13 奴隷は紳士の嗜み
微かな疲労感を感じながらもすっきりとした気分で部屋を出る。朝食は中庭のテラス席でお喋りをしながらゆっくりと楽しむ。食後のお茶が終わるかと言うタイミングでエルフの男性が声をかけてくる。
「お寛ぎのところ失礼いたします。リーゼッヒ商会より参りましたクローニ・リーゼッヒと申します。本日の案内を勤めさせて頂いきます。宜しくお願いします」
「ペルセ・アースです、こちらこそ宜しくお願いします。ちょうど終わりましたので、早速お願いできますか」
商会の身内を出してきたよ。
美人エルフに見送られ箱魔車に乗り込む。
聞いてみればリーゼッヒ商会の現商会長の三男だそうだ。今後の取引も専属担当して相談役も勤めてくれるそうだ。
「まだまだ修行の身ですが、誠心誠意勤めさせて頂きます。」
修行中のやつはあの絶妙なタイミングでは声をかけてこないぞ。
頼もしい限りだが…跡取り争いに巻き込んでくれるなよ。
ちょいとハードルが高過ぎやしないかい?
町外れの牧場に着くと調教師があれこれと魔車の説明をしてくれた。数種類の従魔がいたがこの周辺で荷運びに一番適しているは六本足の大きな亀、ランタートルだそうだ。
VIP待遇で一番良いランタートルを選んでくれた。俺では良し悪しの判断が出来ないからな。荷台は幌付きの丈夫なものを選んだ。
ランタートルに繋ぐ為に荷台の調整が必要ですぐには使えなかった。
「大至急調整させますが最短でも明日の正午です」
と荷馬車の担当者はあちこちに指示を出していた。通常であれば5日はかかるそうだ。
日本でも新車を買って、乗って帰るやついないか…
価格は従魔と荷台のセットで金貨5枚と高額だ。魔車を保有しているだけでステータスになり、魔車を持つ行商人は一目置かれるそうだ。
昼食をとった後、奴隷商館へむかう。
重厚な石造りの建物で、中に入るとロビーにカウンターがあり店員が声をかけてきた。受付に案内されたのは広めな個室で大きめなソファーとテーブルがあり腰掛ける。高級ホテルのスイートルームのようだ。
なぜかベッドもシャワールームも用意されていた。クローニに訳を聞いてみると…
「夜伽の相手をお求めの方はお試し出来ますので。生娘は触ることが出来ませんがそれ以外なら可能ですよ。ただ、この部屋に入れる方は極わずかな方のみですけどね。」
なる程…必要なシステムだ。車の試乗や住宅の展示場などのようなものだな。高額な買い物をするのに即断即決を出来るやつはいないだろう。
地球でかつてあった奴隷の購入とは、汚い檻に入れられてぼろぼろの人間を鞭で叩きながら競りで売買するシステムと認識していたが違うようだ。
そうこうしていると担当者が現れて種族や性別、使用目的や労働環境、個人的ないろいろな好みなどさまざまな事を聞かれた。ここの様な奴隷商館では担当者が顧客のこの要望に沿うような奴隷を紹介してくれるシステムだそうだ。購入前に基本的なことを教えてもらう。なんせ奴隷など日本では購入できないから無知である。
嫌な顔もせずに詳しく教えてくれた。
奴隷は3タイプある。借金奴隷・犯罪奴隷・戦争奴隷だ。
一番多いのが借金奴隷だ。貧困層は借金の担保を自分自身にして金を借りて、返せなくなれば奴隷になる。極貧により自分から奴隷を希望するものいるらしい。大きな商会には金融部門があり個人や商会果ては貴族まで金を貸して運用しているそうだ。当然破産した人間を取り扱う奴隷部門もセットであるようだ。
犯罪奴隷は犯罪者が強制的に罰として奴隷にされる。犯罪者は刑務所で罪を反省するということはなく、貴族や領主、町長、村長など罪の重さや大きさにおおじて権力者が慣習法に基づき一存裁判で罪を決める。死刑、奴隷落ち、腕・耳・指など身体の特定部位の切り落とし、鞭叩き、リンチといった感じで実景を即時行うそうだ。冤罪は無いのだろうかと思うが…権力の維持に良いのだろう。
戦争奴隷は捕虜のうち捕虜や身代金の支払いがされずに残った兵士のことである。敵国の住民であり、優秀な奴隷は少数で、安いだけの消耗品といった扱いだそうだ。多くはモンスター狩り、鉱山労働などに使われるようだ。
奴隷とは呪術によりをかけられ身体に魔方陣を埋め込まれる。一度奴隷になると死ぬまで奴隷だそうが主人しだいで一般の住民のように暮らしているものもいるそうで解放奴隷というらしい。主人になると奴隷契約をして生殺与奪権を含め全て命令できるようだ。呪術を埋め込む際に全身を激痛が襲うそうで、命令に背くとその激痛を再び味わう事になるので従順になるそうだ。打ち込む際に子供は死んでしまうそうで、子供の奴隷はいないそうだ。成人年齢は奴隷の呪術で古代に決まったらしい。
奴隷の値段は種族と年齢、能力と容姿で決まるようだ。長命なエルフは使える期間が長いため、技術を持つドワーフはそもそも奴隷になる数が少ないため高いようだ。奴隷商館で扱うのは高級品のみで、安物はダース単位で取引したり、購入者は確認もすることなく取引されたりするそうだ。
「今度モンスター狩るのに奴隷欲しいから100人ぐらい用意して予算金貨50枚で、足りる?男を多めにしてね」
「分かりました。それだと質落とすか90人になりますよ。どこに送ればいいですか?」
「今回は数優先で。うちの商会の倉庫に頼むわ。後はよろしく」
「承りました。そういえばいい娘を入荷しましたがいかがですか?」
「お前が言うなら間違いないだろうが、ベッドで確認しよう」
「ありがとうございます。すぐに用意しますね」
と商館の担当者にお任せだそうだ。奴隷取引とは信頼と信用の紳士の取引だそうだ。奴隷という在庫は経費の塊でどんどん売買するようだ。逆に優秀な奴隷は一人で金貨100枚を超えるそうだ。優秀な人材は奴隷になんかならないから。俺の予算は金貨5枚だ。
今回の奴隷は商館内で扱う商品では最低ランクになるらしい。紹介されたのは3人ほどのビーストの青年で全員が魔車を操ることができる者だ。それぞれの説明を受けてから個別に話をする。裸にして身体の確認もした…男の裸なんか見たくないよ。
一番やんちゃそうな狼のビーストを選んだ。差なんて特にないから単なる勘だ。
彼の名前はリグ。魔車の御者が仕事だと伝えると喜んだ、がんばってもらいたいよね。
使い捨が有っても便利だと思う。秘密が多く危険と隣り合わせだから使い道が多い。
俺は奴隷制度に対し特に思うこともない。死んでも特になんとも思わない。生きてるやつは必ず死ぬのだから。人間の時に有料物件にもかかわらず結婚できなかったのは性格のせいだろう。他人に興味はなく自分が楽しければいいのだから。
「今日は良い奴隷を紹介いただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。帰りがてら使い捨ての奴隷も見せてもらえませんか。何せ初めてなので現物を知らないと注文できませんので。必要になった際はよろしくお願いしますね」
「もちろんかまいませんが少々不快な場所ですのでご容赦ください。ご注文の際は厳選させていただきます」
この担当者とはこれから長い付き合いになるだろう思いながら、体育館のような倉庫に案内された。
確かに安物だなと思う奴隷が100人以上。使い時があるだろうか…
帰り際に倉庫のそばで懸命に洗濯をする珍しいエルフを見かけた…掘出物発見!




