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不死属性の生き方  作者: ひみゃらや山脈。
第一章 不死属性誕生
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第六話   希望を見る

場面変更を◆にしました。

使い勝手がいいです。

  「ほら、早く起きなさい」


  結局、男と判明してもフェリシアさんの態度はほぼ変わることがなかった。男嫌い、みたいな展開が待ち受けていたかもしれいと思っていたのだが、なんだか拍子抜けだ。

  今までのようにベタベタしてくることはなくなったのだが。


  「なに浸ってるの?今日も封印を施すわよ」


  そう、身体能力。リミッターの外れた新フランボディーは物凄い力を持っていた。

  空中に手刀を振れば空間が裂ける。パンチは音速を越え、蹴りは衝撃波だけで周辺を破壊する。これらの攻撃をしたら激痛、はじけ飛ぶ自分の肉体のコンボはすぐに再生するとは言え、精神的にキツいものがある。

  意識的に加減したのではとっさのときに今までの感覚で力を振るってしまうので自分でリミッターをかける必要があるらしい。

  寝ぼけて寝所の破壊をすでに二桁やらかしている俺にノーの二文字はなかった。結局封印が施されるまで俺は外で寝ることになっており、庭というか森のなかでベッドを置き、寝るというワイルドなスタイルを取っていた。森は既にいくつかの区画が物理的に削れており、俺の環境破壊スピードはこの世界でも有数なのではないだろうかと、内心少しだけ誇りに感じてしまっている今日この頃だ。


  「アホみたいな顔してないで早いとこ支度しなさいな」

  「すみません、フェリシアさん」


  そうそう、男だと判明してからフェリシアさんは少し辛辣になった。たまに毒づくようになったのだ。この甘くチクチクした感じ、癖になりそうである。


  「それじゃあ宜しくお願いします」


  そういって俺は右腕を差し出す。

  五体に印を刻み、様子を見ながら身体能力の調節を行うのだが、成鬼の儀以前と違うのは任意でリミッターを外せるとこにある。120%!いや、200%だあああ!みたいな。まあ同然、実際のとこ100%までしか出ないのだが。

  このバカみたいな身体の出力は勇者の刻印にあるらしい。結果的に勇者の刻印は吸血鬼の力のブーストと一部能力の抑制といったモノに変質しているらしい。一部能力とは痛覚カットだとか、人外生物への変身能力、だそうだ。ようは神経などの細かい変身や、狼とかコウモリへの変身が出来ない、とのこと。このクソ刻印は召喚されてからこのかた迷惑しかかけていない。いずれ役に立つことをやってほしいところである。


  閑話休題。


  俺の右腕をとったフェリシアさんはそれに手をつけ、封印術式かけ始めた。成鬼の儀のときと違って純粋な魔力光ではなく、精緻な文字のような模様が魔力光となり腕の周りを回る。

  力の吸血鬼の儀式じゃなくて技の人間の儀式に近いんだとか。そう考えるとその両方を自在に扱えるフェリシアさんはただ者ではない。それを殺す勇者ってどんなだよ。


  「やっぱり細かく区分けして封印しないと溢れちゃいそうね」

  「はあ、だからこの文字みたいなのがクルクルしてるんですかね」


  何の気なしに答えるとフェリシアさんは驚いたような顔を上げ、こちらを見た。


  「視えるの?」

  「まあ、普通に文字みたいな模様が見えますね」

  「吸血鬼の体だとハッキリと視えることは本当に滅多にないことなんだけど・・・・刻印のせいかしら・・・・・」


  また出たよ刻印。なんかこいつがなんもかんも悪い気がしてきた。


  「えーっとなんかよく分からないんですけど、話の流れ的に俺も魔術使えるんですかね」

  「魔術は魔術式を読むことが出来るようになるまでが一番大変で一番重要だから、式を理解して魔力の運用に慣れれば出来るはずよ」

  「ま、マジすか!?じゃあ俺も魔法使えるんですね!?」


  俺のテンションはかなり高めだ。なぜなら魔法を使うってのは男子の永遠のロマンであり、叶うこと無き夢だからだ。

  それが叶う。俺の心は少年のように踊っていた。まあ少年なんだけど。


  「封印がすんだら教えてあげるからその可愛いにやけ面を止めなさい。みっともないから」


  気持ち悪いではなく可愛いな所がこの人からの愛を感じる。


  俺は封印が終わるまで、精緻な文字が色の白い華奢な俺のいくら鍛えても逞しくならない腕を飾るのを見ていたのだった。

 

  ◆


  「まずは文字を覚えてもらいます」


  そう言って目の前に置かれたのは読めない文字でかかれた本だった。三年間知識を得るために書庫の本はだいたい読んでいたが、読めない本は読みようがなく同然放置していたのだが、そのうちの一冊がこれだった。


  「いや、あの読む読まないの問題でなくこの文字を僕は知らないんです。フェリシアさんの術式だかなんだかで転生のとき言葉も文字も理解できるようになったんですけどそれでもこの文字が分からないってことは正直お手上げなんじゃ・・・・・」

  「これは文字じゃなくて魔法です。正確には魔法文字だとか呼ばれるわね。これ自体が世界の理だと言ってもいいでしょう。火には火の魔法文字があり、水には水の魔法文字があります。それらを組み合わせると複雑になり、使うのも難しくなる、それが魔術です。逆に言って一単語だけだと魔法ね」


  滅多に見ない敬語のフェリシアさんも可愛いが、そもそも文字読めないなら意味ないじゃねえか、と俺は思った。

  が、この世界では散々理不尽な目にあっている多少のことは寛容に許せてしまう俺はその先を促す。


  「で、この文字どうやって読んだらいいんでしょうか」

  「読むんじゃない、感じるのよ」


  なるほど。わからん。


  「分からないって顔してるわね」


  と苦笑しながら言いつつ、話を進める。


  「火には火の文字があるってことは火もまた、文字であるわけ。まずはそのそんなわけないだろって顔を止めることね」


  どうやらこの体の俺はすぐに顔に出るらしい。


  ◆


  ふむ、わからん。


  あれから3時間、火を前にした俺は目を細くしたり見開いたりしながら試行錯誤しており、その後ろではフェリシアさんがクスクス笑いながら見守っている。

  なんでもこの世界にいる人間にはこの魔法文字は半ば常識であるらしい。産まれたときから原始的な魔法文字は殆どの人間は読め、魔族は物を見れば直感的に意味と使用法を理解できる、らしい。そのなかでも行使中の魔法文字を視れるということは一人前の証であり、未熟者には魔力光しか見えないとのこと。だからフェリシアさんは魔法文字を視た俺に驚いたのだ。

  そう考えると一人前なのに文字が読めない俺はひどくアンバランスである。


  ◆


  あれからまた数時間、昼の血を軽く一杯飲み、ふたたび火を見つめる。後ろではフェリシアさんが椅子の上で昼寝している。棺桶じゃなくてもいいらしい。

  俺は二つ仮説を立てた。この世界の人間ではない俺は魔法を使えない、という仮説。そして、もう一つは見ている周波数のようなものが違う、ということだ。文字を追える、ということは視れているということなのだが、読めているということではない。だいたい俺もいまや魔族である。なら読めない道理はない。ならば魔族にとって本来魔法文字は視るということは読むということなのではないだろうか。言ってて意味が分からないが、もともと見てる世界が違うのなら納得できる。

  とりあえず前者は嫌だ。こんな世界に来たのなら意地でも魔法を使いたい。


  俺は気を引き締めると、火を視るのではなく、意識して読んだ。

  ゆらゆらと揺れる炎は本質ではない、その根源にこそ本質があるのだ。


  そう意識したとき、チャンネルが変わったような感覚がし、火が文字に見えてきたのだ。成功である。


  俺は狂喜乱舞し叫ぶと、飛び上がるように起きたフェリシアさんに抱きついた。


  「やった!やりましたよ!」


  フェリシアさんは目を見開いていたが、やがて穏やかに笑うと俺の頭を優しく撫でるのであった。

さりげなく抱きつく主人公。

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