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28―会議―

遅れました。

「――ではこれから間もなく迷宮決壊を起こすとみられている『トレディア』周辺に存在する迷宮への対策会議を始める。――あぁ、その前に今回から参加することになった冒険者を紹介しよう。Bランクという事で現在最も手薄になっている西門の指揮の手伝いを頼もうかと思っている。…自己紹介してくれないか?」


冒険者ギルドの受付の奥、ギルド職員の案内を受けて進んだ先の会議室の楕円形のテーブルには今回の事態の対応のために派遣された騎士の指揮系統やギルドの上層部、更には高ランクと思われる冒険者が詰めていた。

アルとサラは街中の防衛を引き受けたためにここに呼ばれていた。リョウ・ロー・ハルの三人は基本的には3人での迷宮攻略となるためギルドの前で別れた。今頃は既に町の外へと出ている事だろう……そんなことを考えつつもアルは中央に座っている騎士に従い自己紹介を始めた。


「えっと…とりあえずは皆さん、初めまして。Bランク冒険者のアルと言います。レベ142です。以前滞在していた『トラベリア』では『魔の草原』とか言うところに生まれた迷宮の初回攻略をしました。防衛の役に立てたらいいなと思っています。……指揮の補佐とか今初めて聞いたんですけど」


するとアルに自己紹介を促した騎士が…


「ギルドの方から推薦があったからな。そこら辺は後で聞いてくれ。…次に嬢ちゃん頼む」


「…ちょっと納得いかないわね…ええとあたしのレベルは118ね。エルフって見た目で分かるかもしれないけど、精霊術師をやってる。アルと一緒にこの町の防衛を手伝わせてもらうわね」


サラの自己紹介が終わると間髪入れずに中央の騎士が話し出した。


「とまぁ、彼らはレベル100越えのBランクと言うわけだ。正直今回の件に関して物資の多くは確保できている物が多いが、人的資源が足らん。彼らには我らが中心になって防衛する北門とは別の門…冒険者が中心になっている西門の防衛に回ってもらう予定だ。…本題に入る前に彼ら自身の事で気になることはあるか?」


「では私からいくつかよろしいでしょうか?団長」


中央の騎士の傍らに座っていた男が発言を求め、挙手をした。騎士は頷くことでそれを認めると、男は発言を続けた。


「とりあえず私たちの自己紹介をしましょうか。この騎士は第二騎士大隊…早い話が国の第二騎士団の団長ヤルディンです。…書類仕事は壊滅的ですが恐らくこの国で上位の実力の持ち主です。そして不本意ながら書類面での補佐をさせられているのが僕、副団長のシロンです…今は副隊長になりますか」


シロンと名乗った男はアルたちから見て中央に座る騎士を指すと全く目上として思っていない口調で上司の商会をした。指されたヤルディン団長―大隊として派遣されている現在は隊長になる―は「上司に対して敬意の欠片もないなぁ」とぼやいたがシロンの「だったら上司らしく部下の手本となるように仕事から逃げないでください」の一言に沈黙した。

アルたちは彼らのやり取りにどう返せばいいのか分からずあいまいに頷いていたが、周囲の人々がほほえましい顔や楽しそうな顔で見ていたため「このやり取りはいつもの事なのか」と思い、多少の気負いが抜けた。そうしている間にもシロンの説明は続き――


「――彼らが薬剤系の担当ですね。そしてあちらがここのギルド長、副ギルド長、この町の領主の代理人ですね。あぁ、あそこの冒険者の方々はお二人の一つ上のAランクの冒険者のパーティ『ヤマタノオロチ』の方々ですね。西門の防衛を担当していらっしゃるので先ほどの件についても後ほどお話をされるとよろしいでしょう」


シロンに紹介された人々からの頷きや目礼を返しつつアルとサラは真剣に彼らの顔と役職を覚えていた。


「―さて、紹介はこんなものでしょうか。…団長、本当なら進行役の貴方がやることなんですよ?…では私からの質問です。アルさん、貴方のレベルは142だとおっしゃいましたね?ギルドの規定では100からBランク、125からAランク、150からSランク、175からSSランクが基準のはずです。

レベル以外の理由でランクが変動することはありますが…そのような事例はあまりありません。何故ですか?」


シロンから射貫くような視線を向けられたアルは思わずたじろいだが、ランクの理由についてはそこまで興味を持っていなかったため正直『分からない』としか思えなかった。アルが困惑していると見て取ったのか、ギルドの職員が横から発言してきた。


「それについては『トラベリア』のギルドから報告を受けています。あちらに初めて来たときから100を超えていたため最低でもBランクの冒険者として認定するのに決まったそうですが、戦闘能力が不明だったためAランクに上げるかどうか保留したとのことです。


迷宮攻略についてもギルド側で提出されたコアの質から高難度と言うところまでは判明しているが普段の依頼を共に行動しているCランク冒険者に合わせていたため本人の実力が未だ不明だそうです。そのため特記事項として戦闘能力の確認ができるまではBランクにするようにカードに情報が書かれていました。」


「なるほど把握しました。団長、もう十分です」


「他の奴は質問ねぇな?…なら本題だ。前回の会議からのそれぞれの対策の進捗状況を報告してほしい」


ヤルディンの宣言と共に会議室に居た様々な人から報告や討論が始まった。アルはそれらを聞いて考え始めた。


――うーん、現状では様々な物資が届いているのは確実みたいだね。どうも先ほど会ったサンズ君の働いている所が中心になって運び込んでいるみたいだし…あんなでかいところがやっていればそりゃあ色々集まるだろうね。木の棒を1000本以上用意するとか訳分からないけど。木刀でも用意するのかな?…いや、壁の上から落とすのか?

…まぁでもそれらの物資をどこにどれほど配分するかで揉めているみたいだね。南と東の門は備えていない…一応ある程度の数は置いているみたいだけど騎士団のほとんどが北門、冒険者は西門に配置しているだけみたいだ。

冒険者と騎士だったら命令系統もかなり違うからそこら辺の整理もあるのかな?…でも話を聞く限り他にもAやBランクのパーティも居る様だしなぜ彼らに補佐の役割を振らないんだろうか?

僕たちが聞くより有意義なものになるんじゃないか?後で聞いて欲しいと言ってたけれど、今聞いた方が良いかもしれない…


「―あの、すみません」


「何ですか?」


シロンがアルの方を向いて尋ねてきた。


「ええと、やっぱり今のうちに聞きたく思いまして。何で僕たちが『ヤマタノオロチ』さんの補佐になるんですか?話を聞く限りでは他にもAやBランクの方々が居るんでしょう?今日来たばかりの僕らである必要性が分かりません」


「あぁ、そういえば他の方々については話していませんでしたっけ…確かにいますが、彼らには迷宮を見張ったり攻略したり、中には迷宮のモンスターの種族的に予想される進行経路に罠を仕掛けて貰ったりしています。また、モンスターたちが迷宮から出てきた場合まず間違いなくこの町を目指します。ですのでこちらの準備を出来るだけ整えるために連絡役も兼ねてもらっています」


「そういう事ね…でもそれなら低ランクを回せばいいんじゃないの?」


「サラさん、確かにそうすることもできますが、それではこちらに連絡をした後レベルや実力、経験の差で彼らは逃げきれず死んでしまいます。迷宮から出たモンスターはその体を構成している魔力が不安定になり、それを抑えようと出来るだけ人の多いところを目指して襲い掛かり、魔力を吸収することで安定化させる習性があるので実力のない低ランクの冒険者は良い的です。

ならば低ランクは町の防衛側に回して数をそろえて致死率を下げ、出来るだけ有効に力を出してもらわなければなりません。高ランクの方々なら連絡をこちらに入れた後しばらくは追われるでしょうが、そういくらも経たないうちにモンスターが諦めるでしょう。つまり高ランクほど無事に離脱できる可能性が高く、その後門での戦闘の最中に機会を見計らってモンスター集団の横や背後を突いてもらえばより被害を与えられます」


「なるほど…では僕たちをこちらに回したのは?高ランクでなければならないというのなら僕たちがそのような囮になれば良かったのでは?」


「お二人は今日初めて来た街の周囲を目印や地図無しに逃げ回れますか?」


「あぁ、そういう事ですか…了解しました」


「理解したわ。…じゃああたし達は具体的に何をすればいいの?」


サラの質問にそれまで静かに見ていた『ヤマタノオロチ』のリーダーの男性が口を開いた。


「サラ…と言ったか。防衛では俺らが先頭に立つ。最大戦力の俺らが前に立たんことには正直戦線を維持できないだろう……まぁ低ランクに実力無いとは言わんが、そいつらを纏めて指揮する奴が必要になる。バラバラに戦ってしまったら連携が取れないからな…と言うわけでお前らは全体の指揮をしてもらいたい。前線の指揮は基本的に俺らがやるが細かいところまでは出来ねぇからそこら辺のカバーをしてくれ。精霊魔法や風魔法を使えば全体に指示を伝えられるだろう?」


「そういう事ね。…じゃああたし達はやばそうなところへの救援を命令すればいいのね?」


「ああ。後でもっと詳しく打ち合わせをしよう」


「分かりました。…議論を打ち切ってしまい済みませんでした」


アルが全体へ向けて頭を下げるとヤルディンが手を振りながら言い放った。


「いや、さっきは後回しでも良いかと思っていたが…よく考えてみりゃあ西門の全体統括はお前らになるわけだからな、戦っている最中に他の奴が連絡に来た時の伝言相手が分かってねぇと話にならなかったはずだ。今のうちに話や面通しが出来て良かったのかもしれん。…んでシロン、さっきの話の内容何だったっけ?」


「はぁ…ポーションなどの薬品や武具の各門や迷宮担当への配備率についてですね。他にもこまごましたものがありますが…追加で搬入されてくる物もありますので今のところ3割ずつを北・西門に配備、1割を迷宮へ、3割を戦時の備蓄として中間地点のギルドで保管すればよいかと思います。

…そして団長はもう少し記憶力を鍛えてください。さっきの内容ですよ?五歳児の脳ですか?」


「お前もう少し目上を敬えよ……今のところはシロンの案で行っていいんじゃねぇか?何か意見はあるか?……ねぇなら今日はここまでだな。解散だ。そしてシロン、お前ちょっと来いみっちりしごいてやる」


「僕は文官系なので失礼しますね」


ヤルディンの気の抜けた宣言と共に会議に来ていた人々が立ち上がり、たちまちのうちに会議室は騒音に包まれた。


「ねぇ、結局私たちは全体への連絡でいいのかしら?戦闘は?」


「もしかしたら前線が危険な時や『ヤマタノオロチ』の方々の休憩の時に入るかもしれませんね。…向こうに行って詳しく話を詰めましょう。よく考えれば布陣とか教わっておくべきでしょうし、まだ知っておかなければならないことがあるようです」


アルとサラは人ごみの中を先ほど会話した『ヤマタノオロチ』の所へと歩いて行った。


ここまでです。

今日から隔日投稿にします。…地味にきつくなってきました( ゜Д゜)

いつも読んでくださりありがとうございます。

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