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使者の道徳

本橋町 午前四時四十四分金曜日



「この辺りだったな…」


「ー成る程…強い胎動を感じる…。」


「本部は私の扱い雑なんだよ!!」


ちょうどその時、時計の針が四十五分にさしかかった。
























本橋町 午後五時十五分金曜日


「あ~!!やっぱり電車行ったじゃない宏継!!」

俺の目の前を電車が通りすぎる。


「心配しなくても終電じゃねーよ。気長に待とうよ急いでもやることないし…」


「あんたはでしょ!」


バキッ!


「痛て!いきなり殴るか普通!」


「あんたのせいで遅れたんでしょ!!喝いれてあげたのよ!まだ足りない!?」


「へいへい、逆らいませんよ…」


イラッ


バキッ!


「もろ入った…。」


俺の隣にいるのは桜田香代美、幼馴染みで俺の家の横に住んでる。すぐ殴る凶暴女だ。たった今電車が行ったからご機嫌ななめだ。ここら辺じゃ電車は一時間に一本、周りは田んぼと民家しか無く時間を潰す場所も無い。勿論

この駅は無人駅、今電車が行ったばかりで駅には俺達以外誰もいなかった。


「どうしてくれるのよ~帰って見たいテレビあったのに~こんなことになるなら録画しとけばよかった~」


「なら俺置いて先行きゃーいーじゃねぇか、無理に待っとく必要なんてなかったな」


「待っててあげたのに~!!これからは見捨てよ

うかな~?」


先行けって言ってるのに脅しになってない。

こういうところは頭悪いなと思う。悪い奴では

ないんだが…終いにはこいつに殺されるんじゃないかと最近気にし始めた。


「ん?」


「どうしたの?またお化けでも見たの?え~嫌だ~どこどこ?」


俺にはそう霊感がある。俺は幽霊が見える物心ついた時からだ、あたりまえのように幽霊が見えていた。だが今回はおかしいのだ。

駅の反対側は金網になっていてその先は自分達の背より高い笹が生い茂っていた。俺達の

線路を挟んで向かい側、金網の外に何かいるんだ。透明で辛うじて人型の輪郭が見えるだけだった。ソイツが金網をもって登ろうとしているのがわかった。


(何してんだ…幽霊なら金網ぐらい通り抜けられるだろ…なに登るの苦戦してんだよ…)


そう、今回の幽霊と思われる者はいつもと違っていた。いつもならハッキリと見えるのだがぼんやりしか見えない、しかも金網を登ろうとしているが笹が邪魔で何回も途中で落ちている。

こんな幽霊見たことがなかった。


「ねえ、怖いから教えてよ…どこ?」


「いや、見間違いかな…てかびびってんのかお前が?可愛くないぞ」


「黙れ!!」


ガッ!


(綺麗に入ったな…)


「え?ちょっと!今ので気絶~!?」


意識が遠退く…ふと横に目をやると諦めたのか透明な塊は笹の奥に消えていった。


(何したかったんだよあいつ…)


へなへなと倒れる。我ながら情けない。



















「あれ?起きた?」


気づくと電車の中で膝枕されてた。そして急いで飛び起きる!!周りを見渡して…良かった、この車両には誰もいなかった。


「照れてるの~♪」


ほっとけばすぐ調子にのる…呆れるを通り越してもう疲れてきた…


「最初にごめんなさいが聞けると思ってたんだけどな~?」


「うぅ…それは…あんたが嚇かすからよ…」


多少は気にしてるらしい、多少は。

ここはもう一つ嚇かすか♪泣き叫べ!!


「あ!あそこにさっきのお化け!!」


「いやーーーーーー(涙)」


むぎゅ


ぐぇ!



いきなり抱きつかれる…胸で息が…デカイ…こいつこんなにデカかったのか…窒息する~!


「ばやぐどけぼじぬ!(早くどけろ死ぬ!)」


「きゃー!胸に顔沈めながら喋らないでよ!」


んでまた殴られる訳だな、理不尽だ!!


「冗談!冗談だからさ!?」


「ほんとにー?もういない?」


涙めで訴える。周りに人がいなくてよかったと

今、しみじみ感謝している。でもまだ怖いのか

座席の上に置いている俺の手を震えながら握りしめる。俺の手が緊張で汗ばんできたのでそっと手をどける。


「嫌」


ゆっくり香代美の顔を見る。


「離さないで…。まだ信じてる訳じゃないんだから…」


顔はそっぽ向いてて表情は見えなかったが耳が真っ赤だ。いつのまにか震えも止まっている。


「駅に着いて、家の帰り道も、私が家の玄関に着いて、私がいいよって言うまで…さっきから

嘘ばっかりで…まだ怒ってるんだから…」


そこまで俺が責任持つのか?でも根性なしの俺は当然断れるはずもなくて…


「いつもとは逆で怖がるお前を守ってやるのもまた、仕返しか…」


「バカ…」


おっ、笑ったな?これでぐちぐちお小言言われずに帰れるな。


ここで嘘が現実となって牙を剥く。


「リア充死ね」


「!!」


聞かれたのか!だがこんな時、一番パニクる香代美が平然としてる!なんだ!幽霊なのか!?どこにいる!幽霊なら香代美が聞こえないのも納得だ。


「爆散しろ…」


まただ!確かに聞こえる!香代美は依然気づいていない!やはりこれは…

周りに人がいるなら幽霊がどこかわからないが

ここは人すらいない車両、しかも近くから聞こえてくる!


(あ…)


目の前だ…向かい側の座席、透明な塊が確かにそこにはあった。


(ついてきてるしー!!)


相変わらず姿はハッキリと見えない。だが輪郭から察するに、右手の親指をかじってるように見える。


「人の目の前でイチャつきやがって…弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろ弾けて消えろぶつぶつぶつぶつぶつぶつ………………」



何か言ってるよ!全力で呪いの言葉吐いてるよ前の奴!


機嫌がよくなったのか香代美が鼻歌まで歌ってるよ!止めろー!

案の定、呪いは更に勢いを増す!!


「見せつけてくれちゃって…当て付けか?当て付けなのか?彼氏いない歴16年の私をこけにしてるのか?何考えてんだ?死ぬか殺すよ?」


物騒な奴~!声は聞こえるが姿が見えない。幽霊のようで幽霊ではないような…わからないが危険だ。


(ちょっと探り入れるか…)


「あ…」


香代美の手を振りほどき、向かい側、俺達を挑発してる透明の物体の上…と思われるところに座り込む!


「観念しな!」


「え!この糞餓鬼!!」


わざとらしく踏み潰すように勢いよく腰かけるが紙一重、透明の物体のほうが早く横に退いたのだ。


(やり手だな…何となく…)


一方、透明物体のほうは。


「も、もしかして…み、見えてるの!そんなはずは!だって奪鬼を纏ってるのよ!見えるわけない!」


見えてないけど聞こえてる…焦ってるのはよくわかった。声もくぐもってるが女の声のようだった。


「奪鬼が見えてる!?同業者?そうじゃなさそうだし…ならこいつは危険すぎる!!」


殺気を感じるし~!てかなんだ!奪鬼って!知るわけないだろ!


「今のところ奪鬼らしいものは出してない…一応始末する?でもそれで降格にでもなったら」


しばしの沈黙…


「…………でも私からしたら仕事の邪魔よね?

不穏分子は早めに狩っとくか…」


透明な物体がゆらりと陽炎のように動く…


「どうしたの?お化けはいないんでしょ?ねぇ聞いてる?さっきから腕組んで下なんかずっと見ちゃって?もしかして具合悪いの?」


汗がぽたぽたと下に落ちて小さな水溜まりが出来ていた。透明な奴は、俺の真横に立ち腕のようなものを振り上げる…その時、心配した香代美が近づいてくる。


「大丈夫なの?」


ヤバイ…透明な奴は一瞬動きを止める。香代美はぼんやりも見えていない…ここで巻き込む訳には…


「次は上平~上平」


俺は香代美を振り切り前の車両に向かう!この電車のドアは前の車両の右の前と後ろしか空かず、真ん中のドアは全部閉まっている。勿論後ろの車両のドアは全部開かない。


「あ!宏継!!駅は次でしょー!」


叫ぶ香代美を横目に俺は前の車両に着くとギリギリ閉まる前に降りた。着いてきてるか透明な野郎は?


「はあ?」


電車の中に取り残されとる…やはり幽霊のように通り抜けられる訳ではないようだ…ドアの前にポツンと立っている…情けな!!


「ちょっと!宏継!!宏継ー!!」


電車は香代美と透明な奴を乗せて発車した。ここからなら歩いても帰れるか…と考えながら無人駅を出る時だった!


パリン!!


「おいおいマジかよ!!」


電車のドアのガラスを割り、そいつは誰もちょうどいなかった駅のホームに降り立つ。


ムクッ…


動いてる…追って来やがった…

そのまま俺に向かって走ってくる!!


「うぉーーーーー!」


ここら辺一帯は俺の庭見たいなもんだ。数々の裏道、林道を知ってる。土地柄でいりくんだ道が多いのでいくら速くても引き離せれる!


「くそーーーーー!」


透明な奴は走って逃げていくうちにいなくなっていた。まいたか?


「ふぅ…散々な目に合ったな…明日香代美にどやされるな…嫌だな~。俺は平和が良いんだ…俺の平和を壊さないでくれ!!」


そのまま家に向かって歩き出す。

















「ふん…甘く見られたものだわ…」


辺りはあの宏継とか言うのがいなくなって蛙と虫の音しか聞こえなくなっていた。周りは田んぼで囲まれていて、街灯もなく、車や人さえ歩いていなかった。


「あんたの敗因は私を侮っていたこと…周りをよく見なかったこと…」


あいつはずっも一本道だから自分の後ろしか確認してなかった。そうよね、水音もたてず田んぼの中をそれも足をとられるずに歩くなんて不可能だから自分の後ろからしか来ないと思ってたんでしょ!それが敗因よ!


「どうやら人気は無いようだし?さっきの邪魔な色ボケ女もいないことだしゆっくりと始末させてもらおうかな」



どうも読んでくれてありがとうございます。

また、誤字脱字が多いかも知れませんが温かい目で見守ってください。

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