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??―部屋の主2―

遅れました、すみません。

今話のタイトル『??―部屋の主2―』を受けて以前に投稿した『??―?????―』を『??―部屋の主―』に変更しました。

「お久しぶりです、シークアランス海洋大国皇太子殿下」


「いえ、貴方にそのような事を言われる立場ではないので…どうか以前のように『サアル』と呼び捨てにしていただければ」


「ふふ、ではサアル殿下とでもお呼びいたしましょう」


「いえ、出来ればサアルと呼び捨てにしていただきたいんですが…まぁ無理なんでしょうね。…あぁ、どうぞお座りください『先生』」


「ではそうさせていただきますわ」


シークアランス海洋大国の中枢、国家運営を司る城の内部、とある一室で一人のエルフ人の女性とイケメンとでも言うべき青色の髪の男性、サアル殿下が会談をしていた。エルフ人の女性は…以前にも見た正体不明の『部屋の主』であった。サアル殿下からは『先生』と言われ、敬意を払われていた。


「…しかし本当にお久しぶりですね…そのうえこうして外部からの一切の干渉無しに話すなど…僕の幼少時代以来ですか?」


「ええ、そうですね…私にとってはそこまで昔には思えないのですけれど…これも私の寿命のなせる業なのでしょうね」


「ええ、実際僕たち人族にとっての10年は大きいですよ……先生の種族、『エルフ』は寿命何年でしたっけ?」


「年齢ではなく寿命を聞きますか…ふふ、女性に年齢を遠回しに尋ねるやり方も覚えたようで何よりです。まぁあまり褒められたものではありませんけど…一つ間違っていることがあります。私は普通の『エルフ』ではありませんよ?普通の『エルフ』の寿命は大体2000年ですが」


「え…?ですが父上や身近な方々からは『先生はエルフであるが故に我らが年をとっても一切容姿が変わらないのだ』と聞いておりましたが」


「ふふ、基本的にはそういう事で話が通っていますが…実際は違います。殿下も間もなく王位を継ぐのでしょうからそろそろお伝えしておきましょう。

私はかって『神緑人(エルフの王)』と呼ばれたエルフの一族…まさしく神のおわした時代より生きている一族の一人です。…まぁ各国の王や代表の方々は皆知っていらっしゃるので間もなく王になられるサアル殿下にもお話ししましたが…口外しないでくださいね?」


「は!?……まさか…先生が…そのような方であったと…?そんな種は今まで一度も聞いていないのですが…」


「まぁ…もうかなり昔の事ですからね。かの竜王国の龍王殿も私と同じ時を生きていらっしゃいますよ?まぁ神のおわした時代…と言うより神の元からこの世界が離れた時から…と言い直した方が賢明なのですが…。それに一族というくくりもおかしいのですけれど」


「え…え?」


「いえ、今の独り言は忘れてください。とりあえず私は普通のエルフより長命であるという事だけ覚えていてください。もし更に知りたければ詳細は貴方のお父上、現王陛下が知っておられますから聞かれたらよろしいかと。…さて、本来の目的に入りましょうか」


「え!?あ、そ、そうですね…。……すみません、お話を聞く前に先生に訊きたいことがまた出来ました。先生がそんなに長く生きていらっしゃるのならもっと…こう大きな影響力があるのではないですか?いえ、先生の運営していらっしゃる商会も十分大きいとは思いますが…あれでは年齢に釣り合っていないのではないでしょうか?


普通のエルフでも寿命は2000年…それ以上だというのならこの世界をも支配する事すらできたのではないでしょうか?先生自身も強力な魔導師であらせられますし、先生の部下の方々にもいろいろな分野で非常に有力な方が大勢いらっしゃったような…」


「ふふ、さすが殿下ですね。彼らを非凡と見抜きましたか…。その答えは簡単です。私に命令を下した方がそれを望まれていらっしゃらなかった…ただそれだけですよ」


「いえ、彼らが非凡だというのは常に接していた者なら誰でも分かるのではないかと…。ところで、『命じなかった』という事はそのお方は先生より上位に…?」


「ええ。…まぁ簡単に言えばそれがあって今まで婚姻とかはお断りさせて頂いておりました。殿下からも即位の時にまたそのような婚姻の申し込みの話が出て、私が断るでしょうが、形式的な物なので気にしないでくださいね?」


「あぁ、それで各国の王や王子からの求婚をことごとくお断りになっていらっしゃったと…。分かりました。以前も断られましたが、それも当然の事だったと?」


「ええ、そういう事にしてください…。まぁ習わしと言っても普通に毎回本気で申し込まれますが、こちらも絶対に受ける気はありません」


「まぁ先生のところはちょっとどころか非常に大きなところですからね…確か大陸一の商会でしたね。何故商会なのか疑問ですけれど…財政的に考えると先生と婚姻が成れば大きな利益になりそうです」


「ふふ、商会だと色々な国にあまり縛られず大きく手を広げられますからね、そうするように命じられたのですよ。まぁ確かに商会自体の利益や財産は大きいですが……私個人の財産なんてそんなに有りませんよ?せいぜい国金貨が数百枚と言ったところですか」


「…それだけでもぶっ飛んでますから…やはり先生の金銭価値はお変わりないようで…」


「あらあら困らせちゃいました?すみませんねぇ…まぁそれはともかく今日殿下に会いにまいりましたのは一つお願いしたいことがあったからですよ」


「何でしょう?先生の頼みなら何でも聞きましょう」


「ふふ、頼もしいですねぇ…。昨今、迷宮が増えたり消えたりしているのは知っているでしょう?そう言った急な変化の情報を教えていただきたいのです。どうにも奇妙なので調べてみようかと」


「迷宮…そうですね、最近はなぜかそういった話が多く聞こえるようになりました。…分かりました、そういった情報が入れば先生に連絡して差し上げればよろしいのですか?」


「ええ、お願いします。何分私の所でも調べているんですけれど…国から聞けると嬉しいんですよ。今までも各国の王子に依頼してきました」


「各国の…ですか。皆受けたのでしょうか?」


「まぁ王子自体ではなくその周辺、国そのものなどにも貸しがあるので全てのところで快く受けて頂きましたよ」


「はぁ、そうですか…(獣人王国の王子は色々もめただろうなぁ…)」


「聞こえていますよ?…ふふ、そこは獣王にお願いして…ね?」


「はは、やはり先生にはどれだけ小声で言っても聞こえてしまいますね…。ではジパングも…?」


「あちらはちょっと特殊ですから最後になってしまいましたが久しぶりに海を渡って私自身が行くつもりです」


「そうですか、先生なら無事かと思いますが…お気を付けください」


「ふふ、ありがたく受け取っておきましょう。…ですがサアル殿下、気を付けるべきは貴方の方です。最近現れた迷宮の多くの難易度が非常に高いことが今までの調べで分かっています。


もし迷宮決壊(ダンジョンアウト)が起きれば…近くにある街ごと消えるでしょうね。ですから騎士団の整備や用意を今からしておくべきでしょう。無理であったとしても注意喚起はしておくべきかと。これは各国にも伝えてあります」


「さすが大陸全土を覆っているだけありますね…そこまでは僕たちも知りませんでした。…分かりました、留意しておきましょう」


「では私のお願いはこれで以上です…時間を取らせて申し訳ありませんでした、サアル殿下」


「いえ、そんな大したものじゃありませんよ。公務もまだそこまでじゃありませんし…ですが迷宮の難易度ですか…」


「何か気にかかることでも?」


「いえ…先生は『トラベリア』という街をご存知ですか?」


「『トラベリア』ですか?…聞いたことあるような気がしますね…」


「北に交易の街『トレディア』、南に竜の住まう『平穏の草原』更に南にはかっての首都『タラン』、西にフォレス森林国と最も近い『リア』、東に鉱山の街『ミキ』がある街ですよ」


「あぁ、思い出しました。そういえばそうでしたね…周囲が重要都市に囲まれ、その全てに店を出しているものだから私の商会があえて店を出す必要が無かったんですよね…」


「え、そうなんですか?…まぁ、そこです。その南の『平穏の草原』の竜がひと月ほど前死に、つい先日ギルドの者が調査に行ったところ非常に高い難度…レベル150はゆうに超えたと推定されるモンスターがボスとして出たそうです」


「それは…非常に高いですね…攻略はまだなのですか?まだでしたらうちから人を出しますけれど」


「いえ、無事に攻略が済んだそうです。ですので問題は無いのですが…こういったことをお知りになりたいのですよね?」


「ええ。ちょっと気になることがあったので」


「そうですか…ではこちらもついでに申し上げましょう。『トラベリア』の北の街…『トレディア』の付近に存在した迷宮で迷宮決壊の危険性が高いものが出たそうで、第2騎士大隊を本日派遣しました」


「『トレディア』…!?分かりました、サアル殿下が言いたいのは騎士や戦闘の物資運搬・補給をして欲しいという事ですか?」


「はは、さすがにこんな形でそそのかすような依頼は無理ですか…ええ、その通りです。どうも数個の迷宮が呼応して決壊する予測だそうで、物資が足りないとの事です。そこでその輸送を依頼したく。先生の商会自体にも別に依頼を出しておりますが…何分大きい組織ですから一介の王子の依頼では動かないかと思いましてほめのかす形でお伝えいたしました」


「皇太子直々の依頼を断るように教育した覚えはないから心配なさらなくても問題ないでしょう。…それにしても『複数』が一度に決壊すると予測されているのですか?」


「ええ、そのように報告を受けておりますが…?」


「……気になりますね。ジパング行きは延期してこの王都に留まります。何か最新情報が届いたら教えてくれませんか?対価は…そうですね、食糧などの運搬対象の値引きとかはしないけれど運搬費用の方は半額にしましょう」



大量の物資にかかる費用は巨額であるが、それを運搬する費用もこれまた巨額になることが多く、海洋大国として海産物やジパングとの貿易でそう簡単に揺らがない財政であるとはいえ多少の懸念が出ていた。そこに運搬費用の半額という話が出てくれば国としては非常にありがたい事である。



「本当ですか!?…それが出来るのなら喜んでお教えいたします!」


「これぐらいはしないと取引にできないでしょうし…念のため割引や取引の事は私の方でも王に話しておきましょう。でないと危険な事になりますからね」


「え…?しかし父上はここのところ忙しく…」


「私は貴方だけでなく現王、先王と歴代の王の教育係を務めたのよ?現王の過去の秘密も知っているから私の面会要求をそうそう無下には出来ないわ。…もちろんあなたの執務室の引き出しの中の本も…ね」


「わぁぁー!何で知っているんですか!?誰にも見られないところなのに!」


「年頃の男の子、それも皇太子になって自由の利かない子の秘密の隠し場所と言ったら…ね?現王陛下もそうだったわね…。あ、後あなたが幼かったころのセリフも覚えているわよ?何だったかしら、『我は天の…』」


「…分かりました、もう好きにしてください…情報全部流しますから…ばらすのは勘弁してください…僕だって忘れたいんですよ…」


「ふふ、じゃあサアル殿下、失礼しますわ。……あの頃の言い回しはそれこそ王の口調みたいで城の皆全員が影で喜んでいましたわよ?内容があれだったからか現王陛下は泣いていましたけど…」


どう考えても息子も自らと同様に『先生』を無下には出来ない羽目になることを想像して哀れに思ったのであろう。


「……もうやめてください……と言うかみんな知っているんですか……ああ、いっそ殺してください…」


『サアル殿下』というシークアランス海洋大国の皇太子との会談を終えた『先生』は部屋から出るとその楽しそうな表情を一変させた。


「ランク150越えを討伐……もしかしたら……少し『トレディア』に物資を送るついでに調査要員を送りますか。『トラベリア』にも拠点代わりに店を出しましょう」


城の廊下をメイドに案内されつつ『先生』、すなわち『部屋の主』である女性は考えに没頭していた…


ここまでです。

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