捨てる覚悟と迫る刻限
罪の意識に押し潰される…帰り道あの時、彼女を止められなかったのか?自分は人殺しすするところだったと頭の中で自分で自分を責め立てる。そりゃそうだ。
俺は証拠もなく人を傷つけることだってできるのだから。力の扱い方を知らなければX-24のようにもなってしまうだろう。
「自分はなんて奴だ…俺の覚悟なんてたいしたことはなかったんだ。最低だ」
「おい」
「痛て」
後ろから叩かれる。それがなんだか自分の中で虚しく何度も反響するように残った感触がした。揺れる揺れる…負けそうになる。
がくっと首が下を向く、耐えきれなくなった罪の重さに体が脱力感に襲われる。助けるなんて偉そうに言った自分がもはや過去の自分で今の俺はただのへたれ野郎だ。情けなさよりなにも思いたくない現実逃避に支配される。
「歩くのは遅いな、走るのは速いくせに。私にでも追い付けるのは少しヤバイぞ」
何がヤバイのか考えるのすら嫌になるほっとけ…
「逃げるか…」
核心を突かれる。それだけで崩れるほど今の俺は弱っていた。
「逃げは一時の効力しかないぞ~殺しの先輩が言ってるんだ。また拳握って立ち向かうなら今あるすべてを投げ出す覚悟が必要だ。戦うってそういうことだ死んだらすべてを失う。そう言うことなら失うモノがなかった私にはお前の力にはなれないな」
生まれたときから覚悟してきた人間と今までただ一日が過ぎるように生きてきた人間とではここで差が生じてくるらしい、失いたくないから戦うのにそれを失う覚悟なんてあるはずがないのだ。
「覚悟のなさ、それがお前を苦しめる」
そう、なにも知らない。俺は子供だ…そして未熟だ。
先を見据えて行動できないから今、まさに苦労している。当然の結果だ。
「それでも敵は来るぞ、お前の心境そっちのけだ。決断は早く済ませるこったな」
「言いたい放題言ってくれるよな…当てはまってるのが俺が黙ってた理由だけど」
「守りたいモノがあるんだろ?」
「ああ」
「それが相手を殺すことになってもか」
「そこは言えない…」
「いいか?殺すってことはありきたりなことなんだ。
生きるためにはなにかを殺す、相手に罪がなくても生きるためだ自分が全てだ。正答な理由、身の安全そのためにお前は戦わない」
「誰かのために殺すってのは結局自分のために殺してるんだろなら自分が相手に殺されてもいい覚悟をしろ
それだけでいい。向かってくる敵を殺すための覚悟はそれだけあれば充分だ」
誰のために命を賭けろ、負けたら殺される勝ったら殺せるそれだけだ。でもそんな軽い話なのか?
「生き死には重い問題だ。そう簡単に割り切れるか」
「その線引きは私にはわからない。お前は銃の引き金は軽いと思うか?重いと思うか?私は軽い」
人を殺してない、その事実だけがこの討論に立ってられる唯一の救いだ。でもこの先、そんな場面が来るかもしれない。そのためには…
「ええーい!ぐちぐち悩むな鬱陶しい!割り切れるないのなら殺すな!覚悟はない!はい結論!」
そう言って締め括られた、でもまだ救われた気がしない。
「殺すな、何のための治す能力だ?その能力のパワー
と治す能力は矛盾してるなー本当に!今のお前にはちょうどいいじゃないのか!殴っても死なないし?」
所詮俺は人殺しなんて大それたことが出来ない人間だったと言うことか…なんかスッキリした。
「それはもう置いといて」
「置いとくのか!?」
「帰る場所がない、かくまってくれ」
ぶー!
胃液が出た、初めてかも本当に出るんだねって何だと!?今なんと言った!
「部屋が無いのならお前と相部屋でも我慢する。置いてくれ私を」
「待て待て待てーい!なんで!?いつからそうなってるのかな?おかしくないかな?」
ここが田舎でほんとによかった…こんなに大声出しても人がいないんだよね。そうだなもう帰れないのなら
おいてあげてもいいかな?可哀想だし…そんなわけいくか!
「男と女が1つ屋根の下なんてゆるさーん!」
「おいおい、急にどうした」
「そこに正座しろ!いいか!」
そこから数秒後…得たいの知れない女を家の玄関まで連れてきてしまった。悔いはない、でもな、これからじいちゃんとばあちゃんになんて説明しよう(涙)
ここで俺は吹っ切れた。否、壊れた。
「どげしゃー!宏継様のおかえりだー!なにも言うな!なにも言うよ(涙)」
半泣きで得たいの知れない女を家に連れ込んだのだからじいちゃんとばあちゃんが大パニック。そこに俺も入ってそれはもう大パニック!!
「なんで病院にから逃げたと電話あったから待ち構えとけば女連れてくるとは何事だー!?」
「ワカラーン!助ケテヨ(涙)こっちが意味わかんないー(涙)」
ここからまあ騒ぎまくったね。元気だねー。
「香代美ちゃんがおりながら違う女に手をだしおって!恥を知れ!」
「違うよ(涙)痛い!痛いよやヤメテー(涙)」
ボコボコに殴られ蹴られ俺は丸まって耐えることしかできずにいたのだ。なんでこんなめに?
「お嬢ちゃん兵隊さんかい?」
「はい、そんなところです」
ばあちゃんと妙に息があった二人が話し合いしてる中、俺はやられていく…助けろよ(怒)誰のせいでこうなってると思ってんだ(怒)
「実は帰る家を亡くし、頼れる親戚もいないのです…
どうか私をこの家に置いては下さらないでしょうか」
この前には二人で考えたながーい涙無しでは語れない
嘘偽りを並べています。それでも悲しいかな純情な老夫婦はいとも簡単に信じこんでしまったのです。救いの神は舞い降りなかったようです(涙)
「ええこや~宏継!ええ嫁さんもらったの~もう安心してあっちにいけるわ(涙)」
「話の何を聞いとったんじゃー!!」
俺はこんな女傑をめとる男ではない、少なくともこいつと香代美は絶対にない。あり得ない。
その後じいちゃんとばあちゃんに可愛がられ大切に家族の一員として迎えられてる中でボロボロにされた俺は厄介払いと思えるほど病院に密告され、退院日をおおいに延ばされ色々カウンセリングされるはめになってしまった。1つだけ言わせてもらおう…
ふざけんな(怒)
「お見舞いに来てるのにもっと嬉しそうな顔したら?
ありがたそうにさー?」
そこでおもいっきしにやける、いい歳したおっさんならセクハラで訴えられるレベル。
「キモい、死ね」
バキッ…
な?理不尽だろ?見えたけどあえて殴られる俺のこれが優しさってやつ?そもそもこいつが怪力な能力者な気がする。マジゴリラかよやめてくれよ。
「ここは動物園ですか?ゴリラの檻はどこだ?見えないなー?危ないよこの災害女…」
バキッドカッ…
顔面はまだ生きていますか?死んじゃいませんか?あります?よかった。
「2本ほど骨を折ろうかー?」
「やったら本当に檻にいっちまうぞ」
「バーカ」
「ここはやはり、大自然に帰すのがお前のため…」
メギッ…
「じゃあ私はもう帰るから、明日はちょっと遅くなるかも」
「二度と来んなボケェェェェ…」
「鼻血なんて出して何想像してたのやら、あーやらし
い淫獣ねー」
「暴力女のストレートパンチで誰が興奮するか言ってみろや知能の足らん猿め~(怒)」
いつかアウトローで泣かしてやる!!大勢の前で恥かかしてやる!覚えてやがれ!お前の動きは全て見切っている!
「そうそう、新しく親戚の娘?同年代に見えるけどあんたの家にいるのって誰なの?」
ヤバイよー!!色々なんか見られてるよー!?なんで知っておられるのー!!
「それはね、お察しの通り親戚の娘ですよー?俺みたいに両親亡くしてさー、家で引き取ったって言うかサーそんな感じなのだよ(棒読み)」
「ふーん、そうなんだ。軒先毎朝掃除してるからさ顔馴染みになちゃって話してみると意外と優しい人で
さ、今は仲良しだよだからなんで宏継の家にいるのかなーって」
そんなことしてんのか…成長してるんだな。早く退院させてくれ。
「それよりゴリラが人に気を使うとか…お前も進化してるんだな」
「それは誉め言葉として受け取っておくべき?それともまだけなしてるのかな?」
「誉めてます、勲章ものです」
「ならこつちもお礼しないと♪」
「お礼も覚えたのか!?人間に近付いたな」
違う意味で危ない笑顔で近づいてくる…そう、これこそが人を殺す覚悟か、身近にそんな人がいたとは…
「あー!見てみてちょうどいいところにマッキー持ってたよ♪さーてこれが感謝の気持ちだよー♪」
「いやー(涙)来ないで!あっちに行ってー(涙)」
「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ♪」
「イヤーーーーーー(黄色い声)」
「先生に言っといてください、次あいつが来たら追い返してください。俺の健康に害を及ぼします」
看護婦さんにぼやいた所で無駄なのはわかってる。でもなにもしないままただボロボロになるまで殴られるなんて!嫌だ!
「随分お茶目なお友達ね、彼女?」
その言葉が引き金で次々と言葉があふれでてくる。止められない止まらないー♪
「彼女が俺の顔に象形文字なんてかきます!?なんの地図記号だよこれは!」
わめき散らす、よりにもよって油性だぜ油性、ふざけんなよな?
「じゃあきっとこっちが彼女さんね?」
「え?」
「青春ね~」
謎の包が置かれそれだけ言うと出ていこうとする。
「誰からですか?」
「女の子よ、着物を着た。清楚で真面目そうな優しさがにじみ出てたわ。いい彼女さんね、会って直に渡したらって、その方が喜ぶと思うって言ったんだけど」
だ、誰だ?敵がもう来たのか?開けるべき?開けないべき?
「そうそう、セイアちゃんって言ってたわ彼女さんじゃないの?」
セイアー!?どうして!
セイア、聞き覚えない名前だろう。俺がセイアと二人で考えてつけた名前だ。
「なんて名前なんだ?」
「ん?」
「ずっとおい、とかじゃ失礼かなーと。単純に知りたいんです!」
「名前か、名前なんてないいつも記号で呼ばれてた。
作戦ごとにコードネームが与えられるからそれでな」
俺はポカーンとバカみたいに口を開けたまま固まってしまった。そこら辺の犬ですら名前があると言うのに名前がないとは…いかんな。
「急いで考えるか、俺が命名してやる」
「ないと困るものなのか?」
「大切なもんだ俺もちゃんと考える。なんか好きなもんはあるか?」
彼女は下を向いたり上を向いたりして色々思い出そうとしている。
「星…」
「星か?」
俺は人差し指で夜空の星を指差しながら聞き返す。余りにも普通過ぎたから思わず聞き返した。
「研究所でもいつも見ていた。あれほど闇の中で輝いているのは月か星くらいなものだろう?小さくても一生懸命光ってるんだなーっていつもうきうきしていた
。夜が仕事の私はいつも空を見上げて思ってた」
「星か…スターちゃん?」
「やだ」
「ほしで考えるから難しいんだ。せいで考えればいいんだな」
「……」
ただ1つあいうえお順で当てはめて反応があった名前に決めた。一番最初、セイアと呼ばれたときいきなり言ったこともあるがセイアと呼ばれビクッとした。それが面白くて俺が何度もセイアって呼んでセイアになったんだ。
「…セイアがね~、中身は?」
「そこまでは聞いてないわ、4時からまた検診ね。忘れないでね」
「はーい」
ここで気になるのが箱の中身、わざわざなにを持ってきたのか?包を開けると小さなお弁当箱?
「ほーここまで出来るようになったのか」
おはぎだ、セイアが作ったのか。試しに1つだけ食べてみることにした。
「うっ…これは」
豆の味しかしない。あんこ甘くねー!でもそこは作ってくれことに感謝してひとつ残らず平らげた。
「ふー食った食った…ん?なんだこれは」
小さなメモ用紙がお弁当箱の下に挟まっていた。広げてみるとそれは3文字で
(敵 来る)
下手な字だが確かに敵が来ると書いてある。どうしてそれを知っているのかは知らないがそれが信憑性などないのに俺の胸の内は不安感にかられる。
「お互い気を付けようぜ…」
ベッドにもたれて天井を見ながら作戦を練ってみた。
殺す術ではない、生き抜く術を。敵を殺さず倒すやり方なんて山ほどある。俺は色々思案してみた。
「それよりセイアが着物かー想像出来ないな。だいぶ
エンジョイしてるんだな…俺が牢獄にいる間、何があったんだ?」