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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然Tueee!3 雨

 結局僕はその日、小さなお魚を一匹しか食べれなかった。

 

「お腹空いたなー」

 

 小魚一匹じゃ全然足りないや。

 空になったお腹がギュルギュル鳴いている。

 上流で雨が降ったせいで、魚が食べれなくなるのはちょっとキツイな……。

 これが大自然が牙を剥くって言う事か……。

 食っちゃ寝出来る、にゃんこの楽園の生活はこんな簡単な事で崩壊してしまう物なんだな。

 そんな事を考えながら、お腹を空かせた僕は、やる事も無いので大岩を背に寝ることにした。


 だが、僕は大自然の怖さをまだ何も知らなかったのだ。

 まだ大自然は牙を全く剥いてはいなかった。

 それを知るのはその夜の事だった。

 

 *

 

 僕が空腹を紛らわす為に日陰となる大岩を背に寝ていると、ポツリポツリと雨粒が頬を濡らして目が覚めた。


「雨か」


 ここに来て初めての雨だ。

 恵みの雨が土埃にまみれた僕の頬を濡らす。

 最初こそ雨はポツリポツリと降ってただけだったが、段々と勢いを増してザーッと音を立てて降る。

 まるでシャワーの様だ。

 そう言えばここに来てからお風呂に入った事無いなー。

 元々お風呂はそんなに好きな方じゃ無かったけど、みんなが水浴びさえしないからお風呂に入る事をすっかり忘れてたよ。

 シャワー代わりに雨を浴びて来ようかな?……と思って立とうとすると、にゃんたちが雨を避けるかの様に、僕の居る岩陰に飛び込んで来て僕の周りに集まりだした。

 

「あひゃひゃひゃひゃ! 濡れちったー」


「凄い雨だったな。寝てたらいきなりだもんな。俺もびしょびしょだよ」

「わたしも、びしょびしょです」


 みんな、少しでも雨を避けられるこの岩陰に集まって来た。

 とは言っても、屋根も何にも無いから結構濡れてしまうんだけどね。

 僕が居たからそこに集まってきた感じ。

 このままここに居たら風邪を引いてしまいそうだ。


「雨をしのげる小屋とか無いの?」

「小屋? なんだそれ? 俺初めて聞くぞ」

「小屋って物を知らないのか……えっとね、屋根が付いてて雨を避けれる様なとこ無い?」

「ハハハ! 王様変なこと言うなー。そんな便利なとこ有ったら、こんなとこ居ないでそこに行くぞ」

「あははは! 王様ばかだ―! ばかだ、ばかー!」

「くー!」


 夕焼けと天色に満面の笑みでバカ呼ばわりされてしまった。

 僕の方が賢いはずなのに、なんか悔しい……。

 見かねた月夜が教えてくれた。


「ここには小屋なんて物は有りませんよ」

「マジかよ。じゃあいつもはどうやって雨宿りしてるんだ?」

「いつもこんな感じです。今日は王様がここに居たからここに集まって来たんですけど、いつもは雨の降る野原の中で丸まって濡れてるだけですね。去年の冬前までは大木が有ったのでそこで雨宿りしてたんですが、今は無くなってしまいました」

「大木かー。そういや、そんな物有ったなー。たしか去年の秋にデッカイ雷が落ちて来て、燃えちゃったんだよな」

「あれは凄かったにゃ!」

「あの時は、夕焼けがビックリして俺の背より高くまで跳ね上がったかと思ったら、そのまま気絶しちゃってなー」

「かみなり嫌いにゃ」


 すると曇り空がビカッと真っ白に光ると、稲妻が遠くの方に落ちてゴロゴロと獣の様な低い唸り声を上げた。

 

「あひゃっ!」

 

 雷に驚いた夕焼けがもの凄い力で僕にしがみ付いて来た。

 

「か、かみなり怖いにゃ!」

「大丈夫だ。僕が居るから大丈夫」

「だ、大丈夫なのかにゃ?」

「ああ、僕が居るから安心していいよ」

「王様すごいにゃ! やっぱり王様にゃ!」


 僕は怯える夕焼けの頭をそっと抱いてやった。

 正直、屋外で迎える雷は少し怖かったけど、唯一の男である僕が怯える訳にもいかないので少し虚勢を張って男らしい所を見せてやった。

 恐怖で震えてた夕焼けは気がつくと震えも止まり、いつの間にか僕の膝の上で寝ている。

 スースーと可愛らしい寝息が聞こえる。

 安心しきって寝ている寝顔を見てると、夕焼けはいつも以上に可愛い。

 

「今日みたいな通り雨の時はいいんだけど、台風の時とかどうしてるの?」

「台風の時も同じさ。吹き飛ばされない様にみんなで抱き合って必死に耐える」

「まじで?」

「嘘言ってどうする?」

「雨風をしのげる洞穴とか無いの?」

「洞窟なら有るけど、あれは冬ごもり用だな」

「冬ごもり?」

「冬は寒いから洞窟の中に枯草と食べ物を沢山入れて置いて春まで過ごすんだけど、食べ物はすぐ食べつくしちゃって、あとは春までずっと我慢なんだ」

「そんな便利なとこ有るなら、そこに行かないか?」

「行きたいけど、無理だ」

「どうして?」


 月夜が理由を教えてくれた。


「ここから結構遠いんですよ」

「歩いて一日の距離だし、川が無いから漁が出来なくて魚が食べれない。だからここで我慢するのが一番なんだ」

「そうなのか……」

 

 でも、雨で毎回濡れて耐えるのは嫌だな。

 雨が止んだら雨宿りできるログハウスでも作らないとな。

 こんな動物レベルの生活はさすがに嫌だ。

 僕は諦めじっと濡れるのを耐えていた。

 少しでも夕焼けが濡れないように僕が覆いかぶさる様にしてたので、背中が雨でびっしょり濡れて結構冷たいと言うか寒い。

 やがて雷が止んで雨も峠を越したかな?と思って安心していたらなんだか月夜の表情が冴えない。

 

「なんか心配事でもあるのか?」

「これは困った事になりましたね」

「どうした?」

「かなりマズい事になりました」


 月夜は川上を見ながらそう言うと、天色も同じように心配そうな顔をする。


「周り見て見ろよ。こりゃ久々にヤバイかもな……」


 天色に言われて辺りを見て見ると、この大岩のある小さな丘を残して、辺り一面水没していた。

 増水した川の流れが河原を飲み込んでいたのだ。

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