19―日頃のストレス解消にゃ―
ダンジョン内突入です。視点変更があります。
やっと九時予約投稿できた…!
今私達は草原の中央部分に生まれたオウンさん達曰く「迷宮」らしい場所に潜ってる。
入口は半径百メートルほどの土がむき出しになった地面の中央に空いた穴から入っていったの。
その入り口の形は正方形で、一辺2メートルぐらいだったわ。それに垂直に降りるのかと思ったら階段があって驚いたわ…。降りると高校の教室ぐらいの広さの広場があってその先には模様が彫られている扉があったんだけど…
「ここは何なの?あの扉は?」
「おう、サラの嬢ちゃん、その疑問はもっともだ。ここは入口の手前って所か?恐らくあの扉を開けた先から迷宮なんだろう」
「なぁ、何で壁が光っているんだ?」
私に続いてリョウがエインさんに聞いた。私もそれは確かに気になるわね。カンテラとか出す必要あるかと思ってたんだけど…
「あぁ、それはダンジョンのせいだな。迷宮内では何らかの理由で明かりが確保されている。魔物の光源確保の為だろう。…そうだな、一度ダンジョンについて説明しておくか」
あら、ありがたいわね。
「よし、じゃあオウン任せた」
人任せなの!?
「あ~、そんな風に見るなよ。俺は経験で何となくやって来たからな…エインの方が俺よりは説明出来ると思うぜ」
よりはって何よ……そこはかとなく不安を感じさせるわね…。
「まぁ俺もあまり説明できないんだがな。……そこ、小僧そんなにあからさまにがっかりするんじゃねぇよ。喧嘩売ってんのか?
とりあえず迷宮の入口ってのは大体が上で見たああいう穴の事を指す。…お、気付いたか?ここはもう迷宮だ。迷宮には罠とか宝箱とかあってな、迷宮によってだが例えば一人だけ転移で飛ばされたり、横の壁から矢が飛んで来たりと色々な罠があるな。宝箱の中からはそれこそいろんなもんが出てくる。
今までに一番衝撃的だった罠は…そうだな、床が円形の部屋に入ったとたんドアが閉まって、すげえ勢いで床が回転したことがあったな。その時の宝物は…本だったか。価値が全く分からなくて困ったもんだ」
「遊園地のコーヒーカップか…?そんな罠もあるのかよ」
リョウに同意かしら。そんなの立っていられなくなりそうね…
「ものすごく酔いそうにゃ…」
「それはどうやって脱出したんだ?」
「この罠には続きがあってな…回転し続けている最中に敵が湧き出て来て襲い掛かってきやがった」
…それ敵も立てないんじゃないかしら?
「それなんて無理ゲー…。良く勝てたなおっちゃん達…」
「ところがあっちも俺らと同じように酔っちまって動けなかったな!さすがのあの時出てきたオークがラスボスとして罠の解除ボタンを守る位置にいたらしくてな、酔って倒れたことで解除されたんだよ…。結局罠が止まるまではお互いに立つことすらできなかった」
そりゃそうでしょうね!でも空を飛ぶタイプならどうにかなったんじゃないかしら?
……迷宮って馬鹿?どう見ても馬鹿ね。
「…罠の事は良いです。ええ…その場で何とかするしかないって事が分かりましたから。他には?」
アルまで呆れているんだけど…その気持ちすごく同意するわ。
「オウンが言った以外には…そうだな、さっきもちょっと言ったが迷宮が生まれると迷宮核ってもんが必ず最下層に現れるんだが、これがまた高純度な魔石でな。手に入れば高く売れるぜ。…と言ってもしばらくしたらまた復活するんだが」
「復活したら意味ないんじゃないかにゃ?迷宮をなくすにはどうすればいいのにゃ?」
「迷宮を無くす?…聞いた事ねぇなぁ。迷宮出土品の質を上げるために冒険者の潜入を一時止めることはあるが…なくすってのは聞いた事ねぇな」
「でもここの迷宮のせいで異常が発生しているんでしょう?何もしないの?」
「エインの言った事にゃちょいと欠けている部分があるな。潜ったり潜らなかったりすることで迷宮の活動をギルドが意図的にコントロールしているんだよ。ここの場合は多分出来るだけ潜って痛手を負わせることになるはずだ。
そうしたら引き上げてしばらくの間手を出さねぇ。そしたら迷宮が魔力の回復のためにさらに周囲の魔力脈を掌握するからそれで町の周囲の魔力濃度が落ちて異変は無くなるんじゃねぇか?」
「ほう、まるで迷宮が生きているみたいだな」
「それは比喩じゃなくて実際に言われているぜ。まぁ、これで罠と宝箱と核は説明したか…あ、後はモンスターか」
「モンスター!ダンジョン来たコレ!」
リョウうるさい!
「魔物じゃないんですか?」
「魔物は普通に地上に存在していてな、魔力をその身にため込んで魔石が体内に生まれた動物の事を指す。後天的に魔石が体内に生まれた生き物の事だな。死んだらその体全体が残る。魔石は消えちまうんだが。
俺たち人間なども体内に魔石を生まれた時から持っているぜ。んでだ、迷宮の中で生まれたモンスターは倒した後その強さに応じた魔石を残す。迷宮が周囲の魔力を集めて生んだって言われているから当然だな。
魔石を残すのは迷宮のモンスター、魔石は残さないが肉体を残すのが魔物だな。魔石も肉体も残すってのは聞いた事ねぇな」
「迷宮では倒したらすぐ魔石になるんですか?」
「それはモンスター次第だな。弱いやつはすぐ魔石になる。ゴーレムは例外で弱くても倒した後しばらくは原型を保っていやがる。泥で出来たマッドゴーレムの時は大変なんだぜ…泥が消えるまで待つわけにゃいかねぇから崩れた泥の中から探し出すんだ」
「ふむ、大体わかりました。じゃあ行きましょう」
そうね。とっとと行きましょうか。
前にはオウンさんとリョウ、アルが出て、後ろにあたしとハルとロー、加えてエインさんが並んでそれぞれの武器を出したわ。
リョウは昨日テッケンのお爺さんからもらった幅広の片手剣、アルも前回ちょっとレイピア風に細くし過ぎて失敗したからちゃんとした細身の剣を貰っていてそれを構えたわ。オウンさんも剣を構え始めた。
あたしはFWの時から持っていた魔力増幅と魔法の正確性の上がる杖を、ハルちゃんは手を保護する指ぬき手袋…もうグローブじゃないかしら?を嵌めて用意万端、ローは中央から前後に援護できるようにハルバードを構える。エインさんは…杖みたいね。
この並びはここに来るまでに魔物対策の態勢として話し合っていたからすぐにできたわ。
そしてリョウとオウンさんがこちらを見て準備の完了を確認すると向き直って二人そろって扉に手をかけたわ。すると――――
パカッ!!!!
「はあ!?ちょい待てそれは無しでー!?」
「うっわ!?これ落下ダメージで死亡とか嫌すぎるんだけど!?」
「あ……」
リョウ、アル、オウンさんの足元の床が無くなってその下の穴へ三人とも声を小さくしながら落ちていったわ。アルの素が地味に出ていたわね…貴重な声が聞こえてちょっと嬉しかったりもするかしら?
ところで…オウンさん、貴方迷宮のプロじゃなかったっけ?一言も言わずに消えていくとか何なのそれ!?
バタン!!
あたしたちはしばしの間無言で再び何もないかのようにただの床に戻った地面を見つめていたわ…
「…なぁ、エインさんよ、これって罠か?」
「…罠じゃないか?もしくは扉はフェイクでこれが迷宮の入り口か」
落下から始まる迷宮攻略なんて嫌ね…
「入口ならうちらも同じようにすればいいにゃ!」
ハルの言う通りに前に進んでいつ落ちてもいいように身構えてから扉に触ったんだけど…
「普通に開いちゃったわね…。これどうする?」
何事もなく扉は開いてその先に石のレンガ?が積み重ねられた壁が淡く発光している通路が現れたわ。
「…合流するためにも進むしかないと思うぜ。こんなしょっぱなから罠とか笑えねぇ…気を付けていくぞ」
あたしたちはエインさんの号令に従ってハルとローを前衛、あたしとエインさんを後衛とした並びで足を踏み入れていった。
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「ぐっはいてぇ……落ちた途中から急に滑り台ってある意味そっちの方が尻に優しくねぇよ…」
俺らは落下中に突然穴が滑り台になってそのまま滑って迷宮の中と思われる空間に出ていた。長方形に切り出された石が積み重ねられているのはさておき、壁が淡く発光しているのはどう見ても迷宮だろ…。
あ、剣?あっはっはっは最初にアルの剣が俺の顔を掠めたときはマジで死ぬかと思った。互いの剣が出たまんまとかとかやべぇって事で俺とアルは落下中にアイテムボックスの中に入れた。
オウンのおっちゃんは滑り台の途中で剣を立てて速度を軽減していたから俺らより後ろになって安心だったかな。こっちはストッパーも無しに一気に滑り落ちて部屋の天井、2メートルぐらい上から勢いよく固い床に向けて吐き出されたから床に落ちた時の痛みが半端なかったぜ…。
さて、出口での休憩もそろそろ終わりか。この部屋と同じように長方形に切り出した石が積み重ねられた通路が部屋の外に存在しているのは落ちてきた……いや、滑って来た直後にアルと二人で確認した。
「ふぅ、そろそろ痛みも引きましたか?僕は微妙ですけど…」
「まだ痛いけどそこまでじゃねぇな。アルが下敷きになってくれたおかげか?ありがとな」
「はぁ…本当に痛かったんですよ?オウンさんはどうですか?」
「俺は速度を途中から抑えていたからそこまで痛くはねぇな。その分剣が一本ダメになっちまったが…次元鞄に替えの剣があったからな、問題ねぇ」
ディメ…?要はアイテムボックスか?あの肩から下げた鞄がそれだったのか…。
「それって買えるのか?」
「お前ら空間魔法持ちじゃなかったか?…買えるかどうか聞かれれば買えるな。迷宮の宝箱から出てくる物の一つだ。珍しいからもし見つけたらかなりの高値で売れるぜ。俺らは自分で潜っていたら見つけたんだが、もし買うとしたら…そうだな、家一軒新しく建てるぐらいの金額は掛かるんじゃねぇか?」
たけぇな!?
「そういうものも出てくるんですね。これはちょっと宝箱が楽しみです!」
あ、アルの目が輝いてる……ライトノベルとかそういうのが大好きだったって言ってたもんなぁ…こういうのは夢だったんだろ。
「おい、リョウ、アルの奴どうしたんだ?何かすごく楽しそうなんだが…」
「こういうのが大好きなんだよ。ほっといて良いと思うぜ。行こうぜ」
「お、おう…」
「ひどいですね…」
――――――――――――――――――――――――
目の前から剣を持って迫ってくる緑色の子鬼の背後に回って足を払い、倒れかけたところを思いっきり壁にぶつけてぶん投げる。
その一方で目を別にやるとローが近づいてくるゴブリンの首の位置にハルバードを置いて、ゴブリンが間合いに入り次第その膂力で槍斧を振って首を刎ねている。
サラとエインは背中合わせに色々な魔術を放っている。サラは…今は精霊魔法を使っているみたい。見えないけど杖を振るたびにゴブリンが横へと吹っ飛んでいっている。エインは…炎かな?を放って何体かのゴブリンを纏めて火達磨にしている。
と、そうしているうちにまたうちの目の前に新しいゴブリンが現れる。
「いい加減にしてにゃ!」
振り下ろしてきた剣の腹の部分に部分獣化で出した虎の爪をぶつけて軌道をそらす。そのままもう一方の手の爪でゴブリンの首を斬り飛ばす。…あ、うちの爪が鋭いからか、頸動脈(モンスターにあるかは分かんないけど)を割くつもりが首ごと切ってしまった。
もう…
「こんなに弱いんだからとっとと逃げればいいのにゃ」
そう、いまうちらは部屋の中でそれぞれ散って部屋に続々と攻め寄せてくるゴブリンの相手をしている。
最初は通路の途中で出会った何体かのゴブリンだった。倒して生まれた魔石をしまっている間にどんどん次のがやってきて…さすがに多すぎたからその前に宝箱を開けた部屋に戻ってそれぞれ散らばってゴブリンの相手をしていた。
最初はまとまっていたんだけど相手が一撃で死ぬほど弱かったからバラバラに戦う事になった。
「そうね…もう魔法どころか杖で殴っても勝てるんだけど」
サラがそう言いつつ80センチぐらいの杖を振り回してゴブリンを倒す。…確かに倒れた後消えているけど魔法使いがそれでいいのかにゃ…。
「おう、弱いしまだまだ戦えるんだが…やたらこの数は多いな」
「多分迷宮の中でどんどんゴブリンが生まれて溜まっていたんだろう。ところが俺らが来たことで一気に押し寄せているんじゃないか?…それに入口からくるゴブリンももういなくなってきているしこの部屋にいる奴を全員倒したら多分終わりだ。」
「やっとかにゃ…めんどくさかったにゃ…」
「ふぅ…あたしの所のは終りかしら?」
「だな。…ってーかもう虐殺だな」
うちらの戦闘がおわったのを確認したエインが地面を見てつぶやく。確かに倒したゴブリンの魔石が部屋中の地面に散らばっている。この部屋の大きさが野球のダイヤモンドの広さぐらいなのを考えてほしい。
それぐらいの広さにビー玉ぐらい大きさの魔石がうちらの立っているところを除いて敷き詰められている。それどころか2層か3層ぐらいにまで積みあがっているからそのすごさは分かってもらえると思う…
「これだけの量の魔石、どうするのにゃ?」
「俺の持っているこの袋をいくつかやるからその中に入れてくれ。俺が鞄に入れて預かろう。分配とかは迷宮から出た後に等分でいいだろう。ゴブリンの魔石は少ししか価値がねぇがそれでもこんだけあれば結構な額になる」
「分かったわ。結構な量ねこれ…」
「いっそもっと強いやつになってくれりゃあ集めるのも楽だったんだけどな…」
「その通りにゃ…」
そうして文句を言いながら集め終え、しばらく休憩になった。
「今5階よね?…いったいどこまで続くのかしら。さっさとリョウ達に会いたいんだけど…」
「何しろ俺らが初めてだからなぁ…とにかくどんどん潜っていこうぜ。いっそのこと核のところまでたどり着いちまえば楽だろう。そこまで行きついたらあいつらもなにがしかの跡を残しているだろう。…エイン、そうだよな?」
「ああ。迷宮の深さや潜っている階層にもよるんだが…落とし穴にはまっちまった場合かなりの深さにまで落ちているのが普通だ。ここの迷宮の場合は出来たばかりなはずだから階層はそう多くない。そうなると落ちた先からは迷宮の入口より核の方が近いはずだ。核を手に入れれば入口まで強制的に戻される。あいつらならそっちの手段を取るだろう」
「あたしたちも敵がこんなに弱いなら最初の予定通り一気に潜ればいいって事よね…。じゃあさっさと行こうじゃない。どれだけ深いか分かんないけどとっとと終わらせるに越したことは無いわ」
「分かったにゃ。…これにゃ」
うちが今書き加えた地図を広げる。この迷宮に入って分かったことだけれどFWの『地図作成』のスキルはこちらでも地図を描くときに普通より高速でより正確に地図を書けるようになるという形で表れていた。
ローも地図作成は出来るんだけどうちのスキルレベルの方が高かったのか地図が正確だったからうちが代表して書いていた。エインも書けるらしいけどうちの方が上手いという事でうちが代表して書いているのにゃ!…っとと考える時まで猫語ロールに引っ張られて来たなぁ…。
「ん、まだそんなに行ってないのね……やっぱり降りてきた方の反対側かしら?次の階への階段は」
「だろうな。…結局ここまでしらみつぶしに回っているとか…一度くらい向かった方向に階段があってもいいんじゃねぇか…?」
「まぁまぁロー、迷宮っつーのはこんなもんだ。それにできた地図はギルドに売れるぜ。ハルのならかなり正確かつ今のところ全部の階層内全部の範囲が地図に収まっているからそれこそ高額になるだろうよ」
「やったにゃ!次はこっちに行くにゃ!」
「ええ、早く行きましょう」
「相手が弱いとはいえ良くお前らそこまで元気にやれるな…」
「日頃のストレス解消にゃ!あと久しぶりの運動にゃ!」
女の子にとって運動は大事なんだよ?体型維持のためにもね!
それに言わないけど地図の空白を埋めるのって何か楽しいんだよね。できればこの階層も全部埋めたいなぁ。そうしてうちらはまた次の部屋へと向かっていった。
「って最初の部屋から階段にゃ!?」
あ、案外早くこの階終わっちゃったにゃ。コンプリート出来なかったにゃ……
最初はサラ、次にリョウ、最後はハル視点でした。
次から夜の12時にしたいと思います。
……夜九時投稿は間に合いません…(;´・ω・)




