「どうして演劇部に入ろうと思ったの?」
「そういえば、どうして演劇部に入ろうと思ったの?」
私の問いに答えようとしたとき、ちょうど電車が終点に着き、満員の車内から吐き出されるように外へ出る。
「まあ、いいじゃん。それよりさパフェ食べに行こうよ」
口ごもる姿を見せた後、軽く話題を変えられた。言いたくない事情でもあるのだろうか。それとも、私のように過去の自分から変わりたいのだろうか。彼女の明るい性格から、後者は考えにくい。もっとも、私の理由は後付けなのだけれど……。
「早く行こうよ!」
美佳の大きな声に、ハッと我に返った。2人の笑顔を見て、深く考えるのはやめよう、そう思った。
3人でパフェを食べ、美佳の関西弁を聞き流し、他愛のない話で盛り上がった。何時間でも話していられる。でも、午後7時の空は、私たちに早く帰りなよと、言わんばかりの視線を送る。
クラスの異なる星奈は、明日部室で会おうと約束し、地下鉄で青山方面へ、またねと手を振る私たちも、帰路に着くべく、それぞれの改札へ向かった。
電車に揺られ、渋谷から家までの帰り道。ここで私は、しなくてはならないことがある。髪を下ろし、スカート丈を長く整え、伊達眼鏡を掛ける。