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20―再び?の邂逅―

リョウ・アル・オウンの三人は今迷宮の中、とある部屋の中央で唸っていた。



「…ダメだ何か出来そうなんだけど出来ねぇ!」


「ここまで来て…みすみす逃すのは惜しいものです!」


「…いや、まぁ確かに言いたいことは分かるがな?だがそこまで夢中になることか?」


彼ら三人が…訂正、オウンを除いた二人が一生懸命になって向き合っているのは宝箱であった。

その外観は一言でいえば緑色だった。ほぼ全体が緑色の金属で作られ、箱の縁など主要部分は鉄らしき金属でまるで補強しているかのように覆われ、リベットで固定されていた。


彼らは迷宮内のモンスターには苦戦せずに――リョウはその基礎レベルの低さの関係上苦戦しつつも戦い抜けてきた――多少の時間はかかったが問題なく迷宮を突き進んでいた。そしてその途中で入った部屋の中央にこれ見よがしに置かれた宝箱を見つけたのであった。


「攻撃したら普通偽宝箱(ミミック)は反応するのに反応しないって事はまず宝箱だ。罠という線にしても剣を蓋の隙間に突っ込んでも何の反応もしない以上多分無ぇ。…仕方ねぇ、今日はここで一泊するか?」


彼の言う通り彼らはその宝箱に様々なアプローチをしていた。その途中で宝箱の蓋が少し緩んだため剣を差し込んだところ、出来た隙間から漏れてきた多量の魔力を感じたオウンの『ちょっと開けただけでこんなに魔力が漏れるんならかなり質の高い魔法武器(マジックウェボン)かもな』という言葉がより彼らの興味を引いていた。


「リョウ君、てこの原理をやってみましょうか?…オウンさん、もう一日が終わったんですか?」


アルがその細剣を抜きながらリョウに提案する。そんな扱いでいいのか。しかしリョウは首を振りつつ宝箱の前面に取り付けられた鍵を持ちあげる。


「いや、てこの原理でも無理だろうな。結局この鍵をどうにかしなきゃいけねぇ…」


その前に剣の使い方のおかしさについて何も言わなくていいのだろうか。


「そろそろその時間だろうって事だ。どうせいつ核の所にたどり着けるか分からねぇんだ、ここで交代で仮眠を取ったり食事にしたって問題ないだろうよ」


「分かりました。…リョウ君、キャンプセットを出してくれますか?」


「はいよ。…ファンタジー世界に頑丈な南京錠とか普通ねぇよ…ピッキングするしか無いのか…?」


「相変わらずあっさりと寝る準備を整えやがるな…。リョウ、ピッキングってのは何なんだ?」


「アルの家事スキルは料理を除けばかなりの腕前だからな。それにキャンプセットはただ手順通りに展開するだけだし、楽だろ。ピッキングの説明難しいなぁ…んーと一言でいえば鍵開けの技術?細くて曲がっている金属の棒でやるんだが……はぁ、宝箱を壊せれば一番楽なのに…」


アルの料理はそのほとんどが何かの丸焼き(・・・)である。男らしいと言えばらしいのだが、その味付けがかなり適当なためおいしいときもあれば非常にまずいこともあった。

…スパイスぐらいきちんと使えと言いたい。


「鍵開け?…そういう道具なら持っているが…使うか?あと宝箱は迷宮の壁や床と同じように少し欠けたり破損が起きたりしても絶対壊れねぇから諦めとけ」


「何だ持っていたんなら最初っから貸してくれりゃいいのに…」


「お前らが最初から堂々と向かっていったもんだから何とかなるのかと思ってな。…ほらよ」


オウンがリョウにナイフや様々な太さの直角に曲がった金属棒、やすりなどを一まとめにしたツールをリョウに放る。この世界の防犯は基本的に魔法を用いた結界が作用しているため、このようなツールは迷宮内でしか活用しないのだ。

…軽く扱っているがこの道具は一括して冒険者ギルドが管理しておりオウン達のように上級の迷宮に潜れるほどの実力者にならなければこの道具は販売されないのである。



「料理どうします?僕がやってもいいですか?」


「オウンのおっちゃん、料理してくんねぇ?今のところは俺がこっちをやるわ」


「はぁ…わーったよ。草原ウサギの香草焼きでいいか?」



そして彼らは食事を終えた後、交代しながら仮眠を取り、見張り役は眠りに落ちるのを防止するために黙々と宝箱の鍵を弄りながら暇を潰していた。

そして見張り役の最後の番、リョウがいらついて鍵穴に棒を差し込んで内部の構造が抵抗するのを構わず思いっきり棒を回したところ―――――






ガチャ






と音がして鍵が外れた。


「うぉぉぉ!?…あぶねぇ、モンスターを呼び寄せるところだった…」


迷宮内では大きな音を立てた場合近くにいるモンスターが寄ってくることがある。故に迷宮に潜る冒険者は静かな活動を強いられるのである。まぁ彼らにとっては寄ってきても簡単に追い払えるのであるが。

リョウはテントの中に入って二人を起こした。



「ううん…あ、もう寝るのは終わりですか?」


「あぁ、そろそろ終わりだ。…それもそうなんだが宝箱の鍵が開いたぜ!」


「おう、結局開いたのか…開かなかったらほっといて先に進むことを提案しようかと思っていたんだが。…で、中身は何だった?」


「まだ見てねぇ。どうせなら皆で見ようぜ」


彼らは宝箱の周りに集まると、リョウが代表してその蓋を開けた…そして中にあったのは。



「…こりゃ短剣か?…確かリョウが鑑定持ちだったな?調べてくれ。かなりのアイテムだろう」


そう、内部にはダガーとも言うべき短剣が収められていた。柄の部分には革がまかれて握りやすくなっている。柄の一番端、柄頭(つかがしら)の部分には黒色の石がはめ込まれており、どうやらこの石が魔力を放っているようだ。鞘は青い金属で作られている。

リョウが代表して短剣を手に取り鞘から抜くとそこには青くうっすらと輝く両刃が存在しており、まるで今打ち終えて水に浸したかのような印象を受けた。


「わかった。…まず名前は『千毒(ちどく)の短剣』って言うらしいな」


「チドク?どういう風に書くんですか?」


リョウが紙に名前やその力を書き出す。


その力は…

名前:千毒(ちどく)の短剣

所属系統:魔法武器

能力

・短剣に魔力を込めることであらゆる種類の『毒』を生み出せる

注意

・所有者が毒によって死亡した場合は所有者が死亡した時点で持っていた魔力を全て毒に変換し周囲にばらまく。

所有者:リョウ ■■ ■■■


「…要は毒の生み出せる短剣って事か?俺には向けるんじゃねーぞ。家族残して逝けねぇよ」


「死亡したら毒をまくって…何ですかそれ」


「さぁ?ていうか相談があるんだけど…」


「これ以上の厄介ごとはやめてくれ…」


「俺が最初に手に取ったからか文字化けしているけど所有者登録されちまった」


「まぁ別に僕は使いませんからいらないんですけど……オウンさん欲しかったりしました?それならリョウ君が相当額を払いますけど」


「いらねぇよ。金には今のところ困ってねぇ。そもそもんな物騒な剣貰えるかよ。それを持ったまま死んだら毒で家族が死ぬわ」


「じゃあ俺のものにしてもいいか?ちょうど俺短剣と普通の剣の二刀流だからちょうどいいんだよね」


「好きにしろ。そもそも俺はもう戦いに戻る気はねーよ」


「そう言っておきながらここに来ていますけどね」


「『住んでいる街を守るために頼む』とか言われたら受けねぇわけにもいかねぇだろ…娘もあそこにいるんだぞ」


「そっか…まぁここを踏破すればとりあえずの対処は終わるんだろ?」


「おう。どこまで落とされたか分からんがこのクラスのアイテムが出てくるのなら核も近いはずだ。核にさえたどり着けば上に戻れる」


迷宮出土品(ドロップアイテム)で核の近さが分かるんですか?」


「アイテムは核が生み出しているらしいからな。……正直実際のところは分からんが、核に近づけば近づくほど質が良くなるのは大体の迷宮で共通している。こんな風にマジックウェポンが出てくるのはそれなりに難易度の高い迷宮の深層だな」


「この迷宮は最近できたんですよね…?」


「竜が見逃していりゃあ相当前からあってもおかしくねぇ。第一落とし穴のトラップなんて生まれたころの迷宮は作らねぇよ…」


「てことは用心したほうがいい感じ?」


「おう。特にリョウはレベルが低いらしいから注意しとけ」


「分かりました。リョウ君、ここからはオウンさんを先頭にしていきましょう」



彼らは片づけを終えると宝箱のあった部屋を出ていった。



―――――――――――――――――――――――――


「今何階かしら?」


「今は22階にゃ。地図を見比べてみると逆ピラミッドの構造になっているみたいだから後5階ぐらいで一番下に着くと思うにゃ」


ロー達一行は順調に迷宮内を進み、何度かの仮眠を挟んで先ほど22階にまで降りて来ていた。少しずつ敵も強くなり、先ほどハルが初めて回復魔法を発動するところにまで来ていた。


「できたばかりで深すぎんだろ…」


「かなり昔からあった可能性もあるな。何しろさっきの宝箱からは魔導書が出てきたくらいだ。俺の経験上こういう時は慎重に行くもんさ」


「そうにゃ。食糧も今のところは十分あるから問題ないにゃ」


「長引くとテッケン爺さんの修業が厳しくなるんだよ…。前二日間空けたらその後が大変になっただろうが」


「あぁ、あの時ね。…まぁ良いじゃない。楽しかったんだし」


「労働の後の休日は大切にゃ!」


「お前ら基本的にしゃべっているだけだろうが…」


「ロー、お前も苦労してんだな…。俺も家じゃかみさんの尻に敷かれているからな、分かるぜその気持ち…!」


「おお、今夜は酒を飲んで語り合おうじゃねぇか…!」


固い握手をして話すローとエイン。迷宮に来るまでの道中で名前呼びするほど親しくなったのは良いが正直暑苦しいものである。


「はいはい、ハルちゃん馬鹿は放って行きましょう」


「今のところまだ見てないのはあっちにゃ」


どの世界でも男女の温度差は存在するのであった。


「「泣けるな…」」


彼らに関してはちょっと別かもしれないが。正直腐っているのは勘弁したい。



―――――――――――――――――――――――



「…ここどこだと思う?」


「階段からすぐ大きな門の前ですから多分この迷宮のラスボスじゃないですか?」


「やっぱアルもそう思うか。オウンのおっちゃんは?」


「同意見だ。だが、ここまでの宝箱の中身やモンスターの強さを考えるとちょっとこの人数では相対したくねぇな」


一方リョウ達は迷宮の最下層まで来ていた。階段を下りた先には落とし穴にはまった時のように高校の教室ぐらいの広さで正方形に整えられた広場があった。そして階段の反対側には3メートルほどある天井に届くほどの門が壁そのものになって存在しており、『広場×扉=落とし穴』が若干のトラウマになっていた三人は階段に腰かけて相談をしていた。



「ならここで皆を待つのか?」


「その方がいいと思うぜ。エインのやつもお前らの仲間を連れて多分ここを目指すだろう。それを待って全員で当たった方が楽だ」


「じゃあ交代で仮眠を取りましょうか。…さすがにここで寝ていればだいじょ…」


アルが話している最中に突然広間の先の門が静かな音を立てて門の奥、リョウ達からは見えない部屋の側へと開き始めた。


「……お前ら誰も足を踏み入れていないよな?」


「ええ…」


「踏み入れるわけねーだろ。もう落とし穴の件でうかつな行動はこりごりだ」


「…いやいやいやじゃああれどうなってんだよ?」


「俺らの世界じゃこんなことわざがあってな…『見て見ぬふりをする』」


「それは慣用句ですよ…ですが賛成です」


「どういう意味だ?」


「見なかったことにするんだよ。行ってたまるk」


リョウが言い終えないうちに門が完全に開き切り門の奥、薄暗くて良く見えない空間から『グオォォォ』という声らしきものが響いてきた。


「…よくわかんないけど『さっさと来い』って言う言葉が聞こえた気がする」


「奇遇ですね。自分もです」


「行きたくねぇんだがなぁ…家族宛に遺書残して来ればよかった」


「僕らも掲示板で言い残せればよかったんですけど今使えないんですよね…」


掲示板で言い残す遺書は無い。


「無理なもんは仕方ねぇよ。……さてはてどんなモンスターがいるのかね。イケメンだったらアルもろとも滅ぼす」


「奇遇だな、俺もだ」


「ひどくないですかあんたら!?」


彼らは剣を抜きながら互いに冗談を飛ばして今にも萎えそうになる気持ちを奮い立てながら門の先へと足を進めていった。


門をくぐると奥が見通せなかったのが嘘のように急に明るくなり、リョウ達はそこにいるモンスターをはっきり目視できた。


「…いやいやいやこんな短期間にまた出会うとかある意味幸運なんでしょうかね俺らは」


「ちょっとこれは無いでしょう…3人で当たれとか無理ゲーですか」


「こないだリョウから見せられたと思うが…生きていたのか?」


「いやいやいや生きてるわけないでしょ。俺らの目の前で死んでったんだぞ」


門の奥の部屋は学校のグラウンド程に広く、高さも三階建ての一軒家ほどあった。彼らの目の前には二本の後ろ足で竜が立ち上がり、その更に後ろには竜の石像が存在しておりその口に咥えられる形で蒼い球が安置されていた。


そう、彼らの目の前にあったのは…否、居たのは依然リョウ達が街にやってくる前に出会った草原の老竜、それに似た竜であった。


草原の老竜は体高が5メートル、頭から尻尾まで含めると10メートルほどもあり、体全体が白に統一されていた。背中には一対の大きな翼、頭は青い目と牙が生えた口を持ち、その過ごしてきたであろう年月が見ただけで想起される圧倒的な威圧感と存在感を持っていた。

リョウ達が見た竜は全身の色が黒色かつ目は赤と色の違いはあれど全くと言っていいほど同じ姿かたちをしていた。ただ一つ――――老竜の纏っていた強大な威圧感と存在感は無かった。まるで作りもののように。


老竜が死にかけていたとはいえ纏っていた威圧感、それが無いことにリョウは安堵しつつもオウンに尋ねた。



「オウンのおっちゃん、奥の石像の下にある玉が核か?」


「たぶんな。だが…この竜を倒さねーとどうにもならねぇよ。強制転移で逃げる前に追いつかれる」


「あの竜は死んだはずなんだけどなぁ……生き返ったってか?それこそありえな……いや待て、ありえてもおかしくねぇのか…?」


「リョウ君何か知っているんですか?」


「…分かんねぇ。ただ今は戦うしかねーだろ」


「よくわからんが、来るぞ、全員散れ!」



リョウ達の立っていた場所に蒼い竜が突進してくる。リョウ達はそれぞれ横に飛ぶことで攻撃を回避した…が、そのせいで竜が開いたままであった門にぶつかり、門がひしゃげながら閉まってしまった。

リョウ達は閉じ込められてしまったのである。





「…やばくねぇ?戦うとか軽く言ったけどどうやって勝てばいいのよこれ」

遂に20話まで来ました!(???もあるから実際21話なんですが)

しょぼいですけどここまで続けられるって結構うれしいです。そして三桁まで連載し続けているユーザーさんはすごいと思います。


まだまだ書きたい部分もあるのでこれからも書き続けていくつもりです。

前回も言いましたが今話から夜12時更新です。日付変更までには何とか一話…という考えです。…あれ、夜十二時は次の日になるのか?

(…連続投稿途切れた( ゜Д゜))

ま、まぁブクマなど色々応援してくれたら嬉しいです!書く活力になると思います。

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