06―二日目―
4000文字です。ここでリョウのチートちょろっと登場。
あとファンタジー名物のあれ出てきます。(出てくる予定無かったような気がするんだけど…)
最初はリョウ視点、途中から俯瞰視点です(神視点ともいう)。
「うっし、今日もいい天気だな!」
俺は背伸びして洞窟の中から草原を見渡した。いや、昨日は結構いろいろあったんだぜ?『キャンプセットB+(笑)』に無理やり付けてた木製の簡易風呂桶が結構好評だったんだが…。
火魔法使えるのが俺だけだったから追い炊きでファイヤーボール結構使う羽目に…。後『キャンプセットB+(笑)』に置いてたエロ本を本棚ごと燃やされた…
「ふゎあ~。何もないけど景色良いわねぇ。昨日は見事に動物いなかったけど。はい、リョウ、朝ごはんの携帯食」
こいつが犯人。いや、おっさんや王子は読みたそうだったんだけどなんかこう…速攻すぎて止められなかったっぽい。先に焚き火しなけりゃよかったよ…
「まぁ安全と言えば安全なんですけどね。戦闘無いわけですし。…そろそろ出発しますよ。出来るだけ進んで食糧を見つけないといけませんし」
「植物系は薬草とかが多かったからポーションでも飲めば何とかなるんじゃないか?鍛冶場では昼飯代わりにポーション飲んでいたが」
「それは多分蒸し暑い環境だったから水分不足で追加の満腹ボーナスが付いていたからだと思うにゃ。普通は1~2ぐらいしかスタミナ回復につながらないにゃ」
「おっさんってマジ職人…」
「はいはいとっとと行くわよ。とりあえず後衛はあたしとリョウ、前衛はローとアル、遊撃ハルでいいわね?」
「まぁ昨日と同じですしね」
「とにかく進むぞ。このつなぎがモンスターの攻撃にもある程度耐えてくれりゃいいんだがな…」
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リョウの伝書鷲の『アイン』を飛ばして前方を偵察させつつ草原をアインの進んだ方向に向けて歩いている一行の姿があった。彼らの会話を聞いてみる。
「モンスター出ないまま延々歩くってこれ結構精神的にきついわねぇ…。気温から考えて秋かしら?」
「『天高く馬肥ゆる秋』ってか。全然馬いねーけど」
「馬いても捕まえられるか分からないにゃ?それにこの世界では馬車を引くのは馬じゃないって線もあるにゃ」
「それもう馬車じゃないわよね…けど捕まえられたら馬車が動くし捕まえたいわねぇ…」
「調教持ってんのはリョウだけだから見つけたら俺らは足止めだな。」
「皆さん覚えているか分かりませんけどFWの馬って結構速かったような気が…。しかも結構獰猛なパターン」
「「「あぁ…」」」
「走って追いかけるか無理なら最後はうちが虎に獣化して追いかけるからきっと何とかなるにゃ!」
「「「「よし任せた」」」」
「ん?よっと…何かあったか?ふんふん…」
「あ、アインにゃ!何か見つけたにゃ?もしくは強敵でもいて帰って来たかにゃ?」
「ていうかレベル100の大鷲と戦って勝つモンスターなんて結構な強さだと思うんですけど。一応勝てるでしょうけどそれと戦うなんて勘弁してください」
「昨日レベル120越えのサイクロプスを倒して手紙を持ってきた事があるとか言ってたから実質レベル130越えの強さだろこいつ」
「そもそも入手困難なSSランクの魔石に封じて使い魔最大レベルの100まで育てているあたりリョウってやっぱ金持ちだったのよね…。今は手持ち資金が少ないし普通のプレイヤーとか言ってるけど」
普通なのだろうか?魔石に封じた使い魔としては最大レベルの大鷲、馬車(馬なし)、当座のまとまった資金…これらを運用してこの男はまた商会を立ち上げられるのでは。工夫次第ではかなり有利そうである。
「昨日もし商会が残っていたら装備とか融通するって言ってくれましたし、この世界での自分たちの立ち位置も不明ですから彼の商会が残っているのを期待しましょう」
「それもそうだな。お?ハルがアインが来た方角に走って行ったが…リョウ、何かあったのか?」
「アインが言うには向こうの方に馬の群れがあったらしくて。奇襲したほうがいいって事で足の速いハルには先に行ってもらった。」
「お!一頭だけでも捕まればありがたいな。けど一応今のうちにアイン飛ばしてハルを追わせとけ。馬を捕まえてもはぐれられたら困る。」
「それもそうか。んじゃ、アイン頼んだ。」
―――――――――しばらくして――――――
「おい…」
「ハル、馬を手懐けてない?」
「あいつ『調教』持ってなかったよな?俺負けてないか…」
2頭の親馬と1頭の子馬の家族をなでているハルの姿を見た彼らは絶句した。
「1頭どころか3頭捕まえてますねぇ…1頭は子供っぽいですけど」
「あいつチート?」
そう言うリョウも現時点では住居の面で物資チートをしているのである。自覚はあるのか?
「おっきい方に乗って落ち着かせてたら逃げた子供ももう一頭もなぜか戻ってきたにゃ!」
「ってーことは家族か…。馬なんて鍛冶関連ではあまり関わったことないから分からんが」
「親子の絆に付け込むとかこの子天然小悪魔系になりそうね」
「この馬達なんていう種なんです?鑑定持ちの誰かお願いしまーす」
「『疾馬』って言うらしいぜ。結構速くて馬車も引けるみたいだな。…けどFWの世界では俺の商会でも扱ってなかったなぁ。ホントに違う世界かもしれねーな。」
「やっぱかにゃ?参ったにゃ…」
「まぁでもこれである程度移動できるでしょ。昨日は見れなかったけど馬車出せる?」
「いや、出したいんだがここらちょっと草が長めだから車輪に巻き付いて無理だろうな。」
「アインから道とか発見の報告はないのか?」
「今のところはないなぁ」
「じゃあ彼らは引き連れて歩いていきましょうか。馬にはバテた人が乗る方向で」
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夕暮れ時、彼らはちょっと大き目な物体の前に立っていた。
「おい、ポーションは無理なのか?」
「錬金レベルは低いですから老衰に対抗するようなのがもしあっても自分は知りませんね…」
「無理だな。延命は禁書でもポーションでも見たことがねぇ。あったら真っ先に売り出してるわ。」
「卵を守り続けて老衰で逝く…ねぇ。この竜の一生を知らないけどかっこいいような悲しいような微妙な死に方ね…」
彼らは半日歩き続けて年老いた竜の巣にたどり着いていた。最初はすわ戦闘かと武器を構えた彼らだったが、鑑定した結果老衰で死にかけた竜だと知りそのまま静かに立ち去ろうとしていた。
しかしそんな彼らが足を止めたのはハルが老竜の足の間で守られている卵を発見したからであった。そのまま放置したら卵からかえった子は衰弱して親の後を追うだろう。卵を取り出そうにも近づくたびに老竜が反応して卵を庇う…それ以降彼らはどうにかしてやれないか模索を続けていた。
「なぁ、なにかしてやれることはねーのか?俺ぁ鍛冶職人だからそっち方面には疎くてよ…」
「自分には無理ですね…。ハルの回復魔法も無駄でしたし。」
「禁書は?生き延びられなくても親の愛情とかそういうのを伝えてあげたいのよねぇ…せっかくここまで真剣に守っているんだし。」
「確かにそれが出来たらいいにゃ。図書館で見なかったのにゃ?」
「…禁書庫でとある魔法を見つけたことがある。親の記憶と経験、想い、それらを子に繋ぐ魔法だ。親のすべてを子に引き継ぐ一方で親は代価に死ぬ。…親の死に目に会えぬ、子の生まれる瞬間を見れぬって事で禁書指定されていたらしい魔法だ。魔力消費もけた違いだから興味なかったんだが。」
「それは親の愛情も繋いでやれるって事でいいのかにゃ?」
「親の記憶も渡されるから出来るとは思うんだが…まず呪文がなぁ…」
「『禁術』持ってなかった?普通の魔法スキルはレベルが上昇したら新しい呪文を覚えて、自動的に呪文もスキルの中で表示されるようになるでしょ?」
「『禁術』は『図書館』で呪文を記録してカンペ状態にするか自分の努力で暗記することでしか出来ねーよ。」
「え、そうなの?」
「『禁術』のレベルはスキルの熟練度ではなく世界に存在する禁術のどれぐらいを知ったかという一種の到達度の証でしかないっていうのは高レベル魔法ユーザーの間では有名ですね。」
「とりあえず『図書館』にいろんなワードをかけて今検索中。俺が言うのもおかしいが万を超える本の中、下手したら数十万に及ぶ魔法の中から探すんだ、時間が掛かる。早く見つけたいんだけどなぁ。」
「『図書館』スキルを覚えた状態で読んだ本の情報がすべて記憶されるって本当にチートですよね…。そして万を超える本…いや分かってましたけどこうして本人から言われると本当に同じ人間か聞きたくなりますねぇ」
「検索機能はlevel5を超えたら追加されるぞ?俺は今level8」
「何しろ『本の海の住人』だからなぁ。ていうか設定上は竜人だぞこいつ。アル、このスキルは取得条件が笑えねーぞ。うちのギルドでも何人か目指したが諦めて鍛冶に戻りやがった。2か月は頑張ったらしいがそれでもまだまだだったんだと。強力な分条件が厳しいのは常識だがこれはなぁ…」
設定上とか地味にメタいこと言い放つおっさんである。
「そもそもなぜ商人が図書館にこもってるのか聞きたいわね」
それは作者も聞きたい。
「天才と馬鹿は紙一重とか聞いたことあるにゃ」
「ひどい」
「いや合ってると思いますよ?」
「おう、違いない」
「っていうか見つかったの?」
「見つかったけど問題が発生」
「今度は何なんだ…」
「『禁術level3』で多少消費魔力は軽減されるんだけどそれでも結構でかいんだよね。魔力譲渡してくんね?」
「「「「どうやって」」」」
「あり、知らねぇ?魔石に魔力を込めればそれを他人が吸い上げて自分の魔力に変換できるんだけど」
軽く言うが変換効率や相性の問題で実用とみなされず図書館のお蔵入りになっていたのをこの男忘れていないだろうか。
「そんなこと初耳よ。魔石はあまり持ってないわねぇ…まぁやるけど」
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「これだけしかないけど足りる?」
「まぁ大概の禁術は最初でむっちゃ魔力を吸われるだけだからそれさえ越えれば何とかいけんだろ。ところでさっき倒したイノシシの料理進めといてくんない?終わったら絶対腹減る」
「進めときます。でも見てていいですよね?」
「おう。んじゃやりますかね。あ、モンスターとか来ないように見張りよろしく。」
リョウはボードに『図書館』で検索した呪文を表示させると今回の状況に合うように呪文を変えつつ老竜の前に進み、大きく息を吸い込んだ――――――
『図書館』チートです(実は禁術の仕様がやたら厳しいんです)。
実はセリフが多いですけど実際書き方がまだ決まってないんですよね。そこらへんに皆さんの意見を聞きたいです。それもあって俯瞰とリョウ視点入れました。
あと一応R15付けてるんですけど怖くない気がするので外すかどうか悩んでます。
次回は今日の午後6時を予約。(す、ストックが…危険域に…!)