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【更新】迷子から始まった異世界冒険譚【無期限停止】  作者: 音燕
第4章 ~首都・ティホルン~
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36―異国の国王―

まさかの遅れ…すみません。

青く晴れ渡った空からギラギラと照り付ける太陽の熱に反抗するかのように青や緑で塗りつぶされた大量の屋根を見下ろした。

綺麗に区画整理した建物の間を走る道では子供が走りまわり大人が店先で買い物をする様子が見える。


「10年以上の年月とかなり大きな費用がかかると見込まれて反対者続出の区画整理だったが…」


我はバルコニーの手すりに手を掛け、もたれかかりながら誰に向けたわけでもなく呟く。


「つくづく若いときに始めて良かったと思えるな。まさか生きて事業の結果を見れようとは…」


掛かる年月と費用の大きさから結果の分からない事を国全体で一度に行うというわけにも行かず、規模と効果が目に見えやすい王都を実験対象として行ったが、結果は提案した私の予想以上だった。


長年の課題であった王都の端のスラムを一掃し、仕事に就けぬ者たちの多くに仕事を与えられた。更に乱雑だった建物の並びを綺麗に整えることで王都を取り囲む防壁と王城の間に現実的な導線を引くことに成功した。

衛生状態も区画整理の終盤に手が余った者たちにやらせたら格段に良くなり、ジパングとの貿易も商品の搬入が区画整理で楽になり衛生状態が良くなったために今年は以前の2割増しになっているという。

ついでに付け加えるのならば屋根の色もこの際だからと統一させたところここから見える景色が美しくなった。


「投資しただけの結果は十分に得られそうだ。3年…いや、5年もすれば貴族共もこの成果に気が付いて先を争うように区画整理を始めるだろう。」


この王都だけに留まらず各地で掲載が…我が国はこれからますます国力が上昇してゆくだろうが…


「だがその前提として内乱や対外戦争が起きぬように気を配らなければならんな」


「いえ、陛下は今でも十分貴族たちと対話を重ね、彼らの信頼を得られております。対外…他国も今は戦争を起こす気も力もありますまい。陛下の偉業は恐らく後の世に国家安定の土台として語り継がれるでしょう」


宰相が話しかけてきた。今しばらくは我が舵を取らねばならんだろうが…いずれ息子に王位を譲らねばな。我は妻達と王家の避暑地でゆるりと残りの余生を過ごして……こいつには引き続き頑張ってもらうとするか。


「陛下、途中から声に出ております…そして私陛下より先に辞めていいですか?…ゴホン、まぁ引退後の計画を妄想で(・・・)立てられるのは陛下の自由ですがしばらく気楽にできなくなりそうです」


…妻達に浮気がばれたのか?今から花でも用意させるか…


「いえ、違います。真面目モードになってください。ていうかまた(・・)ですか…国王としての政務は歴代1位と言われるほど立派なのになぜ下の方は…。今までは奇跡的に起きていませんがもし庶子が生まれてしまったらどうするんです?…後で王妃様に報告しておきますね」


ぬ…いかん、宰相より先回りして機嫌を取るか…。とりあえずこの場は話題をそらすか。


「…ゴホン。で…宰相、一体何があった?」


「…陛下、不安そうな顔をしながらそんなことをおっしゃられても威厳皆無なのですが…」


宰相からの視線が痛い…。こいつは有能なんだがズバズバ言ってくるのが玉に瑕だな…。室内に戻って政務を普段行っている机に座り直すと宰相が話し始めた。…まだ我は政務を再開すると言って居ないのだが…


「『トレディア』に派遣した第2騎士大隊…皇太子様の騎士団についてなのですが『トレディア』から撤退したそうです。団長のヤルディンからレイヴンが届きました」


レイヴン…国直属の騎士大隊のみに一羽だけ飼育が許されている調教された伝書鳩系統の魔物の事だ。その飛行速度は馬の中で最も早いと謳われるかの希少種『疾風馬』を越え町と町を高速で飛ぶ。


鳥という事で一応翼は存在しているものの魔力を風に変換して放出するという特殊な器官を持っているため周囲の環境に及ぼす影響が洒落にできないから緊急時以外は使わないことになっているのだが…


「レイヴンを使った上にその内容が我が国の領地から撤退…だと?何が起きた?」


「詳細までは…緊急だったようで重要な事は一切なく、ただ『トレディアにおける活動が不可能と判断したため撤退いたしました』と…」


「ふむ…確か第2大隊を名指しで要望されて出したのだったか?」


「まぁあそこは陛下の区画整理に賛同して王都の実験に多大な費用を出してもらっておりましたから…仕方ないでしょう。問題は皇太子の護衛騎士団が敗走したという事実です」


それだけでなくレイヴンの影響もな……強風で木がなぎ倒されたり魔力濃度が狭い範囲で急激に薄まるため魔力酔いをする者が出る為にレイヴンを使用した後はそのルートを特定して暫くの間立ち入り禁止にしなければならん。上向いてきた貿易や通商の阻害にならなければよいが…


「どれほどの被害が出たのかは?」


「副団長シロンからの報告も同封されていました。要約すると『オーガの群れが出現、優位で戦闘を続けるも外的要因が入り不可能に。撤退中に『ヤマタノオロチ』他二名と合流し、現在王都へ行軍中。迷宮が異常だったため各地の迷宮にも確認を支給するべきであると思われる』…だそうです」


…外的要因とは何なのだ…そこが一番知りたいところだろうに…


「残存兵力はどれぐらいだ?それが分からなければ他の迷宮に人を回せん…」


「どこかに書いて…ないですな。団長のヤルディンが『文書を書くより直接会って言う』タイプですからその影響で最低限の事しか書いていないのでしょう」


サアルはなぜあの男を第2騎士大隊…すなわち第2騎士団の団長に据えたのだろうか。武力面では確かにかなり有能なのだが…大隊全体をあの男の色に染められては困る。ものぐさ集団になってしまうではないか。


「近衛は引退後に我が持っていくつもりであったが一部を息子に譲らなければならなくなりそうだな…」


それはそれで残された者共が哀れか…一方は通年リゾート、一方は新王の補佐で毎日走り回る…。


「一応『第2騎士大隊』は次期王の近衛なのですが…この分では再教育が必要ですな」


「そこは任せよう。問題は第2騎士大隊がいつ戻ってくるかだが…」


徹底的にしごいてもらいたいところだ。でなければ我の近衛の数が減って引退後のバカンスが王都の近くに限定されてしまうではないか。


「恐らく1週間も無いでしょう」


「であればその時までこのことは極秘にしておけ。諸国に…特に騎士王国に漏れたらまずい」


「こう考えると詳細が書かれていなかったことは良かったのかもしれませぬな。最初に全てを知るのが陛下ですからその時点で箝口令を敷けます」


「ヤルディンがそこまで頭を回していると思えんが…」


「ですな…」


良く事実有根の浮気を疑われている我が言っていいのかどうかわからぬが希望的観測を信じられないというのは悲しいものだな…あ、ちょっと涙出た。


「では極秘裏に王都の周囲に人を張らせて第2騎士大隊が帰還し次第宰相が直接王都の()で事情を聞いて来い。国全体に知らせるべき事であると判明した場合は堂々と戻って来い。違っていた場合は…」


考えたくもないが訓練不足・もしくは反乱だな。


「人に見られぬように極秘裏に王城に入るようにせよ。…区画整理をした際に作成した地下道をヤルディンと共に通って来い。他の人員はばらけさせて個人の家まで戻らせよ。もちろん箝口令を敷いた上でな」


「分かりました」


さて…我も早く引退したいものだ。こんな大変な地位いつまでも務めてたまるものか。

ここまでです。

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