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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然Tueee!5 襲撃者

 既に時刻は深夜を廻っていた。

 時計が無いので正確な時刻は解らないが、午前二時や三時ではないかと思う。

 雨が止んだので水嵩は下がっていい筈なのに、まだまだ増水が続いていた。

 くるぶしまでだった水嵩はすでに膝まで上がって来ていた。

 

「あれは何だ?」

 

 天色が上流を指さして言った。

 

「あれってなんだ?」

「あれだよ! あれ!」

 

 目を凝らしてみると、何かが暗闇の中でうごめいている。

 

「なんだろう? 敵か?」

 

 天色の叫び声が聞こえる。

 

「王様、上流から木が流れて来たぞ! このままでは俺達に直撃だ!」

 

 大木だ。

 広葉樹の大木が、雨が降る前は河原だった川底を擦りながら流れてきた。

 

「マジかよ! そんな物が直撃したら僕達、ひとたまりも無いぞ!」

「川の中に飛び込んで逃げるか?」

 

 割と大きな木がこの大岩目掛けて直撃コースで流れて来た。

 間違いなくこのままでは直撃する。

 岩に直撃すれば、僕らは荒れ狂う濁流の川の中に叩き落されるだろう。

 ならば、逃げるしかない。

 

 しかし……。

 

 夕焼けと月夜は限界まで体力を消耗している。

 立っているのがやっとなぐらいだ。

 水の中に飛び込んだら溺れて助からないのは目に見えている。

 ならば、選択肢は一つしか無い!

 僕は死ぬ気で大木を受け止めることにした。


 この国は!

 にゃん娘たちは!

 僕が守ってやる!

 やってやるとも!

 

「ダメだ! 天色! 川の中には絶対に入るな。王様の僕が何とかする。だから、天色は何が有っても二人を守り抜け! いいな!」

「解った」

「僕に何が有ったとしても二人をこの岩の上で守り抜け。いいな! 約束だ」

「ああ、任しとけ!」

「僕があの木を何とかするから、みんなはこの岩の川下かわしも側に移動してくれ!」

 

 僕は岩の川上(かわかみ)側の先端に仁王立ちになると、その大木を待ち構えた。

 川の流れ自体はそれほど速くない。

 それに大木と言ってもそれほど大きくは無い。

 両足で踏ん張ればきっと流されることも無いだろう。

 僕は両足を開き、踏ん張り、大木に立ち向かう!


 大木が流れてきた!

 流れて来た大木は広葉樹なので枝が大きく張り出していた。

 なので幹を受け止めるのは厳しい状況だ。

 だが天は僕に味方した。

 運よく大木の向きが変わり、幹に手が届く感じで流れて来たのだ!

 そしてそれを両の手でガッシリと受け止める!

 

「どりゃー!!!」

 

 僕は渾身の力で大木を横に押し流した。

 大木を持ち上げる事は出来なかったが、横に押し流す感じで受け止めた大木を大岩の脇に逸らす事が出来た。

 大木は岩上直撃コースから流れを変え、岩の脇を流れるコースを取る。

 

「どうだ! 僕も結構やるだろ?」

「男らしくてホレるぜ! 王様」

 

 僕はガッツポーズを取り決めた。

 満面のドヤ顔だ。


 どや!

 いい仕事するだろ!

 

 僕は大木を大岩の直撃から外れるコースに完全に押し流し、ほっと一息つく。

 安堵した僕を襲う者が!


 ──ガコン!

 

「むっ?」

 

 足を何者かに捕まれた!

 そしてすっ転ぶ。

 その勢いで顔面を岩に叩きつけた。

 思いっきりビタン!と言った感じで!

 凄く痛い!

 

 なに?

 何が起こってる?

 なにも居なかった筈なのに何が襲って来た?

 僕は身を起こそうとすると、今度は何者かが僕の腹に一撃をぶち込む!

 とっても重い蹴りだ。

 

「のあっ!」

 

 腹に手をやると、何者かの足をつかむ。

 堅い。

 これ、者じゃない。

 物だよ、物!

 さっき横に押し流した大木の根。

 それが僕の腹に食い込んでいた。

 

「のあーっ!」

 

 時すでに遅し。

 僕は横に流した筈の大木の根に足を取られて川の中に落ちた。

 そして流された……。

 濁流の暴れ狂う川の中に。

 最後の最後で間が抜けてる僕。

 カッコ悪い。

 

 それはそうと、僕は川の中に落ちてしまったんだが生きていられるんだろうか?


 んー。

 無理じゃね?

 などと、変に冷静に考えていた。

 

 唖然とする三人を岩の上に残し、僕は大木にしがみ付きながら下流へと流されたのであった。

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