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不死属性の生き方  作者: ひみゃらや山脈。
第二章 エルラント王国編
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3 ミハサ・ビットーリアのとある計画

波乱の序章みたいな感じです

 その日、エルラント王国の治療院は狂喜の喧騒に包まれていた。


「姫様が目覚めたとそう言ったな?筆頭治癒魔術師よ!」


 冷静にして冷徹と名高い騎士団長、ルル・ビットーリアは珍しく喜びを隠せないようで、その長年の焦燥の刻まれた厳しい顔に安堵の色を浮かべている。

 しかし、内容が内容なので慎重な彼は一息に信じることが出来ず、一も二もなく駆けつけたい衝動を堪えて、筆頭治癒魔術師に確認を取りに向かったのだ。


 彼の目は如実に語っていた。

 嘘だったら殺す、と


 筆頭治癒魔術師は首がもげるのではないかと思えるほど何度も首肯した。


「そうか!感謝する!」


 そう叫ぶように言うと、再びドアを叩きつけるように開き、最上階である、最重要治療院に向かって足を進めた。普段冷静な分、興奮するとその迫力は尋常ではなく、筆頭治癒魔術師はルルが出ていった後、暫く動くことができなかった。


「あの、忌み子め....」


 忌々しく、しかし決して聞こえないように小声で呟く声が静かな部屋に響いた。



 ◆


 ルルは筆頭治癒魔術師の部屋をあくまで冷静に出ていったあと、足をあくまで冷静に動かし、愛する妹の部屋をあくまで冷静に開き、冷静に問いかけた。


「ミハサ!起きたのか!?」


 実際のとこ、彼の挙動に冷静な部分は欠片も見当たらなかったことは言うまでもない。


 ◆


 ミハサは勇者召喚という大魔術を行使したあと、眠るように気を失った。

 急激な魔力の消費による意識の消失。それはもう目覚めないことと同義である。魔力は生命維持も兼ね備えており、急激に魔力を失うということは命を削ることなのだから。

 さらにミハサの立場がその生存確率を急激に狭めていることを聡明な彼女は理解していた。

 かつて小国群であったころ、彼女の母親は大陸にその人あり、とされるほどの美姫であった。美形とは力である。先王はそれを理解していた。

 美姫の国を攻め滅ぼしたあと、国に連れ帰った。

 賢王であった先代は自分が女に弱い性格、まっすぐに言うと、スケベな性格であると理解しており、美人に溺れる為政者とならず、まだ少女であった娘を城に移すと息子に嫁がせたのである。

 それは美人の血をいれ、美形な子を産ませる為であり、その目論みは成功したと言って良いだろう。

 産まれてきた二人の子は予想に反することなく美形であった。

 女の子は目鼻立ちがくっきりとしており緩くウェーブをかいた黄金の髪と澄んだ碧眼は見るものを魅了した。

 男の子は全体的に妹である女の子と似通った特徴を備えつつも、勇猛果敢であった祖父の血を継いだのか、武に優れたその肉体は鋼のようで国中の女の羨望のまなざしを受けていた。

 しかし彼らは決して幸福ではなかった。

 その生い立ちと美形過ぎるその顔は蔑みや嫉妬の対象となったのだ。

 母はその環境に耐えきれず死に、王は彼らを庇おうとしなかった。

 結局ルルは騎士団長、ミハサは姫としてその身を立てたのは努力と才能の賜物であろう。


 死ぬはずであったミハサが生き残った理由は、勇者との混線であった。

 召喚対象と召喚主は魂体で結ばれる。それは自分の位置に引き寄せる綱のようなものであるが、事故で召喚座標が狂った勇者は空高くに現れた。

 しかし、その綱はまだ繋がったままであり、気絶した彼女はその綱から勇者の魔力を吸いとって生き残っていたのだ。その混線中、ミハサは見ていた。勇者の姿とその親である吸血鬼の存在を。

 その二人の在り方は彼女の無くした家族というものであり、ミハサにはそれが堪らなく眩しくいとおしく、見えたのだ。


 そして今ミハサは目覚めた。

 自分のやることを、やりたいことを心に刻んで。


 その瞬間、ドアが勢いよく開き、美しいと言える顔、頬に走る傷、逞しい体。

 ただ一人の肉親である兄、ルル・ビットーリアである。

 その安堵して涙を堪えている表情を見ながらミハサは言った。


「お兄様、家族を見つけましたわ」


 心の中にとある計画を秘めて

家族(意味深)

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