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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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にゃん娘2 にゃん娘の村

 少女の足は物凄く速かった。

 まるで草原を駆け抜ける風のよう。

 その少女に手を引っ張られて僕も今まで走った事の無い速度で草原を駆けぬける。

 風と一つになって走るのは気持ちよかった。

 少女はにこりと笑う。

 

「もうすぐ着くにゃ!」

「どんな国が待ってるのかな?」

「みんないい人ばっかりだよ」

「そっかー。いい人ばかりの国か。それは楽しみだな」

 

 どうせすぐ覚める夢だ。

 こんな変わった夢は初めてだし、二度と見る事も無いだろう。

 この状況をとことん楽しんでやれ!

 僕たちは丘を駆け抜け、みんなの待つ場所に辿り着いた。

 

「ここにゃ!」

 

 満面の笑みで少女が言う。

 ここが国なのかよ!

 僕は芝の様な草の生い茂る広い河原に辿り着いた。

 さらにその先には川幅の広い川がゆったりと流れる。

 そこはなにもない河原。

 河原に有るのはバスぐらいの大きさの大きな岩が一つだけ。

 その岩が河原の中にあるちいさな丸い丘の上にちょこんと載ってるだけだった。


 河原に有るのは、

 ・バスサイズの大きな岩

 ・百メートル位の幅の川

 ・高さ二メートル、直径二十メートル位のちいさな丘

 以上!


 何にも無いじゃないか!

 町どころか家さえも何処にも建ってない。

 国なんて何処にも無かった。

 

 おまけに、僕を待っていたのは夕焼けを入れて三人だけだ。

 ちょっと待てよ?

 僕が転生したのは猫の王国じゃ無かったの?

 何で村?っていうか、村ってレベルにも達してないし。

 僕の夢、開始早々設定破綻しまくり。

 まあ、夢だからね。

 

 そんな事を考えてる僕を知ってか知らずか、夕焼けは皆に僕を紹介する。

 皆って言っても夕焼けを除くと他は二人だけだけどな。

 

「みんな、王様が来たよー!」

「おう! 王様、よろしくー!」

 

 かなり大きな声の主は身の丈が二メートル近くある、大女の猫娘だった。

 とっても力が有りそうな筋肉質な身体。

 少し浅黒い肌で存在感のある胸とお尻と、白色の長い髪。

 とってもワイルドな感じの女の人だった。

 

 いや、女の人って言うよりも虎女や熊女って言った方が近いかもしれない。

 やはりお尻の辺りから尻尾が生えている。

 夕焼けのふんわりとした尻尾とは違いかなりガッシリした感じの太く立派な尻尾だ。

 見た感じ二十歳の僕よりも二つ三つ年上な感じの女の人だった。

 夕焼けが、その人の紹介を始めた。

 

「この人は天色あまいろ姉さんにゃ。とっても力持ちなんだにゃ!」

「よろしくな! 俺は天色だ。力仕事なら俺に任せてくれ!」

「よろしくお願いします。期待してます」

 

 とっても頼りがい有りそうな感じのお姉さんだ。

 天色の紹介が終わると夕焼けが岩の影で座っていた少女の手を取り、半ば強引に僕の前に連れて来て紹介した。

 その少女は紺色がかった長い黒髪を持つ猫娘の少女だった。

 三人の中で一番肌が白かった。

 透き通るような白さで、一番顔が整っている。

 美少女って言う言葉が合う女の子だった。

 歳は……僕と同じぐらいなのかな?

 いや、二つぐらい歳下なんだろうか?

 見た目ではよく解らない感じの不思議な女の子だった。

 やはり尻尾が生えていたが、三人の中で一番すんなりとした感じの細い尻尾で、耳も胸も小さく人間に一番近い感じだった。

 

「この人は月夜つきよ姉さんにゃ。とっても頭がいいんだよ!」

「……月夜です。よろしくお願いします」

 

 少女は俯きながら消え入りそうな呟くような静かな声でそう言った。

 

「よろしく」

 

 あまりに静かでこちらの声まで小さくなってしまう。

 これはマズいな。

 男なんだからもっとしっかりしないと。

 僕はみんなに挨拶を始める。

 この村唯一の男なんだから、いいとこを見せないとな!

 僕は胸を張り声も張って自己紹介を始めた。

 

「僕は今日からここで王様をする事になりました。みなさん、よろしくお願いします。みんなで一緒に国作りを頑張りましょう!」

 

 天色が豪快に笑う。

 

「そう、肩肘張るなよ。俺たちの国は食っちゃ寝するだけなんだから……やる事なんて何にも無いさ」

「そうなの? 神様にみんなが困ってるから、王様になって助けてあげてって言われたんだけど?」

「んー? 俺達、困ってる事なんて無いしなー?」

「そうなのか?」

「夕焼け、月夜、なんか困ってる事あるか?」

「無いよー」

「…………、ないです」

「と、言う事だ。まぁ、王様も肩肘張らずにのんびりやってくれよ」

「そ、そうなの?」

 

 あの神様……僕はこの国に来る必要なかったじゃないか!」

 すっかりあの神様に騙されたよ……。

 やられたね、まったく。

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