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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然Tueee!2 濁流とキスと

 翌日、昼前まで河原の小さな丘の上に有る大岩の上でにゃんたちとゴロゴロして過ごした。

 やる事が無いので寝る事しか無い……と言うよりも、寝る事しか出来ない。

 だってゲームもネットも電子書籍もなんにも無いんだもん。

 ゴロゴロしていると、一番年下のにゃん娘の夕焼ゆうやけが僕の元にやって来た。


「王さまー! あそぼー!」

「どうした?」

「ご飯までひまにゃ。なんかしてあそぼう」

「じゃあ、ゴロゴロごっこ」

「それはどんな遊びなのにゃ?」

「えーとね、草の上で横になってゴロゴロして寝る遊びだよ」

「それちがうにゃ! 遊びじゃ無いにゃ! ただゴロゴロしてるだけにゃ!」

「ばれたか」


 頭をポリポリ掻いて誤魔化す僕。


「そう言えばお腹空いたにゃ」

 

 お昼前になって、夕焼けが一番年上で力持ちの天色あまいろに甘える。

 

「天色姉えさん、おなかすいたー!」

「おう! もうそんな時間か。それじゃ、そろそろメシ食うかー!」

「やったー!」

 

 最近は飯の時間が楽しみになって来た。

 だって一日の中で寝る以外にはこれしか無いんだもん。

 寝転がってる僕に月夜つきよが話しかけて来た。

 

「河原に行きますよ」

「おう!」

 

 月夜が河原に向かうので、僕も起き上がってついて行く。

 夕焼けは毎度の如く、先に河原に到着して僕らに手を振っている。

 河原に着いた月夜が悲しそうな声で言った。

 

「今日は、魚が取れそうもないですね」

「なんで?」

「川を見てください。昨日までと違いませんか?」

 

 川の流れが思いっきり濁ってた。

 昨日までは川底まで見えるぐらい透き通った流れだったのに、今日はカフェオレやコーヒー牛乳の様にどす黒い色の泥水だ。

 水かさも倍ぐらいに増えてて、流れもかなり速いような気がする。

 それを見た夕焼けがガッカリと肩を落とした。

 

「あーあ、また上流で雨降ったんだにゃ。今日はおさかな取れそうも無いにゃー」

「これだけ水が濁ってると魚はエサを取るのを諦めて岩陰に隠れているので、川の流れの中に出てこないから岩を投げ込んでも殆ど魚が取れないんですよ」

「そうなのか」

 

 河原の丘から天色の声が掛かった。

 

「話の方は終わったか? いいかー?」

「いいよー!」

 

 天色はいつもの通り、巨大な岩を持ち上げ川の中に叩き込んだ。

 水かさがいつもより深いせいか、石を投げ込んだ時の音も少し鈍い感じの水音がする。

 そしていつもよりも大きな水柱が上がった。

 だが肝心の魚はそれ程浮かんでない。

 

「急いで取るにゃー!」

「さ、川の流れが速いから、急いで集めましょう」

 

 昨日までとは違い、浮いている魚の数が明らか少なかったし、浮いている魚も川の流れが速いのであっと言う間に流れ去ってしまい集めるのがかなり大変だった。

 僕は必死に魚を捕まえた……三匹だけだけど。

 川原に揚げられた魚はたったの十一匹。

 それも小魚ばかりで明らかに量が少ない。

 

「今日はずいぶんと数が少ないな……もう一回岩を投げ込むか?」

「天色姉さん、それはダメですよ。一日一回ってルール決めたじゃないですか。前みたいに大変な事になっちゃいますよ」

「そうだったな。そんなことも有ったな」

「大変な事って?」

「前に、この漁の方法を天色姉さんが見つけた時、調子にのって一日三〇回ぐらい岩を投げ込みまくってたんですよ。そうしたら一月ひとつきもせずに漁場が枯れてお魚が居なくなって大変な事になっちゃったんです」

「三〇回って……どんだけ魚取ってるんだよ」

「それはもう山の様なお魚だったにゃ……あの、お魚の山が懐かしいにゃ」

 

 目をトロンとさせてよだれを垂らす夕焼け。

 お魚の山か。

 僕もその時居れたらなー。

 そんな山の様なお魚に埋もれてみたい。

 

「そんじゃ、分配するぞー! 今日は俺からだったな」

 

 そう言うと天色は自分から順番に魚を配り始めた。

 僕三匹。

 天色三匹。

 月夜三匹。

 夕焼け二匹。

 

 夕焼けはただでさえ小さく少ない魚が二匹となったので泣きそうな顔をしていた。

 

「お、おさかな私だけ少ないにゃ……ぐすん。みんないいな」

 

 いつも陽気な夕焼けがしょぼくれた顔をしてるので、気の毒過ぎて可哀想になる。

 僕が一匹目に取り掛かろうとした時、一瞬で全てを食べきった夕焼けが僕の魚を見て物欲しそうにしている。

 

「おさかな……いいな……」

 

 だらしなく開かれた口から、よだれが一筋流れた。

 

「わーった! わーった! 一匹あげるよ」

「いいのかにゃ? 本当にいいのかにゃ?」

「いいぞ。ほら、食べろよ」

「やったー! 王様大好き!」

 

 夕焼けが僕のほっぺにキスして来た。

 ちゅっ!って感じでだ。

 夕焼けの柔らかな唇の感触で、僕の頭は沸騰状態。

 そういや、僕、大学に入ってもキスした事無かったんだよな。

 大学に入ったら彼女なんて自然に出来て、キスなんて毎日出来ると思ってました。

 そんな妄想する時期も有りました。

 でも、現実はボッチでそんなに甘くなかった。

 これが産まれて初めてのキスだったりする……。

 

「やめろよ! 照れるじゃないか!」

「てへへ。王様におさかなもらったお礼にゃ」

「お! 夕焼け、お前上手いことやったなー。じゃあ、俺も王様にキスしてみよう」

「ちょっ! ちょ! 天色さん止めてください! あひゃ!」

 

 天色は僕の唇を含めた顔面全体をベロンと大きく舐めた。

 夕焼けのキスとは違う、とってもワイルドで激しい感じのキスだった。

 いや、キスと言うより、虎が獲物を前にして舌舐めずりついでに舐められた感じ?

 多分そんな感じ。

 

「あひゃ!」

 

 僕がキスに驚いて腰抜かしてると天色が僕の魚を悪戯っぽい顔をして取り上げる。

 

「そんじゃ、王様のお魚もらうぞー!」

 

 そう言うと天色は僕の魚を一匹取り上げるとペロリと飲み込んだ。

 ふと、横に座ってる月夜の方を向くと僕を見つめている月夜が……。

 そして僕と月夜の目が遭う。

 まさか、月夜も僕の魚が欲しいのか?

 これ無くなったら食事抜きなんですけど……。

 でも、月夜にキスして貰えるなら……。

 あの柔らかそうな唇を僕の物に出来るなら……。

 一食位抜いても惜しくない!

 惜しくないな!

 …………。

 はっ、俺はなんて事考えてる!

 気が付くと月夜が僕の事を鋭い目つきで睨みつけてる。

 二人にお魚あげたのに月夜にだけあげないから怒ってるのか?

 僕は最後の魚が無くなるのを恐れつつ、恐る恐る月夜に聞いた。

 

「まさか、お前も欲しいのか?」

「ば、ば、ば、ば、バカ!」

「へ?」

「変態!」

 

 そう言ったっきり、月夜はそっぽを向いて二度と話してくれなくなった。

 なんで月夜さんが怒ってるの?

 それに変態ってなに?

 わけわからん。

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