死にました
佐々木 和子は屋上に呼び出され、気がついたら、クラスの女子達に囲まれていた。
「和子ちゃんって本当にとろいよねぇ。
いるだけで邪魔なんだよ。消えてくれない?」
リーダーの長谷川が和子の肩に寄りかかり、囁くように言った。
長谷川は、中学2年という年齢に見合わず、ダイナマイボディというやつで、和子の背中に胸がぎゅうぎゅうと押し当てられる。
和子は、普段だったら赤くなるところだが、今は長谷川の威圧感で青くなった。
「ひいぃっ!」
「あはははっ!
ひぃっ、て何?超ウケるんですケド!」
取り巻きの女の子達は、和子の悲鳴に大爆笑だ。
長谷川は、楽しそうにそれを見つめた。
「ってかさ、そのビビリかた鬱陶しくてムカつく。
私達が意地悪しているみたいじゃん?
それにいつも挙動不審で、自分のことばっか考えてるし。謝ったり、挨拶したり出来ない訳?」
「そうだよ、陰気な顔して気分悪くなる!
ちらちら見る癖に、堂々と顔を合わせないし。
気持ち悪い!」
「ていうかー、和子の髪型ヤバっ!?
今時、おさげってウケる!!」
「何時代に生きてるんですか~??」
きゃははっと、また彼女達は笑い転げた。
彼女達は、上手く生きられない面倒な奴を懲らしめるという興奮で、人生で一番楽しいという顔をしていた。
また、箸が落ちても笑う年齢ということもあり、ちょっとしたことでも笑いが止まらない。
その様子を長谷川は満足気に見た。
そして、長谷川は、和子のおさげを無造作に掴み、後ろに思いっきりぐいっと引っ張った。
周りの女の子達は、長谷川の勇敢な行動に目を輝かせて、喜んだ。
和子は、踏ん張れる筋肉なんてものはなく、間抜けなイナバウアー状態になった。
さらに、その薄い腹筋では、元に戻ることが出来なく、長谷川を避けて後ろに倒れていった。
和子は、トロくて、運動神経が悪くて、可愛いくもない、さらに典型的な文学少女の姿だが頭も悪い。
なにをやっても駄目な少女だった。
この場にいる人達は、その事を当然の事実だと捉えている。
しかし、まだ一つ、和子にしか知らない欠点があった。
それは、最強に運が悪いという事だ。
「わ、わっ!」
和子は、頭から落ちない様に、フェンスの網目に手を掛け体全体を支えた。
その瞬間フェンスからガタンッという大きい音が響く。
「……へっ?」
和子は、何が起きているのか全く理解出来なかった。
目の前には、長谷川の可愛い顔が驚きで歪んでいる。
「……えっ?」
そして、和子の耳からは空を切る音がして、視界はどこまでも青かった。
「ふぇ……?」
和子は、「ふえぇ」なんて絶対いざとなったら、女の子は言わないと思っていたが、予想を遥かに上回った時に出ると悟った。
なんて事を思っていたら、和子は一瞬で死んでいた