13―街を見て回ろう―
リョウ達5人は無事『動物達の憩い亭』にたどり着き、部屋を取ることが出来た。部屋の割り振りはリョウ・アル組とサラ・ハル・ロー組である。何かあった時に対応できるという事でこの組み合わせがサラの一存で決まった。
ローの信頼度が非常に高いことがうかがえる。…他の二名が少々不安という事もあるが。主に紳士か思春期少年的な意味で。
そして彼らは今、無事雑貨屋でバスケットと布を買い揃えて卵を持ち歩きしやすいように保護し終えたところである。
「さて、じゃあ次は冒険者ギルドかしら?」
サラはすでにフードを外してその顔を出していた。この町では人族、獣人、エルフ、ドワーフが入り乱れて商売や買い物、果ては異種族間でのデートなど仲良くやっていたためさほど危険はないと判断したのである。
「ん、そうだな。にしてもこれぁ…FWの世界じゃついぞ見なかったなぁ」
そう、彼らがやっていたFWではほとんどのNPCが各種族それぞれの住処や国にまとまっていたため、プレイヤーが多く集まる場所を除けばドワーフだけ、エルフだけなどの街や村が多かった。しかし彼らの入ったこの町『トラベリア』は種族が入り乱れていて彼らを驚かせていた。
「FWの通貨が使われていると思ったらこれですからね、一瞬『王都』に来たのかと思いましたよ。」
『王都』とはFWの中の街の1つである。そしてプレイヤーが最も集まった街であり、そこかしこで様々なプレイヤーが談義したり商売の露店を出したりしていた。国の名前もあるのだが、当時はほとんどのプレイヤーがただ単に『王都』と称していた。プレイヤーが入り混じっていたため種族も豊富だったのだ。
「でもこれならいろんな情報が手に入りそうにゃ!うちらの他にも来た人がいるのか聞けるのにゃ!」
「けどこりゃあ…誰に聞けばいいのか分かんなくね?…ギルドもだけどまずは現在地や国とかの確認をしたらどうよ?
…この『トラベリア』なんて英語っぽい名前だけどFWには無かった。他にもそんな街ばかりかもしれねぇ。さっき門番のおっちゃんが言ってた『ジパング』も気になるし」
「それもそうだな。だが小僧、一個聞こう。いったいどこで現在地の確認や国名の確認をする気だ」
もっともである。
「世界地図とかならあるんじゃないかにゃ?…そこのお姉ちゃん、聞きたいんにゃけど地図ってどこで売ってるにゃ?」
さっき他の人に相談してから動けと言ったのはハルではなかっただろうか…?そしてナンパっぽい呼びかけである。
「え?えーと地図ね?それなら噴水の向こうの書店なら売ってたと思うわよ?…でも地図ってちょっと高いわよ?」
驚きつつも女性は親切に答えた。
「分かったにゃ!お金は…むこう言ってから考えるにゃ!ありがとうなのにゃ!」
こういう時に子供っぽくふるまうのはひどくはないだろうか…
「ええ、気を付けてね。」
「…はぁ、ハル、一応気を付けてくださいね?僕らがすぐそばにいましたけど急に知らない人に話しかけないでください。どこかに連れていかれたらどうするつもりなんですか?ここの事もよく知らないんですから落ち着いてください」
「ええ、アルの言う通りよ。あなたもリョウもよく考えてから行動しなさい」
「げぇっ!?こっちにまで飛び火してきた!?ていうかアル、こういう時だけ大人になるんじゃねぇよ…」
「ふん、お前のこれまでの行いを考えてみろ、アルやサラの言う通りだろうが。そしてアルは今までもあんな風に大人だぞ。…ロリコン疑惑はいまだに残っているがな…」
「それいい加減やめてくれませんかねぇ…」
アルが遠い目をする。しかしおそらく彼らはこれからも言っていくであろう。耐えられるのだろうか…
「とりあえず本屋に行くわよ」
「つーかこの世界に来ても本との縁が切れないとか俺って呪いでもくらってる?」
「お前の場合は自分から引きこもったんだろうが。なにトンチンカンなこと言ってやがる。さっさと行くぞ」
――――――――――――――――――――――
「え、マジで?」
本屋で店主に地図について尋ねた一行だったが、彼らの思っていた地図は無かった。『トラベリア』周辺の街までの地図、そして精度も微妙なものしかないとのことだったのだ。
正確な地図は多くは商隊などが自分たちで歩いて作成しているが、その多くは秘匿して他の商隊との差別化を図っているため一般的に売られている地図は微妙であった。しかしリョウ達が店主に『世界中の国の名前や町の名前を知りたい』と言うと別の施設を紹介された。
「役所ギルドに行けば大雑把だけど国の場所や比較的大きい町の地点を書いてある地図があるなんて思わなかったわ…」
「でも言われてみればそこまで大きいものを町の店に置いておくメリットがありませんね。そういう扱いになるのも当然かもしれません。仕事もほとんど市町村の区役所に近いみたいですしこれは僕たちの世界との関わりもありそうですね」
「まぁもうすぐ日暮れになるし、とりあえず様子見で役所に行ってみるぞ。…にしても『役所』って略して言っていたしぜってー何かの関わりあるだろ」
「ところで何か噴水のそばを通ってばかりいる気がするにゃ…」
「噴水を中心として建物の種類に分けた街の形みたいですからね、ここを通る機会が多いのも当然だと思いますよ?」
「それに門番の奴らが『草原と噴水の街』とか言ってたからな、多分噴水で有名なんじゃねーか?俺らの世界並みの技術だろこの噴水」
街全体を十字に大通りが割っており、その交差点は円形の石畳の広場になっていた。そしてその中央には白を基調とした大きな噴水が水を吹きあげている。
円形に囲んだ石の器の中、一頭の大きな竜が後ろ足で立ち、口を天に向けて開いている。その中から大量の水が吹き上がって器の中に降り注いでいるのである。そして竜の広げた羽からも霧が出ていた。
この技術はかなりのものではないだろうか…?
「おっちゃん、噴水で色々考えるのもいいけど役所ギルドが見えてきたぞ。結構でかいのな。んであれが領主の館か…」
「西洋の館にすごく似てるわね」
役所ギルドの隣にある一本の道、その先を見るとサラの言う通り二階建てで柱を黒、壁を白に塗り分けた西洋風の建物が見える。館の中央付近から塔が建っておりそのてっぺんには鐘が見えた。
「何か近代的ですね。あの鐘が時刻を知らせるといったところでしょうか」
「ま、あっちは興味ないしとっとと役所に入ってみようぜ。ってうお、マジで人が多くいるな…。あ、すまん、様々な国の名前とか書かれた地図が見れるって聞いてやってきたんだがどこにあるか教えてもらっていいか?」
ローが入り口付近の受付らしきところに座っていた女性に話しかけた。すると女性はにこりと笑顔で壁を指し示した。
その瞬間一瞬アルの頬が赤く染まったが気付いたものはいなかった。
「あちらが世界全体を描いた地図です。さすがに各国の国立図書館には劣りますけれど、かなり精巧に書いております」
リョウ達はその地図に近づいた。受付の女性は彼らが地図を見て『トラベリア』の地図の出来栄えに驚いていると思っていた。確かに彼らも最初はそれに驚いたがすぐにその驚きは別のものにとって代わっていった―――
彼らは『FW時代の世界の国々が描かれているのではないか』と思っていた。または『全く違う国々が描かれている』の2つであった。しかし――
誰が『FWの世界の国々が形を変え、存在している。しかし主要の目立った国しかない』等と思うであろうか。
FWでは『ランスィード騎士王国』と言われる国が大陸の中心かつ文化の中心になっていた。そしてその周囲に
『クリスラント竜王国』『ジャン獣人王国』『フォレス森林国』『ドラグ帝国』『グラント山岳王国』『クランク鳥人王国』『ヴォルケノ火山立国』『シークアランス海洋大国』『サンドフレア立国』『シェイクアース帝国』、そして大陸からぽつんと離れて『ジパング』が存在した。
そしてそれらの合間を埋めるようにいくつかの小国も存在しており、弱小ではあるが国家運営をやっているギルドすら存在していた。
これらは当初から告知されており、最初に遊べる国は『ランスィード騎士王国』とその周辺の小国家だけであり、順次のアップデートでそれまで行けなかった国や地域に行けるようにするという仕組みであった。
彼らはそのままの地図を想像していたのである。
しかし、彼らが見た地図では大陸の中央に『ランスィード騎士王国』を中心としてその周囲には『クリスラント竜王国』『ジャン獣人王国』『フォレス森林国』『グラント山岳王国』『シークアランス海洋大国』の計6つの国のみが存在していた。そして海洋にはもともとの位置通り『ジパング』が存在していた。
残った国の大きさが大きく変わっていた。まるで他の国が合併吸収されたかのようだった。
それはまるでFWの未来を見てきたかのような地図であり、彼らに多大な衝撃を少なからず与えていた。
「これは…うーん…何とも言えないですね…FWの『ジパング』がこれと同じ場所に存在しているのが余計に困ります」
「…ちっ。こりゃああれか?時代が進んだとか何かか…?」
「その可能性が結構あるわね…。でもこっちに来たのは最近よ?」
「ていうかおっさん、扉を開けたときに俺はタイムラグとかそういう違和感を感じなかったんだが…。パラレルワールドってのを昔聞いたことあるぜ」
そう、リョウの言う通り彼らはただ「扉を開けただけ」でこの世界に来ていた。これが彼らの混乱の大きな原因となっていた。
「パラソルワールドにゃ?」
「パラレルワールドですね。…うーん説明が難しいのでサラにパスしますね」
「うぇ!?混乱してる時に難しい事言わせないでよ…」
「じゃあ後で聞くにゃ」
「そうしてちょうだい」
「まぁとりあえず『トラベリア』はどこだ?…小僧、分かるか?」
「おっさん、俺も今探してるんだが…」
ローとリョウが地図を睨んで『トラベリア』を探し始める。と、唐突にアルが歩き出して、受付の女性に話しかけた。
「すみません、あれを写したりすることは可能なんですか?出来ればしたいのですが…」
「いえ、こちらで小さく簡略化した地図を記念として販売しております。観光でいらした方が記念にと良く買っていかれるんですよ」
「じゃあ3つほど買いますね。――ありがとうございました。」
「いえ、どういたしまして。トラベリアを心行くまでお楽しみください」
「ええ、そうさせていただきますよ。……とりあえず皆さん、ここは次の冒険者ギルドに行きませんか?ここで突っ立って考えていても邪魔ですし、こうして小さいのも買ってきたので地図については宿で考えましょう」
「そうね、そうしましょう。ハルちゃん、行きましょ」
「だな。おっさん、とりあえず冒険者ギルドの方に行こうぜ。トラベリアについては宿で見れば見つかるんじゃねぇか?」
「…そうだな。よし、じゃあ冒険者ギルドの方にちょいと行ってみっか」
――――――――――――冒険者ギルド前―――――――――
数分後彼らはハルバードと短剣を打ち合わせ、その下に宝箱が描かれた板を掲げた木製の建物の前にやってきた。
「ここはFWと同じなのにゃ!」
「どうする?向こうでのギルドカードを出すか?それとも別人として出してもらうか?」
「別人の方がいいんじゃねーの?もし世界が違ったら偽造とか言われそうだし、未来だとしたら何百年生きてる人間と獣人たちなんだって話になっちまう。おっちゃんやサラは違和感ねーかもしんないけど」
「それもそうですね。じゃあ行きますよ――」
アルが両開きのドアを開けて中に入ると中は非常に大きな広間になっていた。
扉から見て左側には依頼などの処理をする受付嬢たちが座るカウンターがずらっと壁に並んでおかれている。そして自分たちが立つ中央からやや右側に沿ったところから柵がずらっと入口の反対側の壁まで並び、その向こうの酒場と仕切っている。
これらはFWの冒険者ギルドと非常に似ていた。
「こりゃあFWの未来って方に一票」
全員がローの言葉に内心同意した。そして彼らは一番入口に近い側、新規受付と札が置かれたカウンターに向かった。
「――すみません、新規登録です」
「はい、分かりました。皆さん5人揃ってですか?では、このミスリル版に手を触れてください。ランク決定の目安となるレベルを計らせていただきます」
リョウ達五人は順に板に手を触れた。そして最後にハルが手を置いたその時、ギルドのドアがけたたましい音を立てて開いた――
ギルド中の目が集まる中、入口に立っていたのは、頭がモヒカン、顔はいかつく思わず「一体お前はどこの世紀末の人間だ」と言いたくなるような男だった。
危なかったです(;・д・)
先ほど書き上がりました。
明日は分かりません。ホントにストック切れました(・_・;)
とうとう国名出てきました。音燕の絵心の無さが露呈しますが地図でも作って出してみようかと思ったりしてます。
一応毎日更新を目指して頑張ります
(活力になるので何らかの評価をくれたらなぁとも思ったり^^;;)




