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不死属性の生き方  作者: ひみゃらや山脈。
第一章 不死属性誕生
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第七話   旅立ち(未遂)

 俺は今日、朝からそわそわしていた。トイレに行きたい訳ではない。

 今日こそ、俺は旅立つことを告げるのだ!


 フェリシアさんと過ごし始めたときから、いずれは帰る方法の模索のために旅に出るつもりだった。しかし、股間のメタモルフォーゼプロジェクトや、魔法使いジョブ獲得など、やむを得ぬ事情から、告げるに告げられなかったのだ。しかし、メタモルフォーゼが可能になり、魔法使いどころか魔術師にジョブチェンジした俺は、そろそろ告げねばならない。

 時が、来たのだ。


 と、思ってた時期が僕にもありました。


 フェリシアさんと会話をしてると危険なほど癒される。というか超楽しいのだ。

 もともとこんなレベルのパツキン美人と話をする機会なんかなかった為か、会話をしていると不思議なほど魅きこまれる。

 噂に聞くチャームかもしれない。

 この世界に来てから会話したのはフェリシアさんだけで、だから俺は彼女に依存しているのかもしれない。原因は分かっているのになかなか告げられない。

 分かっちゃいるけどやめられないというやつなのだ。


 しかし、いつまでもここでこうしているわけにもいかない。大量に備蓄してあるらしい血液もいずれ尽きるだろう。


 というかどうやって維持しているのだろうか。


 よし、聞こう。すぐ聞こう。疑問は早いとこ決着させないとお通じが悪くなるって言うしね!


 ◆


「血液の補給ってどうやってやってるんですか?」


 早速夕飯(輸血)の時間に聞いてみた。


「つてがあるのよ」


 と、上品に血を飲みながら言うフェリシアさん。ブラッディスライムを血に混ぜるとドロドロしたものがさらさらに水のようになるのだ。それはまるでワインのようで彼女にはよく似合う。


「つて、ですか....商人とか?」

「そうね。私の国があったとき、付き合いのあった商人がいてね、その人に昔から頼んでるのよ」

「血を売ってるとか珍しい商人ですねえ」

「当然、血だけを売ってるわけじゃないのよ?血は私だけのために斡旋してくれてるの。そろそろ行商に来る時期だからなんだったら会ってみる?」


 なんと、驚いたことに次に来るのは明日だそうだ。ワォ、タイミングイイナー


「ええ、折角ですしご挨拶したいです」

「フランちゃん可愛いからきっと喜ばれるわよ」


 と、言ってフェリシアさんは柔らかく微笑んだ。


 ◆


 と、いうことで今日、私は死んだときぶりに落下地点(グランドゼロ)にやってきてます。


 実はすこしトラウマになっているのか身体が震えている。

 自分の爆心地を目の前にするとか滅多にありませんよ。というか俺が初めてなのではないだろうか。爪の先ほども嬉しくないが。


 出が柔らかな感触に包まれる。


「大丈夫?」


 顔を向けると顔をフェリシアさんが俺の顔を覗きこんで手を握ってくれていた。


「いやあ、こんくらいでビビるほど柔に出来てませんよ」


 と、笑顔で答えておく。俺も男だ。耐えるときは耐えるさ。たとえ見た目が女の子でも、身体がバイブレーションしていても。


 フェリシアさんも分かったもので微笑みながら手を握ってくれていた。

 ちょっと惚れそう。


 30分ほど自分の中の劣情と闘っていると、荒廃した大地の地平線から、馬車が走ってくるのが見えた。


 どうやら異世界で出会う人間その二が来たようだ。


 ガシャガシャ音を立てて時間をかけてやってきた。周りになんもないから近くに見えたけど地平線まで結構距離があったらしい。


 俺たちの前で御者が馬車を止める。御者はフードを深く被っており、なんだか異世界臭が漂ういい感じのローブを羽織っていた。

 馬車が完全に静止すると、御者がジャンプをするように降りてきた。なかなか身軽で小柄だ。


「むむ、幻覚じゃないなら一人多いみたいだねぇ、シアとー、だれかな?」


 そう言いながら女性はローブを上げた。


 その女性は、くすんだ茶髪と茶色の瞳という、なんだかやや日本人として親しみを覚える色を備え、しかし、顔立ちは西洋風の彫りの深い顔立ちをしていた。16歳くらいか?

 フェリシアさんを見慣れているからか美醜はあまり気にならない。可愛いと言える顔をしていた。


「スー、一人なの?お母さんは?」

「シアー、もう私は子供じゃないのよ?一人で商売だって出来るわよ」


 と苦笑しながら答える少女は俺の方をチラチラ見ている。どうやら気になってしょうがないらしい。

 それに気づいたからかフェリシアさんは俺の頭に手を置いた。


「この子はフランよ」

「フランちゃん!可愛い名前ねえ....それに!嗚呼!可愛い!」


 と叫んだ少女は俺に突進してくるとボールを捕るラグビー選手のように抱きついた。


「ああん!ふわふわしてるわあ!いい匂いもするわあ!!!」


 スウーッ!と音が聞こえるほど強く嗅ぎながら抱く少女。

 お嬢さん、それ、中は20過ぎたお兄さんですぜ。

 フェリシアさんを見ると目をそらしていた。


「スー?そ、それくらいにして、そろそろ商談に入りましょう?」


 フェリシアさんが助け船を出してくる。どっちに向けたものかはわからないが。

 スーと呼ばれた少女は名残惜しそうに俺を離すと馬車に戻っていった。


「今回はエルフの協力が得られたのよー?あとお母さんからトマトの差し入れもあってねー」


 と、話ながら馬車の中をゴソゴソすると、中から大きな樽を三樽、野菜を取り出しているのを見て俺は思わず隣に立つフェリシアさんに尋ねた。


「あ、あのー、吸血鬼って食べ物食べられるんですかね?」

「ん?必要ではないけど食べることは出来るわよ、要するに娯楽ね」


 食べられるのかよ!!!

 と思ったがみなまで言うまい。自分にとっての常識を語るのってしんどいもんね。うん。


「今回はこれで全部ね!支払いはいつも通り物々交換でいいのよね?」

「ええ、いつもありがとう。今回も泊まっていくわよね?」

「そうさせてもらうと助かるわ!ここ最近検閲が多くてねーもうくったくたなのよ」


 検閲ねー、なんかあったのかねえ。物騒なのは嫌いだ。


「それじゃいつも通り先にこれ貰うわね」


 とフェリシアさんは言うと、指輪を弄った。すると荷物が消えた。

 ん?荷物が消えた。ん?


 俺が驚愕していると、何故かスーさんが得意気な顔をした。


「これ凄いわよね、武器庫って言うんですって」


 まんまやんけ。亜空間に収納とかそんなんだろ、もう超常現象には慣れましたよ。いまならチュパカブラが出てもペットに出来るね。


「なるほど」


 とだけ言っとく。頻繁な返事は良好な人間関係の第一歩だ。


「帰りはわたしの馬車に乗っていくと良いわよ!馬車は馬車でも荷馬車だけどね」


 と言うと、いたずら気にウインクをした。

感想とかくれるとうれしいなー(チラッチラッ

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