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25―旅程 新執事コールの見えざる苦労―



リョウ達一行はつい先ほどトラベリアの北門からリョウの馬車で出立した。馬車に乗っているのは普段の5人ともう一人、護衛対象として引き受けたネリーであった。ガイエンから引き受けた恋の応援依頼(という名のいたずら)を考慮したハルの提案によりアルとネリーは御者席で二人並んで御者をしていた。


「えっと…ネリーさんって馬の制御もできるんですね。僕は少ししか教わってないので『前進』と『止まれ』ぐらいです…」


「私は小さいころは良くいろんな所に連れていかれましたから。その時に覚えたんです」


「ええと、確かご両親は…?」


「元冒険者でした。それで色々なところに依頼で行ってたんですよ!今は二人ともなくなってますけど。…思い出話ですが聞いてくれます?」


「じゃあ聞かせてもらいますね」


「はい!ええと…」




「…あれはもうカップルの会話の域じゃないか?」


「そうねぇ…いたずら心で依頼を受けてアルに悪い気がしてたんだけどこれはこれでよかったのかもしれないわね」


「そうにゃ…うちもこっちで好きな人が出来たら良いのにゃ…リョウも本から離れたらどうかにゃ?」


「こないだの戦いで俺の魔法を使えるタイミングが無かったからな、今のうちに勉強しといた方が良いじゃねぇか。…とはいえさすがに馬車に乗りながらってのは色々きついなぁ…。コール、ちょっと休憩するわ」


「了解いたしました。現在55ページで御座います」


馬車の壁に寄りかかったリョウが本から目を離して傍らに立つスキルから出てきた執事コールに本を渡すと立ち上がった。コールは受け取った本を傍らの本の山の頂上に置いた。


「コール…だっけ?スキルに人格があるのは初めて聞いたわねぇ…と言うか何で何もないところからそんなに本を取り出せるのよ」


トラベリアで出立の準備をしている時にリョウは図書館スキルが危険だったことやハクオウから言われたことなどを仲間のロー達にすでに語っていた。当然ロー達は怒ったが、それ以上にリョウの体を案じ、何とかなったことを喜んでいた。


そしてリョウはトレディアに向かう馬車の中で図書館スキルの「一度読んだ本をスキル内部の『図書館(ライブラリ)』に収蔵できる」と言う効果を活かして自らの戦闘能力の強化を図っていた。その段階でコールが出現し、目的に合う本を文字通り山のように取り出し、リョウは内心涙目になりながら読み進めていたところであった。


「俺に向いた鍛冶の本とかはねぇのか?」


「え?確かあったと思うけど…読む?」


「いえ館長(オーナー)、それは不可能で御座います。現段階のオーナーのスキルレベルでは他人の閲覧は不可能です。現状館長が行えるのは書籍を読むことによって複写を行い収蔵、その具現化・閲覧、および禁書・一般書問わず最大6書庫同時解放までです。他人の閲覧まで行えるようにするにはもう少しレベルを上げる必要が御座います」


「その俺の呼び方の「オーナー」っての変えられない?何か違和感が…」


「では館長(マスター)と」


「読み方は変わったけど中身は変わってない気がするんだけど俺の気のせいか?」


「気のせいです図書館長(マスター)


「…まぁいいか」


「てことは俺には読めねぇのか?どれどれ…何だこりゃ」


ロー達が本の山に近づき本を一冊手に取り開くと、白紙の上で意味をなさない文字の羅列が大量にのたうっていた。


「え?…何これ気持ち悪いわね…」


「何かミミズみたいな動きをしてるにゃ。リョウは読めるのにゃ?」


「え?読めるぞ?」


リョウがハルから本を受け取り中に目を向けるとのたうっていた文字は瞬く間にきちんと意味のある文字列へと変化しきちんと整列した。


「おおう…何だこの無駄に高機能なセキュリティ。コールだっけか?何でこんな風になってるんだ?」


「皆様の分かる範囲で申し上げるのならばマスターの『図書館』は私設図書館です。一般開放されていないため、一般人には閲覧ができないのでございます。閲覧するには館長であるマスターの閲覧許可が要るのですがスキルレベルが足りないため不可能と申し上げざるを得ません」


「てことは俺がスキルレベルを上げればいいわけ?」


「その通りでございます。スキルを使用しておらずとも今のように私が出現しているだけでも微々たる量ですがレベルは上昇いたします」


「じゃあずっと出ていればいいのにゃ!コールは何ができるのにゃ?」


「そうですね…執事としての職務の範囲内なら基本的には出来るのでございます。名づけの際にマスターが私を執事と強くイメージしたために「執事」としての能力と「図書館の管理者」としての能力の二つを持っております。また同時に私に『図書館(ライブラリ)』の管理権限を付与されていますので少しずつ戦闘に関する知識も扱えるようになる予定でございます」


「あたしにはよくわからないんだけどコールも戦えるようになるってこと?」


「スキルが独自に戦ったり別の作業が出来るなんてありかよ…二重人格どころの話じゃないだろう、まさしく分身だ」


ローが呆れて言ったが、それにリョウが返した。


「もしおっちゃんがこのスキルを取得すれば同じような事が出来るんじゃねぇ?」


「いえマスター、それは誤りで御座います。詳細はお伝えできませんが私が自我を所有するAIとしてマスターの『図書館』に宿ることとなったのは特殊な事情が御座います。


マスター及び仲間の皆様のいらっしゃった世界ではあやふやな存在だったのですがこちらに来てハクオウ様…でしたかあの方が私の姿を定めたこと、その直後にマスターが名をくださったことなどまさしく偶然の要素によって確固とした存在となっております。その私が管理をさせて頂いておりますのでマスターに影響が無いのでございます。故にもし他の方が『図書館』を取得した場合普通に魂が削られ寿命が縮むかと思われます。」



「つまり他の人が取得したら危険という事にゃ?」


「その通りでございますハル様」


「…俺結構危険な橋渡ってた?」


「はい、その通りでございます。現在マスターは『図書館(ライブラリ)』の管内の具現化を行わず書籍の召喚が可能となっております。これは恐らくマスターがレベル100を越えたためだと推測されます。


それまでは私が存在したことにより魂への影響が無かったことがハクオウ様により確認されておりますが召喚を可能にしたという事はスキルの要する維持コストが跳ね上がったことを意味します。そうなった場合私の補助も限界を迎え使用していなかったとしても本当に魂が削られ、恐らくは数年ほどでマスターは寿命を迎えることになった可能性が高かったでしょう」


「…あんた最後に名乗っといて良かったわね……じゃなきゃハクオウ?とかいうおじいさんが呼び止めなかったわけでしょ」


「あかん…まじ危なかった……過去の俺にマジ感謝……今はこれ使っても問題ないのか…?」


「問題ないものと思われます。収蔵書籍の管理は私に管理を委託した状態になっておりますので負荷は掛かっておりません。書籍の閲覧に関してはマスターのスクリーンでも負荷無しに行えますが出来れば館内の整理が大変なので私から具現化した本を受け取っていただければ幸いでございます」


「館内の整理って…リョウ、お前どんだけ読んだんだよ…3万冊ぐらいか?」


「知らねぇよ。ぶっちゃけ途中からはスキル上げじゃなくて発明のためにネタを探して読んでたし?コールそこんとこどうなの?」


「現在は12万8706冊で御座います。ですのでスクリーンから閲覧されますと対象の書籍が棚に戻らず別の場所に置かれますので書籍を元に戻すのが大変なので御座います。現在私は具現化しておりますが私の代理で管理しております分身が今もずっと整理中で…」


「…桁が一個ずれてる気がするにゃ…」


「こちらの世界に来て存在の確定化や名づけなど様々な嬉しいことが御座いましたが目下の悩みはこの大量の書籍の整理で御座います。本来整理する必要は無かったのですが私が管理することになりました以上マスターだけでなく私もすべての書籍を把握する必要が出てきまして…。更に整理が終わりましたら私も読んでいく事となっておりますので結構大変で御座います…」


コールが少し疲れたような表情になり言葉の途中でため息をついた。


「…もうあたしは何も言わないわよ……コールが可哀そう…」


「整理って言ったって山積みされてるわけじゃないんだろ?そこまでとは俺は思えないんだが…」


「12…13万読んで本を溜めた俺が言える事じゃねーけどお疲れ…」


全てはこの男(リョウ)のせいである。


「ロー様のおっしゃる通り山積みとかではなく一応本棚に収められているのですが…。まず書籍はマスターが読んで収蔵した順に並んでおります。ですがスクリーン経由での閲覧等で順序が入れ替わっておりまして……。更にはマスターの読む傾向が最初からバラバラなジャンルに及んでおりました。故に最初からバラバラなので御座います。


それ故整理のために現在禁書庫も一般書庫も総入れ替え中でございます。…マスター、重ねて申し上げますがしばらくはスクリーン経由の閲覧はお控えくださいますよう。読みたいジャンルがあるのであれば私に言って頂ければ」


「…やり過ぎた!てへっ」


「てへっじゃないにゃ!ちょっとどころか普通にやりすぎにゃ!」





「…あのー、楽しげなのは良いんですけどそろそろ御者変わってくれません?」


「ええ、もうちょっとここにいませんか?」


「え、えぇ…?」


「木陰とかそういうところを探して昼ごはんにするからそれまで頼むにゃ!」


「えぇ…分かりました…」


トラベリアの北門から出て、リョウ達がクロスディアーの群れと遭遇した山間の道を抜け、リョウ達一行は色々な世間話をしながら再び現れた草原の中を馬車に揺られながら次の目的地『トレディア』へと一路進むのであった。












「……草原の真ん中で木陰を探すとか無理じゃないですか!?…しばらくは御者ですかね…(必然的にネリーさんもですね…)」


「良いじゃないですか!晴れ渡る大空、少し強い風の吹く草原、その中を馬車でのんびり進むって言うのはトラベリアではなかなか味わえないんですよ!魔の草原とかは暫くは騒がしくなりそうですし。それに退屈なら私の話を聞いてください!」


「……そうですね。こういうのんびりしたのはあまり味わえませんね(たまにはゆっくり女性の話に耳を傾けるのも乙というやつですか)」



ここまでです。

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