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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然飢えぇぇぇ!4 燃焼の原理

 月夜と火の希少性について話しながら歩いていると、丘の西端の小さな崖となっている斜面に辿り着いた。

 その崖は様々な年代の地層が露出していて色々な石を手に入れられそうだ。

 僕はその斜面に埋まっている石を掘り起し、石同士で叩きつける。

 …………。

 出ない……。

 火花が出ない……。

 月夜と一時間ぐらい石を叩き続けても火花の出る石は無かった。

 ここの石ではやはり火花は出ない様だ。

 

「困ったな……」

「ここの石も火花は出そうも無いですね」

「何で火が出ないんだ?」

「火花が出る条件を知っていますか?」

「条件?」

「はい、どうすれば火花が出るか解りますか?」

「硬い石と硬い石をぶつける?」

「不正解です」


 そう言った月夜は先生がダメな生徒を見る感じで肩を落とす。

 そんな目で見られると自分で自分が情けなくなる。


「くー。違うのか。じゃあ柔らかい石と硬い石?」

「王様。正解から激しく遠くなってどうするんですか?」

 

 月夜の軽蔑した様な視線が容赦なく僕のハートを貫く。

 ぐぬぬぬ。

 そうです、僕はバカです。

 大学に通ってたけど、有名大学じゃないです。

 誰でも入れるような大学でした。

 すいません。

 ごく一般的な大学生なんです。

 王様をやれるような器じゃないんです。

 僕がいじけてると、哀れに思ったのか月夜が質問を変えて来た。

 

「考え方の方向性がズレてしまってますね。質問を変えます。火花とは物が燃えた現象の結果なのですが、物の燃える条件は知っていますか?」

「物の燃える条件?」

「そう、火が点くと言うのはどういう事の結果ですか?」

「えーっと、物が燃えて灰になった結果?」

「王様……」

 

 何度教えても芸を覚えられない小動物を憐れむ様な、月夜の視線が痛い。

 月夜は覚えの悪いペットに別のアプローチで質問をする。

 

「アバウト過ぎます。もう少し、科学的に考えてみて下さい。理科、いや化学の授業で習ったような感じで考えてみて下さい」

「科学か……酸素を使って火が燃えて、物を燃やす」

「少し近づきましたが、相変わらずアバウトですね」

「くー……」

 

 僕にはこれが精一杯なんだよ。

 普通の一般人なんてこんな物だろ?

 僕がバカなんじゃないと思うぞ。

 流行のWEB小説で研究職と全く関係のない営業職のおっさんが現代知識を駆使して物を作る方がおかしい。

 月夜が頭良すぎるんだ。

 月夜は僕と同じ転生者らしいけど、僕と違ってきっと物凄く頭のいい学校を出て、物凄く有名な会社の開発部の研究員でもしてたんだろう。

 いや、学者さんかもしれない。

 先生かもな……。

 そんな人に、一般人の大学生の僕の知識が敵う訳ない。

 

「化学式を頭の片隅に置いて、それを考え直すとどうなりますか?」

「化学式か……えっと、酸素はオー2で、それが燃やされるものと結合される訳だから……」

「まあいいでしょう。それが正解です。燃えるとは科学的に言い換えると激しい酸化による発熱。何らかの物質が酸素と結び付く事で結果として『燃焼』と言う現象が起きます。つまり火打石と言うのは何らかの物が酸化して燃えて火花を出しているのです。普通の岩同士で燃えないとは言いませんが石は発火点が高いので、いくら石同士を叩きつけても普通は火花は出ません」

 

 月夜が何を言ってるのかさっぱり解らん。

 

「言ってる意味が解らないんだけど……普通の石同士じゃぶつけ続けても火花は出ないって事?」

「そうなります。私からのヒントはここまでになります。王様が答えに辿り着き、それを欲するのならば、その為の助言と努力を私は惜しみません」

「言ってる意味が象徴的過ぎてさっぱり解らないんだが……答えを教えてくれよ」

「ダメです。ダメなのです」

「ケチ!」

「…………」

 

 月夜は黙りこむと、ものすごく悲しそうな顔を僕に向ける。

 僕が答えを見つけない限り、月夜がそれを教えてくれる気は無い様だ。

 なんで、月夜がそう言う知識の出し惜しみをするのかが理解出来ない。

 僕が月夜を差し置いて王様になった事を嫉妬しているのか?

 いや……そんな感じでもないし、どうしてなんだろ?

 まあいいか。

 僕が答えに辿り着けばいいんだよな。

 俺は火打石を必ず手に入れると心に決めた。

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