第一話 夢ではなかった絶望
目覚めると金髪の美人さんが顔を覗き込んでいた。
ちょっとドキッとしてしまったのはお姉さんにではなく、唐突な状況にだ。絶対に。間違いない。
目鼻立ちは整ってはいるが、薄味な日本人の顔に慣れており、2次元至上主義を地で掲げている俺にとってはノーセンキューなモノなのだ。
「―――・・――・・・」
お姉さんは俺を見ながらなにかを心配げな顔で言ってきた。
何といっているのだろうか。
自慢ではないが外国語がサッパリな俺にはこの外人さんが何を言っているのかわからない。
心配している、といったことだけは分かるが。
「―――・・・・・――・・・・」
またなにかを言ってきたが本当になにを言っているのかさっぱり分からない。
せめて何かジェスチャーで返したほうが良いだろうかと思い、腕を動かそうとして、気づいた。
うでが、うごかない
自分が寝ている状態なのに気づいていた俺はここにきて漸く違和感に気づいた。体が寒くもないし、熱くもない。暖かくもないし、涼しくもないのだ。しかも体が動かず、首を動かそうとしてもびくともしないのだ。
あまりの違和感に吐きそうになりつつ、唯一動く眼球を動かし、目線を下げてみると
そこにはグチャグチャな肉があった。
引きこもっていたとき、某大手掲示板で見たことのあるグロ画像並みに、グロい。それが自分の体なのかも、と思い至り、声もなにも出ず、顔すら動かないことに気がついた。
顔も肉片の中に混ざっているのだから。
どういう理屈か血の涙を流した俺(眼球)を見ていた女性は顔を悲しげに歪ませ、しばらく考えるしぐさを見せた。その後、手を肉片に向け、また話始めた。
『―――・・――・・・・・・・―――――――――・・・・・・・・』
『――――――・・・・・―――・・・・・・・』
30分ほど話終えた後、掲げていた手を肉片にそっと当て・・・・・
◆
また眠っていたのか
目を覚ました俺は、つぶやいた。
「おぎゃぁ・・・」
!?
「おぎゃぁあああああ!!!!????」
正確にはおぎゃぁじゃないのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
あ か ん ぼ う に な っ て る
ちなみに最初に呟いた言葉の意味は「最悪な夢を見た」である。けしてソロあかちゃんプレイではない。
あまりにあまりな展開の連続に俺(赤ん坊)はマジ泣きしていた。どうもこの身体は自分の感情がモロに出るようだ。
「あら、起きたのね?」
なにやら美しくも聞き覚えのある声と共に俺の身体が抱き上げられた。
「体調はどうかしら?新しい身体に不具合はない?」
そんな言葉をかけつつ俺の目を見つめている女性はあの夢で見た美人なおねえさんだった。
「私の名前はフェリシア・グラン・ドラクリオ。あなたは?」
うむ、挨拶は始めが肝心だよね。どうもー俺は
「おぎゃぁあ!」
喋れねえよ!
「ああ、そういえば転生の魔術を使ったあとに言語理解の術式はかけられたけど肉体的に喋れないのね。あなたは」
はい、よくわからんけど喋れないのはそうです
「ふふっ、神妙な顔しちゃってかーあいいわねぇ」
神妙というか納得した顔ですよ、おねーさん
「まあ正式な名前と事情は成長してから聞くとして名前が無いのは不便ねぇ、仮の名前だけでも付けて上げるわ」
もう好きにして!って感じですよ、おねーさん
「あなたの名前はフランよ」
なにやらか可愛らしい名前をいただいてしまった。
フェリシアさんのイメージは巨乳たれ目美人です。
お姉さんキャラ大好きです。