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不死属性の生き方  作者: ひみゃらや山脈。
第二章 エルラント王国編
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第十五話 魔術師魔術修行中

 吊り橋効果という言葉を知っているだろうか。

 揺れる吊り橋の上で告白をすると緊張のドキドキと恋のドキドキを勘違いするというあれである。

 告白の成功率が高まる、ってことでこの話を聞いた中学生のときは如何にして意中の相手を吊り橋に連れていこうか悩んだものである。


 さて、俺は吊り橋効果を自分の身で体験している。


「フランおとーさん♪」


 と、言いながらずっと俺の胸をくんくんすりすりしてるこの娘のことだ。




 ことの初めはレイナを怒らせてしまったとこから始まる。

 姉であるレイは俺に怒鳴ったレイナの態度にぷんぷんしながら探しにいった。やがて青くなって戻ってくると俺にレイナが里の外に出てっちゃった!と言い、それに慌てたアーノルドが探しにいくと言い出した。

 騎士は追っ払ったと言っても獣人は狙われる存在であるため、俺が行くことになり、レイの予想した場所、ランドグリッツ皇国との国境である崖に向かった。

 この崖というのが40メートルちょっとある。だからかエルラントもランドグリッツもここを国境線に設定しているわけだ。

 まあ、そんなことどうでもいいが。

 そこにダッシュで向かった俺たちは丁度魔獣に襲われているレイナを見つけた。

 その魔獣くらいなら楽勝で倒せそうだったのだが、この子はアホなのかドジなのか、距離をとるために跳んだ先が崖だったのだ。

 恐らく崖の上ってのを忘れてたんだと思う。

 悲鳴をあげるレイを後ろに下げ、とりあえず魔獣を殴り、俺も崖にダイブした。崖の壁を走りレイナに追い付くと、見事キャッチ。

 落下死しかけたトラウマを若干刺激されつつ、レイナを無事助けると、男気溢れる俺を父親だと思ったのか、おとーさんおとーさん言いながら泣き出してしまった。

 まあ大人の男性である俺を見たのならそうなるのも仕方ないと思う。


 だが、それから里に戻ってからもずっと


「フランおとーさん大好き!」


 これである。


 吸血鬼のちからってすげー。


 一度食糧として見てしまった罪悪感もあり、引き剥がすに引き剥がせない。

 ふわふわした手触りが最高で思わず頭を撫でてしまうし、撫でると


「えへへー」


 とか言って笑う姿が可愛すぎてなんかもうこのままでいいかな。

 いいや。

 俺は考えるのを止めた。


「ちょっとちょっと!フランちゃん!これはどういうこと!?」


 めんどくさいヤツがきた。

 そう、スーだ。

 スーはフランが大好きでしかたないとか言ってるやつなのでこの状況に不満があるのかもしれん。


「ああ、もう!なんで私がいないとこでこんなことになってるのよ!なんで!?なんで記憶水晶が私の手に無いの!?あー、もう!!」


 ただ興奮してるだけだった。

 記憶水晶とは、ようはカメラである。

 こいつはフランとケモミミ幼女が絡んでることに興奮してるだけだったのだ。思ってたより上級者だった。

 知れば知るほどこいつは残念なヤツだ。


「おやおや!レイナもフランに惚れたかの?」


 とアーノルドは嬉しそうな顔で言う。

 白獅子は強者を好む。竜も強者が好きだと聞くから強い奴等はだいたいそうなんだろう。


「おとーさん里出てくの?」


 俺を澄んだ瞳で見ながら問いかける。

 子供の綺麗な目は俺には毒だ。

 汚いとこまで見られてる気がして思わず目をそらしてしまう。

 俺は汚い人間だ、そんな目で見ないでおくれ.....


「俺は俺の家族を救わないといけないからね、今日泊まったらもう王都に行くよ」


 以外にも獣人はいいやつらで俺ももう少し滞在したいが、俺の心は弱い。豆腐だと言ってもいい。

 あまり長く居るとまた出ていけなくなるだろう。

 自分を知っている俺は早め早めの行動を心がけている。

 俺だって成長したのだ。


「じゃあ、わたしにとっても家族だね!わたしも着いていく!」


 あれれー?

 この娘は何を言っているのだろう。

 アーノルドもそうかそうか、みたいな顔をしている。

 その目抉るぞ。


「いやいや、レイナちゃんの家族はここにいるでしょ?レイちゃんとかさ。だから里から出ていったらいかんよ?」

「おとーさんはおとーさんだから!おとーさん優先なの!」


 ぷーっと頬を膨らませる幼女。

 これは召喚される前にも見たことがあるやつだ。

 そう、通称『かってかってー!』である。

 この技を使用したが最後、買うまで諦めない粘り強い交渉体勢に入るのだ。

 最悪泣いてしまうこともあるので、出来る限り穏便に済ませたい俺は、アーノルドに救いを求める視線を送る。

 アーノルドは、分かった、とばかりに厳かに頷いた。


「あー、レイナ?お爺ちゃんが説得しとくからあちらで遊んでいなさい」

「えー、レイナも話す!」


 くっ、これこそが『かってかってー!』の真骨頂である!

 すなわち、『ああ言えばこう言う』だ。

 こちらがAと言えばあちらもAと返す。

 そのやり取りは限りなく不毛であり、論破されていないかわりに論破することも出来ない、究極の守りの体勢に入るのだ。

 防御力は攻撃力に加算され、買うか無理矢理連れ帰るまで終わることのない平行線を生み出す。その力は無限である。

 神はいないのか....



「レイナちゃん、あっちでお姉ちゃんとフランちゃんのこと話しましょ」

「フランおとーさんのこと!?わかった!いくー!」



 神は、いた。

 神の名はスーである。


 巧みな誘導により、無限の力を受け流し、見事に目的の方向へと着地させたのだ。

 今日はスーが大活躍するスーの日である。


 下らないことを考えているうちに、スーはレイナを連れていった。

 あいつ何気に役に立つな、と失礼なことを考えていると、


「さて、ワシからもお願いする。どうか、レイナを連れていってくれないかの?」


 アーノルドはそう言った。


「アーノルドだって分かっているでしょ?王都は人至上主義の総本山。そこに白獅子を連れていくなんて危険すぎる」


 ここからは大人の時間だ。真面目に話そう。

 現王、フランク・エルラント・キングは亜人差別の提唱者にしてフェリシアさんの家族を奪ったクソ野郎だ。

 そんなやつのお膝元にレイナを連れていくのは心情的にも論理的にも嫌だ。


「レイナの本当の家族はもうここにはいないのはお前も知っておると思うがどうかの?」

「ああ」


 白獅子はこの里にレイナとアーノルドしかいない。しかもアーノルドは養子、と俺に紹介した。アーノルドが家族ではないならつまりそういうことだ。

 しかも亜人差別が激化している昨今、白獅子ほどの稀少種が狙われない道理はない。


「しかしの、ワシら白獅子は家族を求める生き物。レイナにとってこの里の者はみな家族なのだろう。じゃがの、レイをお姉ちゃん、ワシをお爺ちゃんと呼ぶが、お父さん、お母さんと呼ばれる者は今までに一人もいなかったんじゃよ」


 レイナにとってそれだけ大事な存在で、つまるところ代わりなんか出来ないような存在であったということか。


 俺は、どういうわけだか父親扱いされている。

 これは、かなりの好意をレイナから受けていると同時に、白獅子として考えても俺という存在はかけがえのないものになっているということだ。


「わたしも着いていくので大丈夫ですよ!」


 いやいや、レイまで増えると目立つどころの騒ぎじゃないでしょう。

 三人も綺麗所の異種族を連れてたら完全に奴隷商人だ。スーが。


「レイナだけ連れていってわたしを置いていくなんて、そんな訳ありませんよね」


 にっこりと笑うレイ。

 あれ、どこでフラグを立てたんだ?

 俺は、一話から読み直して見た。

 みなさんもぜひ読み返してほしい。






 やはり心当たりはない。


「ふふっ、貴方を襲った者のなかの一人ですよ」


 なるほど分からんわけだ。

 読み返した時間を返してほしい。


 アニマルズに混じってるとは。


「わたしたち、白虎族は強きものを重んじます。わたしは是非あなたの種がほしい」


 この娘はマジでアニマルだった。

 輝く金の瞳とプラチナブロンド。プラチナだがどちらかというと金髪よりか?種族間のハーフとかかな?


 俺が見ていることに気づいたみたいでレイはニッコリと笑った。


「白虎族と虎族のハーフなんです、わたし。白虎には見えないでしょうけど、どちらかというと白虎よりですね」


 わー、また複雑そうな事情を抱えていそうだ。

 こういうのにはあまり関わりたくない。同情してしまうと俺はどこまでも行ってしまうのだ。


「でも、出来損ないなわたしですけど、容姿にだけは自信があります!どうかわたしを娶っていただけませんか?」


 目を潤ませてそう言う姿は色気はあるのだがなんか哀れだ。

 思わず抱きたくなるがそこは俺も紳士。グッと我慢する。


「やっぱダメですか....わたしは出来損ないですから、貰いたくないですよね」


 そう言うと目線をすいっと反らす。

 その反らし方が芸術的なまでに哀れみを誘い、胸がいたくなる。


「お、俺は、好きになった女しかだ、抱かないから!」


 毅然と断ってやる。

 こういうのは威厳を見せるのが大事だ。

 決してどもってなんかいない。俺はいつもこんなしゃべり方だ。


「ちっ」


 舌打ちの音が聞こえた気がした。

 気のせいだよね、こんな可哀想な娘が舌打ちなんかするわけないよね。


「わかりました。では、せめてわたしも連れていってください。レイナが心配なんです」


 やはり渋い顔をする俺。

 これはあまり目立ちたくない旅だ。

 出来ることならひっそりとフェリシアファミリーを救出してひっそりと脱出したい。

 王都を灰塵に変えるのは80%程度解放すればおそらく出来るだろうが、大量虐殺者にはなりたくない。


「あ、そういえば隠蔽の魔法文字があるなら是非見せてくれないか?魔術がかけられるなら連れていってもいい」

「え、本当ですか!?じゃあ今からとってきます!」


 そう言って駆け出そうとするレイの首をアーノルドはつまむ。

 子猫みたいだ。


「馬鹿者!あの魔導装置を万が一にでも壊したらワシらの里の存続すら危ぶまれるぞ!」

「えー、じゃあどうすればいいんですか」


 レイは唇を尖らせる。

 こういう可愛らしい表情をたまに見せられるとドキッとするから侮れない。


「隠蔽、というか変装が出来れば良いんじゃろ?フランが魔術を使えるなら良い手があるぞ」

「マジですか!?じーさま大好きです!」


 レイは満面の笑顔を浮かべる。


「ふふふ、もっと褒めるが良い」

「分かりましたからじーさま!早く教えてください、その良い手というやつを!」

「『隠蔽』なんて魔法文字は自然現象じゃないからの、難度が高すぎるし効率も悪い。じゃから『屈折』を使って光に干渉すれば良い」

「屈折、か。角度計算とかめんどくさそうなんだが。毎回調整して見えなくする、とかだったら俺は嫌だぞめんどくさい」


 そう簡単に使えるとは思えない。

 姿を見えなくするにも、耳とか尻尾とか特定の部位を消すにしても半端なくしんどそうだ。


「ふっふっふ、実はすでに組んである魔術陣があるんじゃ!作ったのは何を隠そう大魔術師ルーク・ラングウッドじゃ!」


 な、なんだってー!

 誰だよ。


「えーっ!あのルーク・ラングウッドが作った魔術陣ですか!?」


 え、えー。

 なにこの流れ。知りませんとは言えない流れ。

 俺はこの流れを知っている。インフルエンザでしばらく休んだあとの講義だ。知ったかぶりして単位を落としたのは記憶に新しい。


「あー、ルーク・ラングウッドの魔術陣なら確かに安心だね。よく手にいれられたね」


 気づくと俺は流れに乗っていた。

 自分の臆病さが恨めしい。


「まあのう、これも協力者からいただいた物でな。魔術を使えるのならすでに組んであるこの魔術を流用すればよかろう?」


 このじいさんはなかなか冴えてるな。

 まだまだボケなさそうだ。


「とりあえず見てみないことには分からん」

「じゃろうて。今から取ってくるから飲み物でも飲んで待っとれ」


 じいさんが席を立って足早に魔術陣を取りにいった。スクロールとかになってるのかな?

 結局ルーク・ラングウッドとは何者なのかあとで調べておこう。

 知ったかぶりしてて後で後悔するのはもうごめんだ。



 ◆


 アーノルドが席を立っているうちにスーとレイナが戻ってきた。

 レイナはキラキラした笑顔を浮かべて俺の膝の上に座った。

 何を話したんだろうか。

 スーはなんだか疲れている。

 子供の話し相手は結構体力にくるよね。




 レイナの銀髪をいじくって遊んでいると、やがてアーノルドは戻ってきた。

 手にはスクロールがある。

 ポスターサイズだ。

 開いて見せてくれると、文字数はだいたい80文字くらいだった。

 俺の滑舌の限界にチャレンジするような数だ。


「こんな数で変装の魔術を行使できるなんて凄いな」


 俺が変装の魔術を作ったら100は行きそうだ。


「まあ、ルーク・ラングウッドじゃからの」


 それで全部済ませる気だな分かってるぞ。


「で、出来そうかの?」


 使う気でざっと見てみると、不可能とは言えない文字量だし、知らない文字もない。ただ早口的に厳しそうだ。

 俺がそう伝えると、


「がんばれ」


 という応援メッセージをもらった。

 頑張って早口が出来るなら魔術師もアナウンサーもいらねえよ。


「おとーさんなら出来るよ!」

「頑張ってください!」


 レイナから可愛らしい応援とレイから食いぎみな応援を貰う。

 おや?おじさん出来る気がしてきたよ?

 我ながら現金だ。


「じゃあまあ今から練習するからあんまり部屋に来ないでくれ。失敗した術がかかったりしたら洒落にならんし」

「みなに伝えておこう」


 アーノルドと他全員に確認を取ると俺は部屋に戻って早口言葉の練習を始めた。

 生麦生米生卵

 隣の客はよく柿食う客だ

 坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた



 俺は異世界にきて何をしているんだろう。

サブタイ魔術師魔術修行中は早口言葉だったりします。

言えるかな?ちなみに僕は全然言えません。

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