頼れ
「し、死ぬかと思った······」
「ごめんなさいごめんなさいっ。私たち誤解してて······」
ペコペコと頭を下げるナギ。誤解では済まない惨事を引き起こす寸前で、千夏が本当の事をナギたちに教えたので最悪の事態は避けることができた。
その過程で、漣の言葉通り彼は命を落としていたかもしれない訳だが。
しかし決して漣はトランプが刺さり死亡などという、違う意味で人類史上に名を残すつもりは毛頭なかった。
冷や汗をかきつつも、ズタズタになった白衣をごみ箱に捨て、新たな白衣を取り出す。
「ま、逆によく生き残ったよね。漣先生」
「あたしはここが地獄絵図にならなくてホッとしたわぁ」
今もナギの手により綺麗に磨かれた壁にはトランプが突き刺さったままである。
「それよりもお前らには俺の言葉を信用するだけの信頼ってのがないのか?」
「ないですね」
「·························」
「ああ、ほら泣きそうな顔しちゃダメですよ先生。男の人なんだから」
「お前ら、嫌いだ」
肩を落とし、落ち込む漣。
そんな和気藹々(わきあいあい)とした様子を一文字と千夏は部屋の端から眺めていた。
「お疲れさん。ちょっとはスッキリしたのか?」
にこにこした表情で気遣いの言葉を千夏へとかける。
なるほど。この笑顔だったら女子から人気が出るのもうなずける。
「おかげ様でね。皆には、迷惑かけちゃったな」
一文字はだらりと壁にもたれて聞いていた。
「まあいいんじゃないの。俺たちならお前がしっかりと立てるくらいにまでは手を貸してやれるしさ。······特に桜河なんかはな」
「······うん。それでもさ、思うんだよ。本当に僕なんかが皆と一緒に居てもいいのかって」
千夏は少しばかり目を伏せる。
そんな彼女に一文字は即答する。
「何言ってんの。そんなの別にいいんだよ。城本は人を頼ってもいいんだ。それにな、お前一人に頼られないほどあいつらや漣さんはヤワじゃないと思うぞ」
一文字の視線の先にはてんやわんやとはしゃいでいる四人娘と白衣の男が映っている。
「何なら、訊きゃあいいさ」
にかっと眩しい表情を浮かばせて、一文字は一歩前へと出る。
「桜河~ちょっと来てくれ」
一文字の声に気づき、とことことやって来たナギは、昨日、夕方の路地裏で会った時とは全く違う形で対面した。
······というのは。
ナギが大きく振りかぶって、千夏の脳天にチョップを叩き込んだからだ。
千夏はガスッと鈍い音と共に目から火が出る。感覚に襲われた。
「あ痛あああ!」
「こんの、バカ千夏があああああ!」
千夏は頭を押さえ、数歩たたら踏む。
これが女子の力なのかと疑いたくなるが、何も言わずに痛みすら受け入れようとしているみたいだった。
そんな彼女をナギは優しく、抱き締めた。
「ナギ······?」
突然のことで千夏は反応に困ってしまう。
「なんで一人で抱え込もうとするのよぉ。私だっているし、木乃香や、漣さんだっているんだから。ちょっとは頼りなよ」
その声は少しくぐもっていた。
周囲の視線が一斉に集まっているなか、千夏は申し訳なさそうに俯く。
「ごめん···········。でもさ、僕は人殺しだし ”狂って” いるんだ。いつナギたちに、その············危険が及ぶかも分からないし、こんの爆弾みたいにいつどうなるか分からない僕が、皆と居ていいはずがーー」
バキッ。
「痛あああ!」
二発目のチョップが振り下ろされた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
僕の初めての作品として書き始めたこの作品もそろそろ終が見えてきました~。
相変わらず文章に力のなさが残ってますけど、最初の頃より少しでも成長していたらいいなw
あと3話の予定です。よければそれまで読んでいただけたらと思います。
誤字脱字や何かしらの御指摘があればお願いします。また、感想、アドバイスなどもあれば是非ともお願いします!
では、次回も目を通してもらえることを祈りつつ
霞アマユキ




