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The hopeless world ?  作者: ハロハロ
狂った化物は慟哭する
32/36

帰り道

 漣は訳が分からないといった風に眉間にシワを寄せる。

 そして千夏が数年間悩み続けたというのに、くだらないと一蹴した。

「お前は馬鹿か?」

「············はい?」

 不安、焦り、怒り、哀しみ、そして狂気。様々な感情が混濁してどうにかなってしまいそうな千夏の頭に、クエスチョンマークが浮かぶ。

 あれだけ深刻な昔話を告白したというのに漣は呆れたように言ったのだ。

 しかし思考が停止している彼女の頭に漣は溜息をつきながらも優しく手を置く。その手からは優しい暖かさが感じ取れた。

 そしてわしゃわしゃと撫でる。

 さらにクエスチョンマークが千夏の頭上に浮いているのを彼は気づいていないようだ。

「くだらないな。お前は自分が殺したって言うが、もしその場でお前が手を出していなかったら今お前は生きてんのか?」

 漣の瞳は力強い。

「確かに人殺しは良くない。人間がしちゃいけない禁忌タブーだろうさ。だけどな、お前は殺されていたかもしれない。それは正当防衛だろうが。仕方ないだろ」

「なっ、仕方ないってなんだよ」

「お前が人殺しなのは事実なんだろうよ。その一瞬の殺意のせいで極上の快感を覚えてしまったのも事実だろう。お前の言う通り、化物かもしれない。一生償っても償いきれない枷を背負うことになる。でもな············」

 ポンポンと乱れた髪の毛の上を軽く叩く漣。

 不思議と千夏は安心感を覚えていた。

「皆と一緒に居たいくせに、皆と一緒に居るべきじゃないってのはお前が決めることじゃないだろ」

 千夏は考えていること、それこそ不安や哀しみといった感情全てが吹き飛ぶ感覚に襲われる。

 感覚とは言い難いかもしれないが、それほどの衝撃だったのだ。

「人と居てもいい場所ってのは、実はそんな定義はねえ。お前が居たいと思ったらそこがお前の居場所なんじゃねえの? 少なくとも、お前に居てほしい場所は桜河や俺たちが決めることだ。それでもお前が居たくないって言うならどう仕様もないけどな」

 苦笑する漣は普段の彼からは想像出来ないほどの誠実さが滲み出ていた。

「ただな、俺たちは······少なくとも桜河の奴はお前に居なくなって欲しくはないんじゃないか?」

 言葉を失う千夏の頭にはまだ彼の手のひらが。

 千夏の心中でさっきまで台風のごとく荒れていた波がすぅっと引いてゆく。

「ーーーーあれ?」

 千夏の瞳からは澎湃と涙が溢れていた。

 彼女は思い出す。

 桜河ナギという人物と共に過ごした日々を。

 彼女のおかげで過ごせたここ数年間を。

「ふぐっ、うぅ·········うわぁぁあんっ」

 大声とはいかないものの、声を上げて泣く千夏。

 そんな彼女を見て、漣は安心し、そっと手を離した。

 千夏は泣く。

 一体、人前で泣くなんていつ以来だろうか。

 苦しかった。 ”狂って” いる自分が底知れず恐ろしかった。何度も逃げ出して、叫びたかった。

 ずっと溜め込んでいた濁った部分や、ためこんでいたものが解き放たれるのを感じる。

 溢れる涙の一滴一滴に苦しかった分の感情が溶け込んでいる。

 そのうちの一粒が口の中へと導かれる。

 ーーなるほど。たしかに苦いわけだ。


「ぐずっ············ひぐっ」

 漣は一言も言わず、ただ泣き止むまで待ってくれた。

 今まで堪えてきた涙はそう簡単に止まりはしないようで、数分間千夏は泣き続けた。

 やっと涙が止まり始めた頃ーー

「ちっなつぅぅぅううっ」

「なんだか怪しく変な気配がするんですけどっ」

 まず先頭に二人、喧騒がやって来た。

「あ、先生が泣かしてる············」

「「なんだって!?」」

「漣先生ぇ。ちょっとそれはダメですよ」

「早苗の言う通りだよ。先生、一体ナニしたのさ」

 この後の悲惨な結末を理解したのだろうか。

 あらぬ誤解を生んでいることに気づいた漣は、顔面蒼白で取り繕う。

「ちょっ、誤解だっ。俺は何もしてないしお前らが思っているような邪な気持ちも持ち合わせてないっ。だからそんな軽蔑の眼差しをこっち向けるなああ!」

 時すでに遅し。

「············漣先生が僕に意地悪するんだよぉ」

「んな! し、城本おま············っ」

 ヒュカッ!

「うおおおおおっ危ねえ!」

 なんということだろう。ありえないことに超高速でナギの手から放たれたトランプは回転しながら壁に突き刺さったではないか。

 人間の手から放たれたトランプが壁に突き刺さるなど聞いたことがない。それ以前に物理学的にありえるのかが疑問だ。

 そんなことはお置いておいて、現在進行形で漣は千夏のせいで生命活動の聞きに瀕している。

「頑張って、漣先生」

 微笑む千夏。

「城本おおおおおお!」

 絶叫する漣。

「さ、お仕置きの時間ですよ~」

 そして殺気溢れるナギ。

 その後、絶叫から悲鳴へと変化し、虚しく室内に木霊した。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


ついに千夏を救うまであと一歩。気付けば結構長く今回の話をいてきましたねね。第一章はあんなに短いのにw

ですが、この物語もそろそろ終わり。あと数話お付き合いいただけたらと思います。


さてさて、毎度のことながら誤字脱字などのご指摘ありましたらお願いしますっ。

感想やアドバイスも待っています!

                 霞アマユキ

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