大自然飢えぇぇぇ!9 雨漏り
新たに作った小屋は急いで作った割には雨避けの役目をしっかりとこなしていた。
「すごいにゃ。本当に雨に濡れないにゃ」
「王様凄いぞ」
「さー寝るぞー」
その日は火打石集めと小屋作りで疲れてる事も有ってすぐに眠りに落ちて良く眠れた。
だが、深夜になって雨が強くなると夕焼けに起こされた。
「王様大変にゃ! 水漏れにゃ!」
「水漏れ? 天井からか? んー? どこも漏れてないぞ?」
「ちがうにゃ。地面から水が漏れてるにゃ」
「なんだって!?」
たしかに天井からは雨漏りはしていない。
それなのに足元を見ると寝る前は乾いた地面だった床がジットリと濡れてた。
おかげで背中がビチョビチョだ。
「一体どうなってるんだ? 入り口から水が入ったか?」
見て見ると、入り口からも水は入っていたが、入り口以外のそこらじゅうの壁と地面の隙間から水が入って来ていた。
むしろこの隙間から入って来る水の方が、入り口から入って来る水よりも明らかに多かった。
「床から雨漏りしてるのか。 これはどうすればいいんだ?」
頭を抱えていると、月夜が言った。
またまた出来の悪い生徒を言い聞かせる目だ。
「王様、屋根に降った雨は何処に流れます?」
また謎解きみたいな事を月夜が言い出した。
こんな緊急時に遠回しな言い方は止めて欲しい。
少し面倒だと思いつつもその質問に答えた。
「そりゃ、壁を伝って地面だな」
「そして、地面に落ちた水はどうなります?」
「そりゃ、丘から河原へと流れるんじゃないのか?」
「本当にそうなりますか?」
えっ?
ならないの?
僕は小屋の外に出て確かめてみる。
平原にも水は流れているけど、小屋の中にも流れ込んできてるみたい。
「ん!? 小屋に降り注いだ雨が流れ、壁と地面の隙間から中に入って来るのか。でも、これどうすればいいんだ?」
「水が家の中に入らない様に、屋根を流れる雨水を丘の下に流せばいいんですよ」
「と言う事は雨樋と排水溝か!」
「正解です。本当は小屋を建てた時に基礎工事をして小屋の床の部分に盛り土をして地面より少し高くすれば良かったんですけどね。さすがにスコップも無い状態で今から盛り土は無理だと思いますから排水溝が一番現実的でしょう」
俺は力持の天色に声を掛ける。
「すまない、ちょっと手伝ってくれ。お前の力が必要なんだ」
「わかった。何すればいい?」
天色は眠い目を擦りながら文句も言わずに俺の指示を受けてくれた。
身体は俺より大きく粗暴な口調だけど、とっても素直でいい娘だ。
俺と天色は土砂降りの中、太めの枝で小屋の外周に沿って丸く溝を掘り、それをさらに丘の下へと流す溝を更に掘った。
作業は力持の天色が居たので五分ぐらいで終わった。
「天色だけこんな土砂降りの中に連れて来て、すまないな」
「気にすんなよ。俺、王様と一緒にいるのが楽しいから……王様が来てから毎日が楽しいぞ」
「そうか、そう言って貰えると僕も嬉しい。俺も天色と居ると楽しいぞ。ありがとうな」
天色は照れたのか柄にもなく顔を赤らめていた。
溝を掘り終えると雨水が溝を通って崖の下へと流れ、嘘の様に小屋の中への浸水が止まった。
「ふー。どうにか水漏れ対策工事が終わったな。天色、土砂降りの中手伝ってくれてありがとうな」
「気にすんな。俺、お前の事が好きだし、役に立てて嬉しいよ」
小屋の床は相変わらずぬかるんでいたけど、雨ざらしじゃないので外で雨に当たるよりかなりマシな感じだ。
僕が横になって寝ようとすると、夕焼けが僕の顔の前にやって来て横になった。
「この小屋っていう物は、雨に濡れないで済む、とってもいい物なんだにゃ。王様、初めて役に立つ物作ってくれたにゃ。ありがとうにゃ」
「初めてが余計だよ」
「てへっ」
僕が照れ笑いをすると夕焼けも笑ってくれた。
その日、雨は明け方まで続いたが、僕らは小屋の中で身を寄せ合い朝までぐっすりと眠る事が出来た。
やはり技術が僕らの生活を向上させる。
そう確信した僕だった。