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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然飢えぇぇぇ!6 雨宿りの出来る小屋

 漁を終え、ご飯を食べ終える頃になると空が曇り始めた。

 僕は河原で月夜の横に座りながら、空を見る。

 空はどんよりと曇りはじめていた。

 

「また雨が降りそうだな」

 

 そう僕が呟くと月夜が心配そうな顔をする。

 

「そうですね。日没までは降らないと思いますが、夜にはまた雨が降り出すでしょうね」

「また土砂降りかな?」

「たぶん小雨では済まないでしょうね」


 また雨か。

 この前はあれだけの洪水の中どうにか生き延びられたけど、次があったら無事ではいられないだろう。


「まいったな……昨日雨が降ったばかりなのに、また雨が降るのかよ。何とか雨をしのげる場所を作らないとな……屋根が有るだけの小屋でも作るか」

「小屋ですか? どんな形の小屋を作るつもりです?」

「そりゃ、雨だけ凌げる壁無しの簡単なのでいいよ。よく運動会の時に、貴賓席で日差し除けの白いテント出してるじゃないか……白い布の三角形みたいな屋根が付いてて、鉄パイプが四隅に立ってるやつ。月夜は知らないか?」


 僕の知る限り、一番簡単な構造の屋根付きの建物だ。

 壁がないので強風の中横から吹き晒す豪雨には無力だが、普通の雨だったら問題なくやり過ごせる。

 月夜も白テントのことを知ってるみたいだった。


「はい、知ってますよ。組み立てパイプテントとか、集会用テントとか呼ばれてる物ですよね?」

「たぶん、そんな感じで呼ばれてると思う。あれを木で作りたいんだけど、材料の柱とか板って何処に行けば手に入るんだ?」

「あれを作るのは無理ですよ」

「なんで? あれが小屋の中では一番簡単だろ?」

「確かにテントとしては簡単な部類なんですが、あくまでもテントとしてはのレベルです。今の私たちにあれを作るのは無理です」

「柱四本と、布の屋根が有れば簡単にできるだろ? ま、布が無いので屋根の部分は布代わりに板で済まそうと思ってるんだけど」


 月夜は聞き分けの無い子どもを諭すような目で見ながら僕に教える。


「では、お聞きします。何処の世界に柱や板が地面から生える場所が有りますか?」

「ん?」


 なにをいってるんだろ?

 柱や板が地面から生えてくるわけがない。

 普通はホームセンターで買ってくるものだけど、この世界にはホームセンターどころか雑貨屋さえない。


「柱や板はどうやって手に入れますか?」

「木を切り出して、板に加工して……あっ!」


 言われてみればそうだった。

 板や柱は木から加工する物だ。

 板や木の棒が売ってないこの世界ではそこから作り始めないといけないんだった。

 

「となると、板や柱から作らないとダメだな」

「王様は板や柱を作れますか? 道具は何もないんですよ」

「でも、板や柱ぐらい……」

「空手八段のお寿司屋の板前さんが素手で柱や板を作れるのはマンガの中の話だけですよ」

「…………」

「王様は空手八段ですか?」

「違うよ……」

「あっ解りました。アイテムボックスからのこぎりを取り出すのですね」

「そんなの無いし」

「じゃあ、なんで素手で柱や板を作れると思うのですか?」

「……ごめんなさい。それ以上責めないで……」

「ご理解して頂けたのなら結構です」


 月夜に言い負かされてうなだれる僕。

 でも、いじけてる暇はない。

 なぜならばもうすぐ雨が降るからだ。

 気を取り直して月夜に話しかける。

 

「言われてみればそうだけどさ。真っ直ぐな木を取ってくればそのまま柱になるし、屋根も丸太をそのまま組み合わせて屋根にして、ログハウスみたいな感じで組み立てればいいんじゃないかな?」

「いや、そんなレベルの話をしてるんじゃないですよ。道具なしで木を切り倒せますか?と言う話をしてるのです。切れますか? 本当に? 空手八段でもないのに素手で木を切り倒せるんですか?」

「ぐぬぬぬ……」

 

 僕のライフは既に0なのに、月夜の容赦ないダメ出しが始まった。

 これ以上責められたら精神崩壊してしまいます……やめてください月夜さん。

 でも、月夜は口撃を止めなかった。

 

「まあ、この村には天色という怪力の持ち主が居ますので木をへし折ることぐらいなら出来るでしょう。でも、都合よく柱になるような真っ直ぐな木なんて有ります?」

「す、杉とか、(ひのき)とかっ!」

「あれは人の手が入ってからこそ真っ直ぐに育つのです。枝払いしてない杉は枝が枝の根元がこぶの様に大きく膨らんでますし、下の方が太くて上の方が細くなりますし、丸太の様に整った円柱状の形はしていません。王様はそんな事も知らないのですか?」

「も、もう止めて……ごめんなさい」

「ご理解して頂けたのなら結構です」

「じゃあ、僕はどうすればいい?」

「ご自分でお考えください」

 

 くう……。

 月夜はまたしても答えを言ってくれなかった。

 火打石の時と一緒だ。

 きっと月夜はこの答えを知っているのに……。

 なんで教えてくれないのだろう?

 教えてくれないのは僕への嫌がらせなのかな?

 さすがにそこまで性格は悪くないだろう。

 じゃあ、不甲斐ない僕への激励のつもりなんだろうか?

 んー、解らん。

 でも、今はそんな事を考えてる場合じゃない。

 夜までに雨宿りの出来る場所を確保しないと……。

 もう雨の中でずぶ濡れになるのはコリゴリだ。

 僕は必至で小屋を作る方法を考え始めた。

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