大自然飢えぇぇぇ!2 火を起こす方法
僕は小屋の前で朝日を浴びながら悶々と考えていた。
火を起こす方法を……。
何とかして火を手に入れたい!
現代日本ならマッチやライターを擦るだけで一瞬で火が付くのに、それを使わずにやろうとすると簡単にはいかない。
マンガでおなじみの原始人が木の板に丸い棒を回し当てて摩擦熱で火を着けるあの原始的な火起こし。
月夜に言わせるとそれさえ現実的には作る事は困難との事だ。
困ったな……。
マッチを擦れば簡単に火が着くのに。
なんでそれだけの単純な事が出来ないんだろ?
困った。
火が無いと何にも出来ない。
魚も焼けない。
芋も蒸せない。
ライターなんて、ちょっと擦れば一瞬で火が着くし何回でも使える。
しかも、コンビニやスーパーで百円しないで買えるし。
レリック級といっても差し支えないぐらいのありえないぐらいのコスパだね。
この世界が魔法を使えるファンタジーな世界だったら火球でも放てば火が着くんだけど、あいにく僕もにゃん娘達もそんな特殊技能は一切持っていない。
僕って百円ライター以下の価値しか無いんだろうか?
役立たずな僕。
むー。
一人で悩んでると、段々鬱ってくるな。
自虐はやめとこ。
僕は現代科学の申し子。
精神論者じゃ無い。
科学的に考えるんだ。
ところで、マッチやライターっていう物はどんな構造になってるんだろ?
マッチは木の棒の先端に火薬が付いてて、それとマッチ箱に付いてるやすりみたいなので擦りあって摩擦熱で火薬に火を着けるんだよな?
火起こし機と同じく、ここでも摩擦か。
確かマッチの材料に燐を使ってるんだったな。
それ位の事なら僕も知っている。
でも、燐なんてどこで取れるのか見当もつかないし燐がどんなものなのかさえも解らない。
ライターはどうだ?
本体にガスが入ってて、ボタンを押すとガスが出る。
出たガスに、点火器から火花を飛ばして火を着ける。
それは解る。
でも、あの点火器ってどういう構造なんだろ?
あれって、丸いドラム状のやすりみたいな物で火打石を擦って火を点けてるんだよな……。
む?
火打石?
火打石か!
そうだ火打石なら!
火打石ならなににも作らないで、石と石を打ち合わせるだけで火を点けられるぞ!
石ころ二個あれば簡単に火が点けられる!
これならいける!
僕は早速行動に移すことにした。
そこら辺に落ちている石を拾い、石と石を打ち付ける。
石と石がぶつかり合い大きな衝撃で手が痺れる。
力が足りないんだろうか?
更に力を込めて石と石をぶつけあう。
だが、何度やっても火花は出なかった。
きっと石の種類が関係してるんだな。
それなら、人海戦術で探し出してやる!
僕は朝早くから、寝ぼけ眼のにゃん娘達を集めた。
「こんな朝早くから、にゃにかな?」
夕焼けは眠いのか目をつぶったまま返事をした。
「昨日のジャガイモは涙が出る程不味くてすまなかった」
寝起きがいい天色がベッド代わりの草の上で半座わりになって僕を見る。
「こんな朝早くから反省会か? 王様も大変だな」
「王様は大変にゃ」
「いや、反省会では無い……いや、反省会か。昨日のジャガイモが不味かったのは火が無かったからだ!」
「火?」
「火を見た事無いか……どう説明すればいいかな?」
いざ『火』説明しようとすると『火』は『火』意外の何物でも無く、上手く説明が出来ない。
熱いもの?
それなら夏の日差しも熱いぞ……。
明るいもの?
それなら太陽も満月も明るいぞ……。
僕が悩んでると、月夜が助け舟を出してくれた。
「お日様みたいな物ですよ」
「おー、すごいにゃー」
「お日様を操るなんて、王様は神様みたいだな」
そう説明すればいいのか……この二人には細かい事説明しても解らないんだから、直球ストレートに解り易い物で例えて説明すればいいのか。
「王様からのお願いです。この川原にはごく稀にお日様の入ってる石が有ります。そのお日様の入っている石と石を思いっきりぶつけると、小さな小さなお日様が石の中から飛び出します。そのお日様の飛び出す石を見つけてください」
「わかったにゃー!」
「任せろ!」
僕らは火打石を探して火を起こす事にした。
それが簡単な事ではないと知らずに……。