後に宿まで寄越して欲しい。」
「承知しました、そのように手配しましょう。くれぐれもお気を付けて」
「心配には及ばない。ありがとう」
店をでてから商店を見て回りながらいつもの宿へ向かった。もう町にも慣れて道に迷うこともない。宿の部屋はランクを上げて豪華で大きなへ部屋にしていた。宿へ客が来ることも増えたからだ。
部屋に案内されると中で美人エルフさんとエルが並んで待っていた。
エルは見違えるように綺麗になっていた。手入れされた髪、艶があり真っ白な肌、落ち着いているが町娘では持っていないセンスの服!さすが美人エルフさん一流のプロの仕事だ。言わなくても本人より良く分かってくれている。
「お帰りなさいませ、ご主人様。私を買って頂きありがとうございました。これから精一杯お役にたてるように頑張ります。」
「お待ちしておりました、ペルセ様。本日はエルを連れて参りました。素直で良い子でしたよ。」
「迷惑をかけたね。お茶でも飲みながら苦労話を聞かせてくれるかな。エル、お茶を」
「畏まりました、ご主人様」
外国人スーパーモデルのメイド喫茶かよっ、と心の中でツッコミなから様子を見ていた。メイド服ではないが…
その後は美人エルフさんとおしゃべりと食事を楽しんでいつもならベッドへ向うのだが今日はそう言う訳にも行かない。
「ご馳走様でした。もっとお話したいところだけど今晩はこのあたりでお暇させていただきますね。大役のせいで疲れてしまったのから」
きちんと理解して気を使ってくれる。こうゆう人が近くにいてくっると助かるのだが…ない物ねだりだなと思いつつ
「疲れているようなら今晩はこの部屋で休むといい。生憎とこれから仕事があり今晩は戻れないかもしれないので、エルにこういった所での食事の作法も私の代わりに教えてくれるかい。戻るまでにエルがハラペコなのもかわいそうだ。頑張ったご褒美も必要だろ。」
「そうなのですか。お忙しいのですね、くれぐれもお体を大事にしてください。お戻りをこの部屋でお待ちしております。」
「ありがとう、では行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
おそらく荒事を察したであろう美人エルフさんに頷く。
そしてエルを見ながらメイド服作成の決意をして部屋を出た。




