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23―コール―

結構疲れました…

「うにゃ…何だったのにゃ…」


原因不明の痛みに全員が襲われる中、ハルが最も先に衝撃から立ち直った。そして…


「つー…!はぁっ!はぁ…めっちゃ痛かったんだが何なんだこれは…」


「でも今となっては何か針でツボを突かれたような爽快さと力がみなぎってきます」


「おう、お前も無事か?サラは…無事だったか」


ロー・アル・サラも続いて復活し、彼らは意外と早く原因不明の痛みから立ち直っていた。


「ふー…なかなか結構な強さの竜だったみたいだな。俺ですら食らうとは思ってなかったぜ」


「一体何だったんだ?」


ローが皆が今最も知りたいであろうことを代表してエインに尋ねた。


「全員今の痛みについては知らないのか?」


エインの問いにロー達は首を横に振る。


「そうか…まず魔物やモンスターを倒すと対象の持っていた力…何だっけ?まぁそういうものが倒した奴に流れ込む。一説には『魂を吸収して活力としている』と言うのもあるんだがな。


流れ込んでもすぐに実力やそういうものには影響するわけじゃない。流れ込んだ量が一定の水準に達した時…俺らの『レベル』っていう数値が上昇する。これがレベルアップだ。レベルが上がるごとにその水準は上がっていく」


「要は俺らに配られる経験値が基準に達する度にレベルを上げているという事だろう?」


「いや、まぁそれは今までの討伐経験などで知っているんですけど…それがあの痛みにどう関係するんですか?」


ローが良く理解していないハルのために解釈を入れつつ確認を取った。


「おう、経験値だったか。それは今回みたいにグループでの討伐だと戦闘への経験の度合いで分配されちまうんだが…今回の黒竜はこの場にいる誰よりもレベルが高かったはずだ。かなりの量だっただろう。


そして分配された経験値は対象とのレベル差に応じて増幅する。さて、ここで問題だ。増幅された経験値の影響で一気にいくつかレベルが上がった場合どうなると思う?」


「え?知らないわよそんなもの」


サラが考えるそぶりもなくノータイムで切り捨てた。


「おいおいちょっとだけでも考えてくれよ…」


「で、答えは何なのにゃ?」


「一つレベルが上がる時にも実はちょっと痛みが発生しているんだが、それ以上に体にみなぎる充実感で誰も気が付かねぇ。だが、二つレベルが上がるとその痛みが乗倍になる。2つレベルが上がればたいてい気付くな」


ちなみにこの痛み、16倍くらいになるとタンスの角に小指を思いっきりぶつけたくらいの痛みになる。要はものすごく痛いのである。


「ジョウバイにゃ?」


「ふむ、要は2つレベルが上がったら2×2=4で4倍、3つだったら3×3=9倍の痛みだという事か?」


「そういう事だ。多分ハルちゃんが真っ先に回復したのはこの中で最もレベル差が小さくて乗倍された経験値が少なかったことと上がるための水準が高かったんじゃないか?」


「うちは前見た時はレベル160だったにゃ!」


「俺らより高いじゃねぇか…てことは俺の考えで間違っていないだろうよ」


「…それリョウに取っちゃ最悪じゃないかしら?あの子今レベル83…だったかしら?最もレベル差が大きいはずよ。その上で乗倍された痛みなんて…」


「こないだレベル85に到達したはずです。…まさか!?」


最悪の事態を想像して硬直したロー、アル、サラの三名。そこに


「う~い、どうにか倒せたみたいだな?急に重複レベルアップの痛みが来て今度こそ本当に溺れるかと思ったぜ…」


オウンが全身ずぶ濡れでロー達の方へと歩いてきた。その右手には例の普通に見える(・・・・・・)魔剣、左手で気絶したリョウを引きずっていた。


「「リョウ!大丈夫かにゃ!?」」


慌ててさらとハルが近寄った。


「大体どれくらい上がったと思います…?」


「さぁな…だが最高レベルのハルですら最低2つは上がったはずだ。黒竜を止めたりしてかなり戦闘に貢献しているからそこらへんもありそうだが、とどめを刺したのはリョウだ。ぶっちゃけ10個レベルが上がったと言われても驚かんな」



ローはリョウが今回の戦闘に対して行った貢献の度合いを考えてみた。

・リョウはこの一行の中で最もレベルが低い。ボーナスがでかいはず

・最初から先頭に参加している

・黒竜を麻痺させた(短剣の力に大きく頼っているが貢献の一部となり得る)

・最終的に黒竜にとどめを刺した



「…いかんな。どう考えてもリョウが一番貢献している。10上がったとしても10×10で100倍か…?どう考えても俺だったら死ぬ…いや、同時に体に力がみなぎるんだから絶対死ねないのか…?」



実際リョウはこの戦闘に置いてかなりの経験値を得ており、16レベル上がっていた。16×16は…実に256倍である。リョウも始まった当初は耐えられたのだが、49倍になった時点であっさり意識を手放していた。


サラが気付け薬としてポーションをリョウの口に突っ込むと…


「…むぐっごっぐぼっごっふぁあ!?」


ポーションの治癒効果…と言うより冷たい液体が気管に入ったことでむせて目を覚ました。


「うっげ…つか記憶が飛んでるんだけど。何があったん…?めっちゃ痛くなったと思ったら何か意識がとぎれた」


「レベルアップの反動らしいわよ。あたしは6つ上がったわ。8×8で64…良く気絶しなかったわねあたし…」


「うちは4つだったのにゃ!リョウはどうだったのにゃ?」


「え?レベル?ええと俺は…今101か。計算すっと100-85で…16か?」


「256倍かよ…つか何でお前ら分かるんだ?ギルドに戻らねーと分からないはずじゃ…」


「あーそこは俺等の特殊な技術って奴だ。次はあの球を取ればいいのか?」


リョウ達のやり取りをそばで聞いていたオウンが不思議に思い聞くがローが慌てて遮ってこれからの事を聞いた。


「おう、そうだな」


「じゃあ取りますね…………うん?え、何ですこれ」


アルがさっさと面倒事を終わらせようと竜の石像の足から球を取る。すると石像の目が閃き…










『ふむ…なかなか面白い見せ物であった。倒し方はいささか残酷な気もしたがのう…』






急に喋りだした。


「…おっちゃん、これ何?」


ようやく目が覚めたリョウが立ち上がりつつ隣に立っていたオウンに尋ねる。が、オウンも茫然としているようで話にならなかった。そこでリョウは自分で尋ねることにした。


「えーとなんていえば良いんだ…?石像さんよ、あんたは誰だ?」


『儂か?ふむ…つい先日この迷宮を作った迷宮主(ダンジョンマスター)をやっておるしがない竜じゃ。元々は我が同胞がここの管理をしておったんじゃが……今から一か月ぐらい前かの、死んだようでなぁ。代わりに遠方から管理するために迷宮をここに作ったんじゃよ』


「迷宮をつくった!?そんなこと出来るのか!?竜って言うと…クリスラント竜王国か?」


エインが動揺した顔で石像に問うが石像は首を振りつつ答えた。


『出来るかと言う質問には「竜も儂の年齢まで来れば出来る」としか言えんの。王国については…「是であって否」と言ったところかの。儂らはただ人探しとしか言う事を許されておらんの』


「人探しだっつーなら何で迷宮を作ってんだ?自分で探して回ればいいだけの話だろうが」


ローの疑問に石像は急に深みを増した声で重々しく答えた。


『そういうわけにもいかんのじゃよ。探しておる者はそうそう人に姿を見せなんでの…数百年をかけて数十人の同胞と共に探しておる所じゃ。儂らが探そうにも姿を知らなんでなぁ。


いくつかの迷宮で迷宮決壊(ダンジョンアウト)を起こすことで迷宮を世間に知らせておるのじゃよ。そうすれば見つかるかもと言う儂らの上司の考えで実行しておる次第じゃな。…正直儂らの暇つぶしの側面が強いの』


「じゃあ上でモンスターがいっぱいいたのは迷宮決壊の為にゃ?」


『うむ。と言うよりここらの魔力脈の量が多すぎての、上級迷宮の核を模写してどんどん深くよりモンスターを多くして抑えておったんじゃ。お主らが間引いた…と言うより殲滅してくれて助かったわい。そこら辺のお礼や頼みもあって特別に儂が出てきたんじゃ』


「上級…そりゃ深いわけだぜ…」


ローが肩を落としつつ言う。


『頼みというのはの、この迷宮にもっと人を呼び寄せてほしいんじゃ。魔力脈をコントロールして今ぐらいの難易度を維持するためにも間引きが必要なんじゃ。もし間引きが出来なんだらもっと難しくなるじゃろう…宝箱の質も今回はかなり高かったじゃろ?あれは一か月間魔力が溜まり、なおかつ儂が直々に作ったから生まれたんじゃ。今後はあれに2、3段は劣るがそれでも質の良いものが出来るはずじゃわい』


「これ以上の難易度はさすがに拒否したいしなぁ…ギルドマスターに言っとくわ」


『助かったわい。それと…そこの竜人の男、今のレベルは100を超えておるかの?超えておればクリスラント竜王国で竜化の力を授けられるが…来るかの?』


「マジで!?さっき超えたし絶対行く!おっちゃん、今回の件が片付いたら行こうぜ!」


「おおう…う~ん、まぁテッケン爺さんのしごきが一段落したらな。さすがにそろそろ町の外も行ってみたいしなぁ…。お前らは?」


「僕もちょっと他の街行きたいですね。(ネリーさんの目が怖いですし)」


アルがボソッとつぶやき…


「(あぁ、あんた結構好き好き言われてるらしいわね…)あたしも良いわよ。特に目的もないし」


「うちもそろそろ別の街行きたいにゃ!」


『ふむ、来るようじゃの。ではもしお主らが国に来たら歓迎しようぞ。…儂がおらんかもしれんがの』


「え、いなかったらどうすんの?」


リョウが急に涙目になって問い返すが、竜は石像の片目をつむりながら返した。


『なに、冗談を言ってみただけじゃ。…とりあえず間引きの件、頼んだぞい。延ばしておったが、そろそろ迷宮の外まで送り返してやろう』


そう石像が言うと核を持つアルの足元から光が広がり、リョウが立っているところまで床が光りはじめた。石像が視界から消える瞬間リョウは


「言い忘れてた!俺の名前はリョウっつーんだ!職業は…一応商人か冒険者やってるから見つけてくれ!」


石像に向けて叫んだ。そして一同の視界は真っ白になり…








――――――――――――――――――――――――――――――


気がついた時リョウは真っ白な空間に一人で立っていた。


「え?何これ?」


『儂じゃよ。そう慌てんでも良い』


リョウの後ろで白髪の老人がちゃぶ台の反対側に座ってお茶を飲んでいた。


「その声は…さっきの石像の声の人か?」


『うむ。ちょいとお主の名前で気になったことがあってちょっとだけ話させてもらおうかと思っての』


「ちょっとって…ここどこなんだ?」


『そうじゃの…はっきり言うならばお主の魂と儂の魂の中間の位置じゃな。まぁとりあえず座ることを勧めるわい』


「お、おう…とりあえず爺ちゃん、名前聞いていいか?」


リョウは戸惑いつつも座る。するといつの間にか茶が出ていた。リョウは開き直って飲みながら話を始めた。


『儂か?ハクオウじゃよ。…それはそうとお主に聞きたいんじゃが、「図書館」スキルを持っておるな?』


ハクオウの目が鋭くなる。リョウは校長先生と話しているかのように感じ、懐かしさを覚えつつも口を開いた。


「あ、ああ。…でも、こないだギルドで使った後AI…つっても分かんねぇか?とりあえず管理している奴が『規約の変更が生じている』って言ってて、そのしばらくした後に呼び出したら…」


『お主の命を削ってしまっておる可能性があると…そう言われたんじゃろ?』


リョウが黒竜に初めて遭遇した時に戸惑ったのもAIとの会話で「禁術の行使にも影響が出ている可能性がある」と言われ、老竜が本当に死んだのか疑わしくなったことが原因であった。


「あ、ああ…何で知っているんだ?」


『そうじゃの…お主と同様に「図書館」スキルを持っておった奴を知っているからじゃよ。それはそうと…管理している奴とな?』


「え?知らないのか…?出来れば呼びたくないんだけど…」


『なに、「図書館」としての使い方をせねば魂の方は問題ないわい。ふむ…儂が呼んでやるとするかの』


そう言うとハクオウはリョウの額に手を当てた。するとリョウの傍らに以前冒険者ギルドで発動した時に現れた白髪の執事が現れた。


「…状況がつかめません。魂を削ると以前申し上げたはずですが…」


執事がリョウに言うのを遮るようにハクオウが発言した。


『…大体わかったの。結論から言うが、お主の魂は削られておらん。というかそこの執事がおることで防がれておる』


「え?いえ、ですが…」


「どういうことだ?」


『そもそも「図書館」スキルによって魂が削られるのはスキルと言う枠の中に大量の本を納めて利用するというそのスケールの大きさからじゃ。力が大きすぎる故に管理するために使用者の魂が削られ、利用されておるんじゃが、この執事が図書館をお主の代わりに管理しているが故にお主には負担がかかっておらん』


「だけど、こいつは俺の感情に引きずられて図書館スキルが大規模に暴走するのを制御するために作られたんだぞ?目的が違くないか?それと禁術の行使にも影響が出ている可能性があるとも言われたんだけど?」


「ええ。私もマスターの感情によって解放可能書庫を管理する義務を受けているだけだと把握しているのですが…」


『感情も魂の動きの一つじゃよ。それと、お主が我が同胞にかけた禁術じゃが、問題なく発動したようじゃよ…先ほどお主の記憶もちょいとのぞかせて貰った時気になっておったようじゃから確認したぞい』



『じゃが』



リョウが安心したのも束の間、ハクオウが険しい顔をし、場の雰囲気が締まった。


『その執事にお主が名を与えとらんことが正常な行使を妨げておる。名が無ければ執事は「図書館」スキルにとって異物じゃ。故に今与える事じゃ。


それとお主の「図書館」スキルは異空間を作成する能力すら持っておるようじゃな?それの制御のためにも名は必要じゃ』


「それは何よりも嬉しい事でございます。マスター、私めに名前を頂けないでしょうか?」


「お、おう…うーん、んじゃあ『コール』でどうだ?俺が最も信頼してたやつの名前をもじった」


リョウがハクオウに言われるまま執事に名を付けた瞬間、その姿が変化し、今までのただ黒いスーツのエセ執事から白髪で黒い燕尾服に身を包んだ風格のある執事へと変貌した。


『ふむ、うまく行ったようじゃの。…さすがにここまでやると儂も疲れてきたのう…リョウよ、これでこれから先「図書館」スキルは問題なく使えるはずじゃ。一応言っておくが時と場を見極めて使うんじゃぞ』


「おう、さんきゅな!」


そういうとリョウの姿が消えていった。残ったのはハクオウと…なぜかコールもであった。


「どなたか存じませぬがありがとうございました。…してなぜ私はいまだここにいるのでしょう?」


『なに、一つだけ忠告を言っておこうかと思っての。…あ奴が「図書館」を発動する際お主は出来るだけ実体化せよ。…それだけじゃ』


そのままコールは何か問い返す間も無くその場から消え去った。


『ふぅ…名前からもしやと思ったがあたりじゃったか。様子を見るに「図書館」スキルの暴走ももう間もなくであったというところかの?今回レベル100を超えたようじゃからかなり危険だったのう…



さて、ここまで力を使う羽目になるとは正直思っとらんかったしさすがに疲れたのう…しばらくは眠るとするかの』


そしてハクオウもその場から消えた。


その場にはちゃぶ台と未だ湯気を立てているお茶が残るだけであった…

ここまでです。いつも読んでくださってありがとうございます!(^^)

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