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31―最終の書庫―

遅れました。( ゜Д゜)あれ…休日じゃなかったっけ

扉をくぐった俺はここがどのような空間なのか何となく(・・・・)分かった。目の前、そこに広がる広大な空間と俺の両側をしばし見通した先にはただ白いだけの壁が遠くに広がっている。その角は一切見えない。天井も見えないほどの高さにあるのだろう。


そして王城や宮殿にでもありそうな数十本の蝋燭が立てられたシャンデリアが空中にいくつも浮遊していた。少し進んだ俺の目の前には周囲の色と対比したかのように真っ黒に塗りつぶされた演壇と一体化した透明なケースがあった。その中には…


「マスター。扱い方は持てばすべて理解できるかと。書籍番号0番…『空白の(ホワイト)(ブック)』です。これに抑えこめれば…」


「…ここに来て正直おめーに言いたいことが色々出てきたんだけど。……はぁ、分かった」


俺はその透明なケースに向けて手を伸ばして…ケースをすり抜けて(・・・・・)中の赤いビロードの布の上に置かれていた真っ白な本を手に取った。そのまま俺は門へと引き返し、ロー達の居る迷宮の中の空間に戻ってきた。

背後では先ほどの門が閉まり、振り返ると門そのものがうっすらと透け始め…しまいにはもともと入って来た穴が見えた。


「お、早い帰還だな。まぁとんでもない威圧感を常時放つ門を出されっぱなしって言うのはこっちとしても困るから何も文句はないが…閉めちまって大丈夫なのか?」


「問題ないと思う。取り出すのが大変なだけで仕舞うのは簡単にできるみたいだしな。えっと…なんて言ったっけウナギを取る伝統漁法の罠」


「あれはちょっと違うのですが…それよりもマスター急いでください。どうやら決壊の予兆が出てきたようです」


「核がひび割れてきたにゃ!急いで封印してからあれを壊すにゃ!取っている暇なんて無さそうにゃから封印したらうちが攻撃するにゃ!」



確かにコールとハルの言う通り核にひびが入っている。少しずつひび割れが進んで…加速度的に速くなっているから急がなきゃやばそうだな。


俺は核の周りの池の数歩手前まで近づいた。と、核を中心にしてちょうど90度描くところにハルとローが待機している。恐らくは一刻も早く破壊するためにばらけたのだろう。俺は一つ深呼吸すると息を大きく吸い込み――――



第0号(ファースト) 図書館(ライブラリ) 所有者(マスター) リョウの名において「最終の(エンドライン) 書庫(ライブラリ)」全権限の行使を宣言する――』


俺の手の中から本が飛び出し中空でパラパラとめくられる。そこから光り輝く文字列が数行現れ俺の目の前に並ぶ。いくつかの文字が並ぶ位置を間違えたらしく並んだあとで慌てて移動していた。

切羽詰まっている状況なのになぜかおかしさが込み上げてきたが、どうにかこらえ、文字を読み上げていく事にした。



―世界を(つづ)る 数多(あまた)の字 全て辿れば かの元に


―記憶を辿り 手は届く かすかな望み かの元へ


―全てを()るは ただ一つ あらゆる英知 集う元


―最後の一行 エンドライン 知識(初め)(やかた) ライブラリ


―貴様も参れ ()の中へ 世界の(われらが)英知(友を) 迎えよう



白紙を染めよ(レシーブ) その知にて(エィンシャント) 古代の英知(ウィズダム) かの元へ(ライブラリ)



一節一節読み上げるたびに細長い光の線になり飛び散って、いくつか纏まっては靄の中から透かすように煌めき、他の節や行も黒水の中から煌めいたり……そうしてそれらが組み合わさると池ごと包み込む立体的に光り輝く球状の魔法陣を形成した。


最後の一行だけは読み上げるまで俺の目の前で光り続けて読み上げた後に本と魔法陣を繋げた。すると魔法陣は小さくなりながらもその球体を維持したまま本の中に吸い込まれた。そのまま挟み込むかのように見開きの本の両側からページが挟み込むようにめくられ最後には「パタン」と小気味いい音を立てて閉じ、落下して俺の手の中に納まった。


本をじっくり観察してみたい誘惑に抗って俺が視線を核の方へ向けると――



「やばい、崩壊が加速したにゃ!うちがそっちに押し出すから壊れる前に破壊してにゃ!…『猫咲流拳技・掌底』!」


「分かった!……ふんぬぅ!」


核へと飛びながら中空でハルが掌底を繰り出し、その衝撃波で核をローへ吹き飛ばす。同様に飛び出したローが空中でハルバードを振るい核の破壊をした。


それにより封印した後どんどん大きく揺れ始めていた地震が急に止まり、一息ついた俺は先ほど黒い靄を封印した本を改めて見た。


「…なんだろ?白い鎖が何重にも巻かれてガッチガチに封印されてるな…表題も変な文字で読めない…。せめて黒じゃなくて白色の外見のままなのは良い事なのかもな…さすがにこの本までは汚染できなかったって事だろうし」


「ふぅ…核は跡形もねぇな…。リョウ、封印はうまく行ったのか?」


「まぁ多分うまく行ったと思うぜ。じゃなきゃこんなに鎖が厳重に巻き付いてるわけないだろ。…魔力を使わないであんなことが出来るとか規格外な気がするわ」


実際に門が開いてから今まで魔力が一切減っていない。入るまでが困難だが入った後は楽……どっかで聞いたな。


「解析とか研究できそうにゃ?」


「いやー、無理じゃね?我ながらこんなに厳重に封印してるからなぁ…たぶん鎖を解くだけで大変な目に遭いそうな気がする」


「まぁそれが『最終の(エンドライン)書庫(ライブラリ)』の封印用書籍ですから。マスター、書庫へしまってください」


いつの間にかあっさりとコールが出て来て俺に言ってきた。けどな…お前…まず初めに言うべき言葉が違うんじゃないか?

そう思いつつも俺は本を中空にかざす。小さいが先ほどと同じようなもんが現れて開く。その中へと放り投げるとすぐに閉じてうっすらと消えていった。


「…コール…お前なぁ…色々言ってなかったことあるだろ?」


「はて、何の事でしょうか?残念ながら私めは『最終の書庫』の権限は持っておりませんので…マスターのみが知ることで御座います」


「とぼけんな……中に入って色々知ったぞ…多分お前も知ってたろ。そもそもそうじゃなきゃあの本について知らなかったはずだ」


「はて、私めには分かりませぬ…整頓などの管理は要りませんから私が管理しなくても問題ないと思われますよ」


「十分知ってんじゃねぇか!分かっててやらせやがったな…お前の提案はもう聞かねぇ…」


ちょっと本気でこいつ殴りたくなってきた。実際に俺は向こうで面倒な事を知ってしまった。


「あの…良く分からないのにゃ…」


「ああ…命に関して問題ないんなら俺らはおめーのスキルに関しちゃあまり立ち入らねーから今度二人で揉めてくれや。で、コールこれで迷宮決壊は防げたのか?」


「少々お待ちください。…おそらく防げたかと思います。この部屋にほとんど魔力が残っておりますので決壊はしなかったと読み取れます」


逃げやがったな…後で問い詰めて(説教して)やるから覚悟しとけ。


「何でにゃ?そんなことで判断できるのにゃ?」


「何故か悪寒がしたのですが……モンスターを送り出すのには核が崩壊するときに出す今まで蓄えられた魔力が用いられます。上層のゴブリンなどの弱いモンスター程度なら既に溢れてしまったかもしれませんが中層や下層のモンスターを送り出すだけの魔力はまだ使われていなかったようです。


ロー様が破壊したことで核そのものがハルバードに吸収され、部屋自体に充満していた魔力もそのままとなっております。なので阻止できただろうと思われます。吸収された(コア)はもはや迷 宮(ダンジョン)(コア)ではなく純粋な魔力となりますからハルバード自体が強化されたはずです」


「なるほどな…ていうか俺のハルバードが核を吸収しただと?……確かに強力になってやがる…あ?名前が『破砕剣・壱式』だったのに『破砕剣・鳳凰』になって…おい俺が知らない特殊能力まで付いてんだけど何が起きた?」


「ふむ…恐らくそれはロー様がゲームから持ち込まれたハルバードだったからかと」


「え?でもこないだテッケンの所で打ち直しているの見たにゃ」


「おう。確かに俺が持ってきたハルバードだが、修行の一環とかでこっちの金属を使って打ち直したから半分近く入れ替わってる。だから厳密には俺が持ってきたものじゃないし能力もそう変わらなかったぜ」


「ゲーム…あちらとこの世界の理は根本では同じですが厳密には異世界なので御座います。異世界の金属とこの世界の金属が半々の割合で混じり合った故にそのハルバードは新たな器に生まれ変わったのでしょう。


能力に関してはあまり変わらなかったとおっしゃいますが、それは元々異世界で注ぎ込まれた能力を受け継いでいただけ……核…というか核の魔力を吸収した時に迷宮(ダンジョン)(コア)特有の能力が注ぎ込まれて器が満たされたのだと愚考いたします」


「追加された能力の一つの『自動修復』はそれでか…そういえば核は時間が経てば再生するとか言ってたな。そいつが吸い込まれたのか」


鍛冶職人が持つ武器が鍛冶要らずの武器って…俺には意味わからん…


「てか何だこれ『焔化:注入した魔力が尽きない限り燃え上がる』!?」


「中二病にゃ」


「だな。おっちゃん…名前の由来といい今回の能力といい……隠れ中二病か?」


「んなわけねぇよ!何で迷宮核を破壊したら武器が燃え上がるようになるんだ!?」


…それは確かに気になるな。だけど俺は今それより気になることを思い出したんだけど。


「さっき『4体のサイクロプスが出たのはあの靄のせいだと思う』って言ってたがそれが無くなった今はどうなるんだろ?」


「…一介の執事には分かりませんな」


役に立たねぇなてめぇ!さっきのうんちくはどこ行った!?


「そもそもここが迷宮の中で最後の部屋なら転送魔法陣とかあるはずじゃなかったかにゃ?見当たらないにゃ」


「確かに…上か?」


「迷宮にも色々なパターンが御座います。この迷宮は最後のボスを倒した後にここへの階段か扉が開き、その一方でボスの倒れて魔石化した地点に魔法陣が現れるパターンかと」



…サイクロプスが死んでなかったら倒さなきゃいけないのかな?…ああそうか最初から倒すことを目的にして来ていたんだっけ…なら問題ないか?生きていたとしても1体だけだったら楽になるな。




そんなことを考えたり話したりしながら階段を上っていた俺らだったんだが…階段の縁から頭が出る前に皆固まってしまった。なぜなら階段からサイクロプスを見上げられ、その図体を見れたからだ。向こうからはマジックミラーみたいにただの床と同じようにしか見えていないようで俺らからは空気を踏んでいるかのように足を置いたりしていた。


「サイクロプスがだぶだぶでボロボロとはいえまともなズボンはいているとか驚きだったにゃー」


ああそれは確かに…いや、驚くのはそこじゃ無くね?


「物語の中だけかと思ったが本当に斧や槍など色々な武器を持っているんだな…」


惜しい!おっちゃん、そこも確かに驚くポイントだけど別のところ見てくれ!


「八面六臂って言うんでしたか…いえ、この場合は四面六臂と言うのかも知れませんな」


…コールが言うのかよ…まぁいいや。確かにハルやローが別の方面に驚いたのは多分現実逃避をしたんだろうな。


俺らが見上げたサイクロプスは4つの顔が1つの頭について360°の視界を見渡せるようになっていた。更に6本の腕を持っておりそのうちの4本が何らかの武器を持っていた。階段から観察している限りは1体だけのようだった。


俺らは一体一体ならたぶん討ち取れると思って来た。一番弱い俺でも自由に『図書館』を使える今なら魔法書のごり押しでそれぞれ離れたところで戦って勝てると考えたからな。アインもゲーム時代は格上を撃破して俺に手紙を届けに来たぐらいだから最悪足止めできるだろうと思っていた。


けど、360°の視界を確保して6本の手…そのうち4本は武器持ちのサイクロプスなんて勝てる気がしねぇ。陽動も意味ないだろ…


「コール…何なのコレ。どうやって倒すんだ?」


「恐らく4体居たのはあの靄のせいで合っていると思われます。ですがあの靄を封印したことで迷宮核が影響下から外れロー様が破壊するまでの間にダンジョンボスを通常の1体に戻ろうとして融合したのではないかと。しかし…短時間という事もあったのでしょう、そう簡単には行かず2本の腕は消滅してしまったのでは」


冷静に言ってる場合じゃ無くないか?1体として完全な時より厄介さ増してるよな?倒し方は?


「倒し方については…分かりませんな。何しろ初見ですので」


…俺が見ていなかったり本で知らなかったりするのならば同様にコールが見ていたり知っていたりする訳無い…か。


「ふむ…あの武器の製作者を知りたいな。鋳造とも鍛造とも分からん作りだ」


「こんな時まで鍛冶魂発揮しなくていいにゃ…」


「ていうかこうなってまで何で残ってんの?」


「さぁ?恐らく迷宮のボスは核から独立した存在なのではないかと愚考いたします」


説明を投げやがったなコール。…だけどこれ本当にどうしよう…



ここまでです。

いつも読んでくださりありがとうございます。

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