「ここって頭も賢いし、部活も強いんやな」
私の通う学校は、目黒区にある都立大橋高等学校。それなりに有名な進学校である。勉強に明け暮れた毎日が報われた合格発表日は、涙が止まらず大変だった。ただ、中学時代の心残りに、部活動に入らなかったことがある。とても悔やんでいるので、高校では部活と勉強を両立できるようにしたい。しかし、ここで私の計算ミスが発覚した。
「ここって頭も賢いし、部活も強いんやな」
そう、ここは、文武両道でも有名なのである。偏差値と家からの近さだけで、選んでしまった私が悪いのだが…。不意打ちだよ、と途方に暮れている私に、どの部活に入るか美佳が聞いてきたが、誰にでもわかる作り笑顔で、迷っているとだけ言い、その場を凌いだ。
裁縫が得意だから、手芸部が良いと思っていたけれど、この学校には無かった。創部しても良いかとも考えたが、人数を集めるのは大変だし、手芸に興味のない人が来ても、ただ、お喋りしているだけとかになってしまいそうだし…。やはり、趣味に留めておいたほうが良いのかな。そうしてまた、考え直すという振り出しに戻った。
そうだ、美佳は部活に入るのだろうか。少しゆっくりと、後ろを向いてみた。美佳は、寝癖が酷かったのか、艶のある長い黒髪を押さえつけてみたり、右や左に流してみたり、苦戦していた。黙って見ていられなくなり私は、鞄から櫛を取り出し、髪を整えてあげた。後ろ髪も艶々で、本当に手入れが大変そうだった。美佳は、恥ずかしいなと言いながらも、お礼にと飴をくれた。あ、飴ちゃんと言うのか。
「そういや、美佳は部活どこ入るの?」
綺麗な黒髪に見とれながらも、本題に入った。