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【更新】迷子から始まった異世界冒険譚【無期限停止】  作者: 音燕
第4章 ~首都・ティホルン~
42/47

37―過日の戦闘―

お久しぶりです(;^ω^)

ずいぶん長らくお待たせしました(;・∀・)

待っていてくださった方々、ありがとうございます(感謝)


本日から投稿再開します(。-`ω-)


しょっぱなから5人の視点ではありません…が、他人の目から見た彼らって書いて見たかったんです(;^ω^)


とりあえず本日から投稿再開、2日に1話の隔日投稿をします。(たまに連日?)よろしくお願いします(´・ω・`)


「ふむ…話を要約するとお主らの救援に来た者たちもまた中心人物と思われる少女と遭遇していたという事か。…トレディアは確かに大きな都市の一つではあるが重要な都市ではなく、抑えたとしても戦術的な価値は低い。本当に何が目的だ…?」


シークアランス海洋大国首都『ティホルン』…その中央に位置する王城の中の一室で第2騎士団長ヤルディンは白と金を基調としたローブに身を包んだいかにも高貴な身分の壮年の男性と向き合っていた。

彼は王都に着き隊を一度解散させた後宰相と共に登城して今回の事の次第を国王に説明していた。


「そのあたりの事は私には分かりませんが明確に申し上げられるのは敵がその気になれば我が第2騎士大隊を直ちに殲滅可能であったという事です」


ヤルディンは国王に報告をしつつも数日前、自らの命が救われたときのことを思い出していた。


―今から10日ほど前


「ちっ…!いくら斬っても斬っても湧いて出てきやがるなこんちくしょう!…シロン!他の戦況は!?」


「少々お待ちを!…右翼は優勢…ですが武器の損耗が大きい模様!左翼がやや押されています!中央も団長以外の戦線が崩壊寸前です!」


「かなり押されてるわけか…本当にまずいなこりゃ…『トレディア』の戦力は当てにしてなかったがまさか本当に途中で撤退するとは思ってなかったぜ。こりゃあ本当に嵌められたか?」


北門を守る皇太子直下の騎士団『第2騎士大隊』の面々は森の奥から出て来る大量のオーガの群れと激しい戦闘を繰り広げていた。彼らの後方で支援をしていた「トレディア」の人々は黒い炎の発生と同時にその意思を失い町の中に戻ってしまった。

ヤルディンたちは彼らの眼から光が消えたことに気付かなかったが、雰囲気の変化は敏感に感じ取っていた。

西門のサラのように町の人々から武器を向けられ本当の意味で周囲を囲まれなかっただけましなのかもしれない。しかし依然として彼らが苦境に立たされているという事実は変わらない。



今彼らのもとに殺到しているオークをもしリョウが見たら

『何これ本物の豚男じゃね?現実に居るとは思わなかったなぁ…いや待て空を飛べない豚はただの豚なんだっけ…てことは直立2足歩行する豚か?』


等とこの世界の人々からすれば良く分からないネタを言ったであろう。まぁ最もリョウ・ハル・ローの三人とヤルディンの間に面識がないためもし聞こえたとしても彼の言動に興味を持たなかったであろうが…。



オークは豚の頭を持ち、その身長は2メートルを優に超える巨大な体格を有し、衣服は名前の分からぬ動物の皮を腰にまといそれ以外の部分は露出した格好をしている。体色は豚の肌色に緑色を混ぜ合わせたような色…正直言って吐きそうな色合いをしていた。

棍棒を持つ個体と持たぬ個体に分かれており、持たぬ個体の比率が圧倒的に大きかった。


オークの強みはその巨大な体格やその棍棒をまさしく質量兵器の如く大きく振り回すことで相手の攻撃を受けつつもそのタフな体力で耐えて押しつぶすところにある。重いという事はそれだけで運動エネルギーの増加に直結するのだ。

しかしながら今オークたちは一方向からまとまった数が続々とやって来ているためその巨体をさほど自由に動かせていなかった。そのため第2騎士大隊の面々は剣を彼らの関節部位に突き刺すなどしてその行動範囲を狭めることを中心に戦闘を繰り広げていた。


一体のオークが倒れた場合混雑がひどすぎるために踏みつぶされて死ぬオークはもとよりその転倒に巻き込まれた数体にも被害は拡散する。第2騎士大隊の面々は想定をはるかに超える大群が来たことによりかえって生存確率が上昇していた。


彼らは現代社会で言う「ヒット&アウェイ」戦法を最大限駆使し自軍をはるかに超える数のオークたちと同等に渡り合っていた。


しかしながらその戦況も騎士たちの疲労や武器の損耗によりじわじわと劣勢に追い込まれていた。600名ほどの隊員に未だに一人の死者も出さず2000近いオークを倒し、その討伐数を増やしている彼らは本当の意味で優秀なのであろう。しかしその戦線が崩壊する時は一刻一刻と確実に彼らの足元へと迫っていた。





――ふむ、後5分持てばいい方か…いや、持ってどうするんだろうな。援軍の来るあてが存在しない今、いくら持たせてもそれは死が多少遠のいただけだ――


ヤルディンの脳裏にそんな自嘲の念が横切ったその時―――




「…は?」



今の今まで彼らに対し攻撃を加えつつ前進していたオークのあらゆる個体がその動きを止めた。


いぶかし気に思いつつもこれを機と捉えたシロンの号令により隊員が一斉にオークから距離を取り、今のうちにと損耗した武器を変えたりしている所に―



「初めまして。…と言った方が良いのでしょうか?もう会う機会は無さそうですがそのような相手にこそ礼を失してはなりませんので」


オークの囲みの中から柔らかな女性の声と共に青い髪の少女がその髪を風になびかせながら現れた。


「お前は…何者だ?このオーク共はお前の手下か?」


少女が現れたのはオークの攻勢が止まった直後である。彼女とオークに関係性が無いという方がおかしい。また、これらのオークは迷宮からあふれ出してきた(・・・・・・・・)モンスターだ。それが少女に一切の危害を与えない等、ヤルディンの知識から見ればありえない光景だった。


「――何者…ですか。それはあなた達にはかかわりのない事ですし、このオークに関しても教える必要性を感じません」


「(まぁそうやすやすと教えてくれるわけが無いか…)…そうか。なら何のためにここに来たかぐらいは教えてくれるか?ついでにいろいろゲロってくれると嬉しいんだがな」


「団長…下品です。それとうかつに相手を刺激しない方が…」


「遠回りに訊いて結果が得られるとでも?はっ、この戦況を考えてみろ。周囲には未だ途切れぬオークの群れがいる上にもしあいつが一声かければ俺らはあっという間に…な。予測だがそう外れている訳もねーだろ。いっそ単刀直入に聞いた方が面倒が少ない。…それにな」


ヤルディンはシロンの方へ半ば向けていた顔を少女へと向け直す。


「多分あいつは俺らにゃ手を出さねーぞ」


「ふふ…自信満々に言い切りますね。……もしここで命乞いや身の程知らずの挑発をしてくるようなら圧殺しても良いかと思っていたんですけど、やめておきます」


「(それっぽいことを言って失言を取り返そうとしたらマジで綱渡りだったんだが…)」


「(団長…この状況であんた馬鹿ですか?馬鹿なんですね。頼みますから黙っててください)」


小声で肝を冷やしたヤルディンとシロンがやり取りする一方で少女はここへ来た目的を語りはじめる。


「私がここに来た目的は一つだけ。あなた方の上司に警告をするためです」


「警告…だと?」


「ええ。これよりしばらくの間トレディアは私()の支配下に入ります。あぁ、住民も建築物もあらゆる意味で…です。まぁ要はこれ以上ここに関わらないで撤退しろという事です。いずれ時が来れば返還しますし心配はいりませんよ?」


「…ここを手に入れて何をしようと…?」


「教えるわけが無いでしょう?…あぁ、その身をもって知ったと思いますが私達には迷宮のモンスターを操る力が存在します。ですので手出しはお控えになられると良いかと。その辺りも加えて上司の方々にお伝えください。『手出し無用』…と。では」


少女は一方的に話を切り上げると元来た方向へ引き返し始める。オークの群れの中に入り込んだ少女が見え気配すらも無くなる直前、彼らにとっての絶望の宣告が聞こえてきた。


「そうそう、上司の方にお伝えくださいと言いましたが…オークの群れはここにこのまま置くので頑張って脱出してくださいね」


「…んなっ!?」


ヤルディンのみならず多くの隊員が驚愕の声を上げたと同時に今までおとなしくしていたオークが一斉に踏み出してきた。


――伝言を頼むんなら脱出の機会ぐらいはよこせよ!


奇跡的にヤルディン以下600名の内心が一致し、多くの隊員が今度こそ死を覚悟した時…それ(・・)はやってきた。



「――空舞う流砂よ、荒れ狂え『(サンド) (ストーム) 』」


「――飛沫(しぶき)一矢(いっし)、その身に纏え『水麗細剣技・穿(うが)ち水』」


ヤルディン達に襲い掛からんとするオークの大群の勢いを完全に止め、あまつさえ細かな傷を無数に負わせる大量の砂交じりの暴風が吹き荒れた。


そして霞がかったヤルディン達の視界に一瞬青い線が走ったかと思うと前面に立つオークのほとんどがその場に崩れ落ちた。


「どうやらぎりぎり間に合ったようですね」


「あまり面識がないけど…さすがに目の前で死なれちゃ目覚めが悪いのよね」



最初の足止めの砂嵐はサラの土魔法と風魔法によって引き起こされ、ヤルディン達の目の前を走った青色の線はアルが細剣に水を纏わせ戦場を一息に駆け抜けた残像であった。



「おい…お前ら旨いとこだけ取ってくんじゃねぇ、俺らにもよこせや」


サラの土煙に紛れて『ヤマタノオロチ』の面々が文句を言いつつも一定の間隔を保って第2騎士大隊の前面に立った。


約600人いる騎士大隊とはいえ、後方の警戒や負傷者の回収などにより前線に立っているのは約半分ほどであった。そして全員が横一列に並んでいたわけではなく複数列に並ぶことで疲労の軽減を図っていたためにヤマタノオロチを含めわずか8人の増援は10人程の間隔を開けて立っていた。増援は来たがそのあまりにも広い間隔と少なさに本能から危機を感じたのだろう、全体の士気が急低下しこのまま一押しされればそれだけで潰走しかねない状況であった。




街を脱出した後迂回したアルたちは騎士たちと少女の対話を遠目から眺め、一時停戦を結ぶと思ったために手出しを控えていた。しかし気が付くと再びの衝突が発生しそうになったのを見てアルとサラが飛び出し、ヤマタノオロチが追いかけた…と言うのがここに至るまでの経緯であった。


――ノリで出ちゃいましたけど、これはどうにも良い状況じゃないですよね。拮抗…いえ、優勢に持ち込まないと後ろの方が危険ですかね?


――飛び出したのそっちなんだからアルがどうにかしなさいよ?


――うっ…仕方ないですね…


サラと目のやり取りを終えたアルはおもむろに未だ水を纏い続ける細剣を自らの頭上に掲げた。オークたちの周辺では未だ砂嵐が激しく舞っており、茶色の背景に反して日光を受け青く煌めく細剣は第2騎士大隊の面々の注目をより一層集めた。



「――皆さんの使命とは何なのでしょう?その剣を持った意味とは何なのでしょう?その鎧を着た意味とは何なのでしょう?」



唐突に騎士の意義を問われた第2騎士大隊の面々はその多くが『民を守る、王子を守る』という答えを思い浮かべた。しかし―


「――今皆さんの背後の街は守るべき民が居る場所でしょうか?守るべき王子が居る場所でしょうか?――私は先ほどあの少女の同類と遭遇しました。彼女曰く『住民に死者は出させない』との事でした。更にはあなた方の本来守るべき王子はあそこにはいないのでしょう?では何のためにここで踏みとどまっているのです?戦っているのです?」



アルは全面的に彼らが今まで戦っていた理由を否定した。このままでは士気上昇どころか更に落ちることになると感じたヤルディン達がアルを止めようとするが―



「――否。貴方たちが戦う理由はそれではありません。確かに国への忠誠を誓って騎士団にいるのでしょうが…心の奥底では国のために戦っているわけではなく、貴方たちの家族、婚約者、親友の為に戦っているのではないですか?彼らを養うためにその剣を握ったのではないのですか?

…武器を持つ理由には様々なものがありますが、本質はほとんど同じです。家族や婚約者、友人、名誉…各々最も守りたいと思うものを守るためにその手に握るのです」



第2騎士大隊の目に光が戻る。彼らは今、国の忠誠よりも自らがここに立つきっかけとなった人や家で待つ人々の顔を思い出していた。



「――死期を伸ばすためではなく生きるためにその剣を握りなさい。これからも大切なものを守るためにその剣を握りなさい。…僕たちが道を開き、そこを駆け抜けます。これだけの人数が無事に生き残るのは至難の業ですが…」


アルは細剣の切っ先をオークの群れへと向ける。サラの張った砂嵐も徐々に収まりかけており彼らが攻めてくるのも時間の問題であった。

アルはそのまま後方を振り返るとその端正な顔を晴れやかに煌めかせながら


「騎士団の方々なら可能でしょう?」


実にいい笑顔で言い切った。


アルの語りを聞いていた第2騎士大隊の面々の表情や体に力が戻り、それぞれが戦闘態勢に入った。


「…落としまくってから上げなくても良かったんじゃないの?」


「いえ、こういうのは落としてから上げたほうがいいと思いますし実際うちのギルドマスターもこうやっていましたよ?…それに案外騎士って言うのは国とか矜持ではなく親しい者のためにその剣を握った方が強くなるんですよ…多分」


オークの周囲を吹き荒れた砂嵐が収まると同時にアルは駆け出し、それを追う様にサラとヤマタノオロチも駆け出した。一拍遅れて第2騎士大隊もオークの群れへと突進した。この戦いで初めて彼らが自ら攻める事となったのだ。




「我は請う 細き流れと 水霊に 『誓いの水閃』」


オークと衝突する直前、アルの細剣から大量の水があふれ出す。そのままアルが剣を振るうとその水は刃に変じてオークに傷を与え道を切り開いていく。

アルが剣を振るう事によって水は少しずつ減っていくが、アルの後ろ、第2騎士大隊の駆け抜ける足元には彼らを誘導するかのように2本の水の線が走っていた。まるで誓った以上は一人もはぐれさせないというかのように――




「あたしも一応乗っておこうかしら… 誓いの宴 語らう宴 忘れはしない 万梅の下 美酒の酔いを 『宴の(家族の) 大樹(誓い)』 …やり過ぎたかしら?とりあえずあんたら付いて来なさい!」


アルがオークの群れに突っ込むと同時にサラも()魔法を構築その後方に第2騎士大隊の面々を従えて突入していた。

魔法を唱え終わると同時にサラの前方、オークの足元から大樹が生え、枝でオークを攻撃しつつ道を切り開き始めた。すなわちサラはいまだに伸びたり増え続ける大樹の枝に駆け上がるとそのままの勢いでオークの群れの向こう側へと走り出したのだ。




――上空から見たらさぞ面白い光景が見えたことだろう。オークの大群に対し『ヤマタノオロチ』とアル・サラ計8人に率いられ8つに分かれた騎士の隊列がまるでフォークのように食い込んだのだ。その先頭では水しぶきが煌めき、枝がまるで生きているかのように蠢いていたのだから。


―――――

「――ヤルディン!聞いているか?」


「はっ、陛下、申し訳ありません。先日の戦いを思い出し気が散っておりました」


「まぁ話を聞く限りでは激戦であったようだからな…かなり疲れている事であろう」


「はっ」


苦笑するような響きを含んだねぎらいの言葉にヤルディンはただ頭を伏せ返事をした。


「して、その者たちの名前は…あぁ、『ヤマタノオロチ』以外でと言う意味だ」


「『アル』『サラ』と申しておりました。…かなりの強者です」


「ふむ…『アル』『サラ』か…二人だけか?」


「は?…いえ、彼らに仲間がいるとは聞いておりませんが」


「ふむ…まぁ良い、今は王都に居るのだな?」


「部下と共に入都したはずです。今頃は宿かと」


「ふむ。あい分かった。とりあえず第2騎士大隊に罰則等は下さぬ。ひとまず…そうだな、2日ほど休みを渡そう。破損した装備については…仕事に戻ってからだな」


「はっ、分かりました。では失礼いたします」


ヤルディンは立ち上がると部屋の出口へ向かい、最後に国王に対して一礼をしようと振り向いた。と…


「…時に防具等の修復費用はどれぐらいかかりそうなのだ?」


「…ざっと見積もって最低限1000万カクテは固いでしょうな。600名それぞれが何らかの武器防具の破損をしました故に」


「…頭が痛い事だ…」


何とも言えない表情のままヤルディンは国王の執務室を辞した。


ここまでです。サラの詠唱は…まぁ分かる人には分かるでしょうね(´・ω・`)


アル君が予想外の所でかっこいい…( ゜Д゜)愕然


少しずつ今までに張った伏線を回収していきたいなぁ…(。-`ω-)


出来るだけ回収方法も展開も予想外な方向で行くつもりです(; ・`д・´)<分からんようにして行ったる!

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