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闘士

「この事は他言無用で♪」


最後に耳に残っている言葉だ。繰り返し頭の中で木霊させてみるが全てが嘘と感じられる。今朝から香代美が怒ってたことから考えるとやはり嘘ではない。でも

昨日の自分の身に付いたあの(能力)はどうやっても

使えない。突発的に発現したんだ、自分にも出せないんだ。切り分けられたように記憶を切り取られる、それでも全てを失わなかったのはあの子の失点だ。


「アウトローはでない、俺が人を殴り飛ばした感覚も消えている。けれど残っている一見どうでもいい情報から繋ぎ会わせ推測し、今では思い出せるぞ…不完全でつたないもんだけどな」


あの夜起こったこと、気づけば俺は自分の部屋にいた。記憶が抜け落ちている。でも切り取られ、切り刻まれた記憶をパズルのピースをはめていく。何百何千と言うピースを完成図もわからず全て揃っているわけでもないのに繋げていく。はたから見れば無理ゲーだがそんなの命を賭けた戦いと比べれば何ともない。あの夜俺は確かに生きていた、なら思い出せるはずだ。






























学校も終わり凶暴女は部活…俺は足取り重く駅に向かう。本当は焦るだろう、狙われるとわかって敵の前に躍り出るバカはいない。でもそこは敵の予想の外、俺はここ数日誰かに見られている。


「ん?地震か?」


じいちゃんが言った何気ない日常での一言、揺れてはない。でも何かが動いたのを見た。じいちゃんが何を見てそう言ったか、俺も同じところを見ていた。そして知っていたから伏せておいた。


「揺れてねーよ、揺れてんのは自分だろ?もうお歳ですのでじっとしとけば~?」


「人を歳より扱いすんな!まだ倒れんぞ!」


頭を叩かれる、そんなことは重要じゃない。守りきれたのだ。悟られず、気にも止めてないだろう…あり得ないことが起こっても人は信じようとはしない、認めたくない。だから簡単に丸め込めるのだ。


(しっかし…これは宣戦布告ととればいいだろう…)


正体を知られた殺し屋か…包丁が動いた。けどそれはさっきまでばあちゃんが魚を捌いてた包丁だ。はしっこに置かれてた訳でもない。ただ落下しただけでもない。重力に逆らい投げられたように、狙いすまされたように俺の耳をかすめた。首を傾けてなけりゃ大怪我だったろう。じいちゃんもあのとき地震か?と聞いたが地震で包丁が飛ぶかよ、それでも認めたくなかったんだな目の前で起こったことを。深く考えてみればやはり恐ろしい事だがじいちゃんは逃げるように怯えていたのだろう。頭を抱えて出ていった。不思議と突き刺さった包丁は無くなり刺さっていたと思われた場所には血溜まりが出来ていた。よかった、俺は元々関係ないと思ってたでも関わってしまえば自分の身は自分で守れと、いいさ、守って見せる。俺はイスに座る机の上はガラスのコップと牛乳、俺の目線の先にはまな板の上に置かれている包丁…


少し前と違うとこをあてようか?それは俺がコップと冷蔵庫から牛乳を出して机の上に置いたこと、じいちゃんが席を外したこと、簡単な間違い探しだ、この部屋を使ったな。俺の後ろの壁の何かが刺さったであろうと思われる傷、と血が花のようにベットリと塗られていること。そして飛んできたと思っていた包丁の横、魚を切った後の血溜まりがきれいさっぱり無くなっていたことだ。


「こう言うことは見せるもんじゃない…ましてやじいちゃんがいる前で!俺の中でお前はまだ消えてないぞ

まだ繋がってる。次顔を見せたとき、お前の顔面へこませてやる。言っとくぞ脅しだけで終わらないと言うことだ」


コップに跳ねないように静かに牛乳を流し込みそれを一気に飲み干した。俺の目線が上に動く…、まな板の上には小さな窓がある。今は曇っているが黒い影が動くのを俺は確かに見逃さなかった。






















「敵は暗殺のプロだと、俺が誰にもべらべら喋るおしゃべりじゃないからな。敵も下手な真似はしない。でも正体を知った俺を消そうとするのは当然。今は焦らず俺の行動パターンを読み取ってる。そんな段階かな」


敵の行動を予測、何をしてくるか。俺はただの高校生かたや向こうは殺しのプロだ。考えればやっと人を殴り飛ばした高校生と俺と同い年に見えて数々の修羅場を潜った敵、明かこっちが不利だ。だがな、キャリアや暗殺者の掟なんて俺の今ある、背負っているモノと比べれば軽い軽い♪気迫では負けてはいない。心が生きてる限り俺は死なない。今ここに立っている、それだけで俺の勝ちなんだ。


俺のやたら前向きな姿勢、俺には強い武器がある。それを砕かれない限り、俺は諦めない折れない。


「ふんっ!」


俺は手に持ったボールペンを砕く。元からヒビが入っており握れば潰れることもわかっていた。今から科学では証明できないことをする。


潰れ、飛び散った破片が集まる。回る回転イスに座りながらこの自分の(能力)を確かめる。そして向上させる。あの夜の俺はこんなもんじゃなかったでも近づいては来ている。


勉強机の横、壁とのすきま、飛び散った破片は集まってくる。集まるスピードは速くはないがそれでも浮いたり、引きずられるようにして手の中に集まる。そして元通りになるのだ。


「アウトローはもういない。でも残された能力はこの手にある」


まるで「死ぬんじゃないぞ」と言わんばかりに残された置き土産、戦う意志を残してくれた。生きたいと願う今の俺と共鳴するようにあの夜の力が呼び覚ます。


「そうだよな(時間回帰能力)が、見えないけど感じるんだ。まだ守っていてくれてるんだな…アウトロー俺の心の底で見ていてくれ。俺、きっと戦ってみせるさ、どんなやつでもぶん殴って生きてまた、また…」


「お前と会うんだ。まだ会える舞台じゃないんだろ?

まだ出ていく場面じゃない。待ってろよ、また会えるときは…そうさ今よりもっともっと強くなって…」


すぅー…はぁ~大きく深呼吸した。今の俺では治せるのは自分が壊したモノだけ…つまりまたメタマグを食らってしまえば分ける能力も時間を戻すことだって出来ない。少し切れた耳は絆創膏を貼っている。つまりは(自分の傷は治せない)のだ。触っても戻らない。


「さぁーて、どんな場所でも鉄はある…どんな場所でも奴の能力は発揮される。どこが戦場だ?お前が一番

勝てると思った場所でいい…そこが生死を分けるんだぜ…好きな死に場所を選ぶんだな」


あいつは今ほくそ笑んでるだろうな。これで勝てる!

これで奴は終わりだ!てな。今後があるか知らんが教えといてやる。「勝利を確信した時、そいつは敗北する」。敵が考えてるであろうその作戦に、ましてや命を賭けた戦場に絶対は無い。俺はあの夜お前に勝ったけど本当の勝ちは相手の戦意があるかぎり終わらない殺しの螺旋。降りるか登るか…


白黒つけようか?


今すぐ!


そう、敵は待ってなどくれないのだ。

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