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9/9

ミケんに皺

遅くなりました。

クリスマスネタを年明けから暫くたった今更新というね…。今更感半端ない。

というか、女子会ばっかだなぁ…。


なんだよ…。

なんだよーー!!



年明けの出勤日。

ミケは不機嫌だった。

理由は簡単。以前たてた『坂下君を誘惑しちゃおう大作戦』が失敗に終わったのだ。そこからトラさんの仕事が忙しく夕飯を共に出来なくなり、年末年始は実家にお互い帰り、会えていない。完璧なるトラさん不足である。


「あらミケ、あけましておめでとう。今年もよろしくね。…どうしたの?そんな顔して」

「あけましておめでとう玲姉さん。今年もよろしく。トラさんに年末から会ってないんだって…。やっぱり『坂下君大作戦』の所為で避けられてるのかもしんない…。玲姉さん達の所為だぁあ!」


もはや八つ当たりである。

今は業務前の準備時間なので周りに人はいない。思う存分素を出して話ができるというわけだ。恋バナなので聞かれたくもないし。


「なーに言ってるの。坂下君たち開発部は年末忙しかったの知ってるでしょ」


わかってる。わかってるんだけどさぁ…。がくりと項垂れる。あぁ、力が出ない。準備を終え、そろそろ業務時間なので受付に赴く。皺の寄った眉の間を揉み解し、いつものミケちゃんスマイルを顔にのせる。不機嫌面から微笑みに変わったのを玲姉さんが感心したように見ていたのは気にしない。中身を知ってからずっとこうなのだ。

他の部署の人達ともすれ違いつつ、年始の挨拶をしながら受付に着くと、丁度トラさんが出社してきた。


わぁああ!!!

久々トラさんだぁあ!髪切ってるー!!


トラさんがこちらへ向かって来たので挨拶しようとすると、邪魔が入った。


「ミケちゃんおはよう。そして、あけましておめでとう今年もよろしく。年明けから可愛いねミケちゃん」


ニコニコ笑って、トラさんの横から私に話しかけてきたのは今野君だった。いたのかよ。トラさんしか見てなかったから気付かなかったわ。とりあえず、外面モードで対応する。


「ふふ、坂下君と今野君おはよう。あけましておめでとう。今野君は今年最初の冗談ありがとう」

「えぇ?冗談じゃないのになー」


今野君は会うたびに同期の女性陣を褒める。明るいイケメンだが、少々チャラいのだ。


「2人ともあけましておめでとう。行くぞ今野」

「え、待って待って玲姉さんに挨拶してない!あけましておめでとう玲姉さん。今年も綺麗ですね!」

「はいはいありがとう。おめでとう」


玲姉さんの気の無い返事を聞くと、さっさと歩いて行ってしまったトラさんを追いかけて今野君は小走りで去って行った。


え…。ちょっと待って!

私トラさんと話せてない!!


気付いた時にはトラさんの後ろ姿すら消えていた。


「え…おいおい嘘だろ」

「ミケ。素が出てるわよ」

「だって!久しぶりだったのにー!!」


こーんーのー!!!許さんぞ今野!!!!お前が邪魔した所為で、トラさんと目すら合ってないじゃねーか!

というか、トラさんもトラさんだ。玲姉さんの方向いて、2人まとめて挨拶だなんて…チラリとくらいこっち見てもいいんじゃないの⁉︎

むすっとした顔になったが、前方から来客が向かって来るのが見えたので、荒ぶる気持ちを抑えて営業スマイルを浮かべる。くっそー。今ほど受付業務を面倒臭さいと感じたことはなかった。


「帰りに聞いてあげるから、日中は我慢しなさい。いつもの4人で新年会がてらご飯行くわよ」

「はぁい…」


新年早々ついてない…。今日の女子会は私の愚痴を聞く会になりそうだ。



年明けは忙しく皆残業があったが、どうにか終えて近くの個室ありの居酒屋で女子会を開始した。


「それで?例のクリスマスの作戦はどうだったの?失敗って事だけで詳細聞いてないんだけど?」

「あー、それ確かに気になるぅ」


そういえば言ってなかったか?


「あー、あれねぇ…」



クリスマスの日、トラさんとご飯の約束を取り付けた。その時点では、もしかして脈アリなんじゃない⁉︎と、ウキウキ気分だったのだ。だって、クリスマスですよ皆さん!クリスマス一緒に過ごすって特別感あるでしょ!!

食事はお互い料理を作って持ち寄る事になった。私は唐揚げ、トラさんはスープやサラダ。ケーキは予約無しで下のコンビニで私が買って帰る約束をした。


で、当日坂下君作戦通りに準備してトラさん宅へ向かった。ドキドキしながら揚げたての唐揚げとケーキを持ってインターホンを鳴らしてトラさんが開けてくれるのを待った。どんな反応するかなー?褒めてくれるかなー?あ、開いた。


「三池早かった…な…」

「め、メリークリスマス!」


トラさんは私の姿を見るとギョッとした様に固まって、静かに玄関を閉めた。え…ちょ、ちょっと待って!なんで⁉︎両手が塞がっている為自分では開けられない。


「トラさん⁉︎ちょ、いーれーてー!」

「そんな格好してくるのが悪い」


ちなみに私の格好はミニスカサンタだった。『坂下君を誘惑しちゃおう大作戦』にのっとり、カモシカの様な自慢の脚をアピールする為にあの日の帰りに玲姉さんと選んだもの。自分で言うのもなんだが、めちゃくちゃ似合っている。そんな格好なんて言われるのは心外だ。


「トーラーさぁーん!唐揚げ冷えるからー!!」

「着替えて来い」

「せめて!せめて唐揚げとケーキ置かせて!!」

「ダメだ。彼氏でもない男の家にそんな不埒な格好であがり込むな」

「トラさぁーん。寒いー」

「自業自得…」

「…へぶしッ」


あ、やばいあんまり可愛くないくしゃみ出た。

くしゃみをしてぷるぷる震えていると、壊れそうな勢いで玄関のドアが開いた。危なッ!もう少し近かったら弾き飛ばされるとこだったよ!顔をあげると眉間に皺を寄せたトラさんが目を逸らして立っていた。


「…早く入れ。よく考えたら廊下にそんな格好で立って騒いでる方が問題だった」

「ありがとー!あぁー、ぬくいー!!」


靴も蹴脱いで、机の上に唐揚げとケーキを放り投げ一目散にコタツに駆け込んだ。


「三池ちゃんと靴は揃えろ。あと、唐揚げは今から食べるからいいけどケーキは冷蔵庫に入れないとダメだろう」

「ごめんなさーい。トラさん入れといてー。というか、トラさんが早く家入れてくれないのが悪いんじゃん!」

「三池がそんな格好でくるのが悪い。スカートめくれないように気をつけて座るんだぞ」

「あいあいさー」


机に顎をのせた状態で片手をあげる。もう片方の手はコタツの中だ。ぬくぬくとくつろいでいると、トラさんがご飯とスープをついできてくれた。うぁあ、美味しそう…!


「ごめん!出すの手伝う!」

「いい!コタツ入ってろ!俺がやるから!!」


立ち上がろうとすると肩を押さえて止められた。むむぅ…一応客ではあるけど何もしないっていうのも心苦しいんですが…。そんな事を考えている間にトラさんはさっさと用意をする。あっという間に食べる準備が整った。


「ほら、箸」

「ありがとー。んじゃ、いただきます!」

「ん。いただきます」


うまー!トラさんのスープも私の唐揚げもめっちゃ美味い!!我ながら良い揚げ具合だ。あっという間に食べあげて、お次はケーキという段階になった。よくよく思えば、着いてすぐコタツに入ったから脚アピールができてなかった。ここはケーキを取りに行くついでに玲姉さん直伝の誘惑でトラさんをオトしてしまいましょう!


「トラさん!私が食器さげてケーキ持って来るから座ってて!!」

「いや、コーヒーも入れるからいい」

「じゃあ私がコーヒーも入れるから!」


トラさんに先越されないように勢いよくコタツから出て立ち上がる。


「ッ!三池!!スカート!!!」

「わっ!ご、ごめん!」


勢いよすぎてスカートが翻ったのだ。ミニスカにニーハイだった為、太ももあたりから上は生足である。パンツもそのまま見えたかもしれないと思うと、いくら恥じらいの無い私でも流石に恥ずかしい。ちろりと見るとトラさんは目を逸らし、耳を赤く染めている。…絶対見た。


「トラさん…パンツ見えた?」

「え、や、み、見てない。見てないぞ」

「そ、そう?」


口元を手で隠して決して目を合わせないトラさん。見なかった振りをしてくれているようだがそれならそれで平然としといて欲しい。挙動不審過ぎる。ギクシャクとした空気の中、コーヒーを入れてケーキを持って行く。


「…ありがとう」

「いーえ、どういたしまして」


そしてそのまま黙々とケーキをつついて、コーヒーを啜った。話しかけるがトラさんの返事がいつにも増して素っ気ない。


「美味しいねー。トラさん」

「あぁ」


はい、会話しゅーりょー。こんな感じだ。

私の振る話題も悪いのかもしれないけど!!

ケーキも食べ終えて、コーヒーを飲み終わっても空気は変わらなかった。もう諦めて今日は帰るかなぁ。


「じゃあ、夜遅くなっちゃったしそろそろ帰るね。ごちそうさまでした!」

「あぁ、こちらこそ」


唐揚げを乗せてきた皿やらを持って玄関に向かう私の後ろをトラさんが付いてくる。玄関まで送ってくれるみたいだ。


「お邪魔しましたー」

「あ、三池」

「何?」


ちょっと期待して振り返ると、私を視界に入れないようにするトラさんが目に入った。


「来週から年末までうちの部署忙しいから夕飯はしばらくパスで。正月は実家帰るし、年始も忙しいからまた再開できるようになったら連絡する」

「…え」


断る口実じみた事を言われて、思考が一瞬止まる。トラさんは私といるのが嫌になったのだろうか。


「じゃあ、暖かい格好して寝るんだぞ。おやすみ」

「お、おやすみ」


そう言うと玄関を閉めた。いつもならエレベーター乗るまで見送ってくれるのに。…パンツ見えても気にしない破廉恥な奴って嫌われたのかなぁ。そう思うと落ち込んだ。いやいや、トラさんはそんな心狭い人じゃ…。

まぁその考えは週明けから開発部が本当に忙しくなったのを見て飛んでいったけど、未だに夕飯再開の連絡はないという訳だ。



クリスマスの話を聞いた美沙達はポカンとした顔をしていた。揃いも揃ってアホ面だ。


「え…それ失敗なの?」

「だよねぇ。むしろ成功じゃなぁい?」

「ねぇ。そう思うわよね?」


どこがだ。忙しいのは嘘じゃなかったけどあれ以来、どことなく避けられている気がするのに。朝だって、前までならちゃんと面と向かって挨拶してくれてたはずだ。


「まぁ飲みな。明日は休みだし、自力で帰れる程度に酔って忘れちゃおう!」

「おぉーう!!」

「あなた達飲み過ぎ。週末だからってハメ外しすぎちゃダメよ」

「はーい!!」

「全く…返事だけは良いんだから」

「ふふ、仕方ないよぉ。玲姉さん、2人は放っておいて私たちも飲もぉ」

「…そうね。楽しく飲みましょ」


トラさんと夕飯を食べなくなってから、久しぶりにワイワイ騒ぎながらご飯を食べた。楽しかったけど、頭の片隅にトラさんが浮かぶ。早く解禁しないかなぁ…トラさん。



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