火打石への旅路11 丸太の橋
「天色、お前は力持ちだよな?」
「何をいまさら。力仕事なら任せてくれ」
そう、得意げな顔をして天色が言った。
「あのさ、大変だとは思うんだけど、このぐらいの太さの大木を引っこ抜く事が出来るか?」
僕は両手をいっぱいに広げ、森から引き抜こうとする大木の幹のサイズを天色に示す。
「俺ならそんな事は容易い事だと思うけど、それをどうするんだ?」
「向こう岸までその木を渡してその上を歩くんだ」
「おう! そんな事なら簡単だ。俺に任せてくれ」
天色はそう言うと、森の中に戻り辺りで一番太い木を指し示す。
「上を歩くなら、このぐらいの木でいいか?」
その木は太さが三メートル近くも有る『大木』と言うのが相応しい太い木であった。
たぶん、樹齢数百年は有るようなサイズの木だ。
そして高さも半端なかった。
何メートルあるのか解らないが、上の方が霞んで見えないぐらいの高さがある。
「この木はちょっと大きすぎないか? 大きい方が橋にするにはいいんだけどさすがにこれは引っこ抜けないだろ?」
「大丈夫だ! 俺に任せろ! これなら問題なく引き抜けるさ。それに幹の上を歩くならこれぐらいの太さが無いと上から落っこちて危ないだろ?」
天色はそう言うと、四股を踏む相撲取りの様に地面にガッシリと足を食い込ませると、野球のグローブの様に大きい手で幹を締め付けるように持つ。
締め付けると言っても幹が太すぎるので、幹の裏側に全然手が回ってないけど……。
「ぐおおおおお!」
天色が獣の様な雄叫びを上げる!
太い腕に力がこもる。
筋肉が膨れ上がり腕が一回りも二回りも太くなる。
そして地響きのようなものが響き渡る。
「王様、危ないから下がっていてくれ」
「わかった」
天色がさらに力を込めると、大木がぐらぐらと揺れ始めた。
「ぐぐぐぐぐぐ ぐおう!」
幹の上から葉やら枝やらがボロボロと落ちてくる。
地面が地響きを伴って揺れ始めた。
天色はさらに力を込める!
天色の顔が真っ赤になる。
はち切れんばかりに膨張する。
そして腕がさらに太くなる。
「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」
天色の怪力に大木は耐えていた。
根が相当深く広く張っているのか、簡単に抜ける事は無かった。
天色と大木の力比べ。
大木は必死に抵抗していた。
僕は恐る恐る天色に声を掛ける。
「抜けないか?」
「思ったよりも、こいつは頑丈だな。でも大丈夫。何とか抜いてみせる」
そう歯を食いしばりながら言うと、天色はさらに力を込める。
大地にさらに足がめり込む。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
すると天色の渾身の力に耐えられなくなった大木が悲鳴を上げる。
──バキ!
──バキバキ!
──バキバキバキバキ!
「うお!?」
天色の力に耐えられなくなった大木が、天色に締め付けられた部分で根と幹とで真っ二つにへし折れた。
根を天色に引き抜かれなかったのは大木の意地だったんだろうか?
根は残り、幹は天色がもぎ取った。
すごい!
三メートル近い太さのあの大木をへし折ったのか!
さすが天色だ!
僕が天色の怪力にしきりと感心していると……。
根をと言う足を失った大木が僕に倒れ掛かってきた。
大木が僕にのしかかる。
「うわああああ!」
やばい!
大木が僕に向かって倒れて来た!
でも、太さ三メートルも有る大木だ。
そんな巨大な物を避けられる訳がない!
僕は倒れ掛かってきた大木につぶされた。
凄まじい重量が僕に圧し掛かる。
し、死ぬ!
巨大な大木に弾き飛ばされ、
地面にたたきつけられ、
大木に圧し掛かられ、
ペッちゃんこになった。
と思った瞬間……いや、潰されていなかった。
天色が軽々と大木を片手で掴んでいた。
天色にしたらこのぐらいの大木は野球のバット位の重さしか無いらしい。
「ごめんごめん、大丈夫か?」
「ああ大丈夫」
死の恐怖でちょっとちびっていたのは内緒だ。
天色が枝をむしり取る簡単な加工をすると丸太の完成だ。
軽々と担ぎ先ほどの崖に戻り丸太の橋を渡す。
両岸に10メートル程大木の長さが余ってるから渡ってる途中に落ちる事も無いだろう。
これで橋は完成だ。
目の前にそびえる丸太の橋。
思ったよりもでけえ!
太さ三メートル近くある大木の橋だからデカいわな。
渡り易さを重視して太さというか幅を優先したので丸太の橋の上まではかなりの高さが有あった。
天色と夕焼けは簡単に橋の上まで登ってたけど、こりゃ普通には橋の上に登れないぞ?
「この橋、どうやって登ればいいんだ?」
「王様、そんな事も解らないで橋を作れっていったのか?」
「ううう、すまん」
「俺が上に載せてやるよ」
結局、天色に抱えあげられて橋の上まで天色に放り投げられることになった。




