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にゃん娘と作る文明開化  作者: かわち乃梵天丸
第一章 のほほんにゃんこ村
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大自然飢えぇぇぇ!3 初めての火打石探し

 夕焼けは飛び跳ねるように川原に駆け出す。

 なにか面白い遊びでも見つけた子供の様に、大喜びで小石と小石をぶつける。

 

「カッチーン! カッチーン♪」

 

 その横に座ってる天色も真剣に真剣に石と石をぶつけ合ってる。

 

「うおりゃー! とうー! あ、割れた……」

 

 渾身の力で両の手に持った石をぶつけ合い、楽しんでいる様だ。

 でも、一人浮かない顔をしているにゃん娘が一人いた。

 月夜だ。

 月夜はやる気なさげに、指先で石を摘まみ軽い力で石をぶつけ合ってる。

 

「どうした? 楽しくないのか?」

「いいえ……でも」

「でも?」

「たぶん、ここに有る石では火花は出ない気がします」

「やる前から諦めるのか? これだけ石が転がってるんだから一個ぐらい火花が出る石もあるだろ?」

「だといいんですが……」

「ま、火が無くてもここでの暮らしは困らないのも事実。火打石探しは僕の趣味でやってる様な物だから無理にやってくれとは言わない。ただ暇が有ったらこれからの生活の為にも手伝って欲しいんだ」

「はい」

 

 その言葉で納得してくれたのか、月夜のやる気が少しだけ出たみたいな感じだ。

 一方、夕焼けと天色は頭の導火線に火が入ったのか、凄まじいハイテンションで火打石探しをやっていた。

 

「みてみてー! こっちこんな大きな石あったよ。お日様たっぷりにゃ!」

「こっちにも有ったぞ。おまけに夕焼けのより少し大きいぞ! お日様すんごくたっぷりだ」

「わたしの方がギッシリ詰まってるからお日様たっぷりだもん!」

「俺の方が大きいんだからお日様たっぷりさ!」

「絶対こっち! こっちの方が綺麗な石だもん」

「やるのか?」

「やるにゃ!」

「いくぞー!」

「いくにゃー」

 

 二人は両手で大きな岩を抱えると、猛スピードでお互いの石に向かって突っ込む!

 

「うおりゃー!」

「やー!」

 

 ──ガッチーン!

 

 物凄い音が辺りに響いた。

 そして……。

 両方の石が割れた。

 

「われちったにゃ」

「われたな」

「石がまぷたつだにゃ」

「真っ二つだな」

「でも、お日様入ってなかったね」

「入ってなかったな」

「あれだけ大きければお日様たっぷり入ってると思ったんだけどにゃー! おかしいにゃー」

「今のはハズレだったんだ。次行くぞ!」

「おー!」

 

 ノリノリで石探しをしている二人は任せといてだいじょぶそうだな。

 さてと、僕も火打石を探すか。

 

 ──カチン!

 

 火花出ない。

 

 ──カチン!

 

 これもダメ。

 

 ──コツン!

 

 割れた。

 

 ──カチン!

 

 むー。だめ。

 

 ………………。

 

 何個石を叩いても火花が出ない。

 もう三百個位叩いた。

 どうやら川原には火打石は無いようだった。

 川原にはさっき月夜が言ってた様に、火花の出る石は無いのかも知れないな。

 月夜の言う事は外れた事が無いもんな。

 忠告は素直に聞いた方がいいか。

 となると、ここで全員の労力を割くよりも、作業場所を別なとこにした方がいいな。

 

「すまない。夕焼けと天色は海岸の方に行って火打石を探してきてくれないか? どうやらここには火花の出る石は無さそうなので、すまん!」


「わかったにゃー! 行ってくるにゃー」

「危ない事はするなよー!」

「わかったにゃー!」

 

 二人はどちらが海岸に早く着くのを争うかの様に走って行った。

 

「月夜は僕と別の場所に行こう。火打石を探したいんだけど、何処がいいと思う?」

「あそこの……」

「上の丘?」

「違う。もっと向うです」

「もしかして?」

 

 月夜が指差したのは稜線だけが見える遥か遠くの山だった。

 

「あそこか? あんな遠くの山か」

「はい」

「確かにあそこの山まで行けば火花の出る石が有るかもしれないが……あそこまで歩いてどれぐらい掛かるんだ?」

「ここから歩いて三日」

「三日!? ちょっと、それは遠すぎないか? さすがに三日も掛けるとなると水も食料持って行かないといけないし、水を入れる水筒みたいな容器なんて無いし、食料の魚も腐っちゃうぞ」

「三日って言うのは片道ですよ。往復六日むいかです」

「む、六日? 無理無理無理! もうちょっと近場で探そうよ、上の丘とかで探そうぜ」

「でも……」

「探せばきっとあるよ」

「でも……」

「探しもしないで諦めるのか?」

「……わかりました」

 

 僕は丘に向かう途中、火の起こし方について月夜と聞いてみた。

 

「あのさー、百円ライターの発火装置で丸いやすりみたいなのが付いてるの知ってる?」

「知ってます」

「あれを手でこすって火花を飛ばすけど、あれって火打石と同じ原理だよな?」

「はい。全く同じ原理です」


 やはり僕の推論は間違えて無かったようだ。


「百円ライターの丸いのを回すと簡単に火花が出るんだけど、火花を出すのがこんな大変な事だとは思いもしなかったよ。大昔の人はどうやって火を手に入れたんだ?」

「大昔と言うのはどの時代の事ですか?」

「んー、縄文時代」

「縄文時代なら火起こし機が流通していましたね」


 やっぱりそうなのか……。

 さらにその前の原始時代でもマンモスを狩りながら火起こし器で火を起こしてるイメージがあるよな。


「じゃあ、さらに前の原始時代だとどうなんだ? やはり火起こし機か?」

「道具も何もない人類発祥当時の原始時代の場合は山火事や落雷で自然発火した火を火種として、それを代々受け継いで使っていましたね。真偽は解りませんが噴火した山の真っ赤に燃え盛る溶岩流から火を取ったと言う話もあります」

「そうなのか。やはり簡単に火は手に入らなかったんだな」

「ええ。間違いなく貴重品でした」

「そんな大変な目をして手に入れた火が消えたりしたら大変な事にならなかったのかな?」

「火を求めて他の部族を襲って、人をあやめる事をしてまで火を手に入れたりしてましたからね……それぐらい火は貴重で神聖視されている物でした」

「マジか!」


 人を殺めてまで手に入れた火。

 それが後の僕らの身に降り掛かる事になるとは、この時の僕は考えもしていなかった。

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