21―ボスとの闘い Ⅰ―
ギャリギャリギャリ―――ドゴッ!!
甲高い音を立てて黒いうろこで覆われた黒竜の尻尾が壁へと衝突する。
今リョウ達三人は部屋にいた黒色の竜と対峙していた。そしてたった今リョウは自分に向けて放たれた黒竜の尻尾を剣でそらしつつ横に飛ぶことで躱していた。
「テッケンの爺さんマジ尊敬するわ!こんなふうに使ってまだ折れないとかどんだけ頑丈なんだよ!」
「何かいい手は思いつかねぇか!?」
「それはこっちのセリフですオウンさん!竜と戦ったことは無いんですか!?」
「あることはある!だがな、ここまで強くなかったんだよ!…どうにか、他の奴らが
来てくれれば隙も作れるんだが…!」
その時黒竜が一度動きを止め、口に魔力を貯め始める。それを見て取ったリョウ達は一斉に走り出し――黒竜の首元へ突撃した。
その結果…
『グルオォォォッ!』
黒竜の放った黒色のブレスがさっきまでアルが居た位置に当たり…そのまま薙ぎ払うようにして他の二人が居た位置にまで当たる。
そして黒竜の攻撃した後には黒い焦げ跡が残っていた。それは部屋の様々な箇所に同様に残っており、黒竜が何度もブレスを放っている事を示していた。
そう、リョウ達は黒竜の首元に近づくことでブレスの射線から効率的に逃れることが出来ていた。それと同時に――
「やぁっ!」
首に攻撃を仕掛けて黒竜の首の位置をわずかながらも変えていた。すると…
ゴゴッ!
ブレスが部屋の門に当たっていた。そう、リョウ達は射線から逃れると同時に首の向きを変えてブレスを門に当てることで閉まってしまった門を壊そうとしていたのだ。
「…ダメだ、まだ閉まったままだ、お前ら離脱!」
リョウ達は再び黒竜から離れて攻撃をかわし始める。いつまでも首の周辺にいたら翼や足の攻撃をかわせないのだ。逆にブレスの時は固定するために足を踏ん張るため、翼の届かない首元付近は最も危険度の低い位置となるのだ。
「毒の短剣は無理か!?」
「やってみたけど鱗が硬すぎて無理だった!」
「どうにか…できればいいんですけどっ!」
アルに向けて黒竜の右前足が振り下ろされ、アルは剣を鞘に一部収め、刃が出たままの部分で爪を受ける。柄と鞘両方を持って抑えることで何とかこらえていた。…が、そのまま押し切られて潰されるのは時間の問題だった。
「食らいやがれっ!」
「んなろっ!」
オウンがアルの横から黒竜の前足の柔らかい部分に思いっきり剣を突く。その直後リョウがアルの後ろから飛び出し爪に直接攻撃することで一瞬アルの剣から爪が離れた。それを見逃さずアルは一気に後ろに飛び退いた。リョウとオウンも後を追って後ろへ下がる。
追うかと思われた黒竜はそのまま追撃せずじりじりと動く。
「危なかったです…助かりました。」
「おう、仲間を助けんのは当然だろ!」
「だな。それに今アルに抜けられると俺とリョウもすぐ潰されちまうからな」
「…にしても本当どうするよ?短剣で切り付けようにもリーチが短いから近づかないといけねぇ」
「ブレスの時にやってみたのか?」
「おうよ。じゃねーと近づけねぇよ。他の時は…出来ると思うか?」
「無理だな。…じわじわ動いていやがるな。何でだ?」
「分かりませんね…。っ!ここにいたらまずいです!扉側と分断されてます!」
アルの言う通り、竜はじわじわと動いて広い空間の中、扉とリョウ達の間に立っていた。戦闘においてはさほど問題にはならないがこの事によってリョウ達の扉からの逃走が不可能になった。
「てことは後ろに核か…行けるか?」
「いや、無理だ。こいつの突進の速さを思い出せ。こんな広い部屋の端から端まで5・6秒で動けるんだぞ。後ろ向いた瞬間に捕まるわ」
「学校の校庭レベルの広さをこれほどの速さとか人外ですね…」
「最初っから人間じゃねぇよ。…何だ!?」
リョウがアルに突っ込んだその時、彼らの見ていた黒竜の後ろ、閉まって開かないはずの門がガキィイン!と大きな音を立てて少し動いた。
黒竜もその異変を聞き取ったのか、リョウ達に背を向けて扉の方を向いた。なぜなら、リョウ達の攻撃は痛く煩わしくはあったが自らの致命傷とはなりえないと分かったからである。
「舐められてんなこの野郎…!」
「…ですがここは状況を見極める必要があります。油断せずに構えましょう」
「…さらに敵が来るとかやめてくれよ?」
そして数度同様の音が鳴った後、門がドガッとひときわ大きく音を立てて―――――部屋の中へと大きく倒れてきた。
「んなぁっ!?」
リョウ達は揃って門の先を凝視した。そして…
「おう、小僧ども生きてやがるか?」
槍斧を担いだローが呼びかけてきた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「うっし、ようやく次の階段…っと」
「まだなのかしら…今は29階よね?」
「次が30階だな。多分この迷宮の最深部だ。今のところまだオウン達に出会ってねぇからそこにいるんだろ」
「地図の大きさ的にも次ぐらいにゃ」
ロー、サラ、エイン、ハルの四人は階段を下りながら会話をしていた。そこに―――
ドオォォーッ!
轟音が聞こえてきた。ロー達は顔を見合わせると階段を一気に降りた。降りた先にあったのは…
「門…か。多分ここがこの迷宮の最後のボスだと思うぜ」
「でも門がゆがんでるわよ?どうするの?」
「多分中で今も戦闘が続いているんだろう。ボス部屋は数少ない破壊可能なところでな、戦闘が終わった後に元通りに戻るんだ。元から破壊しにくい壁や床とは違うぜ」
「ということは中にリョウ達がいるのにゃ?」
「ってーことは今のうちに中に入ればあいつらと無事合流、ついでにボスも狩れるってことだな」
ローがいきなり今まで持っていたハルバードをアイテムボックスの中にしまう。
「いきなりどうしたの?」
「何、この扉を開けんのは鋼鉄を扱うのが本職の鍛冶師に任せやがれ。お前らは戦闘用意を頼んだ」
そういうとローはアイテムボックスから取り出した身の丈ほどの柄の先には一抱えもある鈍く銀色に光る金属の塊が付いた物体――すなわち金槌を取り出す。
「…お前それどんだけの重さなんだ?」
「FWでは200キロぐらい…つってもエインにゃあ分からねぇか。そうだな…たとえようがねぇ程重いと思ってくれりゃあそれでいいさ。もともと特別な金属用の金槌だからな。さってと…!」
ローが門と壁の境目に駆け寄る。そして見上げると一つ頷いて金槌を振り上げる。
「耳塞いでいろよ?せーのっ!」
ローが思いっきり金槌を門へと叩き付ける。すると
ガキィイン!
と大きな音を立てて門が揺れた。
ローは門を金槌で叩いてこじ開けようというのだ。そのために構造的に弱い壁と門の境目を叩いたのだ。
「なるほど、そういう事ね。…鍛冶関係ないじゃない…『空を巡る風よ、穿つ鎚となせ――風鎚』」
「面白そうにゃ!『猫咲流拳技・掌底』にゃ!」
「無茶やりやがるなお前ら…これ俺もやるのかよ…『灼熱の炎よ、空を巡りて猛る焔風となれ――焔風波』!…属性融合きつい…」
サラは風の塊をぶつけ、ハルはローと反対側の門を掌底で叩く。エインは炎と風の融合した魔法をぶつけ、数度門を叩く。すると――
「おーし、そろそろいけんぞ。いったん手を止めろー…よーし最後の一撃行くぜ…『剛力』おらぁ!」
ドガッ!
と大きな音を立ててローの鎚が門に大きな衝撃を与えた。その結果、一方向から様々な衝撃や熱を受けて弱くなっていた門の蝶番がローの一撃でとどめを刺され、ゆっくりと部屋の向こう側へと倒れ始めた。
「うっし、今のうちに準備を整えるか」
ローはそういうと金槌を仕舞い込んだと同時にハルバードを肩に担いで、門の向こう側へと入っていった。
「おう、小僧ども生きてやがるか?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ロー達がやってきたことを知ったリョウ達は安堵した。合流を達成して7人の気が一瞬緩んだ。その瞬間を狙っていたかのように―――
ゴウッ!!
黒竜のブレスがロー達を直撃した。黒竜はリョウ達に背を向けた後、自分の遊びに邪魔を挟む敵が入って来たら即殺すためにリョウ達の見えないところでブレスの用意をしていたのである。そのためリョウ達はロー達に警告を出すことが出来ず、またロー達も黒竜のブレスを見ていなかったためボスが竜だという事に驚いたと共に固まり、竜の動作が何を意味するのか判別できなかった。
結果として――黒竜のブレスがロー達の居た場所を直撃したのである。黒竜は念入りにもどのような敵であったとしても確実に殺せるよう、継続時間が短い代わりに威力の大きいブレスを放っていた。
そしてブレスが止まるとすぐさまリョウ達の方を向き、口を大きく開いた。――まるで「次はお前たちの番だ」と嘲笑しているかのように。
「いや、マジかよ…あいつらが…?ふざけんなよ…?」
「死んでないことを祈りますが…ひどいことをしますねこの駄竜」
「油断している間攻撃を加えなかった俺達にも責はある…が、とにかく来るぞ!」
黒竜が一気にリョウ達のもとに突進をしてきた。リョウ達はそれぞれ怒りの顔で黒竜を迎え撃つ。
両方がぶつかるかと思われたその時――
「全く、不意打ちなんて思いもしなかったにゃ」
場違いにも軽い声がリョウ達の耳朶を打った。その声はリョウ達にとって聞き覚えのある声だった。そして三人の中央に立っていたリョウの目の前にいきなり見慣れぬ空手着を着た虎耳の女の子が立ち――
「ゆっくり味わってほしいにゃ―『猫咲流拳技・掌底・王虎』」
両手を一気に黒竜の正面に突き出した。すると――
『グォォッ!?』
黒竜の突進がその手と衝突すると止まった。リョウ達が固まっていると―
「おいおい、先走んじゃねーよ。先輩の顔が無くなっちまうじゃねーか。『空を巡る風よ、わが敵を縛れ――風縛』」
エインがいつの間にかやってきており詠唱すると黒竜の体に緑色の風がまとわりつきその動きを阻害した。
「…生きてたんですか?」
「お前らはぇえよ…俺のハルバードにとっさにサラが土魔法の『硬化』と精霊魔法の『魔力付与』をかけてな。何とか対抗できた。…その代りハルバードの刃が融けちまってただの重い棒になっちまったがな」
アルがエインに対して発した質問にサラに自身の肩を貸しながらやって来たローが返す。
「その程度ならまだいいでしょ…あたしなんて急にかける羽目になって一気に魔力切れよ…?」
「まぁまぁ、実際サラとローのおかげで生き延びて、俺とハルであいつを縛れたんだから十分だと思うぜ。…んでオウン、俺らはこの通り今やってきたわけなんだが…状況は?」
「状況も何も俺らは強制的に戦闘に入っちまってな、俺とリョウとアルで協力しながら殺されないように逃げ回るしかなかったんだよ。とにかくブレスが来たらのど元に飛び込めば何とかなる。
あとは…そうだな、リョウが毒の短剣を持ってる。そいつなら倒せる可能性もありそうだ。だがな、やたらとあのうろこが硬くて困ってる」
エインとオウンが互いに状況確認をする。
「さて、アルこっから俺らも巻き返そうぜ!」
「そうですね。いつまでも逃げ回りながらは嫌ですし…何より僕らを歯牙にもかけていないのが気に食わないです」
「おうおう、おめーらやる気じゃねーか。ハルバードは融けちまったがこちとら鍛冶用ハンマーも持ってきているんでな、そっちで加勢させてもらおうじゃねぇか」
「鍛冶用?それ…って……何…です…?めっちゃでかいんですけど…」
「さすがおっさん、期待を裏切らねぇな…っとさすがにそろそろ効果切れか?」
リョウ達が黒竜の方に目を向けると黒竜がエインの風の拘束から抜け出そうとしており、だんだんと緑色の風が薄くなってきていた。
そして…
『グラァァァッ!!』
遂に黒竜の拘束が解け、黒竜は怒りの雄たけびを上げた。
「はっは、怒ってるみてーだな?俺らも相応に怒ってるんだぜ?…よーし、こっから俺らも反攻開始と行こうじゃねーか!」
ここまでです。明日は予定が入っているので続きは無理かと思います。
代わりに設定集は上げるつもりなんですが…挿絵をWordで作りました。
ただそれをどのように小説に入れればよいか分からず停止してます(´;ω;`)
どなたか知っていらっしゃったら教えてください(´;ω;`)




