35―二度目の迷子―
今話はちゃんと正しく投稿してます!…多分。
時はサラとアルが町を守る壁の上で会話している頃に戻る――――
「いやぁ…俺ら恨み買うようなことしたっけ?」
「ここの迷宮をクリアしたこと以外に思い当たる節が無い…あ、あと『異界の理』とか言う変なのも封印したかにゃ」
「それぐらいか。なんでそんなことでこうなるんだ…やばい薬の効果でもあったのか?」
「それはごめんなさい。でもこちらとしてもちょっと困ったことになっているのよね」
周囲を囲んだ冒険者たちに武器を向けられていたリョウ達がそれぞれ戦闘態勢に入りつつも困惑していた所に若い女性の声が聞こえてきた。
声のした方に目をやると、リョウ達を囲んでいた人垣が自然と割れてその間からセーラー服に似た白を基調とした服に身を包んだ切れ目で冷徹な表情、黒髪をポニーテールに束ねた少女が現れた。
「あれは私達が研究しようと思っていたのでそのほかの迷宮を弄ってこの辺りを支配下に置くことにしていたんですけどね。他の2つより先にここが崩壊するように計画していたのに崩壊しないからこの人たちを操って囲ませたら…」
少女が冒険者たちを見渡すと一斉に武器を納めて少女に跪いた。それを冷徹な目で見ながらため息をついた少女はハルを見据えた。
「あなた達が封印したと言っているのが聞こえてきたのだけれど…それは本当かしら?」
「あはは…いやぁ、ちょっとやばいものだったらしいからこっちで封印させてもらったぜ。こっちとしても調べたかったし」
「ああ。…こっちもあんたに訊きたいんだがいいか?」
「あなた達にそんな許可は与えて………いえ、こちらも聞きたいことがありますし交互に訊く形なら許して差し上げましょう。何ですか?」
「偉く上から目線にゃ…」
「…まぁいい。この辺りの迷宮を弄った…といったな。そこから考えるにここと他の二つの迷宮が同時に決壊しそうになっていたのはお前たちの仕業か?」
「ええ。その通りです。…そろそろ他の2つが崩壊するはず……あら、噂をすれば…と言った所かしら」
少女が顔を向けた方角をリョウ達が見た途端、紫色の炎の柱が出現してリョウ達の視界の大部分を覆い、それと同時に大きな地震が襲ってきた。
「うぉっ…!?…チクショウなんだこの揺れは!?」
「私たちが『崩壊』と呼んでいる現象…あなた達基準では『決壊』と言うようですが…それが起きるとああなります。…さて、こちらから質問です。ここの迷宮の地下…コアにまとわりついていたモノは貴方たちが消したのですか?」
リョウ達が揺れの影響で立つことが困難になっている中平然とした様子で少女が訊いてきた。
「この揺れでよく普通に立っていられるにゃ…。あれは封印しただけにゃ。ただしうちじゃなくてリョウがやったにゃ」
「おいハル、あっさりばらすなよ!?」
「いや、この場合は正直に言った方が得だろう…っ!っと、ふぅ…次はこっちだ。お前は迷宮を支配することが出来るのか?」
「いえ、私はそんなに大したことは出来ませんよ?ただ…」
少女が冒険者たちを両手を広げるように示しながら話し続ける。
「色々制限がありますが人を支配…と言うか思考誘導ですけれど…できます。迷宮の方は私の友人駿君の力ですし、貴方たちが来た街を支配しているのも駿君です」
「いや…人を自由に動かせる時点で十分すげぇよ…『駿君』ってのはそれ以上にすごいけどよ…」
「あら貴方もそう思います?駿君はすごいんですよ。とても優しいですし、今回みたいに大きな事をやるときは『こういうことをやるんだがお前も来てくれるか?』って…とてもかっこいいんですよ。この間も…」
少女はリョウの言葉を聞くとその表情を一転させると頬を赤く染めて幸せそうな表情で饒舌に話し始めた。
「…リョウ、何で相手ののろけを引き出してるのにゃ…情報を引き出してほしいのにゃ」
「いやいや呆れただけでああなるとか思わねぇよ!?ネリーと同レベじゃねぇか!」
「…だがまぁ聞く限りだと『駿君』とやらが今回の中心人物らしいな。トレディアを支配しているというのが気になるが…あそこの支配者か?」
「はっ!…それはさておきますが…あなた達があれを封印したんですよね?それを頂け…」
「いや、無理」
リョウが少女のセリフを喰い気味に手を振りながら拒否する。
「何故ですか?対価が必要とでも?」
「いや…俺も予想してなかったんだけど…」
リョウは急に顔を伏せてスクリーンを呼び出すと操作を始めた。
「っと…なんでこんなにいろんな選択が要るんだよ…俺以外の奴には出来ないのにここまで厳重にやる必要あるのか…?お、出来た」
リョウが顔を上げると同時にその手の中に『異界の理』を封印した鎖付きの本が現れた。
「あんたが言っている奴なんだけどこいつに封印してんのよ。俺らもちょいと目的があって調べてみたくてね。ただ…」
リョウは頭を掻きながら言葉を濁す。
「何ですか?早く教えてください」
「俺も今取り出そうとして実感したんだけどさ、俺でも解けないぐらい厳重に封印しちまった!てへぺろ」
おどけながらリョウが言い切る。それと同時に本がうっすらとリョウの手から消えていった。
「おい…リョウ、それは本当か?」
「いや本気と書いてマジやねん。リアルに解けなくなってしもたわ」
「エセ関西弁は止めるにゃ。…どうやって調べるつもりだったにゃ?」
「さっぱり分からへん。コールの言う通りにしただけやで?文句はあいつに言ったれ」
「コール…締め上げるにゃ」
「では…私たちに譲っても意味がないと?」
「おう。いや、あげてもええんやけど多分解けへんで?封印した俺でさえお手上げなんや、そちらさんはもっと無理やと思うで」
「いい加減普段の言葉に戻れ…調子が狂う」
「あ、そう?ちょっとふざけてみた」
「こんな時にふざけるんじゃねぇ…」
「そうですか…では私たちのやって来たことは無駄だったと?」
「いやー、そこまでは言わねぇけどとにかく渡しても意味ないってのは確実だな」
「そうですか…では最後にもう一つ。貴方たちはこれからどうするつもりですか?」
「え?いやトレディアに戻るつもりだったけど…無理かにゃ?」
「何はともあれ私たちの計画は進行中です。そしてあなた達に入られると困ります。異分子は計画の支障になるので。できれば…」
「もし入ったら…どうなるにゃ?」
「駿君に嫌われそうですがあなた方を殺さざるを得なくなります。出来れば他の街に行って頂きたいですね。もちろんここであったことを言いふらしても構いませんしこちらとしてもこの国の上層部には伝えたいことなので」
「む…拒否権は…」
「無いですね。…お話はここまでです。色々と時間を押しているので…いえ、貴方たちのせいでもあるんですけどね…」
少女が手を振り上げるとどこからかその手に黒い球が現れ……少女はそれを地面に叩き付けた。
すると次の瞬間―――
――ズドォォッ
と小さな揺れを伴いつつ黒色の炎の柱が少女とリョウ達の中間に生まれた。その高さは初めは膝の高さほどで小さかったがじわじわと大きくなってきた。
「申し訳ありませんが直ちに逃げることを推奨いたします。命の保証はしません。ではもし皆様が生き延びられたらお会いしましょう。…もう会わないかもしれませんが」
少女の声が柱の向こう側から聞こえたと同時にリョウ達の周囲に存在していた冒険者たちが一瞬にして消え去った。
その場に残されたのはリョウ達3人と今もじわじわと拡大を続ける黒色の炎の柱だけだった。
「お前ら、逃げるぞ!」
ローの大声をきっかけに3人も反対側へと駆け出した。
「あれ何なん!?やばい気配しかしないって!」
「いいから動くにゃ!」
リョウ達が迷宮付近の開けた広場から森の中へ入った直後――
―――ズドォォォォッ!!!
黒色の炎の柱が急激に巨大化した。リョウ達はその衝撃と振動に煽られて転んだ上に吹き飛ばされ…
「ぬぅおおっ!?」
「あっ!?これマジで今俺空飛んでる!?うぉぉぉあべしっ!?」
「ふにゃあぁぁぁ!何で1日に2回も吹っ飛ばなきゃならないのにゃ!?」
リョウのみ叫んでいる最中に枝が顔を直撃して沈黙したが、3人は森の奥深くへと吹き飛ばされていった。
――――――――――――――――――――――――――
「…これからどうしましょ」
リョウ達一行は森と草原の境に出ると背後を振り返り未だに燃え続ける黒色の柱と紫色の柱を見つめていた。その脇には諦めていたマツが居た。リョウ達が森の中出口を探して巡っている最中に見つけていた。サクラも周囲に居ると思い探したのだが見つけられなかった。
寂しそうにいななくマツを連れてリョウ達は道なき道を進みここまで来たのであった。
「ふむ…個人的にはサラやアルたちの安否が知りたいが…このままじゃどうしようもないことははっきりしている。とりあえず他の街に行くべきだろう」
「やっぱそうなるか。…となるとトラベリアに戻るか?」
「あっちはこの国の端っこの方にゃ。出来るだけ中心の方に行って情報を集めるべきにゃ」
「だな。となると…」
ローは以前アルが買ってきた地図を広げた。
「この辺りを目指すか」
「了解。…現在位置はどこだ?」
「…歩けば何とかなるにゃ」
「2度目の迷子かよ…あの炎の位置から推測……無理だな……この地図迷宮がどこにあるか書いてねぇ…」
「とりあえず歩いていくしかねぇな。おっちゃん、ハル、行こうぜ!」
リョウ達はマツと共に歩み始めた。
ローが地図で指し示した街…その印の下には『シークアランス海洋大国首都・ティホルン』と記されていた――――
ここまでです。
これで第3章 ~トレディア~ 編は終了です。
これから先の構想を練るのでもしかしたら次話投稿が遅れるかもしれません。その時は活動報告に連絡を上げます。




